世界の歌姫には旅をさせよ   作:ベロベロベ

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現在、最終章を執筆しながら並行して魚人島~最新刊まで読み返してます。
最終章のプロットだけは組み立てました。その途中?ありませんよそんなもん。
基本勢いですからねこの作品。

しかしいくらなんでも展開が遅い気がしてきたので一旦読み返す時間を下さいお願いします


ウタ、深海を旅する

 

「おいお前、いきなり出てきて何ぬかしてやがる」

「大体、何者なんだてめぇ!」

 

海賊をやめろ発言から数秒。凍り付いた時間を動かし、真っ先にウタに噛みついたのはゾロとフランキー。

ゾロは低くドスの効いた声で、フランキーは荒々しい大声でウタを脅しにかかる。

ルフィとサンジを除いた他の一味も声には出さないものの、訝しげな表情を浮かべている。

それも仕方のない事だろう。

彼らからすれば二年前の大きな挫折から立ち直り、漸く冒険を再開出来たその直後。

出鼻を挫かれるとはまさにこの事だ。

 

「貴女、もしかしてウタ?」

「へぇ、私の事知ってるんだ」

 

そんな中、唯一冷静な言葉を投げ掛けたのはロビン。続いてブルック、ウソップ、チョッパーがその名に反応する

 

「ウタ、とはあの世界の歌姫ですか?」

「ああーーーーーっ!ホントだ!プリンセス・ウタだ!」

「えええぇ~~!?おれ、生で見たの初めてだ!さ、サインくれぇ!」

 

三者三様に驚愕の表情を浮かべる彼らは皆、彼女を歌を聞いた事のある者達だ。

特にブルックはソウル・キングと呼ばれた元有名ミュージシャン。

同じ畑の実力者の情報を手に入れているのはある意味当然か。

 

「えぇ、今や世界で最も有名な歌い手よ。世界の歌姫や救世の女神とも言われているけれど······同じくらい有名な異名が、"海賊嫌い"のウタ」

「か、海賊嫌いぃ~~!?」

 

海賊嫌いのウタ。その呼称に最も強く反応したのは麦わらの一味の船長、ルフィ。

彼からすればその事はとても信じられないものだった。

 

「お前、何でそんな呼び方されてんだ!?あんなに海賊が好きだったじゃねぇか!シャンクスの事大好きだったろ!?」

『シャンクス!?』

「·········」

 

"世界の歌姫"、"赤髪"。この短時間で二つものビッグネームが飛び出し、そしてその二人には繋がりがある。

その事実は一味全員を驚愕させるには十分すぎるものだった。

 

「待てよルフィ、このウタちゃんはあの赤髪と繋がりがあんのか?」

「ああ、だってコイツ赤髪海賊団の音楽家で、シャンクスの娘だぞ」

『えぇ!?』

「娘、か。そうだね······私は·······シャンクスの、うん」

 

一方のウタはどこか煮えきらない表情で俯く。エレジアの悪夢から幾年。

彼女の中のシャンクスへの思いは様々なものが入り交じり、ぐるぐると渦を巻いている。。

彼らは好きだ。しかし、彼らが海賊であるという事実が彼女の心を陰を落とす。

それは長らく民衆の代弁者として活動していた弊害であった。

 

「何だよ、どうしたんだよウタ?」

 

今にも泣きそうなウタにルフィは心配そうに声をかける。

しかし彼女は大丈夫だと、目元を拭って笑顔を造る。

 

「ねぇルフィ。ルフィはどうして海賊やってるの?」

 

ウタはこれ以上無い程に真剣な表情でルフィを瞳を見つめる。

どうしても確かめたかった。新聞の記事を見た時から、ずっと。

もし彼が極悪非道の海賊に成り下がっているのなら、ウタはどうなってしまうのか自身でもわからない。

 

「決まってる。海賊王になるためだ!」

 

ルフィは笑顔でそう宣言した。

 

「海賊王って何?どういう王?やっぱりこの海全部の海賊を支配するとか、そんなの?」

「支配なんかしねぇよ!海賊王ってのは、この海で一番自由なやつの事だからな!」

 

彼が見せる笑顔はかつてフーシャ村で夢を語っていたあの笑顔と全く同じだった。一点の陰りもない純粋な笑顔。

ウタは彼のその笑顔が大好きだった。

 

「そうだぜプリンセス・ウタ!ルフィは悪いやつじゃねぇよ!俺は、勇敢な海の戦士になるために海賊やってんだ!」

「おれは万能薬になるために!」

「俺はオールブルーを見つけるために」

「私は世界海図を描くために!」

「俺はこのサニー号のスゥーパーァ~~!な輝きを見るためにぃ!」

 

皆、己の夢を語っていく。ルフィの様に無邪気な笑顔で。

彼らに釣られ、ウタも自然と笑みが溢れた。

根拠はないが彼らなら大丈夫だと、そんな気がした。

 

「ルフィ、皆。ごめんね、急に変な事言って」

「おう!気にすんな!」

 

あっさりしてるなぁ、とウタは苦笑する。

そのまま、ルフィは一つの疑問を口にした。

 

「お前は?なんで海に出てきたんだ?」

「え?私?私は········」

 

思い起こされるあの日の映像。

 

「シャンクスとちょっと色々あってさ、確かめたいんだ。私が海賊を本当に好きなのか、それとも嫌いなのか」

 

それだけではない。新時代を築く歌姫として世界をこの目で見てみたい。そして自らの歌の力をより一層磨き上げるのだ。

 

「でも、私の夢は昔と変わらない!私はウタ!歌で皆が幸せになれる新時代を造る女よ!」

 

■■■

 

「「「ルフィの幼馴染みぃ!?」」」

「ルフィ········!お前にそんな美人な幼馴染みが居たなんて·······」

 

最早嫉妬を通り越した悲しみの涙を流すサンジを尻目にナミやウソップ、チョッパーはウタに質問を繰り返している。

ルフィは昔からとんでもなかったのかや赤髪のシャンクスとの関係など、彼に関する興味は尽きない。

元々ルフィが自身の事を余り語らない事もあってかウタから聞いたことの中には初耳なものも多かった。

 

「ルフィはほんっとに無茶ばっかりだったよ。修行だー、て言っていきなり崖から飛び降りるんだもん。弱虫だったクセにねぇー」

「んなことねぇよ!お前との勝負だって、俺が183連勝中だぞ!」

「はぁ!?何言ってんの!?わ・た・しが!183連勝中でしょ!?」

「んなわけあるか!お前!ズルばっかだったじゃねぇか!そんなん言うなら今ここで勝負だ!」

「いいよ上等じゃん!種目は!?」

 

凄まじい認識の違いを見せる二人に一味は呆れ返る。一方でお互い一歩も退かずに睨み合うウタとルフィ。

ルフィは丁度シャボンの外に漂っている魚の群れを指差し、宣言する。

 

「魚獲りだ!一度に多く採ったほうが勝ち!」

「オッケー!」

 

鼻息荒くして群れを見つめる二人。しかし傍にいたウソップとチョッパーは大慌てだ。

 

「待てこらやめんかお前ら!シャボンに穴開けんじゃねぇよ!」

「そうだぞ!死んだらどうすんだコンニャローー!!」

 

心臓が外から見ても分かる程に脈打っている彼らを尻目に、ゾロは潜水直前の事を思い出していた。

 

「ん?けどウタのやつが入ってきた時にはもうシャボン張ってたよな?」

「えぇ。基本的にこのシャボンはシャボンディのものと同じである程度伸びた後突き抜けるの。一度に多数の穴が開いたりしたら、流石に駄目だけどね。ま、中から余計な事しなきゃ、後は外の障害物や海獣に気をつければ良いわ」

 

ナミがコーティング船の注意事項を話していくが、二人はそんな話など聞いていない。

互いに捕獲のタイミングを推し量っている。

 

「俺の銃乱打(ガトリング)ならあんなの全部獲れるぞ!」

「私の連符(グループ)だってあのくらい余裕だし!」

 

一切聞いていなかったが故に堂々と惚けた事を口にする二人にナミの拳骨が襲いかかる。

 

「多数の穴は駄目だって言ってんでしょ!しばくぞあんたらぁ!!」

「ナミ!もうしばいてるぞ!」

 

二人の頭頂部に巨大なたんこぶが積み重なっている。

そんな馬鹿か事をしながらも、船は着実に沈んでいく。

既に光もほとんど届かない程に深い場所へと辿り着いている。

辺りにはクジラや摩訶不思議な深海魚などが多く漂っている。

先ほどまで喧嘩していたウタとルフィも今はこの幻想的な光景に見とれていた。

 

「お、おい!皆!六時の方角に何かいるぞ!あれは、海獣か?······いや船だ!船らしき影発見!!」

 

ウソップの号令に皆が戦闘態勢に移行する。

危険を犯してわざわざこの深海にまで訪れる船など海賊船でないはずがない。

巨大な牛に引かせたその船は一切躊躇う事なく、サニー号へと突っ込んできた。

 

「まさかシャボン越しに乗り込んでくる気か!?」

「誰だ一体っっ!」

「わー!おっきい牛!」

 

ウタのその一言に反応したのはナミだ。

咄嗟に足を止め、ウタと同じ方角を見上げる。

 

「モーム!?ねぇ、あんたアーロン一味のモームでしょ!?」

 

モームと呼ばれたその海牛もまたナミの方へと目を向ける。

そしてその巨大な視界には同じく見つめてくるルフィとサンジもしっかりと入っていた。

海牛、モームは思い起こされた恐怖の記憶により錯乱し、逃げ出してしまう。

勿論海賊船もセットであり、モームに引かせていた海賊団は皆唖然とする。

しかし我先にと飛び出した彼らの船長だけは気がつかず、サニー号へと乗り込んでいった。

 

「ああ!あんた!」

 

その顔に唯一見覚えのあったウタが反応する。

降り立ったのは海兵に因縁をふっかけて槍を突き刺していた海賊、カリブーだ。

 

「おやぁ~~?お前さんあん時偽カス野郎共の潰したヤツじゃないのぉ~~!麦わらの一味だったか、まぁいい!ケヒヒヒ!!」

 

カリブーは両手を広げ、部下達に指示を飛ばす。

ここは敵船。ならば容赦なく皆殺しだ。

 

「さぁ、まずは挨拶代わりのぉ~~、ガトリング銃をぶっぱなせぇ~~!!」

 

しかしその指示には誰一人として反応しない。

敵である麦わらの一味は勿論、カリブー海賊団の部下達さえも。

既に彼の部下はこの場にいない。

ありったけの殺意と歓喜を込めた声だけが、サニー号に虚しく響き渡っていた。

 

■■■

 

「スッゴイねあなた達、いっつもこんな旅してるの?」

「ヨホホホ!お気に召しましたか?」

「ルフィの無茶は今に始まった事じゃないもの」

 

目前に迫った魚人島に目を向け、ウタは尻餅をつきながら、額に溜まった汗をブルックから差し出されたタオルで拭う。

ただ沈むだけだと思っていたのに道中は驚きの連続だ。

不思議な海流に乗ろうとしたら巨大な魔物、クラーケンに出くわし、その際の戦闘でルフィ・ゾロ・サンジが行方不明になり、さらにその状態で海坊主に出くわした。

さらにそこから幽霊船に従う海坊主に目をつけられ、そしてそれをルフィが仲良くなったクラーケンのスルメ(タコ)がそれを撃退し、最終的には海底火山の噴火によって船体が大きく吹き飛ばされた。僅か数時間の出来事にも関わらず、既に大冒険並みの濃い時間だった。

彼女は赤髪海賊団に居た頃は幼かった事もあって基本船番であり、危険な時は船内に入れられていたため、あまりこういう事態に慣れていなかった。

今思えば、シャンクス達が手に入れた財宝も基本的には好きにさせて貰っていたし、少し甘やかされていたのだろう。

海賊に年は関係ないと自信満々に言っていた幼少期を思い出し、少し恥ずかしくなった。

 

(あ、そう言えば·······)

 

財宝を好きにさせてくれたシャンクスが唯一、中々見せてさえくれなかった物があった。しばらくの間、必死になってそれを手に入れようと躍起になったものだ。

それはとある敵船から奪った宝箱。

そこに入っていたのは奇妙な螺旋模様の入った紫の果実。

今思えば、あれは悪魔の実だったような気がする。

 

「おーい!ウタぁーー!!そろそろ着くぞ!準備しろよぉーーーーー!!」

「あっ、うん!」

 

船室の置かせて貰った荷物をとり、ウタは目の前に広がる雄大な景色を目に焼きつける。

ここは深度一万mの深海。にも関わらず、まるで昼間の様に明るく照らされている。

巨大なシャボンに包まれた美しい町並み。

麦わらの一味は遂に新世界の玄関口、魚人島へと辿り着いた。

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