クラス最強となった俺が二度目の転生をして、平凡(?)な学園生活を送る俺物語 作:渡月 夢幻
〜第十章 嘘と悪と野望と〜
「アリス〜!どこにいる〜!」
教師陣とブレイン、メーティスは街中を駆け回り必死にアリスを探した。すると、背中に大剣を背負い、小袋を肩に担いでいる屈強な男がこちらに歩いてきた。見た目は40代くらいだろうか……。しかし、胴はしっかりとパンプアップしていて素晴らしい体つきをしていた。
「おっ、そこのあんちゃん。何か探し物でもしてるんか?」
体つきのいい男はそう言って俺に話しかけてきた。
「あっ、はい。今アリスって女の子を探しているんですけど……」
「アリス?」
「はい、グラジオ家のご令嬢で……」
「あぁ〜グラジオ家のご令嬢さんか。あのちょっと髪が紫がかっている綺麗なお嬢ちゃんか。」
「はいっ、そうなんですけど。なんであなたはアリスのことを知っているんですか?」
「えっ、だって俺は……」
と男が答えようとすると、後ろからルシが
「おぉ〜ラルドバルト〜!」
と手を振って近づいてきた。それを見たラルドバルトは
「おぉ〜ルシの姉ちゃん!」
と言って手を振り返す。俺は全くどういう関係か分からなかった。
「なぁ、ルシ。このラルドバルトさん?ってどんな人なの?」
疑問に思った俺はルシに直接聞いた。
「あぁ〜翔太くんは知らないよね。この人はラルドバルトさん。今の剣聖グレルの1つ前の剣聖、つまり14代剣聖だよ。この人は結構顔が広い人でね、特に貴族の間で。」
ルシが俺にそう説明すると、俺は驚きその場で直ちに謝罪した。ラルドバルトは手を頭の後ろに持ってきて
「そんな謝んなくて大丈夫だよ。」
と少し照れくさそうに言った。ルシは彼の武装姿と荷物を見て、
「ラルドバルト、今から遠征それとも依頼?」
「いやぁ、ちょっと東の方にある田舎に向かわないといけねぇんだよ、それが。なんか向こうの方でワイルドボアが大量発生してるらしいからさ。それでちょっと久しぶりに運動しようかと思ってね。」
「なんだ〜そういう事ね。歩いていくの?」
「おう、久々にな。」
「そうなんだ、気をつけてね!」
「おう、ありがとな!」
そう言って彼はその場を後にした。彼を見送った俺たちは次の候補とされる場所へと向かった。
ー その頃、グルーデッドビーナスは ー
「なぁ、……。その鍵の女はどうするんだ?」
クレバーはふと聞いてみる。
「ご心配なく、クレバー様。この女は来る日まで学園の方に変えさせて頂きます。また、この場所に関する記憶は私の精神魔法で完全に忘れさせます。まぁ、今も気絶しているんで消さなくても問題は無いですけどね。」
そう言って……は口元を軽く手を当てて微笑する。
「やっぱお前、抜かりないな。まぁ409年前のあれもお前が抜かりなく俺を救出してくれたな。感謝してるぜ。」
「いえいえ、滅相もございません。クレバー様。」
2人で会話をしているとそこにダンテが割って入ってきた。
「クレバー様、……様。2人でその話しないでくださいよ〜!俺もそん時マジで頑張ったんだからさぁ〜!」
「あぁ、すまんかったなダンテ。あの時は助かったのはお前のおかげでもあるありがとうな。」
「えへへ〜」とダンテが照れる。それを見ていた……は、ダンテに厳しい視線を浴びせて、
「偽装しているキャラが残ってますよ、ダンテ。」
「あっ、ホントだぁ〜。長いこと変装すると本来の自分忘れかけるんだよなぁ。」
そう言ってダンテは自分の顔を軽く叩く。
「あの〜クレバー様〜。その409年前って〜何があったんですか〜。」
「そうですな、私も気になりますさかい。教えてくだはりませんか、クレバーはん。」
とアルゾラと颪が口を挟む。2人はその時には生きておらずなんの事だかさっぱりだった。
「んまぁ、これに関しては、また今度教えるわ。お前たちと409年前に出会っていたら俺が編み出した魔法でお前たちと永遠に過ごせなのにな……」
「まぁ仕方ありまへんですよ、クレバーはん。」
「そうですよ〜これは運命《さだめ》だったんですから〜」
「そうだな……」
クレバーは少し暗い顔をしてそう言った。
「クレバー様、切り替えていきましょう。」
「おう、……。」
「そういえば、今から五帝会議を始めるというのにあの人はまだ到着していないのですか?あの人は結構時間通りにいらっしゃるのに……」
……は“あの人”がこの場に出席していないことを不思議に思い始めた。すると、「ガチャ」とこの部屋のドアを開ける音がした。全員が音の方に視線を向ける。そしてそこに現れたのは、14代剣聖ラルドバルトだった。
「いやぁ、悪かったな。遅くなっちまったわ。」
「遅れるなら遅れると言ってくださいよ。ラルドバランさん。」
「だから、謝ってんだろ?……の姉ちゃん。」
「その呼び方はやめ下さい。」
ラルドバルトにあだ名を呼ばれ、……は少し顔を赤くした。
「わりぃ、わりぃ。んで今日はどんな会議すんだ?」
「はぁ……。会議の前に遅れた理由教えてくれませんか?」
呆れた様子で……がラルドバルトに聞く。
「理由?まぁ率直に言うと、ターゲット《ルシ》に接触した。」
「えっ?……それで何か問題でも起きましたか?」
「いいや、何も起きてねぇ。あっ、あとはつけられてきねぇから安心してな。」
「ならいいですけど……」
……は少し胸をなで下ろし本題に入った。
「さて、今回の議題は王立イーセンダルト魔法学校の入学式後に行われる試験です。このことはダンテさんから説明しもらいます。」
と言って……はダンテにバトンタッチする。
「はぁい。今回、イーセンダルトのルシが企画した部族平定を行うらしいよ。まぁ、いつも通りの試験内容だね。イーセンダルトは1年に過酷な課題を与えるの好きだし。んで、その後はバーン!ってしてドゴーン!ってする感じ。」
「は?」
「だから、バーン!ってしてドゴーンってする感じ。」
「は?」
「ドーン!バーン!」
あまりの情報不足にラルドバルトが呆れる。これではどうしようもないと思った彼は直接……に聞く。
「なぁ、……。これじゃあ、作戦もクソもありはしねぇよな。直接殴り込むのか?」
「流石にそんなことはしませんよ。まぁダンテの今の性格が大雑把ですから仕方ないです。ですので代わりに私から詳しいことを説明致しますね。」
「おう、そっちの方がありがてぇ。」
ラルドバルトは頷きながら近くに用意してあった席に着く。そして説明をする……は全員の着席を確認し、説明を始めた。
「では、今回の作戦の概要を説明致しますね。今回は先程ダンテさんからの情報であったイーセンダルト魔法学校の試験を利用したものです。彼らは試験会場に行くために1年全員で魔道列車に乗るそうです。ですのでそこを奇襲します。ですがこの奇襲はあくまでもカモフラージュになります。」
「ん?どういう事だ、……。」
疑問に思ったクレバーは咄嗟質問する。
「詳しく申し上げますと、イーセンダルトの生徒たちと同時刻の列車に乗車するとある貴族の持ち物を回収するためです。」
「とある貴族?」
「はい、我らが目的である復活するための石をその貴族はペンダントにして持ち歩いてることが判明致しましたので。」
「なるほどな。だったら街中でそいつぶっ殺して奪えばいいんじゃないか?」
「それも考えたのですが、我々の目的が復活するための石集めだと気づかれてしまうと向こうに先手を打たれる可能性が高くなってしまうので表向きは学生の襲撃とすれば奴らも気づきにくくなるかと思いまして。」
「なるほどな、名案だ……。」
「ありがとうございます、クレバー様。」
クレバーに褒められた……はその場で軽くお辞儀をする。そして……は話を続ける。
「今回襲撃してもらうのは我々五帝が保有している部下を使いたいと考えています。ですので今回の作戦にうってつけな部下がいれば推薦してください。」
……がそういうとほかの五帝のメンバーは沈黙して考え始めた。
「んじゃ、俺の部下を出そうか?……の姉ちゃん。」
と挙手をしてラルドバルトがそういう。
「もう、その呼び方はやめてくださいと言っているでしょう?」
「あはは、すまねぇな。」
「分かれば良いのです。で、どなたを推薦するのですか?」
「俺が推薦するのは俺の幹部である三刃の邪剣《トリニティ・ソード》の1人、狂刃のギヒトだ。まぁ、奴の狂喜乱舞は知ってるやつも多いだろうし良い働きをするぞ。まぁ、やつは5年前まで死刑囚だったってのもあるし。俺の部下の中では1番うってつけだと考えている。」
「確かにそうですね。他に推薦したい方が居なければギヒトさんにお任せしますがよろしいですか?」
「おう。」
「はぁい。」
「う〜ん〜。」
「よろしいどすえ。」
各五帝は賛成の意思を示した。そして……は続けて、
「では、作戦はギヒトにお任せするとしてダンテさん。一応、ギヒトさんに同行してもらっていいですか?少し嫌な予感がするので。もしもの時は回収お願いしますね。」
「はぁいよ。じゃあ僕はこれにて失礼するね〜。色々準備しないといけないしね。」
ダンテは軽く返事をしてこの部屋を出ていく。
「これにて五帝会議を終わりますね。皆様武運を祈ります。」
……がそういうと一同は、自分の首に下げているネックレスを顔の前に取りだして、
「全ては神の名のもとに……そして我らが命を……」
と声を揃え祈りを捧げた。
ー アリスの捜索をしているルシたちは ー
「翔太くん!そっちの方は居た?」
「いや、居なかった。くっそ、どこに行ったんだ?」
アリスの捜索はまだ難航していた。
「次は大聖堂近くを探すか。」
ルシたちは急いでマリゾアール教の大聖堂へと向かった。走って向かうとそこには少し豪華な修道服を着た一人の女性が女の子を背負っていた。
「すみません!」
俺は咄嗟に声をかけた。するとその修道服を来た女性はこちらを向いた。そして彼女は、
「申し訳ないのですが、今私たちの聖堂の脇の草むらに彼女が倒れていましたので急いで手当しないといけないので、その後でもよろしいですか?」
「えっ?……あっ、はい!すみません。」
俺は彼女に謝罪し背負っていた女の子の顔をそっと覗き見る。するとその女の子は今俺たちが捜索しているアリスだった。
「アリスっ!?」
俺は咄嗟に声を上げる。その声に驚いた修道女は体を左右に少し揺らしよろける。俺は急いで念話の魔法でルシやメーティスに伝える。そして、
「あのすみません!この女の子は俺の連れなんです。えっと、俺にも手当を手伝わせてください。」
「わかりました、ではこちらに来てください!」
修道女はそういうと大聖堂内に俺を案内した。俺と修道女は休憩室のような場所で手当を始めた。そしてその10分後、ルシとメーティスが到着した。
「アリス!大丈夫か?」
ルシはそう言って一目散にアリスの容態を確認する。そして彼女の安全が確認されるとルシは修道女にお礼をした。するとルシは修道女の顔を見て驚き
「えっ?……あなたは聖女セルナード様?!」
と声を上げる。そう、アリスを治療してくれたのはこのマリゾアール教の現トップである聖女セルナードが行ってくれたのだ。
「バレてしまいましたか、ルシ。」
と彼女は微笑みながら言った。彼女は回復の手を1度止めてルシにアリスの容態を伝えた。彼女いわく、5、6箇所の軽い怪我と気絶だそうだ。ルシは一息つきアリスの元を離れず見守った。もちろん、俺もだ。
治療が終わり、1時間ほど経つとアリスはようやく目を覚ました。しかし、俺とルシは捜索による疲れでアリスのベットの隣で居眠りしてしまった。
「あっ、あれっ?ここはどこ?……」
アリスは第一声をつぶやく。その声を聞き俺は目を覚まし、だんだんと意識を覚醒させる。
「おっ、アリス……目覚ましたんだな。」
俺は少し寝ぼけながらアリスに話しかける。俺の隣でぐっすりと寝ているルシを俺は起こしアリスが目を覚ましたことを伝える。するとルシは「そうか。」とうなづいてアリスの頭を軽く撫でる。そして、セレナードにお礼をするために病室を出て行った。ルシは先程セレナードがアリスを治療していた部屋へと向かった。だが、そこには彼女の姿はなかった。「どこに行ったのだろうか。」と思ったルシは、
「すみませんが、聖女セレナード様はどちらにいらっしゃいますか?」
たまたま近くを通り掛かった修道女に尋ねる。彼女は少し考えてから
「多分、今は各教会に赴いて迷える信者をお導きになられていらっしゃると思います。」
「なるほど……了解しました。もし聖女様がこちらへ戻られた際にはルシがアリスの治療にお礼をしていたとお伝えください。」
「わかりました。お伝えしておきます。」
と修道女は一礼してその場を立ち去った。修道女が立ち去るとルシは今回の騒動の収集をつけるため念話でブレインに事情を説明し彼女は先にイーセンダルトに戻った。
「なぁ、アリス。ル…ううん、学園長は何か大事な用事を思い出したらしいから先に帰るって。俺とアリスは落ち着いたら2人で学園に戻ってきて。だってよ。」
「わっ、わかりました、ブレインくん……」
アリスは落ち込んで返事をする。
一方、イーセンダルトに先に戻ったらルシはこの非常事態についての報告書のまとめや職員会議の準備を学園長室で急いで始めた。
「ルシ様。やはり私達がもっと警戒すべきでしょうか?」
ルサールカはそう進言する。
「うん、私たちが何とかしなければならない問題だよ。この件は私の予想だけど、元磨羯宮のアイツが関わっている可能性が高い。しかも、アリスの身柄は教会前に捨てるなんてヤツは何を考えているんだろう……」
ルシは学園長専用の椅子に座りペンを口にくわえ頭を悩ませ続けた。すると、学園長室のドアをノックする音が聞こえた。ルシは反射的に「どうぞ。」と中へはいる許可を出す。ドアが開くとそこには1人の職員が立っていた。
「失礼します、学園長。入学式等はどのように致しますか?」
と今回の騒動により合格発表は何とか無事に終わらせたものの入学式の件については片付いていなかった。例年だったらこの3日後に入学式を取り計らう予定だが今回ばかりは職員の葬式や襲撃、防衛強化を視野に入れる必要がある。何よりこの件に関しては生徒会と模様相談しなければならない。生徒が何も知らずに巻き込まれてしまうのは酷だからである。
「とりあえず、入学式は1週間後に行う。これは合格者の家庭と生徒に即時伝令を。あと、現生徒会役員を2日後の12時に招集できるようにしてくれ。その他始末書等は我々教員と我が部下が執り行う。このことは職員全員に通達。眠る間も惜しんで生徒の安全を優先するのだ!」
ルシは全てを覚悟した顔をして命令を下す。それを聞いた職員は「はい」と気合いの入った返事をして各部署に通達を開始した。彼が立ち去りドアがしまった瞬間ルシは「はあぁ」と声を出しその場に膝を着く。よっぽど緊張していたようだ。
「ルシ様。大丈夫ですか?」
「ルサールカ、これが大丈夫なように見える?」
「いえ……とても大変そうです。」
「だよね……」
ルシはそう言って立ち上がり自分の頬を軽く叩いて、
「とりあえず、ルサールカ頑張ろうか。」
と喝を入れ2人は仕事にかかった。
第十章 嘘と悪と野望と ー完ー