とある賢者の教導奇譚   作:リョウ77

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漫画がアニメに追いつこうとして、でも離されてるのなんかじわるのは自分だけ・・・?
出来ればリコリコみたいにアニメが終わっても少しくらいは熱が続いてほしいなぁ。


傷心の令嬢

クルーガーが仕掛けを施してから数日後、アニスフィアから呼び出しがかかったため離宮へと向かった。

呼ばれた理由としては、魔女箒のメンテナンスのためだ。調整自体はアニスフィアだけでもできるが、せっかくだしユフィリアにも使ってもらいたいということでクルーガーにも見てもらうことにしたというわけだ。

クルーガーとしても、仕掛けとレイニ共に収穫がなかったため、ちょうどいい機会ということで引き受けることにした。

 

「やっほー、クルーガー!久しぶり!・・・ってほどでもないかな?」

「4日ほどですね。私がアニス様の相談役になってからはほぼ毎日通っていましたから、数日でも久しぶりと感じるものでしょう」

「それもそっか。はいこれ、魔女箒。よろしくね」

「はい、たしかに。それで・・・ユフィリア嬢は?」

 

離宮内の工房でアニスフィアから魔女箒を受け取ったクルーガーは、この場にいないユフィリアについて尋ねた。

 

「あ~、ユフィは今は部屋。さすがにまだ抵抗感があったみたいで」

「そうですか。それは仕方のないことです。気にしていません。離宮での暮らしについては?」

「さすがにまだ慣れたわけじゃないけど、それでもだいぶ気は楽になってるみたい。あの時に比べれば良くなってるよ」

「それは良かったです・・・アニス様なら万が一もしかしたら、とも思いましたが、杞憂だったようですね」

「それはどういう意味かな~?」

「さて、では魔女箒の機関部を重点的に見た方が良さそうですね」

「あっ、無視すんなこらー!!」

 

心外だと言わんばかりのアニスフィアを無視しながら、クルーガーは自身の魔力を流して機関部にある精霊石の調子を確かめる。

 

「ふむ・・・少し微調整が効きづらくなっていませんか?」

「うっ、それは、そうかも・・・?」

「夜会に突撃したほどですからね。おそらくですが、最高出力に対して魔力効率が高すぎるせいで、僅かな調節でも出力の振れ幅が大きくなっているんでしょう。魔力の伝導率を落とした方がいいかもしれませんね」

「ん~、でもそれだと、長距離の移動が難しくならない?あと、動作が重くなりそう」

「今はまだ、そこまでの運用は考えなくてもいいでしょう。安全第一です。それに極端に落とす必要はありません。多少効率が悪くなっても、調整次第では国内の移動に困らない程度には乗り回せるでしょう。まずは伝導率を現在の4分の3程度に抑えて様子を見てみましょう」

「はーい。調整は頼んでもいい?」

「わかりました。1時間あれば万全の状態になると思います」

「お願いね!それじゃ、私はその間にいろいろと準備してくるから!」

「えぇ、ほどほどにしておいてくださいね」

「大丈夫大丈夫!」

 

そう言いながら、アニスフィアはバタバタと工房から出て行った。

その際に、いくつかの魔道具を持ちだしていったアニスフィアの姿を見て、クルーガーはそっとため息をついた。

 

「・・・これは、魔女箒だけではすみそうにないか」

 

おそらくは、ユフィリアに自分が作った魔道具の数々を見せびらかすのだろう。あるいは、ユフィリアに専用の魔道具をプレゼントするくらいのことはしてもおかしくない。

しばらくはアニスフィアの私用に駆り出されそうな予感を覚えたクルーガーは、先ほどよりも深めにため息をついた。

 

 

* * *

 

 

「それじゃ、ユフィにぴったりの魔道具を見繕ってみよっか!」

「はぁ・・・?」

「はぁ・・・」

 

魔女箒の調整が終わったということで離宮の外に出ると、そこではちょうどアニスフィアがユフィリアを誘って魔道具の紹介を始めようとしているところだった。

突然のことにユフィリアは困惑の声をあげ、クルーガーは予想通りの展開に軽くため息をついた。

アニスフィアも、扉が開いたことでクルーガーに気付いて近づいた。

 

「クルーガー!魔女箒の調整ありがとう!どう?いい感じ?」

「えぇ。簡単に暴走して地面や壁に突っ込んだり窓を突き破ることはないでしょう」

「さーて、それじゃあさっそく試していこっか!まずははい、これ!」

 

クルーガーの小言を全力でスルーしたアニスフィアは、そのままの勢いでマナ・ブレイドをユフィリアに手渡した。

 

「これはマナ・ブレイドって言ってね、実用性で言えば今のところ私の最高傑作!」

 

そう言って、アニスフィアはマナ・ブレイドの説明を始める。

対するユフィリアは、初めて触れるものにおっかなびっくりになりつつも、アニスフィアの説明を受けながら起動させている横顔はわくわくしているようにも見えた。

その様子を、クルーガーは出来るだけ水を差さないように少し離れた場所で見守る。

 

(それにしても、令嬢なのに剣術まで嗜んでいるのか。武闘派なマゼンタ家らしいとも言えるが、男の立つ瀬がないな)

 

ユフィリアの剣筋は達人というわけではないが、それでも素人と比べればかけ離れている。おそらくは現役の騎士に匹敵するだろう。それに加えて魔法の才能にも恵まれており、王妃教育を受けているため教養やマナーも隙が無い。

これほどの才女を自分から手放すとは、いったいアルガルドはどういうつもりなのか。

そこまで考えて、クルーガーは自身の考えを改めた。

 

(いや。だからこそ、か・・・)

「よしっ、じゃあ今度はこれを試してみよう!」

「これは・・・」

 

そんなことを考えているうちに、アニスフィアは魔女箒を取り出した。

すると、ユフィリアが目に見えて怪訝そうな表情を浮かべた。

 

「だ、大丈夫!夜会の時みたいなことにならないようにクルーガーが調整してくれたから!」

「それは泳いだことがない人間を『大丈夫だから』と言って湖に放り込むようなものですよ。最低限補助は必要でしょう」

 

ここで、見かねたクルーガーが2人の下に近づいた。

ユフィリアは軽く体を震わせて少しクルーガーから距離をとったが、そんな自分を律するように胸の前で拳を握って元の場所に戻った。

 

「そもそも、あれはアニス様だからこそどうにか形になっているだけで、他の人に勧めるようなものではありません」

「それは、そうかもしれないけど・・・」

「まぁ、私も絶対にダメだと言っているわけではありません。速度を抑えた上での低空飛行であればいいでしょう」

「は~い」

「あの・・・ずいぶんと遠慮なく接していますけど、お2人はどのようなご関係で・・・?」

 

2人のやり取りを見て、あまりにも近すぎる距離感にユフィリアは困惑せずにはいられなかった。

片やこの国の王女であり、片や(自称)根無し草の旅人。本来であれば交わることはなかっただろう2人が、なぜこのように共に行動しているのか。

アニスフィアとクルーガーもその辺りの詳しい事情を話していなかったことを思い出し、説明することにした。

 

「どういうも何も、アニス様の相談役であり、それ以上でもそれ以下でもありません。ですが、強いて言うなら教師と生徒に近いでしょうか」

「だねー。いろいろと面白い話をしてくれたりもするし、魔道具についても的確にアドバイスしてくれるからね。すっごい助かってるよ」

「最初の出会いからして、いろいろと言いたいことはありますけどね。なにせ、空を飛ぼうと風の精霊石を使って城壁を飛び越えていましたから」

「え?」

「そこで、偶然通りがかったクルーガーに助けてもらったんだよね。まぁ、私が衛兵から逃げようとしたら捕まえられたけど」

「あのまま逃がすわけにもいかなかったでしょう。ですが、それがきっかけとなって国王陛下に謁見することとなって、その流れでアニス様の相談役をさせていただくことになったわけです」

「あれからもう7年だっけ?懐かしいね~」

 

昔のことを懐かしみながら話合うアニスフィアとクルーガーを見て、ユフィリアはその姿をふと羨ましく思った。

だが、何が羨ましいのかは自分でもわからず、そもそもそのような感情を抱くことすらほとんど初めてであったため、自身の感情を持て余し気味になってしまい俯いてしまう。

 

「えっと、ユフィリア?大丈夫?」

 

ユフィリアの様子を見たアニスフィアが、不安げな表情を浮かべてユフィリアの顔を覗き込む。

ユフィリアは王族に心配をかけさせてはいけないと笑みを取り繕おうとするが、その前にクルーガーが身をひるがえして声をかけた。

 

「やはり、これ以上ユフィリア嬢に無理をさせるわけにはいきませんね。私はこれで失礼いたします」

「あー、うん。ごめんね、わざわざ来てもらったのに」

「構いません。今はユフィリア嬢が最優先ですから」

 

今日はここまでということで去ろうとするクルーガーだったが、その前にふと立ち止まった。

 

「あぁ、その前に。ユフィリア嬢が何を思っているのかについては敢えて触れませんが、アニス様にとって、過ごしてきた時間と距離感はあまり関係ありません。一度心を許せば、たいていは同じ感じになります。ですが、だからと言ってユフィリア嬢も私やイリアと同じような関係に、とはならないでしょう。とはいえ、今はまだ過ごし始めたばかり。決して焦らず、この療養でアニス様とご自身を見つめ直していただければ、と思います」

 

それだけ言って、今度こそクルーガーはこの場を去った。

アニスフィアはクルーガーの言っていることがいまいち飲み込めなかったが、ユフィリアは自身の内に秘めた思いが暴かれたような感覚を味わった。

だが、不快感を覚えるようなことはなく、むしろストンと腑に落ちるような感覚すらあった。

たしかに、アニスフィアについてもクルーガーについても、今の自分は知らないことだらけ。

であれば、クルーガーの助言に従えば、あるいは・・・。

そんな思いを胸に、少し持ち直したユフィリアはアニスフィアの補助を借りながら魔女箒の試運転を行った。

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