女神様の御心のままに   作:テポドン

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 今回は約6000文字となっております。

 読んでいただき、ありがとうございます。
 感想、評価を下さいました皆様、重ねてお礼申し上げます。

 ありがとうございます。

 2022/08/22 爆弾消滅時の文言を加筆致しました。


3話 大抗争、始動

 

 『大抗争』二時間前━━

 

 各【ファミリア】襲撃の準備を着々と済ませていき、あと数十分もすれば完了するだろうというところまで来ていた。

 

 そして準備が着々と進む中、【アストレアファミリア】、【ガネーシャファミリア】の幹部たちが最後の作戦のすり合わせを行っていた。

 

「━━以上で作戦の確認を終了するが、アリーゼ。君たちの団長はどこに行ったのだ?」

 

「周囲の確認をしてくると言って家屋の上をぴょんぴょん跳んでいったわ。」

 

「この間の会議から何か考え込んでいる様子でしたから何か思うところあるのではないでしょうか?」

 

 シャクティの質問にアリーゼが答え、輝夜が続く。

 まあ、とシャクティが一言漏らし、

 

星乙女の天秤(アストライア)に限ってミスなどはないと思うが……「遅れてすみません」

 

 白が主体の全身鎧(フルプレート)に身を包み、背に二本の槍を携えた男が音もなく家屋から降ってきた。

 

 「音を起てるわけにもいきませんので魔法にて音を【消滅()】していました。」

 

「遅れた身でこのようなことを聞くのも失礼な話ですが、話し合いはどこまで進みましたか?」

 

 質問に対して答えるのはシャクティ

 

「ああ、丁度終わったところだ。変わりなく刻限と同時に襲撃、倒したものは捕縛だ。」

 

 一拍置いて青年が作戦を度外視した話をし始めた。

 

「刻限前に敵拠点から100M(メドル)以上後退してください。━━━━魔法を落としますので。」

 

 一同は驚愕。

 この男は一体何を言っているのだろう。そのような視線が青年を射貫く。

 

「何を言っている?何のつもりだ?」

 

 皆が一様に思ったであろうことを代表してシャクティが怪訝な表情で尋ねた。

 

「言葉通りです。拠点に向かって俺の魔法を敵拠点にぶつけますので退避してください。」

 

 青年は質問の意図がわからないのか先程と同じような発言をした。

 

「その意味を聞いている!何故お前は街に魔法を放つ!?その必要性がどこにある!?街を破壊するつもりなのか!?」

 

 シャクティは都市を警備隊する者の代表と言っても過言ではない。それ故に街を破壊する行為は看過出来ない。

 

 ましてや、これまで共に都市の為、市民の為に志を同じくしていた【ファミリア】の団長から突然の実質破壊宣言。当然認めるわけにはいかない。

 

「理解していただかなくても構いません。ただ突入したとして相手が爆弾でも仕掛けていたらどうしますか?起動されれば全員死にますよ?」

 

「それなら起爆される前に…「起爆される前に制圧をする。それだけで済むとお思いですか?奴等がそれだけで済ませてくれるはずがない。」

 

「奴等も馬鹿ではない。この感じからするに、これから攻められることを察知しているでしょう。此方は第一級冒険者(レベル6・レベル5)を含んだ大連合。奴等は遮二無二抵抗してくるでしょう。そして人が嫌がることをさせたら奴等の右に出る者はいません。」

 

「俺の予想ですが奴等━━━━人間爆弾。自決覚悟で突っ込んできますよ?」

 

「武装もしていない人畜無害そうな女、子供に爆弾をくくりつけて助けを乞うてきて、手を差し伸べたら爆発。」

 

 一同騒然。

 口々にそこまでしてくるのか。流石の奴等もそんな非道なことは…等と聞こえてくる。

 そして青年は続ける。

 

「何なら試してみますか?俺が魔法を打たず、突撃して本当に人間爆弾を仕掛けてくるか、否か。」

 

「それが原因で貴女の(アーディ)が死ぬかもしれない。貴女の団員が死ぬかもしれない。【アストレアファミリア(うちの子)】が死ぬかもしれない。」

 

「きっと貴女は後悔しますよ?手心を加えて捕縛なんて真似をしなければよかったと。」

 

「それ故に提案です。」

 

「刻限前に後退して下さいませんか?象神の杖(アンクーシャ)殿。

 貴女方は手を汚さなくて良い。心を痛めなくて良い。」

 

「何故なら俺という愚か者が勝手な行動を取ったのだから。」

 

「この一連の騒動が終結した後、都市の破壊者として裁いていただいても構わない。」

 

「なのでどうか()に従ってはいただけませんでしょうか?」

 

 青年は地に膝を付き頭を下げた。所謂、土下座である。

 

「くっ……【ガネーシャファミリア】総員に告げる!刻限前に敵拠点から100M(メドル)以上退避!……我々は下がる。自分の団員たちには自身で説得しろ。」

 

「ありがとうございます。シャクティさん。」

 

 青年は立ち上がり、【アストレアファミリア】の面々の前に行く。

 

「聞いた通りお前……「「断る!!」」……だよな。」

 

 青年の予想通りであった。

 

「…聞けおま……「「断る!!!!」」……」

 

 頑固娘たちは折れない。

 青年はふぅと、一息吐いてその場に腰を下ろして胡座をかく。

 

「アリーゼ、輝夜、ライラ、リュー、ノイン、ネーゼ聞いてくれ。」

 

「俺はこれから手を汚す。殺人という正義に反する行為をする。そんな姿をお前たちには見せたくないんだ。」

 

「発動すればすぐに終わる。お前たちは後ろを向いていてくれればいいんだ。だから頼むよ。」

 

 彼なりの精一杯の懇願だった。

 殺人に加担なんてしてしまえば彼女たちの高潔な魂がくすんでしまう。加担してしまったという枷を背負わせたくない。

 ただその一心だった。

 

「格好付けているつもりかしら団長!」

「そうだな。あれは自己犠牲出来る俺、かっこいいって思ってる男の顔だ。」

「かえって格好わりいな。」

「「わかるー」」

「……団長。」

 

 「「「「「私たちは【ファミリア(家族)】でしょうが!」」」」」

 

 憤慨したような呆れたような表情で彼女たちが叫ぶ。

 しかしリューだけは叫ばず、目を伏せている。

 

「団長の罪なら【ファミリア(家族)】の罪よ!そのくらい一緒に背負ってあげるわ。」

「すぐ後ろで見ていてやる。」

「そりゃいい。久々に見れんのか団長の【一撃】」

「いつぶりだろうね。」

「覚えてないや。」

 

「……後悔しても知らないぞ?」

 

 彼なりの最終警告のつもりだった。

 しかし彼女たちには全く無意味だったらしく、やれるものならやってみなさいと返ってきた。

 

「…リュー、お前は下がってていいんだぞ?」

 

 その一言に彼女はびくりと肩を揺らした。

 

「そんな表情で戦場に出る必要はないぞ?精神的に不安定なやつから戦場では命を落としていく。

 だからリューはアストレア様のところに戻って護衛をしてきなさい。

 死なれるのは皆、本望じゃあない。」

 

「団長は…団長にとっての正義とは何ですか?」

 

 思い詰めている。そして苦しんでいる。弱々しい声音。

 私に答えをくれと、藁にもすがる思いでの問いなのだろう。

 

「正義?何だそんなことか。」

 

 彼女は、え?とだけ漏らす。

 

「俺にとっての正義は偽善だよ。」

 

「上辺だけ繕って正しいと思うことに突き進む。その過程で人に何と言われても関係ない。人には人の正義がある。」

 

「自分の正義の為に誰かが傷付いたとする。だが、それによって救われる人もいる。全ての人へ正義の名の元に平等に救いの手を与える。聞こえはいいが、難しいぞ?」

 

「意地悪な神様に何か言われたのか?だったらこう言ってやれ。『私が正しいと思ったことが正義だ。誰に何と言われようとも知ったことではない。』って。」

 

「何かあっても俺が【ファミリア(俺たち)が】助けるし、助けてくれる。今回の俺が助けて貰ったみたいにな。」

 

「だから突っ走れ、リュー・リオン。以上!」

 

「…団長、ありがとう。

 それと私もこの場に皆と残ります。

 私たちは【家族】なのだから。」

 

 ああ、と一言だけ返す。

 

 

~~テオ side~~

 

 ━━━大抗争 始動前

 

「さて、これから詠唱を始める訳だが本当にいいんだな?」

 

 口々にしつこいと言う。

 本当に強かな娘たちだ。

 

「リューは初めて見るだろうからよく見ておけ。そして衝撃で吹っ飛ばされないように。」

 

 輝夜にわかったか青二才と煽られるリュー。

 それにムキになって応答するリュー。

 

「それじゃあ、始めようか。」

 

 親弟(あい)を滅する我が身の原罪】

  

 今回の俺の行いを正義と言う気は毛頭ない。

 

 【失墜する平穏、虚無の大地、愚者の慟哭】

 

 この拠点内にいる者たちからは死して尚、恨まれることだろう

 

 【神の降誕、有翼(ゆうよく)への憧憬、星の慈悲、己の全てを賭して祈れ】

 

 だが、恨んでもらって構わない。

 

 天賦(てんぷ)に愛されし恩寵者よ。星に殉ずる者と成り此処に示せ】

 

 偉そうなことを言うが俺の大切なものの為に礎となってくれ。

 

 【喰らい滅ぼせ。神愛(あい)に報いて万物を無に帰せ】

 

 すまない。そしてさようなら。

 

 【穿て、星幽界】

 

 

 

星幽界の一撃(アストラル・スマイト)

 

 敵拠点に光が堕ちた。

 

~~テオ side out~~

 

~~シャクティ side~~

 

 全く、あの男め。

 自分だけ悪者になろうとしたな。

 私よりも若い者に気を遣わせてしまうとは何と不甲斐ない。

 

 自身を裁けなどと抜かしていたがそのようなことをするわけないであろう。

 奴なりに我々が傷付かない方法を選んだのだろう。

 現最強の一角が地に伏せて頭を下げたのだ、断るわけにはいかない。

 

 復興事業には率先して参加してもらって精算してもらうとしよう。

 

 それにしても奴め。

 自らの【ファミリア】の子達を突っぱねようとしたが、思いの外強かったのだろう。失敗したと見られる。

 それどころかあれは説教されたな?

 

 ふふっ。あの強かな娘たちの前では第一級冒険者(レベル6)も形無しだな。

 

 さて、そろそろ奴の詠唱が始まる頃だろう。

 

「アーディ、そして【ファミリア】の者たちよ、よく見ておくといい。現都市最強の魔法を。」

 

 お手並み拝見といこうか?

 あの猛者(オッタル)を以てして、直撃すれば一撃で消し飛ぶと言わしめる魔法の威力を。

  

 闇派閥(イヴィルス)の拠点の真上に魔方陣が浮かび上がってきた。

 中央の巨大な魔方陣の周辺に八つの小さな魔方陣が浮かび上がる。

 

 周囲の魔方陣が中央に寄っていき、混ざり合う。

 そうして出現した白銀の扉。美しい。だが、どこか悍ましさすら感じられる。

 

 最後の一節を口にすると同時に空に浮かび上がった扉が開かれる。

 魔法名を告げると光の柱が墜ちてきた。

 

 地表に当たった瞬間、強い衝撃が【ガネーシャファミリア(私たち)】を襲った。100M(メドル)以上離れているのにこの衝撃だ。あまりの衝撃に顔を手で覆ってしまう。

 

 爆心地から更に近くにいる【アストレアファミリア】が受ける衝撃はこれの比ではないだろう。

 

 衝撃と光が収まって、敵拠点を確認しようと目を向けて驚愕した。周囲50M(メドル)以上が抉り取られたかのように無くなっていた。人の魂なのか、魔法の残滓なのか天空へ昇る光の粒子だけを残して。

 

~~シャクティ side out~~

 

 

 

 魔法の威力を見て、【アストレアファミリア】の面々は愕然としていた。

 随分前に見たもの達からは威力が違いすぎていて最早別の魔法にしか見えなかった。

 

 初めてこの魔法を見たエルフの彼女は、これが【アストレアファミリア(私たち)】の団長……と誇らしく思うと同時に微かな恐怖を抱いた。

 

「事前にウダイオスで試し打ちしておいて良かった。昔よりも威力が上がっていたから知らないで打ったら皆吹っ飛んでた。」

 

 一個人が扱うには度が過ぎた威力である。

 

「お前たちもレベル6、レベル5になればこのくらい出来るようになる。それにその内俺が神秘の【アビリティ】を手に入れて、魔導書(グリモア)を作れるようなってみせるから。そうすればお前たちも魔法使い放題だ。」

 

 と、言ってのけるが、そんな簡単な話ではない。

 ただ、彼に着いて行けば強者(かれ)がいる世界まで引っ張りあげてくれる。彼女たちはそんな予感がした。

 

━━━先ほどの余韻も醒めきらない内に青年が【アストレアファミリア】【ガネーシャファミリア】に指示を出す。

 

「全員周囲の警戒に当たってくれ!

 二人以上で行動して、死角を作るな!

 黒装束、白装束を発見次第、無力化すること!

 突っ込んでくるだけの奴等は自爆特攻の可能性が高い!脚を狙って機動力を落とせ!

 奴等は女、子供すら利用してくる。決して情に絆されるな!

 でなければ全員死ぬぞ!」

 

 「以上だ!

 連合各員の武運を祈る!

 各自、散開!」

 

 両【ファミリア】一斉に行動を開始する。

 

 彼は十分と言っていいほど目立つ行動をした。

 あとはそれを見た主犯や怪物たちが来てくれるのを待つ。

 

 来ないならば来ないで、自身も周囲の警戒に当たるだけだ。

 情に絆されるなとは言ったが、きっとそれは無理だ。手を下すことに躊躇うはず。その時は自ら無力化しよう。

 

 だが、来るならば来い。必ず打倒してやる。と強い意思を持ってその場に留まった。

 

 

 大抗争が始動してから少しして━━━

 

 連合(アストレア・ガネーシャ)【ファミリア】が担当しているエリアより少し離れた所から爆発音が響いた。

 

 テオは顔を蒼くし、急いで爆発地点へ駆け出す。

 主犯たちを待つという考えを捨てた。

 

 最初の爆発地点へ向かう最中、至るところから爆発が発生する。立ち止まり都市を見渡す。

 

 都市中から立ち昇る黒煙、轟々と燃え上がる炎。

 

 都市が地獄と化して行く。

 

 彼は一人でも多く市民を、冒険者を助けるため駆け回る。すれ違いざまに白、黒装束たちの脚を槍で打ち砕いていく。

 

 機動力を落とせば無力化できる。そう思い込んでいたが現実はそう甘くなかった。

 動けないと悟ると誰も巻き込めないのにその場で自爆した。それが連鎖し、結果市民たちを巻き込んだ。

 

 奴等は動けなくなるか、死を悟ると問答無用で自爆する。

 どうすれば良い。彼は思考を回す。

 

 そして結論に辿り着く。

 没収してしまえばいい。

 自身にはそれが出来る魔法がある。

 

 その結果自身が爆発を受け続けようと一人でも守れるならそれで良い。

 

 決心し、再度駆け出す。

 直後、悲鳴にも似たシャクティの(アーディ)を呼ぶ声が聞こえた。

 

 彼は思い切り地面を蹴り、跳んだ。

 レベル6、【ステイタス】オールSの跳躍。

 

 彼は地上を見下ろし、即座に視界に捕らえた。

 

 白装束を着た少女であろう。その少女に対して膝を着いて両手を開いて迎え入れるような素振りを見せている。

 

 シャクティは闇派閥(イヴィルス)に囲まれていて近寄れないでいる。

 (アーディ)の名を何度も叫ぶが聞き入れてもらえていない。

 

 彼は詠唱を開始した。

 

 【生者の仇篝(あだかがり)、死者の怨嗟(えんさ)

 

 【堕落を憂い、豊穣(ほうじょう)を想う】

 

 【正義の威光、秩序の安寧、其が(くだ)るは女神の法】

 【我は執行者、(いづる)は天秤】

 

 【其の罪を以て此処に顕現(おろ)す】

 

 【告げる】

 

 

星乙女の天秤(アストライア)

 

 この魔法は対象が多ければ多いほど巨大化する。

 今回出現した天秤のサイズは優に10M(メドル)を超えているだろう。

 

 その対象人数は凡そ、百以上。

 

 天秤の出現と同時に彼が告げる。

 

「汝等の罪に、神罰を下す!!」

 

「爆破装置を没収する!!」

 

 没収した100以上もの装置が目の前に出現する

 あとは魔法で消せば被害は無くなる。

 

 火炎石と撃鉄装置で作成された爆弾。

 既に起動されたものもある。

 

 畜生。起動したものがあちこちに散らばり過ぎだ。

 心の中で悪態をつく。

 

 「【消滅(エリミネーション)……駄目だ。間に合わない。」

 

 魔法を発動するも間に合わず、100以上の爆弾が彼に炸裂する。

 

 ━━━━━━━衝撃。

 

 少年が数十分前に放った魔法には及ばないものの強い衝撃が辺りを襲った。

 

 あまりに強い衝撃。

 炸裂し続ける爆発の中、彼は意識を落とした。

 そして、地に叩き付けられた。

 

 

 ━━━━━━━その日の夜。

 

 ━━━━━━━正義は失墜し、悪が嗤った。

 

 

 

 

 

 





 読んで下さいまして、ありがとうございます。

 4話は明日には投稿したいと考えております。

 また、お手数とは存じますが、感想等いただければ幸いでございます。
 
 精一杯、制作して参りますので、今後もよろしくお願い申し上げます。

 
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