クラス最強となった俺が二度目の転生をして、平凡(?)な学園生活を送る俺物語 作:渡月 夢幻
〜第九章 磨羯の道を踏み外し男、クレバー・デリトール〜
話は一度妖精の上位存在である精霊の住む世界《神聖界域》に移る。ここは前世のブレインが神に対抗する力を手に入れる際に干渉した場所である。この神聖界域は妖精族の住む国の西側に位置しており、たどり着くのがとても困難なところにある。
「おや、主らよ。久しぶりじゃ!妾は神皇女・ミカエルよ。主らとは前世のシャトウを見守り以来じゃな!いやぁ〜シャトウが妾の神域に触れた時がつい最近のように思えるのじゃ!それはそうと妾はの予想だとシャトウは今世でも色々ありそうじゃな……」
と和室らしき場所にゴロゴロと寝転がり煎餅をボリボリと食べながらこちらに話しかけてくる紅蓮の髪色をしたミカエルがいた。すると、自堕落な生活を送るミカエルに翠色の髪で凛としたポニーテールのガブリエルがミカエルの頭を軽く叩き、喝を入れた。
「ミカエル、翔太くんのことが気になるのは分かるけど、仕事してください、仕事。」
「分かっとるのじゃ、分かっとるよガブリエル。妾とて働かなきゃならないのは分かっておるが妾は今世で早く妾のスキル神似者を使って欲しいだけなのじゃ!」
ミカエルは駄々をこね始め畳の上で両手両足をジタバタさせた。その光景を見たガブリエルは「はぁ……」と溜息をつきミカエルの前に右手を大きく広げて、
「神聖風魔法 暴雷風《テンペスト》」
と和室全体を範囲とした上位の風魔法を放とうとした。それを見たミカエルはハッとしてその場に正座し、
「わっ、分かった!落ち着け、落ち着くのじゃ。」
と言ってガブリエルの魔法を解かせ、急いで仕事に取りかかった。それを見たガブリエルは何かを思い出し、
「そういえば、下界の要注意人物にクレバー・デリトールという奴が居るらしいですね。ちょっとそれに関しての報告書作っときますね。」
「了解じゃ、わざわざありがとなのじゃ、ガブリエル。」
ミカエルは一言お礼をして仕事を始めた。
クレバー・デリトール。彼は元XodiacKの1人であった。彼はXodiacKの磨羯宮と呼ばれる称号を得た男である。ここでXodiacKとXodiacKの序列システムについて話そう。XodiacKは今からおよそ1000年前に魔王ルシや竜王、妖精王、巨人王など各種族の王が作ったものである。彼らはここに選ばれた12の者は《星のように輝き、世界をより良い方向へ導く》ための12の者という意味を込めて作られた。よってこのXodiacKは全種族を力や誠実さや信頼などこの世に生きる者としての必要不可欠なことを数値化し昇順にした時の上位12名に与えられる位である。まぁ、このシステム上大体は己の力でのし上がってきた者が多い。十二宮にはそれぞれテーマのようなものがあり選ばれた12人はそのテーマに近しい宮を与えられる。白羊宮(熾天使《セラフィム》)、金牛宮(智天使《ケルビム》)、双児宮(座天使《スロウンズ》)、巨蟹宮(主天使《ドミニオンズ》)、獅子宮(力天使《ヴァーチャーズ》)、処女宮(能天使《パワーズ》)、天秤宮(権天使《プリシパリティーズ》)、天蠍宮(大天使《アークエンジェルズ》)、人馬宮(天使《エンジェルズ》)、磨羯宮(罪なき者《イノセンツ》)、宝瓶宮(殉教者《マーターズ》)、そして双魚宮(証聖者《コンフェッサーズ》)の12宮である。簡単にテーマを紹介すると、灼熱、知識、王座、支配、最強、能力、権力、浄化、正義、無罪、聖人、誠実の12個だ。そして、このテーマを極めた先に最終奥義を手に入れられる。ひとつ例を出すとすると、ブレインがイフリートと対峙した時に試験会場で放った「奇蹟の模倣者《プラエスティギアトレス》」だ。この魔法は獅子宮のテーマである《最強》を極めた者にしか使えない技である。そしてこのテーマの結果にたどり着いたブレインは「最強を手に入れれば、模倣者になれる。」と今世に転生して4年で密かに自室で呟いた。まぁ、ブレインがイーセンダルトの入学試験を受けるまでの話はまた別の機会に語るとしよう。
次はXodiacKの序列システムについて話そう。先ほどテーマに近しい宮を与えられた者は最下位である序列12位から始まる。そしてここから人道的な行いや戦い、民の信頼度などの功績に応じて位がどんどん上がる。またこのシステムには降格もある。先程も言ったようにXodiacKになるためには「全種族を力や誠実さや信頼などこの世に生きる者としての必要不可欠なことを数値化し昇順にした時の上位12名に与えられる位」であるので最下位に存在する者が第13位以下の者より劣る場合はXodiacKの位を剥奪される。そして剥奪されると次は第13位以下の中から剥奪された宮の条件を満たす者が新しいXodiacKとして加入する。これがこのシステムの全容だ。だが、このシステムには2つの特例がある。まず1つ目は永久的な位だ。詳しく説明するとXodiacKが創設された当時、もっと素晴らしい人物としてXodiacKの第1位を永久的に授けたいと各種族の王が満場一致で認めた人物に与えられるものである。それがシャトウである。そしてもう1つの特例は永久追放である。これはXodiacKに選ばれたが悪に染まり、国を崩壊に導きそうになった者を各種族の王の権限で追放するものである。そしてここからは後者の特例が施行された男、クレバー・デリトールの事件発生から脱獄までの過去を振り返る話である。
これは今から409年前、つまり創設されてから591年の時行使された。その事件がクレバー国家転覆事件だ。これは当時XodiacK2位のクレバー・デリトールが中央都市ベルセリオンの郊外のとある町でアンデッドの研究を完成させた。そして翌日の早朝4時に彼の空間魔法を使い、この世界の墓に埋められた死体のうち約4割を自身の元に集め研究で生み出したアンデッド生成術を行い約100万のアンデッドを引き連れ、死者の行進曲《デスマーチ》と称してベルセリオンに侵攻を開始した。クレバーがアンデッドを生成した場所からベルセリオンまでは10kmほどあり、死者の行進曲《デスマーチ》が到達するのは約3時間後であった。それをいち早く察した魔王ルシは、急いで幹部を招集しベルセリオン防衛戦について会議を始めわずか1時間ほどで会議を終え即座に行動へと移した。イフリート、オノケリスは死者の行進曲《デスマーチ》の進路上に点在する町に住む者たちを避難させ、メフィスト、ルサールカ、ルシは防衛戦に向けて戦力を固めていた。そして2時間後ベルセリオンにクレバー率いる死者の行進曲《デスマーチ》が着くとそうそうに戦闘が勃発した。相手はアンデッドであるがそのほとんどが竜種の者が多かった。しかも、サポート面に長けている妖精族や防御力が高いガーディアンと多種多様なアンデッドか存在しているので全てを殲滅するのに少し苦戦を強いられた。30分もすると戦局がクレバーの軍に傾いてきてルシが率いる迎撃部隊の雲行きが怪しくなってきた。「私たちだけじゃ耐えきれないか。」とルシが呟くとルシの軍の後方から大きな炎のブレスと光魔法、聖なる雨《ホーリーレイン》共に援軍が現れた。その援軍は竜王と妖精王が率いていた。
「同胞のアンデッドの処理は任せてくれ。」
竜王がそう言うと、竜王の後に続いて炎竜や地竜、水竜と言った各属性の竜が王と共に竜種のアンデッドの迎撃を始めた。
「僕たちのこと、もうちょっと頼ってもいいんじゃない?ルシちゃん。妖精アンデッドは任せてね。」
とルシに一言告げると妖精王は妖精の羽を大きく広げて妖精アンデッドの方へと土煙を立て向かっていった。妖精王が飛び去っていくのを見届けたルシは、
「全く……私はとても良い仲間を持ったな……」
と呟き「援軍が駆けつけてくれた!皆の者、気合い入れていくぞ!」と魔王としての風格を見せてルシ自ら敵の陣へと突っ込んでいった。その様子に心打たれた兵士たちは「うぉぉお!」と雄叫びを上げルシの後に続いた。
「おい、嘘だろ……俺の俺が作り上げた軍が滅ぼされていく……チクショー!」
大量のアンデッドを従えていたクレバーは自身の軍が援軍により壊滅し始めたのを目の当たりにして自身の顔面を爪で縦に引っ掻いて動揺を見せた。
「これはもう撤退するしかねぇな……くそ、俺はXodiacKの序列2位なのに……。」
と呟き空間魔法を発動させ逃げようとすると、「待てぇぇぇえ!」と言う声と共に闇属性の槍がクレバーに向かって突き進んできた。クレバーは「あ?」と反応し後ろを振り向くが、もう既に目の前に槍があり回避も空間魔法でどこかへ飛ばすこともできずに自身の左肩を貫通した。ありえないほどの激痛を体験したクレバーは「うわぁぁぁあ!俺の肩がぁぁぁあ!」と叫び、その場に横転した。槍で貫通した左肩にはぽっかりと穴が空いて静脈が派手に避けていて、暗赤色の血が地面の草々を赤で侵食していた。その上には動脈から出る鮮やかで紅い血が暗赤色の血をコーティングしていた。左肩に空いた穴から冷たい風が吹き抜け、身体のうちから2倍、3倍にも痛覚を刺激される。地獄の苦しみを味わったクレバーは発狂と痛みによりその場で気絶した。それを見たルシは「これで一安心か。」と胸を撫で下ろすがアンデッドはまだ生存していて戦いの終わりはまだ告げられていなかった。しかし、時間が経つごとに徐々にクレバーのアンデッドは弱体化して20分程で殲滅した。それを確認したルシは妖精王と竜王を集めて「援軍ありがとうね。」と感謝し労った。そして3人はクレバーを囲んで三属性で拘束しベルセリオンの回復魔道士に左肩を回復させ、牢獄に一時的に収監した。そして翌日、クレバーとシャトウを除いたXodiacKのメンバーが招集され今回の出来事を説明した。案の定、序列2位のクレバーがこんな騒動を起こすと思っていなかった他のメンバーは驚愕していた。
「まさか、クレバーさんがこんなことをするとは思いませんでしたわ。」
「僕もクレバーがそんなことするとは思わなかったよ、なにかの間違えとかじゃないよね?」
「同じXodiacKとして恥ずかしいな……これで国民に不安感を与えてしまうぞ。」
序列第7位双魚宮の妖精族マエル、序列第9位巨蟹宮の巨人族ジャイホーン、序列第11位宝瓶宮海の民ホエルガンドが口々に言う。
「まぁ、起きてしまったことは仕方がない。この件はしっかり国民に報じ除名し国外追放にしよう。」
ルシがその場を仕切る形で事を収めた。
翌日、このクレバー騒動は世界中に知らされた。案の定、世論の反応は厳しいものであり、一時的にXodiacKの権威も下がった。だが、クレバー以外のXodiacKが各地を周り謝罪や復興作業などの従事活動をした事によりXodiacKの権威もだんだんと回復し、国民の信用も取り戻すことが出来た。元凶であるクレバーはXodiacKのメンバーしか知らない地下深くの収容所にただ一人暗くて少しジメッとした質素な所に収容されていた。彼は厚さ10cmの魔封じの手錠を両手に填めて鎖で左右の壁に固定されていた。彼にはしっかりと3回の食事を与えていたが、時々彼自身が飯を拒むことがあり、少しずつ痩せ細っていった。やがて、彼の姿は置き人形のようにも見えた。そして収容から3年ほどが経ち、彼にも脱獄の意思がないことがあからさまに分かり警備をしていたXodiacKの序列5位、双児宮ルスの部下の2名は警戒を少し怠っていた。因みに、序列5位のルスはこの世界に新しく設置された世界魔法司法機関WMJ(World Magic Judiciary)の最高執行官の1人である。彼の性格はとても勤勉で法にうるさく、自他に厳しい竜人である。彼の姿はほとんど人間と変わらずよくメガネを着用している。そんな中、彼はいつも通りクレバーの収容中の様子で異常が無いことを確認し終え部下に任せて自身の仕事をしに世界魔法司法機関の本部に戻った時に起こった。彼が収容所を出てから30分後彼の元に脱獄を知らせる警報が届いた。急いで収容所へ戻ると、そこには一人のフードを被った女性が居た。顔は見えなく、また容姿も収容所の暗さとフードが相まってはっきりしない。
「おい、そこの貴様!何をしている!今すぐ両手を上げてフードを下ろせ。」
ルスは強い口調でその女に警告する。すると、ルスの部下が彼の元に駆け寄ってくる。近寄ってくる部下2人を見てルスは「こいつらはなぜあの女を捕まえないのか。」と疑問に思った。そして彼の思考は加速しある一つの結論にたどり着いた。そう、それは《2人ともあの女に操られている》という事だ。彼は咄嗟に2人の部下から距離取り、
「光魔法、閃光拘束《フラッシュバインド》!」
と言って魔法を発動させる。彼が発動させた魔法は一瞬で彼の2人の部下の手首、足首、そして胴体に巻き付き行動不能にさせる。2人はジタバタし、なんとか拘束を解こうとするが魔力量が桁違いで解くことが出来なかった。ルスは彼らの処理を終えフードの女とクレバーの元に走っていく。それに気づいた女は小声で、
「パワー……アップ……」
と言った。あまりの小声でルスにはなんと言っているか聞こえなかった。そして自身の射程範囲内に侵入させることが出来たルスは、
「光魔法、発光《ルミナス》」
を使用し女の招待を探ろうとした。しかし彼女はクレバーを盾にして自身の顔を見せなかった。ルスは「チッ」と舌打ちし彼女のフードを剥がそうと距離を詰めようとする。すると、ルスは背後から両腕を捕まれそのままの勢いで地面に倒れた。「誰だ?」と思い後ろを振り向くとそこには先程捕らえた2人の部下がいた。
「貴様ら、離せ!」
ルスは訴えかけるがその声は届かなかった。ルスは力ずくで抜け出そうとするが彼らの力が異常に跳ね上がっていて抜け出せない。
「くそっ、付与魔法か?」
とルスは呟き抵抗する。すると痩せ細ったクレバーがルスの前に近づいてきて、
「残念だったな、ルス。俺は体を以前より強くしてお前たちを復讐する。もちろん、俺の意見に賛同する奴らもかき集めてな。楽しみに待ってるんだな、ルス。」
そう言ってクレバー奥にいる女の元に戻っていく。そして彼はルスに「バイバイ」と言って軽く手を振る。
「逃がしてたまるかぁぁあ!」
ルスは声を上げて強引に2人の部下の拘束を解く。予想外の底力に驚いた女とクレバーは急いで転送魔法を起動させる。
「まさかこれを使う羽目になるとは……」
ルスはそう呟くとその場で立ち止まり目を瞑る。そして、
「影魔法、影縫余弦《かげぬい》」
と魔法を唱えると彼の影がひとりでに動きだし、女とクレバーの元へ高速移動する。そして彼らの目の前で影から飛び出し影の矢で攻撃する。ホーミングのような軌道を描いて攻撃する影縫余弦はことごとく彼らに当たる。特に全盛期の力をほとんど使えないクレバーに。女の方は魔法を使いなんとか影の矢を弾き返す。だが、全てを防ぎきれず1本の矢が彼女の右脇腹に直撃する。
「うっ、ぅぅぅう!」
脇腹に刺さった矢に唸り、その場に跪く。これは好機だと考えたルスは急いで奴らの元に駆け寄る。だが彼女は力を振り絞って、
「捕まえて……自爆……」
少し吐血しながら呟く。すると2人の部下は直ぐに彼女の要望に答え、ルスの元に駆け寄る。またもやルスは捕まってしまい、ジタバタする。
「くそっ、待てぇ!」
ルスが叫ぶ。だが、彼の声は届かず、奴らの転送魔法は起動しその場から姿を消す。その瞬間、ルスを押えていた2人の部下の体がだんだんと熱を帯び体温が上昇していく。それに気づいたルスは、
「まずいっ!」
そう言って「光魔法、光の包容《ライトベール》」を発動させる。すると彼自身を覆う光の膜が発生した。やがて、部下の体は発光し体内に溜め込んだエネルギーがドゴォンという大きな音を立てて爆発した。辺りには爆発による煙が発生し視界がぼやける。やがて煙は収まり光の包容《ライトベール》で身を守っていたルスが起き上がる。そして、彼はただ呆然としながら地上へと向かう。その途中で彼は壁を思い切り殴り「畜生……」と悲しみ嘆いた。
その翌日、彼は2人の部下の葬儀を行い、今回のクレバーの脱獄についての報告書をまとめた。
これがXodiacKの磨羯の道を外れた男、クレバー・デリトールの過去である。
第九章 磨羯の道を踏み外し男、クレバー・デリトール ー完ー