クラス最強となった俺が二度目の転生をして、平凡(?)な学園生活を送る俺物語 作:渡月 夢幻
〜第七章 合格発表と作戦α〜
時は進み合格者を240名に絞り込みいよいよ今日合格者の発表が行われる1時間前となった。発表の1時間前である午前11時、俺とメーティスは遅めの朝食を済ませて宿を出た。街の様子は普段と変わらず活気に溢れていた。
「メーティス。あと1時間くらいあるけどどうする?」
「そうだね〜お兄ちゃん。……そうだ!串焼き買いに行く?」
メーティスから意外な意見を聞いた俺は思わず、「えっ?串焼き?!」と驚き聞き返した。メーティスは「うん」と首を縦に振って答えた。それに続けて、
「ルサ姉さんは串焼き好きだからお土産に……あとはルシにも会いたいし……」
と串焼きを買う目的を教えてくれた。俺は「あぁ〜そういう事ね。」と頷き、
「じゃあ、一緒に買いに行くか!」
俺はノリ気でメーティスに応えた。そして俺たちは串焼き屋に向かって歩き始めた。もちろん、俺がこの街に初めて来た時にお世話になったあの串焼き屋だ。
串焼き屋はそう遠くなかったのでものの10分程で着いた。この串焼き屋は結構人気があり、串焼きの評論家や串焼きオタクもよく通ってるらしい。また、国のお偉いさんも好んで食べるという噂がたつほどらしい。屋台からは炭火の匂いと肉汁と香ばしいタレのいい匂いが付与された薄い灰色の煙が宙を舞う。その匂いにつられて客が集まる。やりて上手な店主とでも言うべきだろうか……
「いらっしゃい!いらっしゃい!今日はワイルドボアの串焼き安くしているよ!」
店主の声が辺りに響く。客はその声につられてルシを手にとり、
「おっちゃん!ワイルドボア4本とネズミ肉3本!」
「俺は、トカゲ肉とワイルドボアと豚の串焼き2本ずつ!」
「私はワイルドボア10本!」
と口々に注文を始めた。店主は全員の注文を聞き分け、手元にあった串焼きを詰める用のパックを5パック並べ、パックの底に自家製のタレをハケで塗りたくる。そして、ちょうど良い焼け具合のワイルドボアの串を16本、ネズミ肉の串を3本、トカゲ肉の串を2本、豚肉の串を2本素早く取り上げそれぞれのパックに瞬時に詰める。そして注文をした人達に、
「はいよ、ワイルドボアの串焼き4本とネズミの串焼き3本ね。お代は70ルシだ。そっちのあんちゃんはトカゲの串焼き、豚の串焼き、ワイルドボアの串焼きそれぞれ2本ずつね。あんちゃんのお代は60ルシだ。ひとつのパックに詰め込んだから肉を間違えないように食ってくれな。んで、そこの姉ちゃんにはワイルドボアの串焼き10本ね。5本ずつ詰めたよ。姉ちゃんのお代は100ルシな。」
と、的確に配布し客からルシを受け取った。俺は「さすが串焼き屋のおっちゃんだな〜」と感心しながらその場にぼーっと突っ立っていた。それを見たメーティスは俺の脇腹をつついて「お兄ちゃん、大丈夫?」と聞いてきた。俺はハッとしてぼーっとしていた意識を取り戻す。
「悪ぃなメーティス。んで、串焼き何本買う?」
俺はすかさずメーティスに聞いた。するとメーティスは少し悩んでから、
「じゃあ、ワイバーンの串焼きを4本と、ワイルドボアの串焼き8本、あとはトカゲの串焼きと豚の串焼きをそれぞれ3本ずつかな。」
「けっ、結構買うんだな……」
「だって、ルシの他にもルサ姉さんとかオノケリスとかもいるでしょ!だからお兄ちゃん、買ってきて!」
俺はメーティスに説得され言われるがままおっちゃんの所へ注文しに行った。人混みをかき分け店主のおっちゃんの前に着いた。着いた同時に俺はおっちゃんと目があい、「おぉ〜古金のあんちゃんじゃねぇ〜か!」と変なあだ名をつけられた。
「よぉ〜おっちゃん。ってか、古金のあんちゃんってどういうことだよ。」
「いやぁそのままの意味だぜ。俺の店に初めて来た時もう使われてない金貨で支払いしようとしてただろ?そっから、古金のあんちゃんだ!分かったか?」
と俺のあだ名の由来を教えてもらい俺は少しガッカリしながら注文した。
「んじゃ、おっちゃん。とりあえず、ワイバーンの串焼き4本とワイルドボアの串焼き8本、そしてトカゲ肉の串焼きと豚肉の串焼きを3本ずつくれ。」
「あいよ、古金のあんちゃん。ちょっと待ってな。」
おっちゃんはそう言うと先程の客に対応したやり方と同じように、パックのそこにタレを塗りたくり仕上がりが良い肉を目利きしパックの中に詰める。
「あいよ、全部で180ルシな。」
俺はその言葉を聞き、手元に控えておいた180ルシをおっちゃんに手渡しした。
「うん、180ルシピッタリだ。これが品物だ、受け取ってくれ。」
「ありがとよ、おっちゃん。また来るわ!」
「あいよ!いつでも待ってるぞ!」
俺はおっちゃんとの会話を済ませメーティスの所へと戻ろうとしたが、タレの香ばしい匂いが鼻を刺激する。すぐにでも食べたくなった。だが、これはお土産だということを思い出し我慢しながらメーティスの元へと戻った。
「お待たせ、メーティス。今何時だ?」
「今は午前11時20分だよ、お兄ちゃん。そろそろイーセンダルトに向かおうっか。」
「そうだな。」
そして俺らは合格者発表の行われる王立イーセンダルト魔法学校へと向かった。
午前11時45分、俺たちは王立イーセンダルト魔法学校の校門前に立っていた。この学校の合格者発表のシステムは至って簡単で12時になった瞬間、校門が自動的に開き中へと入る。すると、職員が合格者が張り出される掲示板の近くにいるのでそこに自分が受験者である証明をする受験番号の控えを提出する。確認が取れると掲示板の元へ行けるようになる。もし、受験者ではない者が掲示板の元へ行こうとすると魔法で束縛され警察へ突き出される。掲示板を見て自分が合格者だと分かった場合、その受験者は校舎内に入り係の職員の指示に従って手続きをするというシステムだ。
「なぁ、メーティス。俺たち合格してるよな?」
俺は開門直前にとても不安になりメーティスに聞いた。
「分からないよ、お兄ちゃん。だって私試験監督じゃないもん。」
と、メーティスは冷静に返答した。すると、
「ブッ、ブレインさん!こっ、こんにちは……」
緊張していて全身が張りつめている中、後ろからいきなり声がした。振り返ってその声の主を確かめると……
「アリスじゃねぇか!」
俺はアリスの姿を見て一安心した。
「どっ、どうしてそんなにカタカタと震えていたんですか?」
アリスは俺に質問する。どうやら、緊張のあまり俺自身が周りにもわかるほど震えていたらしい。メーティスはそれを知っていながらも黙っていた。俺はそれを察した時に「メーティスめ!」と皮肉を込めて心の中で叫んだ。
「あっ、あのブレインさん。」
「ん?どうした、アリス。」
「わっ、私と一緒に合格発表…みっ、見ませんか?もっ、もちろん、メーティスさんも一緒で」
その誘いを聞き、「俺は別にいいぞ」と返事をして「メーティスはどうする?」とメーティスに振ると「私ももちろんいいよ。」と速攻で返答してくれた。それを聞いたアリスは嬉しくて気持ちが高ぶっていた。
「これより、合格者発表の案内を開始します!どうぞ、ご入場ください!」
職員が自動で開いた門の奥からそう叫んで、受験者たちの誘導を開始した。
ぞろぞろと受験生たちが校門へとなだれ込む。我先にと堂々と先導を切る貴族や合格してないだろうと思い校門脇で足を止める者、校門になだれ込む生徒の波に巻き込まれる者もいた。ブレインもその1人だった。
「うわつ、こりゃ結構きついな。メーティス、アリス!はぐれないように気をつけろよ!」
「わかったよ!お兄ちゃん!」
「わっ、わかりました!」
3人ははぐれないようにできるだけ生徒という波が弱い場所をくぐり抜け、ようやく受験者確認をしている職員たちの元に着いた。だが、ここからは受験者確認をするため列を作り待つ必要があった。受験者の並に揉まれたあとは、列に並ぶ……待つことにあまり慣れていない俺にとっては少し鬱であった。俺は2人に「とりあえず、並ぶか」と声をかけ1番早く終わりそうな列に並んだ。
「こっ、これは1時間くらい並びそうですね……。」
「だな。のんびり待つしかねぇか……。」
1時間という暇な時間を強制的に寄付され困り果てながら並んでいると列の脇に並んでいる木々の隙間から怪しい光が一瞬見えた。メーティスと俺はそれを察知し警戒態勢を取った。その様子を見たアリスは困惑していた。
「いっ、いきなりどうしたんですか?!ブレインさん、メーティスさん!」
「いや、少し危険な予感がしたんだ…とりあえずアリスは何もせず、そのまま待機してくれ。俺とメーティスで対処する。」
「はっ、はい!」
アリスは手足を震わせ、ヒヤリと汗を流し俺たちの脇に控えた。すると、再び怪しい光が光った。それと同時に光った周辺の木々の葉がカサカサと揺れて数枚の葉が地に落ちた。「見えない矢が飛んでくる。」と俺とメーティスは直間的に察すると、
「動体視力向上、状態異常回復をお兄ちゃんの左手に付与。」
メーティスはそっと口ずさんだ。そして俺は自分の左手を大きく振りかぶりタイミングを合わせて空中でキャッチした。もちろん、周りからは「何してんだこいつ」と思われるような動作をしていた。
「ブッ、ブレインさん!どうしたんですか?!」
「いや、不可視化された矢を捕まえただけだ。」
俺はそう言って状態異常回復をした矢をアリスの目の前に差し出した。
「えっ……」
アリスは言葉を失っていた。まさか自分たちの方にこんなものが飛んでくるなんて思ってもいなかったからだ。これから察するに暗殺を目論んでいるのかとアリスは考えた。そして飛んできた矢を再び見るとブレインが握っているあたりに白い紙が見えた。
「ブッ、ブレインさん。紙が巻きついています。」
そう言うとブレインは自分が握っていた左手をパッと開き少しシワの入った紙を矢からほどいて中を確認した。するとそこには日本語で「列をぬけて、校門の左にそびえ立っている大樹に解除魔法《ディスペル》をかけてね。最愛のルシより♡」と書かれていた。日本語はこの世界では俺を含めてメーティスとルシ、ルシの幹部たちしか書けない。理由としてはこの世界には日本語を理解出来る者は俺たち以外に居ないので俺たちだけの秘密文書を伝える手段となっている。まぁ、転生した俺以外の4人も読めるが……。
「ブッ、ブレインさん。これは古代文字か何かですか?……」
日本語を知らないアリスは当然の質問をした。
「あぁ、そうだよ。とりあえず俺についてきてくれ。」
「えっ!?わっ、分かりました。」
となんの説明もせず少々強引にはなってしまったがアリスを連れ出した。
校門前に戻ると、俺たちは大樹を発見した。俺は「こんなもんあったっけ?」と疑いながらその大樹の周りを確認した。
「あっ、あのブレインさん。この木に何かあるんですか?」
「あぁ、あるぞ。とりあえず、俺は作業するからメーティス。不可視化の結界を一時的に展開してくれ。」
「わかったよ、お兄ちゃん。とりあえず3分あれば大丈夫だよね?」
「あぁ、もちろん大丈夫だ。頼んだぞ、メーティス。」
「了解。」
そう言ってメーティスは大樹を基準とし不可視化の魔法結界を展開した。そして俺たちの姿は完全に周りから見えなくなった。それを確認した俺は大樹に触れて「解除魔法《ディスペル》」と唱えた。すると、大樹はボロボロと崩れ始めた。だが、その破片は地面に接触すると同時に消滅した。そして大樹が存在していた場所に転移陣が出現した。
「なるほどね……」
察した俺とメーティスは転移陣の中に立った。
「ブッ、ブレインさん、メーティスさん!その転移陣、大丈夫なんですか!?」
「あぁ、問題ない。これは学園長が作ってくれたやつだからな。」
俺はそう言ってアリスにこっちへ来るように催促した。少し緊張しながらアリスは急いで俺たちの元へ来た。それを確認した俺は転移陣を発動させた。空間が歪み俺たちはある場所へと飛ばされた。それと同時に転移陣は消滅し不可視化の結界も効果が切れた。そしてそこには何も無いただの芝生が広がっていた。
歪んだ空間が元通りになり俺たちはとある場所に立っていた。
「転移先はやっぱりここか。」
そこにはこの王立イーセンダルトの学園長ルシが高貴な椅子に座って紅茶を嗜んでいた。
「ご名答、ブレインくん。」
ルシはそう言って俺たちを迎え入れた。俺とメーティスはルシが座っている椅子の前に広がるテーブルの脇に設置してある4脚の椅子の内の右二脚に腰掛けた。その様子を見ていたアリスはあたふたしながら俺の反対側にある椅子に腰かけた。そして、
「あっ、あのブレインさん、これはどういうことですか?!」
「あっ、言ってなかったっけ?俺とルシは知り合いだってこと。」
俺は唐突にカミングアウトした。それを聞いていたメーティスは「それ言って大丈夫なの?」という顔をしてこっちを見た。「まぁ大丈夫でしょ。」と俺はメーティスに言った。
「そっ、そうだったんですか!えっ、えっ……」
アリスは言葉をつまらせ混乱していた。まぁ、普通の人がこれを知ったら混乱するわなという顔でルシは俺たちを見ていた。そして、紅茶を1口嗜むとルシがアリスの脇に座って事情を説明した。まぁ、もちろん嘘を混じえながら。それを聞いて納得したアリスは胸をなでおろし目の前に用意されていた紅茶を1口嗜んだ。
「あの学園長。私たちをここに呼んだ理由はなんですか?」
アリスはルシに質問すると、「みんな合格だからお祝いを兼ねて色々説明しなきゃねって思ったからだよ。」と答えた。それを聞いたアリスは「えぇ!合格ですか?!」と驚いて席を素早く立った。
「うん、合格だよ3人とも。」
と再び合格だとルシは言った。それを聞いたアリスは涙を流し合格を喜んだ。
「アリス、おめでとう。俺たちも合格出来たからこれからも一緒にいられるな!」
「はい!ブレインさん、本当に良かったです!」
と3人で合格という余韻に浸っているところにルシが「じゃあ合格者説明するから体育館行こうか。」と声をかける。アリスは涙を拭い「はい!」と快く返事をした。
「あっ、アリス。わりぃが先に体育館に行っててもらっていいか。学園長に話さなきゃ行けないことがあってな。」
「私も。」
俺とメーティスはアリスにそう言うとアリスは少し間を置いてから「わかりました!体育館で待ってますね。」と言うとルシは「おい、来てくれ。」と自室の前に待機させていた案内役の職員を呼び出した。呼び出しに応じて職員はアリスを体育館へと向かった。それを確認した俺とメーティスとルシは再び椅子に座った。シーンと静まり返った部屋で、
「なぁ、ルシ。いつからこの部屋は物騒なところになっちまった?」
「いや、物騒なところにしたつもりは無いね。ちょうどカーペットを白から赤色に変えようと思っていたけど……まぁ丁度いいかな。」
と会話をしているとルシの背後に短剣を持った男が現れ、ルシの首目掛けて短剣を突き刺す……が、ルシはそれを回避し逆に短剣を持った男が首から血を吹き出して白いカーペットの上に倒れる。
「うーん……やっぱり赤色のカーペットは変かな?」
ルシは倒れた男が白いカーペットの上で血を滲ませているのを見てそういった。すると、窓やドアからフードを深く被った奴ら30名ほど侵入してきた。
「全く、お客さんを沢山呼びすぎだよ、ルシ。……まぁ、俺は優しいから丁重におもてなししてあげるけどな。」
俺は肩を回し、攻めてきたヤツらに戦闘態勢をとった。
「これより作戦αを開始する。」
フードを被ったやつの先頭に立っている奴がそう言うと、そいつの後ろにいた奴らは各々の武器を構えて突撃してきた。
「左の10人は任せるぞ、メーティス。」
「了解、お兄ちゃん。」
「ルシは奴らのリーダーらしき奴を頼むよ。」
「OK!翔太くん!任せといて!」
戦略が決まり俺たちは仕掛けてきたフード集団との戦闘を開始した。
第七章 合格発表と作戦α ー完ー