出番はありますが主役ではないです。
というわけで、原作パクリにならない程度にめっちゃ端折りつつ進めていきます。
でも、下手したらこれ含めても3話くらい書かないといけないかも・・・。
ドラゴンを前にしてから興奮を抑えきれないアニスフィアは、獰猛な笑みを浮かべながら一気にドラゴンがいる高度まで飛び上がった。
対するドラゴンは、先ほどまでは悠然と空を飛んでいたが、アニスフィアが飛び上がってきたことに気付くとそちらに視線を向けた。だがそれは、敵や獲物を認識したというよりは羽虫の羽音が聞こえたところに思わず目を向けたといった様子で、根本的に取るに足らない存在であると思っているかのようなものだった。
「初めまして!そして喰らえェッ!!」
それにまったく臆することなく、アニスフィアはむしろ興奮に身を任せて叫びながらマナ・ブレイドで斬りかかった。
だが、魔女箒による加速の勢いも加わった渾身の一撃はドラゴンの鱗によって阻まれてしまった。
「ッ、なに、この・・・!」
いや、厳密にはドラゴンの鱗に阻まれたというよりも、“何か”に引っかかって刃がこれ以上進められない、というような感覚に近かった。
アニスフィアはいったん魔力刃の出力を落とすことでそのまますり抜け、どうにか姿勢を立て直した。
だが、そこで息を吐く暇もなくドラゴンが尻尾を振り回してアニスフィアを叩き落そうとする。
「ちぃッ!」
アニスフィアは魔女箒の出力を最大にして急加速することで、やや降下しながら尻尾を回避した。
すぐに高度を戻そうとするが、この回避のために降下したことでドラゴンに上を取られてしまい、ドラゴンが頭上から口を開いてアニスフィアを丸のみにしようとしていた。
口のサイズ、凶悪な牙ともに吞み込まれたらただではすみそうになく、吞み込まれまいとアニスフィアは方向転換してドラゴンの噛みつきを回避しようとする。
「“ウィンドブラスト”!」
その直前、ドラゴンの横顔を竜巻がたたきつけ、狙いが逸れたことでアニスフィアは余裕をもってドラゴンと同じ高さに戻ることが出来た。
だが、アニスフィアに安堵の息を吐く暇はない。
すぐさまアニスフィアの危機を救った人物の元へと急行した。
「ちょっとちょっと!なんでユフィがいるの!?ってそれ、クルーガーの杖じゃん!」
「そのクルーガーに、アニス様のことを頼まれたのです!」
「クルーガーが!?あーもう過保護なんだからぁ!」
「アニス様が無理をなさるからでしょう!」
「それはそうだけど・・・っ!」
ドラゴンを相手にしているとは思えない痴話喧嘩を繰り広げながらも、ドラゴンから片時も意識を外していなかったアニスフィアはユフィリアの腕を引っ張ってドラゴンの噛みつきをなんとか回避した。
「とにかく、その話は後にしよう!今はドラゴンの相手をしないと。さっきは攻撃が通用しなかったし、もう一回思いっきり・・・」
「そのことですが、先ほどドラゴンが魔力障壁を纏っているところを見ました」
「えっ、それって・・・」
「理屈でいえば、マナ・ブレイドと同じです」
先ほど、ユフィリアはアニスフィアよりも遅れて上空へと飛び上がった。
そのおかげで、ユフィリアはアニスフィアとドラゴンの戦闘の全体を俯瞰することができ、マナ・ブレイドを受け止めた絡繰りを看破していた。
とはいえ、理屈はマナ・ブレイドと同じではあるが、アニスフィアは過去に同じような魔道具を作ろうとしたが、可動部の調節などの問題で実現がほぼ不可能と判断して開発を断念した。つまり、ドラゴンは膨大な魔力を持つと同時に高度な魔力操作を行えるということでもある。あるいは、問題をものともしないほどの魔力を有している、という可能性も存在するが。
対策方法は、魔力障壁を破れるだけの大出力の一撃を放つか、ドラゴンの魔力が尽きるまで攻撃を続けるしかない。
だが、アニスフィアのマナブレイドであれば魔力を切り裂けるため、ドラゴンに対して有効打になり得る。
「なるほど。それなら、このまま攻めるのみだね!ユフィリアは引き続き援護と観察をよろしく!」
そう言って、アニスフィアはユフィリアの返答を聞かずに再び単身ドラゴンへと突撃し、ユフィリアはドラゴンの攻撃範囲より少し離れた位置から再びアニスフィアとドラゴンの戦闘を観察する。
出来ることなら、ユフィリアもアニスフィアと共に動きたかったが、今のユフィリアでは1人であれほどの高速飛行をしながらの戦闘は難しい。
そのため、アニスフィアが巻き添えを喰らわないように風魔法の発動を待機させながらドラゴンの挙動を観察する。
(それにしても、あの巨体と翼でどのようにして飛んでいるのでしょうか・・・)
ユフィリアも魔女箒やクルーガーの杖による飛行を体験しているため、空を飛ぶのにどれだけのエネルギーが必要なのかはそれなりに理解している。
それを踏まえると、ドラゴンのあの巨体を1対の翼だけで浮かび上がらせられるとは到底思えない。
そのことを疑問に思っていると、アニスフィアがさらに出力を上げたマナ・ブレイドによってドラゴンの魔力障壁を鱗ごと切り裂いた。
それによってドラゴンはアニスフィアを明確な脅威と認識したのか、翼を大きく羽ばたかせて強風を巻き起こしてアニスフィアを弾き飛ばそうとする。
「翼に魔力が・・・あれは、風の固有魔法・・・?」
翼のサイズとは釣り合わない風の勢いに加え、巻き起こる風に僅かながら魔力を感じたことで、ユフィリアはドラゴンの飛行の正体が固有魔法によるものだと看破した。
このことをアニスフィアに知らせなければと、ユフィリアは危険を承知で近づこうとする。
だが、ユフィリアが行動に移すよりも早くドラゴンの行動がさらに変化した。
翼から巻き起こった風とは比較にならないほどの魔力がドラゴンの口元に集約していき、光と共に魔力の波動がまき散らされる。
明らかな魔法の発動の気配。その標的は、言わずもがなアニスフィアだ。
「ダメッ!」
ユフィリアが咄嗟に叫んだのと同時に、ドラゴンの口から光の奔流が放たれた。
それは特別な魔法ではなく単純な魔力の放出だったが、だからこそ純粋に破壊をまき散らす暴力の閃光としてアニスフィアに襲い掛かる。
アニスフィアはどうにかギリギリのところで回避していたが、離れた場所で飛んでいたユフィリアですら姿勢制御に集中しなければならないほどの威力を至近距離で浴びたアニスフィアがタダで済むはずもなく、地上へと落下していく姿が見えた。
幸い、アニスフィアが落ちる場所に人や魔物の影はないが、この高さから落ちて無事でいられる保証はない。
それこそ、最悪の場合アニスフィアが死亡する可能性すら・・・
「アニス様ッ!!」
瞬間、ユフィリアの中で何かが弾けたかのような感覚と共にアニスフィアの下へと急加速した。
アニスフィアですら体感したことが無いほどの速度で飛翔するユフィリアの視界はスローモーションのようにゆっくりと流れていき、木々に接触するすんでのところでアニスフィアを捕らえ、減速の姿勢に入る。
だが、限界を超えるほどの出力に加え重力による加速も加わった勢いはそう簡単に殺せるものではなく、十分な減速が出来ないまま木々に衝突しそうになる。
ならばと、ユフィリアは風魔法によるクッションを生み出しながら、我が身を盾にするようにアニスフィアの腕の中へと抱え込んだ。
かつてアニスフィアが助けてくれたように、今度は自分が何が何でも助けてみせる。
そんな覚悟と共に、ユフィリアは激突の衝撃に備えながらギュッと目をつぶった。
次の瞬間、2人の墜落地点にドラゴンのブレスもかくやというほどの爆風がまき散らされた。
「アニス様!ユフィリア嬢!お2人ともご無事ですか!?」
朦朧とする視界の中、2人に呼びかける声でユフィリアは意識を取り戻した。
「クルーガー・・・?」
「ユフィリア嬢、どうやら大事ないようで何よりです」
「私は・・・?」
「ドラゴンがブレスを放った直後、お2人はとてつもない勢いで地上に落下していたんです。ですが、以前仕込んでおいた安全装置が機能したようですね」
クルーガーの安全装置という聞き覚えのない言葉にユフィリアは首を傾げるが、地面とぶつかる直前に感じた爆風のことを思い出した。
おそらくは、何らかの方法で地面との距離や飛行速度を計測し、それに応じた風のクッションを生み出したのだろう。視線を動かせば、小規模とはいえ大爆発が起きたかのようなクレーターができていた。
「とはいえ、安全装置の風魔法が強すぎたせいで逆に落下の衝撃を受けてしまったようです。後で要調整ですね」
「私とアニス様は、どれだけ気を失っていましたか?」
「気絶まではしていません。ですが、落下の衝撃で頭が揺らされていたようで、だいぶ朦朧とされていました」
「そうですか・・・」
「ゲホッ・・・ゲホッゲホッ!」
ユフィリアとクルーガーが現状の擦り合わせをしていると、アニスフィアがせき込みながら意識を取り戻した。
それに気づいたユフィリアが慌ててアニスフィアに問いかける。
「アニス様っ!ご無事ですか!?」
「ユフィ・・・?え?受け止めて、くれたの・・・?」
「それもそうですが、クルーガーが魔女箒に仕込んだ安全装置が上手く作動してくれたこともあります」
「えぇ・・・?そんなの聞いてないんだけど・・・」
「言っていませんでしたからね。その暇がなかった、とも言えますが」
まだ意識が朦朧としているのか、アニスフィアは頭を押さえながら起き上がり、そしてすぐに意識をハッとさせて上空に視線を向け、すぐさま魔女箒に乗って飛び立とうとする。
だが、クルーガーがそれをアニスフィアの肩を掴んで止めた。
「少しお待ちください」
「そんな暇は・・・ッ!」
アニスフィアが反論しようとすると、糸が切れた人形のように膝から崩れ落ちた。
魔薬の効果時間が切れたのだ。
それでも、アニスフィアは一切ためらうことなく懐から魔薬が入った瓶を取り出す。
それを見たユフィリアは、咄嗟にアニスフィアの手を掴んだ。
「ユフィ?」
「まだ戦うのですか?今、貴女は死にそうになったのですよ!?その薬だって、副作用があるのでしょう?それでも頼らないと戦えないのに!それしか貴女はないのに!あんな化け物に魔法も使えずに何故挑もうと思うのですか!?」
今まで見たことがないほど感情を剥き出しにするユフィリアに、クルーガーは目を丸くした。
とはいえ、ユフィリアの言うことは間違いはない。
たしかにパレッティア王国の貴族はいざという時に魔物と戦うようにと教育されているが、それでもドラゴンの相手はためらうほどだ。それに加え、アニスフィアは普通の貴族や王族と違って、そのような教育を施されてはいない。
アニスフィアには、ドラゴンと戦う義務も使命も国から与えられていない。
「貴女は、なぜ・・・」
「・・・理由なんて、簡単だ」
だが、それでもなお、ドラゴンを前にして笑みを浮かべるほどに、立ち向かうだけの理由がアニスフィアにはあった。
「“それが、私が思う魔法使いだから”」
アニスフィアにとって、魔法使いとは人々の笑顔のために魔法を使う者のこと。
であれば、人々から笑顔を奪うドラゴンは放っておけるものではない。
そして、アニスフィアにはそれができるだけの魔法がある。
魔学や魔道具といった、目に見えるものの話ではない。
アニスフィアにとっての魔法とは、憧れであり、願いであり、祈りだ。
自分が胸を張れる力のために、自分が望む景色を見るために、諦めることなく立ち向かう原動力こそが、ドラゴンが相手でも臆せずに突き進むことができる“魔法”なのだ。
「これは私が望んでやることだ。だから、ユフィは無理をしなくても・・・」
すっかりドラゴンに怯えているように見えたユフィリアを気遣うように、アニスフィアはユフィリアの手を解こうとした。
すると、ユフィリアはさらに強くアニスフィアの手を掴んだ。
「・・・私には、わかりません。でも、でもそれが、その思いが私をここにいさせてくれるものなら、私はそれこそ守りたいんです。だから行かせたくない。貴女に死んでほしくないんです」
一筋の涙を流しながら必死な表情で訴えかけるユフィリアに、アニスフィアは目を逸らすことなくユフィリアの言葉を受け止める。
「今行かないと、貴女が貴女じゃなくなってしまうなら!せめて私も連れて行ってください。決してお邪魔にはなりません。貴女の魔法を理解したいのです。空を飛ぶ感覚は先ほど掴みました。魔法による補助も、防御もできます。貴女を支えることができます。だから・・・だからどうか、私も・・・!」
「私からも、ユフィリア嬢を連れて行くことを勧めます」
祈りを捧げるようにアニスフィアの手を両手で掴むユフィリアを見ながら、クルーガーもまたユフィリアの背中を押していく。
「アニス様は、少々1人で背負い込みすぎるきらいがあります。それに・・・助けられた人間は、その恩を返したくなるものです。ですから、少しは恩返しを受けられても良いでしょう。貴女様は、もうすでに一人ではないのですから」
「そっか・・・うん、そうかもね」
クルーガーの言葉も受け、恐怖と昂揚で気が逸っていたアニスフィアの心が落ち着きを取り戻していく。
そして、今度はアニスフィアの方からユフィリアの手を握った。
「わかった。一人で行かない」
「アニス様・・・」
「でも、止めないといけない。だから行かないといけない。私一人じゃやっぱり厳しい。だからさ、ユフィ・・・付き合ってくれる?」
「はい・・・はい。貴女がそう望んでくれるなら、どこまでもお供します」
「・・・ユフィは大袈裟だなぁ」
「ドラゴンが相手なのです。大袈裟なくらいでちょうど良いでしょう」
「それもそっか」
とびきりの綺麗な表情で微笑むユフィリアにアニスフィアは苦笑を浮かべるが、クルーガーから対象を指摘されて思い直した。
「では、私の杖はまだ必要ですか?」
「いや、いい。今度は私の後ろに乗ってもらうから。それでいいよね?」
「はい!」
アニスフィアの提案にユフィリアが力強く頷き、魔女箒の後ろに乗って腰に強く腕を回したのを確認してから、アニスフィアは副作用を恐れずに魔薬を一気に2つ取り出して噛み砕いた。
「行くよ!!」
そう言って、アニスフィアとユフィリアは最初の時よりも速く力強く、再び空へと飛び上がっていった。
「・・・まったく、世話が焼ける。頼んだぞ。こちらとしても、ドラゴンを討伐してもらわなければ困るんだからな」
あれ?ユフィが原作より重くなりそう・・・なりそうじゃない?気のせいかなぁ。
まぁ、さらに重くなってくユフィもそれはそれで有りなのでヨシ!
ただ、その場合うっかりアニス様を圧殺しないよう気を付けなければ。
今さらですが原作だと「マナブレイド」じゃなくて「マナ・ブレイド」だったので今までの分を修正しました。
途中までちゃんと書けてたのに、なぜ気づかなかったわれぇ・・・。