学校から帰ってまず僕がしたことは、部屋の隅っこで蹲って落ち込むことだった。着替えもせず、荷物を片付けることもせず、壁に寄り掛かって膝を抱える。
フラれた。失恋した。愛の告白の返事としてNOを突き返された。これで落ち込まずにいられるだろうか。
一人になりたくて、でも本当にひとりっきりになれるほど強くないから、こうして自宅のリビングで膝を抱えている。
視界の中では、先に帰ってきていたらしい妹が、ゲームをしつつも面倒くさそうな視線を僕に向けていた。
「・・・・・・なんとなくわかってるけど、一応訊いてあげる。どうしたの?」
「フラれた・・・・・・」
「だと思った。先週も同じようなこと言ってなかった?」
言ったかどうかで言えば、言った。先週は同じクラスの鈴木さんに、その前は同じ緑化委員の西園寺さんに、もう一個前は同じバイト先の梓川先輩に告白して、フラれたのだ。そして今日は、隣の席の望月さんに。
「そんだけ色んな人に告白してるからフラれるんじゃないの?」
「しょうがないだろ好きになっちゃうんだから!」
妹に確信を突かれた僕は、自分の膝に向かって吠える。どの恋も本気だったし、どの告白も本心からだった。自分が惚れっぽいのは自覚してる。でも仕方ないじゃないか。自分の『好き』という気持ちを偽ったり、抑え込んだりするなんて、できない。
はぁ、というため息を皮切りに、後悔の念が僕の口からから溢れ出る。
「望月さんは素敵な人だし僕に釣り合わないのはわかってたけどそれでも好きだったんだよ。僕みたいな陰キャにも優しいっていうか他の人と同じ接し方をしてくれるしなんだろうもう太陽? あの恒星の輝きはきっと彼女しか持ってないものだしだからこそ惹かれて──」
「うっさいなぁもう!」
と、妹が僕の言葉を遮ってぶった斬った。その瞳には、冷たい怒りが乗っている。
「静かにしてよ、ゲームに集中できないでしょ」
「ご、ごめん・・・・・・」
僕がそう謝ると、今度は妹がはぁ、と深く息を吐き、棚からコントローラーを取り出すと、僕に差し出す。
「はい」
「・・・・・・へ?」
「『へ?』じゃなくて。ぶつぶつ言ってる暇があるならゲーム付き合ってよ」
僕は妹の行動に首を傾げつつ、コントローラーを手に取った。画面に映っているのは、某有名な対戦格闘ゲーム。子供の頃から、兄妹でよくこのゲームで遊んだことを、僕は思い出す──
その晩、僕はゲームしながら叫べるくらいには元気になれた。
執筆日 八月十九日