世界の歌姫には旅をさせよ   作:ベロベロベ

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長くなりすぎました·······。
次回以降はもっと短くします。
そして評価バーが赤くなりました!ありがとうございます!


ウタ、幼馴染みの偽者に出会う

 

「やっと······、着いたぁ!シャボンディ諸島!」

 

額に浮かんだ汗を拭い、ウタは大きな溜め息を吐き出す。

思えばここまで苦労の連続であった。

快晴だと思えば突然の(シケ)に襲われ、かと思えば突如として雹が降りだす。

常識が一切通じないという触れ込みを彼女はその身で嫌という程味あわされた。

それでも何とか辿り着く事が出来たのは赤髪海賊団に所属した経験が活きたのか、それとも彼女が天に愛されていたのかのいずれかだろう。

しかし、本で知識を得ただけの少女が生き残れる程この海は甘くない。

その点から見れば、やはり彼女は相当なものを持っているのかもしれない。

 

ヤルキマンマングローブと呼ばれる巨大なマングローブによって形成されたこの島は偉大なる航路(グランドライン)の島特有の磁場というものが存在しない極めて特殊な島だ。

そのため指針は意味を成さず、各樹木にふられた番号を頼りに進んでいかねばならない。

この海のド真ん中で船上ライブを決行しようとするという偉大なる航路(グランドライン)を嘗めきっていると解釈されてもおかしくない行動をとったウタでもそれだけはキチンと調べてきていた。

勿論、ライブの途中で海獣に襲われる+とてつもない規模の雷雨という二重苦によってライブは中止、世界中の彼女のファンが大いに心配することとなった。

 

「よいしょっと·······!」

 

船を岸につけ、なんやかんやで無事だった資金と食糧をリュックに詰めてウタは芝生に足を踏み入れる。

踏みしめた芝生はこの島のシャボンを形成する樹脂によってぐっしょりとしており、何とも奇妙な感覚だ。

 

「うわぁ·······!」

 

少し見渡しただけでもそこらじゅうに人がいる。

これだけでもエレジアという閉ざされた島に長年身を置き、新聞もろくに読まなかった彼女は今まで自身がどれだけ狭い世界に身を置いていたのかをよくよく知ることが出来た。

思い返してみれば幼少期からそうだった。

赤髪海賊団で音楽家をやっていたころは戦闘中は船番、未知の島にも危険だという事で中々入れさせて貰えずに居た。

自由に動けたのは東の海(イーストブルー)のフーシャ村、そして燃える前のエレジアくらいのものだ。

あそこはあそこで幼馴染みと勝負をしたり絵を描いたりと随分と楽しかった思い出はあるが、やはりこういった景色を見る事が出来なかった不満はある。

 

「私のファンも居るのかな?フフフッ!」

 

未知の島の冒険。ウタの中にある子供心が疼いて止まらない。

野原を駆け回る幼子の様に、軽やかに走り出した。

行き先は本で見た遊園地。必ず行くと決めていた場所だ。

あまりに楽しみにしていたせいか、肩に何かがぶつかった衝撃にも気づかない程、無我夢中に駆け出していた。

 

「オイオイオイオイィィィィ!!待てやクソガキィ!」

遊園地(ゆーえんち)ーっ!」

「ちゅっと待てぇーー!」

 

周囲に響きわたる程を怒号を受け、ようやくウタは足を止める。

全身を震わせて怒りを現にする大男にウタは警戒心皆無の笑顔で近づいていく。

 

「なになに?何かよう?」

「おうよ!テメェこらクソガキ!今俺様の肩n「あ、もしかしてアタシのファンの人!?」話を聞けぇ!」

 

男の顔が段々赤みを帯びていく。額に青筋を浮かべた彼に若干後退りながら、ウタは彼のとある一点で目を止める。

 

「髑髏マーク······」

 

それは男の被っていた帽子だった。でかでかと中心に居座る髑髏マークの三角帽子。

いかにもなデザインのそれを被ったその存在はウタが警戒心を越えた敵意を持つには十分だった。

 

「アナタ、もしかして海賊?」

「もしかしなくても海賊だっちゅーの!テメェ!俺様の肩にぶつかりやがっただけじゃなく、話を遮りやがって!ぶち殺してやろうか、おおん!?」

 

ウタの顔から笑顔が消える。周りを見渡せば脅えた人ばかりだ。

もう一度彼女は海賊の顔を見て、納得する。

コイツは駄目だ。赤髪海賊団とは似ても似つかない。ファンを、世界を苦しめる悪いやつ。

 

「おいこらまた無視してやがんなクソガキ!いいか!?俺様は懸賞金七千万ベリーの賞金首でベへぇ!?」

 

ウタが能力を行使しようとした瞬間、目の前の海賊が顔面から血を流して吹き飛んだ。

海賊は地面に叩きつけられ、砂埃をあげ、そして動きを止め、ピクピクと痙攣している。

 

「オイコラクソ野郎!テメェ、か弱きレディに対して何やってんだコラァァァッ!!」

 

吹っ飛んだ海賊に劣らないレベルにドスの効いた声。

しかし声の主はウタを庇う様に立ち、真っ黒な右足を掲げている。

突然の事態にウタは漠然とお礼を言う事しか出来ない。

 

「た、助けてくれたの?ありがとう」

「いや、礼なんて良いさ·······。君が無事でよかブファーーーーーーーーーー!」

「きゃああああああ!?」

 

突如としてその男は鼻から大量の血をジェット噴射し、自身が蹴り飛ばした海賊よりも凄まじい勢いで吹き飛んでいく。

彼の目はハートになり、金髪や黒いダブルスーツは血で赤黒く染まっている。

ウタは急いで彼に駆け寄り、助け起こした。

 

「し、しっかりして!」

「レ、レディが俺を心配してくれている·······?これは夢?それとも現実?ああぁ、良~い匂いだぁ·······!二年ぶりの、レディの香りぃ!最高だぁ!」

「えぇ·······?」

 

何かこの人ヤバい。血塗れでビクンビクンと陸に打ち上げられた魚の様な動きをする彼にウタはまたしても後退る。

世間をファンとの会話や本程度でしか知らない彼女にとってこの変態騎士(ナイト)は刺激が強すぎた。

 

「あぁ、放っとけ。そいつは単なるエロコックだ」

「え、エロコック?」

 

もう一人、ウタの背後から近寄ってくる男。

緑の着物の様なロングコートに腹巻き、そして何故か三本の刀を差している。

緑の髪に縦に一文字の傷が入ったその様相は悪人面という表現がしっくりくる。

 

「ウチのアホが悪かったな」

「え、えっと、うん大丈「テメェ誰がアホだクソ剣士ぃ!」ぶ·······」

「あ!?事実だろうが鼻血眉毛!ちょっと女に話しかけられたくれぇでいちいち発情しやがってよ!」

「アホ言え!俺は襲われてたレディを助けただけだ!そんな邪な感情は抱いてねぇよ!」

「鼻血は出してたろうが!そもそもテメェは邪なもんしか持ってねぇだろ!」

「んだとコラ!今度こそオロしてやろうかマリモォ!」

「上等だ、かかってこいやぐるぐるコック!」

 

ウタを挟んで唾を飛ばしながらの大喧嘩。周囲の目は脅えから一転、喧嘩の野次馬へと変わっていった。中には脅えている者も居たが、ウタはそれに気づかない。

 

「ちょっとちょっとやめなよ二人とも!皆見てるから!というか私を挟んでやるのはやめて!」

 

耐えかねたウタが二人の喧嘩に割り込む。この際右腕は金髪の男に、左腕は緑の男に触れる形となっていた。

 

「ちっ·······!わかったよ」

「はっ!レディが!俺に!触れてる!サイコー♡」

「えぇ·······?何なのこの人······?」

 

再び鼻血を垂らし始めた金髪に二度もドン引きするウタ。

緑の男は溜め息を吐くと金髪の足を引きずっていく。

 

「騒がしくして悪かったな。ホラ行くぞ、七番」

「だからテメェそれはたまたまだろうが!いつまで自慢してやがる!とっとと離せ!俺に触れて良いのはレディだけだ!」

 

■■■

 

珍妙な二人組と別れて数十分。

現在ウタが居るのは45番グローブ。

シャボンディ諸島では観光関係が多い箇所だ。

しかし、今回は何やら様子が違う。

辺りにある店は開いてはいるものの、店番をする筈の人々は奥へ引っ込んでいる。

観光客はほとんどおらず、代わりに居るのは海賊達だ。

 

「何でこんなに海賊が·······?」

 

ウタは木陰に隠れて様子を伺う。下手に動いて存在がバレれば自身に襲いかかってくるかもしれない。そこらの海賊ならウタ自身負ける気はしないが、ここはシャボンディ諸島。

新世界へと雪崩れ込む悪名高い凶悪な海賊達が集結する場所であり、当然そこらの海賊とは一線を画する実力者達だ。

海軍本部が常に睨みをきかせている場所でもあり、これだけの海賊が集まっているためかポツポツと潜んでいる海兵の姿も確認出来る。

 

「皆、どこかに向かってるんだろ·······」

 

海賊達は皆一つの方向を目指して歩いている様に見える。ウタは彼らを神妙な顔つきで見つめていると、一人の海兵の声が耳に入ってきた。

 

「はい、はい·······!やはりこれだけの海賊が1ヶ所に集結している訳は"麦わらのルフィ"かと思われます·······!」

 

「いいいぃぃぃ!?ルフィ!?」

「な、何者だ!?」

 

海兵は突如聞こえてきた悲鳴にも似た大声に反応し、咄嗟に銃を抜く。

ウタは急いで隠れて息を潜める。

そして四つん這いになった状態で海賊達と同じ方向へと進みだした。

 

(嘘でしょ!?これだけの海賊とルフィが関わってるの!?一体全体何やらかしたのよルフィ~!)

 

ウタの脳裏にかつての赤髪海賊団の後ろ姿が過る。誤解だったとはいえ、当時の彼女には彼らが本当に悪逆な海賊に見えたのだ。

ファンとの交流の中で彼女は知っている。今の世の中でどれだけ海賊被害が多いのか。

大切な幼馴染みがそのような存在になっているとは、彼女にとって想像するだけでも悍ましい事だった。

 

(嘘だよね·······?違うよね·······!?ルフィ·······!)

 

冷や汗が垂れてくる。これだけは、絶対に確かめねばならない。

今にも胸が張り裂けそうな程の激情を抱え、ウタは目指す。

海賊達が集結している場所は46番グローブ。

数多くの海賊が集結している中、一際異彩を放つ者が四人。

"深手のアルビオン"、リップ・"サービス"・ドウティ。そして"濡れ髪のカリブー"と"返り血のコリブー"。

そして彼らが体を向ける塀の上には既に三人の海賊達。

一人は妙な仮面をつけているのがウタの目についた。

 

(うわ、変な仮面·······。それよりルフィはどこだろ········?)

 

こっそりと隠れていたウタがキョロキョロと辺りを見渡しているうちに事態は早速動き出す。

 

「オイオイオイィ~~~~~~!!!お(めぇ)さん今ァ、軍隊に連絡しちゃったんじゃぁねぇのかいぃ~~~~~~!?」

 

耳障りな叫び声をあげて海兵に掴みかかっているのは懸賞金二億を越える大物、カリブーだ。

 

「やだよぉ~~~~~~?連絡しちゃぁ~~~!ケヘヘヘェ~!広場が真っ赤に染まっちまうよぉ~~~~~~?お前さんの血でなぁ~~~~~~!!!

そうだろ!コリブー!」

「はえっ!!すんません兄助ェ!すんませんっしたぁ!」

 

そしてまるで明後日な方向を何故か向いて謝り続ける男、コリブー。こちらも二億に迫る懸賞金をかけられた、生粋の悪党だ。

しかしそんな奴らに捕まって、されるがままにされる程偉大なる航路(グランドライン)の海兵は甘くない。

バレない様にこっそりと拳銃に手を掛け、そして──

 

「んジョ~~~ダン!!!およしよぉ~~~~!!」

 

カリブーに、槍で串刺しにされた。

 

「グアアぁぁぁぁああ~~~~~~!!!」

「おぉ神よ!武器を手に掛け、俺を殺そうとしたこの愚かな海兵さんを!どうか!許してやってくれぇ~~~~~~!!」

 

(酷い······!!)

 

目の前で繰り広げられた一連の流れは、ウタにはとても許容出来ない光景だった。

ギリッと拳を握りしめケヘヘと嗤うカリブーを、そして血を流す海兵を嘲笑う海賊達を睨む。

コリブーは海兵を生き埋めにしようと必死に穴を掘っている。

それを見過ごす程、ウタという少女は臆病ではない。

 

(私はウタ、歌で新時代を造る女·······!)

 

殺されそうな海兵一人救えない女が、新時代を造るなどお笑い草だ。

ウタは全身に力を込め、そして木陰から飛び出した。

その時。

 

「そこまでだ!カリブー!そんなしょうもねぇ海兵なんざ捨て置け!」

 

一人の男の怒号が響き渡る。

その場に居た海賊、海兵、そしてウタが一点に視線を集中させた。

 

「ウオォ~~!!"麦わらのルフィ"船長のお出ましだぁ~~~~~~!!!!」

 

「え?」

「出ました!!"麦わらのルフィ"ですっ!!!」

「えぇ!?」

 

多種多様な盛り上がりを見せる中、ウタだけは血を流した海兵のもとで呆然と立ち竦んでいた。

 

「貴様!"麦わら"の傘下に就こうという海賊か!?」

「え!?いや、違う違う!私は海賊じゃないよ!」

「何·······?き、君は!?まさか、"歌姫"ウタか!?」

「え、うん。そうだよ」

「何故ここに!?エレジアにいる筈では·······、いやそんな事はどうでもいい!逃げるんだ!ここがどれだけの危険地帯かわかっているのか!?」

「え、えぇっと·······、とにかく!アナタの血を止めないと!」

 

絶賛混乱の最中にあるウタはおもむろに海兵の傷口に布をあてる。

しかし腕を海兵に掴まれ、逃げるよう促された。

 

「気持ちは嬉しいが、私は大丈夫だ!さぁ、速く!あそこに居るのはあの"麦わら"だぞ!」

「で、でも」

 

ウタは塀の上で高らかに演説している男をじっと見つめる。

彼は異名に違わず麦わら帽子を被っている。しかしあのだらしない腹にあの横柄な態度。

確かに彼女の記憶の中の幼馴染みも生意気ではあったがあんなに高慢ではなかった。

そして何よりも、彼女の勘が『違う』と告げている。

彼が海賊を、海兵を、どれだけ周りを欺こうとも、幼馴染みを騙す事だけは出来ない。

 

「·······違う」

「何を言って·······」

「アイツ、ルフィじゃない·······!」

 

海兵からすれば訳のわからない一言。しかしその事を問い質すまもなく辺りを取り囲んでいた海軍が動き出す。

 

「そこまでだ!海賊共!!"麦わらのルフィ"及びその子分共!!大人しく降伏しろ!ここら一帯は完全に封鎖した!貴様らに逃げ場はない!」

「海軍かっ·······!よしカリブー!!コリブー!!その海兵とそこの女を人質に、出口を抉じ開けろ!」

「何·······!?」

 

カリブーに捕まった海兵が戦慄する中、ウタだけは沈黙し、俯いていた。

 

「·······許せない」

 

ウタの脳内に海賊達への怒りが込められた歌、『逆光』が流れ出す。

今の彼女はかつてない憤怒に包まれている。たった今凶行を行った海賊の親玉が大事な大事な幼馴染みの名を騙った事が彼女にはどうしても許せなかった。

 

「ん······?あの女何してやがる?」

「せ、船長!アイツ確か、ウタだ!世界の歌姫ウタ!」

 

ウタは歌いだす。この身に籠められた燃える様な激情を、歌に変えて放出する。誰もが聞き惚れるほどの美声。しかし、そこから発露するは怒りの業火。

 

《ウタウタ♪(コン・フオーコ)!!》

 

「な、何だ!?」

 

偽者、"三枚舌のデマロ・ブラック"の周囲に深紅の音符が大量に現れる。

そしてそれらはデマロ・ブラックに狙いを定め───

 

「ぐぎゃぁあああああ!!!」

 

一斉に襲いかかった。音符の猛攻は彼の全身を焦がし、被っていた麦わら帽子を炭に変えた。

 

「お、大頭ぁ~~~~~~!?」

 

子分達は目を跳びださせて驚愕する。彼らからすれば世界三大機関で暴れまわった屈強な海賊が、たった一人の華奢な少女によって沈められたのだから。

 

「オイオイィ~~~~マジかぁ~~!?あんな攻撃一発で沈んじまうなんてぇ~~アイツ本当にあの"麦わら"かぁ~~?」

「き、君は········、凄いな」

 

しかし、海軍からすれば喜んでもいられない。今の攻撃によって海賊達を大いに刺激してしまった。

現に"麦わら"は息も絶え絶えになりながらも立ち上がっている。

 

「野郎共ぉ!あのクソ生意気な女を殺せぇ!!」

「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

最早彼らから降伏の意思は完全に潰えた。

武器を取り襲いかかる海賊達。迎え撃つ海軍。

人数はほぼ互角。

しかし、その均衡は容易く崩れ去る。

 

「パ、パシフィスタだぁ!」

 

海賊達に立ちはだかるのは、白ひげ海賊団と海軍本部が激突した頂上戦争に導入された人間兵器。

王下七武海バーソロミュー・くまが世界政府を身を差し出して造られた存在である。

口や掌から発射されるのは海軍本部・大将"黄猿"の攻撃を解析して実装されたレーザー。

並の海賊はおろか、前半の海で名をあげた屈強な海賊達でさえ簡単に捩じ伏せてしまえる代物だ。

現に八千万を越える賞金首であるドウティが血を流して倒れている。そしてパシフィスタは当然無傷。

そんな兵器がここに二体。海賊達が絶望し、大頭に縋りだすのは当然と言える。

 

「や、ヤベェ!アイツ、ドウティを潰しやがった!あんな化け物と戦えるか!ズラかるぞ!」

 

しかし彼の逃走は叶わない。

目の前に三体目のパシフィスタ。そして二年前、()()()麦わらのルフィを追い込んだ海兵、戦桃丸。

この二人が立ちはだかる場所に逃げ場なぞありはしない。

 

「逃がさないよ!」

 

そして後ろからはウタが追いかけてくる。

あの華奢な体躯からは信じられない身体能力で海賊達を楽々飛び越えてきたのだ。

 

「うおおぉぉ!!麦わらの大頭が戦ってくれるぞ!」

「やっちまえぇぇぇぇぇ!!!四億の力、見せてくれぇぇぇぇぇ!!」

 

何も知らない哀れな海賊達が勝利を確信し、沸き立つ。

しかし肝心の大頭はすっかり逃げ腰。とても戦える様子ではない。

 

「·······?おい、何でおめーが麦わらって呼ばれてんだ?」

「オ、オイてめえ!俺が誰だかわかってるよな!?とっとと道を開けろ!俺はあの革命家ドラゴンの息子で!英雄ガープの孫で!懸賞金四億の········!」

 

有りもしない偽の経歴を騙るデマロ・ブラックに戦桃丸とウタは痺れを切らし、同時に襲いかかった。

 

「"麦わら"はおめぇみてぇなカスじゃねぇよ!!」

「ルフィはアンタみたいな最低な奴じゃない!!」

 

頭上に鉞が、背後に八つの8分音符。

襲いかかるそれらをデマロ・ブラック程度が対処出来る訳もなく。

 

「ホビョーーーーーーーーーー!!!」

「む、麦わらの大頭ーーーーーーーーーー!?」

 

哀れ、地べたを舐めて痙攣する負け犬へと成り下がった。

 

「おい、PX-5!コイツは何だ?」

『懸賞金二千六百万ベリー·······、"三枚舌のデマロ・ブラック"』

 

「えぇ!?じゃああの大頭は·······偽物!?」

「やっぱり!!」

 

判明した瞬間、辺りで海賊達の怒りの声があがる。

しかし彼らの大半は鍛練を怠り、強い者に寄生しようとした者達だ。

その様な覚悟のない者に新世界は生き残れない。新世界は選ばれた強者の海なのだから。

 

「まぁ、騙されたおめぇらも運が無かったな·······!全員わいらが連行する!そして────」

 

戦桃丸はとある1ヶ所に目を向ける。そこには全身をコートで覆い、体躯の何倍にも膨らんだリュックを持つ者が一人。一体これは何の偶然だろうか。

 

「本物の"麦わら"もここにいる」

「え!?」

 

その言葉に真っ先に反応したのはウタだ。

居るというのか、あの幼馴染みが。

 

「島に入った時、PX-5が確かに感知してる!ソイツを狙え!」

 

PX-5の口が開かれ、光が充満していく。そして放たれるレーザー。

着弾、爆発し、多くの海賊が巻き込まれるも肝心の相手には掠りすらしなかった。

 

「あっぶねぇっ!!」

 

ヒラリと軽やかな身のこなしで近くの塀に飛び乗り、抗議の声を上げる。

その際コートは剥がれ落ち、その姿が完全に曝け出された。

 

「ああ·······!!」

 

そこに居たのは手配書と全く同じ顔。偽物とは似ても似つかない姿。

そして、ウタの大切な幼馴染み。

モンキー・D・ルフィがそこには居た。

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