幼馴染がキャンプを始めるらしい。   作:ひーらぎ@1341

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五話

 

「あったかいなぁ。癒されるわぁ」

 

「景色もすっごく良いねぇ」

 

 今は、野クル初のキャンプ、冬キャンのキャンプ場の道中の温泉にまったり浸かっている。いやぁーほかほかになっちゃうよぉ…

 

「いやーユキも来ればよかったのになぁー。こんな温泉に入らないなんて勿体無いぜぇ」

 

「まぁまぁ、ユキも忙しいんやろ。今日も走り込んどるんとちゃう」

 

「あっはっは、陸上お化けだからなぁーあいつ」

 

 結局、ユキさんは冬キャンには参加しなかった。私も、一応それとなく誘って見た。帰ってきたメッセージは、『ごめん』だった。

 

 

 

 

 

 

「いやー食った食ったぁ…美味かったぁ」

 

「ごちそうさまやなぁ。カレー美味しかったで、なでしこちゃん」

 

 イーストウッドキャンプ場について、焚き火からのキャンプ飯…うーんっ!これぞキャンプっ! 

 

「いやぁー勿体無いなぁユキのやつ。こーんなうまい飯をくいそこねるなんてよぉ」

 

「ま、キャンプだから美味しく感じ取るってところはあると思うけどな?」

 

 …二人とも、ちょっと寂しそう。楽しんでるのは本当なんだけど、少し物足りなそうだ。それに、口を開くとユキさんのことばかり。

 

 

「ね、ねぇっ! あおいちゃんっ、あきちゃんっ!」

 

「おー? どーしたんだよなでしこぉ」

 

「その、ユキさんのことっ、私に教えてっ!」

 

 二人がこんなに大好きなユキさんは、どんな人なのだろうか。私はちょっと喋っただけで、全然知らない。だから…聞いてみたい。

 

「ええよ? ってゆうても、あきの方が詳しいけどなー」

 

「ふっ…まぁあたしは小学生からの付き合いだからな。あいつな、こーんな小さかったんだぜ? 私の後ろをぴょこぴょこ付いてきてなぁ…。妹みたいな奴だったよ。なのになっ! あいつ高学年からぐんぐん背ぇ伸ばしやがってよぉ」

 

 今はあんなにおっきくてクールなユキさんだけど、昔はやっぱり可愛かったんだなぁ。

 そして、あきちゃんはスマホの画面を私に向ける。写っているのは…ちっちゃいあきちゃんと、多分ユキさんだ。

 

「へぇ、これは初めてみたわ。かわええなぁ」

 

 腰に手を当てて、写真のど真ん中にいるあきちゃんの後ろに隠れるように立つ女の子。これがユキさんだろう。

 

「で、これが高学年の写真な」

 

 二人で並んで写っている写真。さっきのとは違い、二人の頭と頭では激しい段差がある。もちろん、ユキさんの方が大きい。満面の笑みを浮かべるあきちゃんと、ぎこちない笑顔なユキさん。

 

「ちーちゃん、ちーちゃんって呼んできてな? 可愛い奴だよ。あたしの身長を越したあたりから無口になってきたけどな」

 

 昔からクールってわけじゃないんだねぇ。私も昔は…ちょっとまんまるだったけど。

 

「私とあきが会ったんわ中2のころやけどな、ユキとは一年の時におんなじクラスやったんよ。その時は喋ったことは無かったけどなぁ。陸上部のエースやーって騒がれとったんよ」

 

「あたしがユキと幼馴染って言ったらめっちゃ驚いてたもんなぁ」

 

 その時には、今のユキさんになってたんだね。

 

「…最近は喋ってねぇなぁ、そういえば」

 

「せやなー。無理言って野クルに入ってもらったから、うちらもちょっとばつが悪いわ。アウトドアもあんまり興味ない言っとったし」

 

 うーん、興味ないのにソロキャンなんて行くかなぁ。それに、秘密にしておくのもよくわかんない。ユキさんもリンちゃんと一緒で、ソロキャンが良いっていう感じなのかな。

 …それもちょっと違う気がする。

 

 やっぱり、ユキさんとはちゃんと話したいなぁ。

 

 

 


 

 

 

 放課後、図書室に委員として座っていた。そろそろ閉めなきゃな。

 でも、寒い外には出たくないと思う気持ちが強くなり、すっかり尻に根が張ってしまった。

 

「…お土産も…渡さなきゃな」

 

 なでしこ用に買ってきた長野土産のお菓子は、まだバッグに入っている。どこかで会うと思ったのだが、機会に恵まれなかった。

 

「…ん? これは…」

 

 バッグの中に、見知らぬ包みが入っている。こんなの入れたっけな。……あぁ、出がけに渡されたやつか。

 包みを破り捨てると、中身は通販で注文した焚き火グリルだ。コンパクトで、とても持ち運びが便利だ。それに、直火禁止のキャンプ場でも焚き火ができたり、炭火により美味しい料理が作れたりする。やったぜ。

 

 欲しいものを買った気持ちよさに浸っていると、がらりと図書室の扉が開いた。あれは…海津友希だ。私を見ず、本棚へと一目散に向かった。少し探したのち、図書委員である私に向けて歩いてくる…途中で、ピタリと止まった。少し目を見開いて、無表情ながら驚いている様子だ。

 

 しばらく止まったのち、手に持った本を急いで本棚に返した。そして、足早に立ち去る。

 

「わっ…! あ、ゆ…海津さんっ!」

 

 扉を開けるタイミングが、これからここに来ようとしたなでしこと被ったようだ。なでしこは驚いて尻もちをついている。

 

「あ…大丈夫…?」

 

 海津友希はなでしこに手を差し伸べる。その手を取ったなでしこはすぐに立ち上がって、ありがとうと答えた。

 

 …ラブコメみたいだな。男女だったら。

 

 海津友希は一度振り返り、私へと少し頭を下げて立ち去った。なんだったんだ…?

 

 

「あ、リンちゃん! やっぱここにいたー!」

 

「お、おう。…そうだ、はい。これ…」

 

 丁度よかったので、土産のお菓子を渡す。とても喜んだ様子で、想像通りのリアクションだった。…買ってきたかいがあったな。

 

「あ、そーいえばユキさん、どうして図書室にいたの?」

 

「ん? あぁ、そういえば…」

 

 借りようとした本を、なぜか私を見て返していたな。…私に見られたくない本ってなんだ? まだ仲良くもないのに…秘密もくそも無いような関係だと思うが。

 彼女が焦って、本棚へと雑に差し入れた本を引き抜く。えーっとなになに…『みんなで楽しむキャンプ』だな。

 

「…これを借りようとして、帰ってったよ」

 

「えーっとなになに? みんなでたのしむ…」

 

 なでしこはその本を見つめる。そして、はっ! と何かに気がついたような顔をしてから、私に詰め寄る。

 

「リンちゃんっ!」

 

「な、なんだよ」

 

 何かを予感した。これは…なでしこが凄いことを言い出しそうな気がする予感だ。間違いない。

 

「キャンプしようっ! 今週の土日ひま!?」

 

 ……まぁ、いいか。一回ぐらいは付き合ってやろうと思ってはいたからな。でも、もうすぐ期末試験ってわかってるのか。…これは、忘れてる顔だな。

 

「…焼肉でもするか?」

 

「やきにくっ!? 良いじゃんっ、焼肉キャンプっ! キャンプ場は私が責任を持ってリサーチするよっ!」

 

 すごくウキウキしながら図書室を飛び出した。…ソロキャン以外は初めてだな。変わった楽しみとか、あるのかな。

 

 

 

 

 

 




「ん…? 『なでしこがグループを立ち上げました』って、個人でいいだろ。なんで立てたんだ」

 家に帰ったら、スマホに通知がきた。内容はさっきの通りだ。間違えたのかって…3人いるぞ。誰だ、えーっと名前は……海津友希!?
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