二柱の巨人が並び立つ。
片や、銀の体躯に鮮やかな赤と紫のラインが入った男の巨人。容姿端麗にして眉目秀麗、男性的な肉体でありながら女性的な美しさを併せ持つその姿は、人の世よりはるかに高い次元から降臨された神々しい存在であることを理解させられる。
神の作り出した造形美とはまさに彼のためにある言葉なのだろう。真実、彼は遥かなるオリオンの座より飛来した神の一柱であり、旧き支配者を封じた光の戦士の一人。
その名はティガ。超古代の言語で3を意味する名を持つ、大悟達が三位一体となった光の巨人。
片や、曇天の空の色に近い黒色を帯びた銀色の体躯に暗い金色のラインが入った女の巨人。胸を囲うようなたすき掛けのプロテクターを身につけており、ただでさえ豊満な胸が強調されて妖艶または妖麗な雰囲気を放っている。
彼女こそが古き女神クティーラの巨人態。親である
光と闇、本来相容れぬ敵同士でありながら二柱の巨人は共通の敵を共に見据えていた。
「オオオオオオオオォォォッ!!!」
ゆったりとヒレを棚引かせて黄昏の空を幽玄に泳ぐ報復の獣が咆哮を上げる。常人であれば不定の狂気に陥るほどの
そもそも
シャラン! シャラン! シャラン!
報復の獣は、鈴の音と共に小型の分身を無数に作り出す。小型と言っても普通に人間以上のサイズがある報復の獣の分身は、悲鳴のような鳴き声と共にティガを目掛けて一直線に突き進む。口腔に当たる部分で一つ目が蠢いている。
獣の分身を迎え撃ったのは魔剣アイゾードを構えた闇の巨人カミーラだ。鞭に形状を変化させたアイゾードを振るうことで迫ってきた獣の分身をまとめて薙ぎ払う。
技能:【古き血族】
カミーラ :SAN45- 1=44
「テヤァ! ハァ! タァァァ!!」
同時に、気合の声と共に飛び出したティガが真っ直ぐ報復の獣に殴りかかる。しかし、その拳は報復の獣が発生させた半透明の障壁に防がれてしまう。ならばと体を回転させながら螺旋手刀打ちを叩き込むものの、やはり報復の獣を覆う障壁はびくともしない。
報復の獣は口腔に紫色の光を収束させる。至近距離で神通力の高まりを目にしたティガは、咄嗟に横に転がることで報復の獣の射線上から逃れる。
報復の獣の口腔から放たれた紫の光線は遠く離れた山の一つを消し飛ばした。その様子を横目に窺いながらも、ティガの
少なくとも、このまま殴っているだけではあの障壁を突破するのは困難だろう。不可能とは言わないが、あまりに非効率であると大悟達は結論付けた。
『あの障壁…面倒だな』
『はい! すごくかたいです!』
『大悟さん! ここは俺の力を使ってください!』
『分かった!』
ティガは握り拳を額の前で交差すると、一気に開くことでその姿を変貌させる。額の水晶、ティガクリスタルが赤い光を放ち、体中に走る紫色のラインが赤色に変化する。
『それならアタシもコイツを使うとするか』
その様子を見て、姫子が闇の中から取り出したのは1枚のカードだ。父なる
パワーに特化した形態に変化した二柱は砂塵を上げながら報復の獣に向けて駆け出した。報復の獣は無数の分身を撃ち出すが、その程度で怯むような二柱ではない。ティガが右手から速射した手裏剣状のビーム光線【ハンドスラッシュ】で撃ち落とす。
技能:【紅蓮】
ティガ :MP 38- 4=34
カミーラ :MP 99- 4=95
技能:【古き血族】
カミーラ :SAN44- 1=43
技能:【光を継ぐもの】
ティガ :MP 34+ 2=36
技能:【銀の兆し】
ティガ :MP 36+ 1=37
技能:【超能力】
ティガ :MP 37+ 1=38
技能:【古き血族】
カミーラ :MP 95+ 2=97
その拳に【紅蓮】の炎を滾らせた二柱は【疾風怒濤】の要領で同時に殴りかかる。【ティガ・パワーパンチ】と【ラムースダガーム】を正面から受け止めた障壁は一瞬にして粉々に砕け散り、そのまま報復の獣の顔面にWパンチが突き刺さる。
それほどの攻撃を受けた報復の獣がただで済むはずがない。ドゴン!! と鈍い音を立てて数十メートル後ろまで吹き飛ばされた。
『おっと、逃さないぜ』
報復の獣に光の鞭が蛇のように絡みつく。慣性のままに進もうとする報復の獣をトルネードタイプの膂力で強引に引き戻し、戻ってきた報復の獣を肘打ちで地面に叩き落とす。倒れ伏した報復の獣を抱え上げるとそのまま抑え込む。触れているところから負の想念が侵食してくるが、古き血族にして闇の巨人であるカミーラに精神汚染が通用するはずもない。
ティガは完全に動きを抑え込まれた報復の獣にドシドシと歩み寄ると、その口吻を強引に割り開き体の中に右腕を突き入れる。
「あれは…なにを…?」
「お母さんを探しているんだ……ヒバナ! 私たちもお母さんを探しましょう!」
「ええ、わかったわ」
二柱の巨人と報復の獣の戦いを呆然と眺めていたヒバナとヒガナは、報復の獣の体内を弄るティガの意図を察すると神通力を高め合う。双子の姉妹は互いのイメージを交差させて、歪んだ魂のエネルギーに覆われたお母さんの居場所を探し始める。
巨人たちが自らの核を奪おうとしているのを察したのか。報復の獣はその内に秘めた魂のエネルギーを自らの体内で爆発させた。
「アァァァッ!?」
『おまえら! チッ、こいつ……!?』
「オオオォォォォォッ!!!」
『グッ! ……やってくれたな!』
神通力の爆発をゼロ距離で受けたティガは悲鳴を上げて爆風と一緒に吹き飛んだ。爆発をモロに受けたティガに気を取られたカミーラもまた、報復の獣の分身の自爆特攻を受け報復の獣から引き剥がされてしまう。
技能:【古き血族】
カミーラ :MP 97+ 2=99
『…厄介ですね。倒すだけならそこまで難しくはありませんが…』
『ダメです! このままではヒバナさんとヒガナさんのお母さんを巻き込んでしまいます!』
凛太郎の言う通り、報復の獣の討伐自体はそれほど難しいことではない。先程、カミーラが抑え込んでいる内に必殺の一撃を放てば、それだけで終わっていた。この地球や宇宙を支配していた旧き支配者と、その支配者たちを封印した光の戦士の名は伊達ではない。
問題は、報復の獣の体内に人質がいること。このままの状態で報復の獣を倒してしまえば、体内にいるヒバナとヒガナの母も諸共に消し飛ばすことになる。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォッッ!!!!!」
悪魔のように咆哮する報復の獣はその口腔に再び神通力を収束させる。長い予備動作を必要とする攻撃を受けるようなティガではなく、パワータイプ担当の凛太郎の意志のままに――
ガシッ!!
避けようとしたその時、得体の知れない何かに足首を掴まれた。背筋が凍るような気配と感触に足元を見れば、悍ましい気配を放つ紫色の巨大な腕が地面の下から這い出して、ティガの右足首をガッシリと掴んでいた。
「デュアッ!?」
この程度、パワータイプの膂力ならば容易に振りほどくことができる。だがそれは足を掴む腕が一本であればの話だ。次から次に地中から這い出てくる霊体の腕が両脚に纏わりつき、ティガがその場を離れるのを逃さないとばかりに妨害してくる。
それだけあれば、報復の獣が
『おまえら――ッ!!』
ティガの下にカミーラが駆け寄り――その直後、二柱の姿は紫色の極光の中に消え去った。
「皆さんっ!?」
ヒガナが悲鳴を上げる。報復の獣から放出された紫の極光は空を裂き、影の領域の彼方にまで突き進んでいく。その光が消え去った後には、極光に抉られた地形だけが残されていた。
ああ…と絶望の声が漏れる。私たちの希望の光は消えたと、諦念と諦観、絶望が胸中を満たす。
「いえ…まだよ」
「え?」
「まだ、彼等は生きているわ」
だが、この世界を作り出した張本人であるヒガナは四人の存在を正確に感じ取っていた。その事実を証明するように、二柱の巨人は地面を突き破り地上に飛び出してきた。
「デュアッ!」
「フッ!」
トルネードタイプは闇の巨人
この能力で液化した地面に潜り込むことで報復の獣の砲撃を回避した二柱の巨人は、各々の光線技で周囲の腕を全滅させてから地上に出てきたのだ。
『た、助かったぁ……』
『けど、状況が好転したわけじゃない。どうにか二人の母親を見つけ出さないと……』
『……!? 皆さん、あれを見てください!』
『なんだ?』
楓の言葉に残りの三人が報復の獣を見ると、その体内に輝くものを見つけることができた。全身を動き回るそれは、丁度、人間と同じくらいの大きさで……
『皆さん!!』
その時、ヒガナの声が四人の脳内に響いた。
『あの光の中にお母さんはいます! 私たちが位置を掴んでいる間に…早く!』
その言葉に大悟達は笑みを浮かべる。
『…聞いたかい? 彼女達が僕たちの進むべき道を指し示してくれた』
『はい! これであとは…最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に突き進むだけです!』
抱拳礼。右手を拳に、左手を掌にして胸の前で合わせる楓。
『大悟さん! ここは私が行きます!』
『任せた!』
『押忍!』
再び握り拳を額の前で交差すると今度は額の水晶が紫色の光を放つ。
『今度はお前の力を使わせてもらうぜ!』
それと同時に、姫子は闇の中から母なる
俊敏性に特化した形態に変化した二柱は目にも留まらぬ速さで駆け出した。
シャラン! シャラン! シャラン!
そのスピードについていけない報復の獣は全方位に分身を放つが、二柱は次々と【ハンドスラッシュ】で撃ち落としていく。速度に特化したこの二形態はパワーに劣るものの、飛び道具を撃ち落とすことができないほど貧弱ではない。むしろ、パワー自体は怪獣と戦うには申し分ないほどの水準を満たしている。少なくとも分身程度なら一撃で打ち倒すことができる。
しかし、報復の獣の障壁を打ち破るほどのパワーが無いのも事実である。分身を撃ち落とす合間に本体にも攻撃しているが、二柱の攻撃は再展開された障壁には傷一つつけられない。
その事実に報復の獣も余裕を取り戻したのだろう。このまま無作為に攻撃をしても意味が無いことを悟った報復の獣は、二柱の弱点を狙い撃つことにした。即ち、自らの弱点を二柱に伝えている二体の化け物に獣の分身を突撃させる。
『見え見えです!』
マルチタイプ以上の速度で連射される【ハンドスラッシュ】が姉妹狙いの分身を撃ち抜く。その裏で、注意が逸れた報復の獣にカミーラが高速移動で接近していた。アイゾードの刀身に【疾風】を纏わせたカミーラは、報復の獣を覆う障壁を一閃する。
『今だ、ティガッ!!!』
一息に距離を詰めたティガは、カミーラの切り裂いた障壁の裂け目に手刀を突き刺す。
技能:【疾風】
ティガ :MP 38- 4=34
カミーラ :MP 99- 4=95
技能:【古き血族】
カミーラ :SAN43- 1=42
障壁の裂け目に差し込んだ手刀が報復の獣の身体に突き刺さる。そのまま目的のモノをしっかりと掴んだティガが腕を引き抜くと、傷口からドス黒い泥のようなものを流しながら今までにない絶叫を上げた。
開かれた掌の中には姉妹の面影のある女性の姿があった。治癒能力の応用で内に秘めた銀なる光を女性に注ぎ込むことで、歪んだ魂たちによって侵された肉体を浄化していく。
「「お母さん!!」」
その女性をヒバナとヒガナの傍に降ろすと、最後の役目を果たすため報復の獣に向き直る。自らの核を失った報復の獣にはもはや戦意は存在しておらず、死にたくないと言わんばかりにティガとは正反対の方向へ必死に逃げていた。
だが、敵の逃亡を許すようなカミーラではない。ブラストタイプの移動速度で先回りしたカミーラはベースである金色の姿に……ダークタイプにチェンジする。
『行くぞ、大悟!』
『ああ!』
マルチタイプにチェンジしたティガは両腕を前方に突き出した。交差させた腕を左右に大きく広げることでエネルギーを集約し、L字型に腕を組んで白色の超光熱光線を解き放つ。
同じように両腕を前方に突き出したカミーラもまた、両手を重ねたまま手元に雷を帯びた闇のエネルギーを収束させ、両腕から赤黒い闇を纏った光線を放出した。
『『『【ゼペリオン光線】!!』』』
『【フィンガースパーク】!!』
光と闇、相反する性質を持つ光線に挟み込まれた報復の獣は、障壁を全力で展開することで光線を耐えようとしたものの、結局、耐え切ることができずにその身体を粉々に爆散させた。
技能:【光を継ぐもの】
ティガ :SAN180- 1=179
技能:【古き血族】
カミーラ :SAN 42- 1= 41
【ラムースダガーム】 消費MP4
紅蓮の炎を滾らせた強力パンチ。
元ネタは、『ウルトラマンティガTHE FINAl ODYSSEY』に登場する闇の巨人【剛力戦士ダーラム】の通常パンチ【ダガーム】と岩をも砕く飛び蹴りないし回し蹴り【ラムースキック】。
ウルトラマンティガ
HP 146/146
MP 38/ 38
SAN 179/190
カーミラ
HP 120/120
MP 99/ 99
SAN 41/ 90