いやね?これでも最近は多少寛容にはなってるんですよ、一応。
まぁ、NTRとか陵◯ものを書こうものなら、その時はあらゆる苦しみと死を以て償わせますが。
それはそれとして、俺はこのまま『百合の間に絶対挟まらない賢者』ムーブを続けるからよ、俺はその先にいるぞ!
だからよ、止まるんじゃ、ねぇぞ・・・。
「そういうわけですので、アニス様は後日開かれるドラゴン討伐の祝賀会に主役として参加してください。当然、その場では王女らしく振舞ってもらいます。ついでに、ユフィリア嬢がアニス様の研究助手を務めていることを公表しつつ、グランツ様にアニス様に近づこうとする他貴族を牽制してもらい、やんわりとアニス様がグランツ様の派閥の庇護下にあるということを匂わせます。それでよろしいですか?と言っても、拒否権なんてありませんが」
「うえぇ~・・・」
アニスフィアが目を覚ましたとイリアから連絡が届き、すぐさまオルファンスたちは離宮に向かってアニスフィアの様子を確かめた。
そして、魔薬による副作用と魔力枯渇による疲労困憊以外の症状が見られないことから、早々にクルーガーは今後の方針について説明した。
それを聞いたアニスフィアは、心底嫌そうな表情を浮かべ、そのままベッドにダイブして枕に顔をうずめながら全身で拒否感情をあらわにした。
「うぅ~!嫌だ嫌だ!祝賀会なんて嫌だ、王女らしくなんて嫌だー!!」
「アニス様、我が儘を仰らないでください」
「クルーガーだって、私がそういうの苦手だって知ってるでしょー!?」
「それは当然です。ですが、そうでもないと罰にならないでしょう」
「ううぅぅぅぅ!!」
アニスフィアの祝賀会への出席は、アニスフィアの独断専行に対する罰を兼ねたものだ。
当然だが、今回のドラゴン討伐は国民に隠し通せるようなものではなく、独断専行を大々的に罰すると国民からの不満が爆発しかねない。だからといってお咎めなしといかないのは、そうしたら今度は貴族から反感を買いかねないからだ。
そのため、アニスフィアの苦手なことをさせることで処罰とする、という形式をとるには祝賀会を開くのが最も適していたのだ。
だからこそアニスフィアも文句を言いづらいのだが、それはそれとして気に入らないことがあった。
「だったら、クルーガーだって祝賀会に参加しても・・・」
「私は貴族ではないので難しいですし、そもそもドラゴン討伐には直接参加していません。ですので、私は城下町で冒険者たちと打ち上げをすることにします」
「ずるいずるいずるい!!」
アニスフィアが気に入らないのは、クルーガーが祝賀会に参加しないということだった。
ドラゴン討伐の要になった魔女箒はアニスフィアとクルーガーが共同で開発したものであり、さらにクルーガーが付け加えた機能によってアニスフィアとユフィリアは一命を取り留めた部分もある。だからこそ、アニスフィアからすればクルーガーも十分参加する権利、というより義務があってもおかしくないのだが、クルーガーが言う通り、爵位を持たないクルーガーが祝賀会に参加するのは他貴族が許しがたく、クルーガーが参戦したのはあくまでスタンピードであってドラゴン討伐ではない。
そのため、この祝賀会にクルーガーは参加しない方針で固まっていて、オルファンスとグランツも同意していた。
当然、それでアニスフィアが納得できるかどうかは別だが。
「あまり駄々をこねないでください、アニス様。少しでも目に見える形で行動しないと、ドラゴンの素材について何を言われるか・・・」
「それはダメ!あれは私のものだから!」
クルーガーがドラゴンの素材について言及すると、突然アニスフィアの表情が変わった。
思った以上に必死な様子のアニスフィアにオルファンスは思わずのけぞりそうになるが、物が物であるため何も言わないわけにはいかない。
「お前と言う奴は、あれが国にとってどれだけの宝になるのか分からんのか!?」
「全部とは言いませんから!少なくとも魔石は渡せませんよ!あれは私が
「・・・なに?託されたじゃと?」
「ドラゴンから託されたんです。だからせめて魔石だけでも私にください!」
「まっ、待て待て・・・お前はドラゴンと対話したのか!?」
「あれは・・・独り言ではなかったのですか・・・?」
あまりに突拍子のないことにオルファンスは困惑を隠しきれないが、その場にいたユフィリアには心当たりがあった。
アニスフィアがドラゴンの生死を確認するために近づいた時、アニスフィアはまるで誰かと話しているかのような独り言をこぼしていた。
あの時はアニスフィアもボロボロで気を失ってしまったことから深く追求しなかったが、ここではっきりと言われてはアニスフィアの言葉を妄言と否定することはできない。
予想外の事案に、オルファンスはクルーガーに問いかけた。
「クルーガーよ。実際、そのようなことがありえるものなのか?」
「そうですね。私もドラゴンと遭遇したことはほとんどないので、はっきりとしたことは言えませんが・・・ドラゴンの中には知能を有する個体が存在すると、風の噂で聞いたことはあります。同時に、ドラゴンはただの魔物ではない、とも」
「ただの魔物ではない、とは?」
「そこまでは何とも。ですが、噂であれそのような話があるのです。アニス様が仰ったこともあり得ない話ではないでしょう」
「まったく、次から次へと厄介ごとを・・・」
あまりの出来事に、オルファンスは思わず眉間を押さえる。
「まぁ、そのことについてはともかくだ。どのみち祝賀会には参加してもらうからな。ユフィリア、アニスのマナーの復習を手伝ってほしい。あと逃げぬよう監視もな」
「畏まりました、陛下」
「いやだあああああ!マナーの復習とかやだああああ!」
「あとダンスもあるからな。王族として恥ずかしくない程度に覚え直せ」
「いーーやーーーだぁーーーー!!」
「では、自分はこれで失礼します。アニス様、どうか頑張ってください」
「クルーガーの薄情者ぉーーーー!」
アニスフィアは限界まで駄々をこねたが、ドラゴン討伐の疲労が抜けきっていない状態ではどうすることもできず、ユフィリアとイリアによって万全の監視状況を整えられた上でマナーやダンスの復習に励むことになった。
* * *
「お疲れ様です。それではいったん休憩といたしましょう」
「あ"ぁ~、つっかれたぁ・・・」
アニスフィアが目覚めてから数日後、疲労が十分抜けたということで本格的にアニスフィアのマナーとダンスの復習が始まった。
基本的な部分は幼少の頃に習ってはいるが、それ以降はまったくする機会がなかったため、その分詰め込み教育となっている。さらに、ドレスを新調するための採寸も行うため、祝賀会まではまったく気の休まることがないスケジュールになる予定となっている。
ちなみに、クルーガーはマナーやダンスについては門外漢なため、祝賀会が終わるまで暇を出されておりこの場にいない。
(アニスフィアからすれば)地獄の講習を受けることなく気ままに過ごしているクルーガーのことを恨めしく思いながら、それはそれとしてドラゴンから告げられた言葉に思いを馳せた。
『あの賢者の助力もあらば、有効に扱えるであろう』
『永き時を生き、多くの傑物に知恵を授けてきた賢き者だ。あの者とそなたであれば、我が骸を渡すに値する』
ドラゴンの言う賢者とは、いったい誰のことを指しているのか。
もしかしたら、自分が会ったことのない赤の他人のことを言っているのかもしれないが、すでに会ったことがあるかのような口ぶりにも思える。
そして、仮にそれが正しいとして、アニスフィアの中に思い当たる人物は一人しかいない。
(クルーガー・・・)
数年前、初めて会った時から的確にアドバイスを与えてくれた、旅の魔法使い。
だが、その出自はほとんど分かっておらず、本人に尋ねてもこちらからは確認しようがない情報ばかり。プライバシーも曖昧にはぐらかされることが多く、よく理解しているとは言い難い。
だが、身近に接している者のほとんどから信頼されており、あのユフィリアでも拒否感情が少ないように見えた。
もしクルーガーがドラゴンの言う“賢者”だったとして、なぜ自分に様々なアドバイスを与えてくれるのか。
その説明はシルフィーヌと会った時に聞きはしたが、本当にあれが全てなのか、今となってはそれすら疑わしい。
「アニス様、どうかされましたか?」
そこに、休憩してからずっと首を捻って悩んでいるアニスフィアのことが気になったのか、ユフィリアが顔を覗き込みながら尋ねかけた。
イリアが淹れた紅茶を飲みながら、アニスフィアは曖昧気味に首を横に振った。
「別に何でもないけど?」
「本当ですか・・・?」
「いや、本当に大したことじゃないから・・・あー、ユフィってクルーガーのことどう思う?」
最初ははぐらかそうとしたが、ユフィリアからしつこく問い詰められそうな気配を感じたのと、それはそれとして気になることが思いついたことで、ユフィリアにクルーガーのことを尋ねてみた。
「クルーガーですか?そうですね・・・頼りになる方だと思います。アドバイスも的確ですし、何よりアニス様の扱い方が手慣れていらっしゃるので」
「何か相談とかしたの?」
「はい。数回だけですが」
(ユフィがこれだもんな・・・)
ユフィリアは、あのマゼンタ公爵の娘だ。当然、良くも悪くも人との接し方については叩き込まれている。そのユフィリアがここまで信頼しているというのは、やはり不自然と言うしかない。
(でも、クルーガーが何かをしたって感じはしないし、悪意とか害意とかも感じないし、やっぱり悪い人じゃないとは思うけど、いい人って言え・・・る、かな?わかんないなぁ)
ドラゴンが口にした“賢者”という単語が、どうにも頭の隅に引っかかる。
『多くの傑物を導いてきた』らしいのだから悪人ということはないだろうが、それでもクルーガーが何のためにそのようなことをしているのか、目的がどうにもはっきりしない。
その辺りのことを一から十まで問いかけたいところだが、どうせはぐらかされるだろう。
どうすればクルーガーから話してくれるのか、考えても良い案が思い浮かばない、というより過去に試して尽く失敗している。
結局、この休憩が終わってからも、アニスのもやもやが晴れることはなかった。
* * *
「そんな感じになっているんだろうなぁ」
その頃、クルーガーは城下町の公園のベンチに座ってそう呟いた。
実のところ、すでにアニスフィアがクルーガーに対して疑念を抱いていることは、それこそ最初のころから気が付いていた。
そして、最近では治まっていたその疑念が、ドラゴン討伐を期に再燃しているということも。
(十中八九、あのドラゴンが余計なことでも口走ったか。とはいえ、あの様子だと確信に近い情報は与えられていないようだが・・・まぁ、今際の際だ。私のことばかりにかまけることなどあるはずもない)
ドラゴンの知能は非常に高く、独自の価値観を構成している。
つまり、魔物における絶対の掟である『弱肉強食』。故に、自身より強いものに喰われることは本望であるとも言える。
だからこそ、死に瀕したドラゴンがは自らを倒した強者に己の存在を刻むことを優先させる。それが“稀人”であるならなおさら。
であれば、残されたわずかな時間を余計なことに費やしたりはしないだろう。
(今回の戦いで、アニス様の魂はより高位のものへと昇華することになった。あのドラゴンもアニス様のことを相当気に入ったのか、随分と味な真似をしてくれたものだ。とはいえ、私としても
アニスフィアとドラゴンがどのような会話をしたのか、クルーガーに知る由はない。
ないが、その内容はアニスフィアの
それが、クルーガーにとって都合のいいものである、ということも。
(とはいえ、まだ不確定要素が多いのも確かだ。最大の懸念点は、やはりレイニ・シアン令嬢か・・・)
「はてさて、これからどうなることやら」
そう零しながら、クルーガーは空を仰いだ。
その視線の先には、いったい何が映っているのか。
クルーガー以外に、それを知る者はいるはずもなかった。
ダンスパートは丸々カットじゃい。
次から吸血鬼編に入ります。