幼馴染がキャンプを始めるらしい。   作:ひーらぎ@1341

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四話

『表彰状、授与』

 

 全校集会とかいうクッソ退屈な時間。とっとと図書室行きてぇ…と言う気持ちを抑えながら、体操座りを続ける。朝にやるならともかく、放課後にやんなよ。

 それに、表彰って言っても、知らん奴が貰っていても別に何の感傷も湧かないからな。この後に校長のどうでも良い話もあると考えると最悪だ。

 

『表彰、陸上部一年。海津友希(ユキ)

 

「はい」

 

 まぁ、知ってる奴で表彰されそうな奴はいないが。壇上に上がる女子生徒を見て……え、え?

 

 身長順の列の先頭だから、壇上は上がる人物の顔がとても良く見える。見れば見るほど、重なっていく。あの日…なでしこと出会った日、私の隣でキャンプをしていた初心者キャンパーと、壇上に上がる人物が。

 

 しかし、一点だけおかしいところがある。だって、今賞状を受け取っているあの人物は……

 

 制服でスカートを履いているのだから。

 

 さっき読み上げられていた名前が、海津『ユキ』。なでしこの携帯に登録されていた名前が、『海津友希』。……つまり、友希は『ユキ』と読むのであって、『トモキ』ではなかったのだ。そうか…女子、だったのか。

 それに、同い年なのか。私との身長差…おかしいだろ。

 

 賞状を受け取って、私たちに向き直る『海津友希』。ベリーショートの髪に、しなやかな足…スタイルが良すぎる。こんな同い年がいてたまるかと言いたい。

 

「あっ!!」

 

 隣の方で、いきなり声を上げた奴がいた。この声は…やっぱり、なでしこが気づいて、驚いたのだろう。周囲の生徒の視線がみるみる集まっていき、口を自分の手で必死に塞いでいた。

 そして、海津さんも、なでしこを見ている気がした。

 

 どこかで見たことがあるのは…同じ学校だったからなのか。

 

 

 

 

 

 

「かっこいいよねー。海津さん」

 

「…いきなりどうしたんだよ」

 

 集会が終わり、図書委員として座っているところに、いつも通り斉藤がちょっかいを出してくる。

 

「んー、海津さんのこと、気になってたんじゃ無いの?」

 

「その言い方やめろ、恋してるみたいだろ。…あと、人の思考を読むな」

 

 なんでこいつは口に出していない私の考えていることをピンポイントに当ててくるのだろうか。それに、気になる人とかいう誤解を生みそうな発言はやめてほしいものだ。

 

「…てゆーか、あの人のこと知ってんのかよ」

 

「えー? 結構有名だよー。背も高くてスタイルいいし、足もすっごく早いんだよ。結構口数が少ないから、ミステリアスだよねー」

 

 あと、同じクラスだし、と続けた斎藤。まぁ…確かに、男子だったらとてもモテそうだ。でも、あの時のキャンプ場で見た、焦った表情はかなりレアなのでは無いか。

 

「ほら、あそこに…」

 

 そう言って、斉藤は窓の外を指差した。そこは中庭なのだが、海津さんが、なでしこと一緒にいた。

 

「…あいつ、嫌われてたっぽいけど大丈夫か…?」

 

 なでしこは既読スルーを受けていたのを知っているので、少し不安になった。そして、なでしこが少し震えながら俯いている。……あぁ、全く!

 

 なぜか、足が中庭へと進んでいた。図書委員の仕事をすっぽかして。

 

 

 

 


 

 

 

 

 びっくりしちゃったよ。あのココアをくれたお兄さんが同じ学校で、同い年で、お姉さんだったなんて。いや、お姉さんではないのかな、同い年だし。

 それに、トモキさんだと思ってたらユキさんだったなんて…。あ、あれ…ユキ…ユキちゃん? しかも陸上部で表彰も受けてて…もしかしてあきちゃんたちの幼馴染って、あのお兄…お姉さんだったんだ!

 

「…あの」

 

「え…あ、な、なんでしょうかっ!」

 

 声をかけられたから後ろを振り向くと、そこにはユキさんがいた。

 

 …そういえば、ランニングを邪魔しちゃって、怒ってるんじゃ…

 

「…ついてきて」

 

「は、はいっ!」

 

 こ…こわいよぉっ…!

 

 

 

 

 

 ユキさんの背中についていき、中庭へと連れてこられた。そして、周りを気にするように辺りを見回してから、私に話しかける。

 

「あの…」

 

「ご、ごめんなさいっ!」

 

 とりあえず謝らなければと思い、すぐに頭を下げる。ゆ、ゆるしてもらえるかな…

 

「…? なんで…謝ってる?」

 

 恐る恐る顔を上げると、ユキさんの困ったような表情が目に入る。…怒って…ないのかな。

 

「え、あの…ランニングの邪魔しちゃって…」

 

「…別に、気にしてない」

 

 無表情だけど、怒ってないって言うことは伝わってきた。よ、よかったぁ…きっと既読をつけてから返信するのを忘れてただけなのかな。それよりも、なんで私は呼ばれたんだろう。

 

「…野外活動サークル、入ってる?」

 

「あ、はいっ! 新入部員ですっ。その、えっと…海津…さんはあきちゃん達の幼馴染なんですか?」

 

「…知ってたんだ。その…お願いがある」

 

 やっぱりそうだったんだ。でも、お願いってなんだろう。

 

「…私と、キャンプ場で会ったことは…秘密にしてほしい。千明とあおいには」

 

「は、はい。わかりました」

 

 うーん、あおいちゃん達に教えてあげようと思ったのに。あの時の謎のお兄さんの正体は、幻の幽霊部員だったーって。でも…なんでだろう。

 

「…ありがと。…さようなら、各務原さん」

 

「は、はいっ!」

 

 同い年なんだけど、つい敬語を使っちゃう。やっぱり、大人びてる感じがすごいなぁ。背が高いからかな。お姉ちゃんも結構高い方だと思ったけど、それ以上だよね。

 

 

「お、おいなでしこ」

 

「あれ、リンちゃん?」

 

 リンちゃんが少し焦ったような顔をしながらやってきた。そういえばここは図書室からは丸見えだった。

 

「な、なんか酷いことされなかったか!」

 

「酷いこと? 何もなかったよー」

 

「そ、そうか…その、何してたんだ? 海津さんと」

 

 最初はちょっと怖くてびくびくしてたから、心配して見に来てくれたのかな、リンちゃん。

 

「うーん、ちょっとお願いされただけだよ」

 

 なぜ幼馴染であるはずの二人に隠さなければならないのか、どれだけ首を傾げても、答えは出てこない。でも、約束は守らなきゃいけないから、あおいちゃん達には秘密にしておこう。

 

 

 

 

 

 

「夏用シュラフはやっぱきついかもなぁ。…あ、ユキだ」

 

「がんばってなぁユキー。あ、なでしこちゃん、あの子がうちらの幽霊部員や。今日表彰されとったやろー?」

 

「うん! さっきお話しして……てるところを見たよっ!」

 

「なんだその日本語。…あいつ、誰と話してたんだろなあ」

 

「ユキにも友達ぐらいおるやろ」

 

 あ、あぶないっ…早速約束を破るところだったよぉ…

 

 




冬には陸上の大会は無いとか言うコメントは受け付けておりません。まる
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