やるかどうかは別ですが、転天のbadエンドってルートによってはフロムみたいな世界観になりそうで、そんな二次創作を読んでみたい気持ちがふと湧いてしまいました。
問題は自分はそんな作品が書けるほどフロムに精通していないということ。某上級騎士さんの動画はよく観ますけど、逆を言えばそれだけですからね。
まぁでも、こっちでいいところまでやって余裕ができたら、そんなifストーリーを別作で書いてもいいかもしれませんね。
「ふぅ・・・取り乱して悪かったわね」
「悪びれもなくよく言うわね」
「こう言ってはなんですが、ティルティ嬢も大概でしたので、しっかり反省してください」
完全にテンションが上がっていたティルティをなだめるのに少しばかり時間を要したものの、どうにか元に戻ったところでユフィリアが気になることを尋ねた。
「えっと、ティルティ嬢・・・?」
「呼び捨てで構わないわよ、ユフィリア様」
「・・・その、“呪いの蒐集家”というのは、どういう?」
マイペースなティルティに調子を崩されそうになりながらもどうにか持ちこたえ、疑問を口にした。
対するティルティは悩むように顎に指を添え、根本的なところから尋ねることにした。
「ユフィリア様は私の境遇をどこまで知っているの?私がクラーレット侯爵家の恥さらしということは知っているかしら?」
「あくまで噂の範囲でなら。それと、アニス様から体質のことも少し」
「そう。なら話が早いけど、そういうことだから私にとって、魔法と言うのは“呪い”とそう変わらないものなのよ」
ティルティの物言いにユフィリアは少なからず驚きを露わにしたが、それは両方にとって無理のない話だった。
魔法というのは精霊からの祝福であり、当然ユフィリアもそのように教わってきた。そしてそれはティルティも変わらないのだが、それでも使えば使うほど自分が狂っていく魔法というものは、ティルティにとって間違いなく“呪い”と言えるものだった。
当然、少なからず精霊信仰や魔法主義に篤い貴族であるクラーレット侯爵家と相いれるものではない。
「そんな経験をしたものだから、すっかり魔法に興味をなくしてね。代わりに薬師になる道を選んだのよ。後は医学も嗜んでいるわ」
「それは・・・自分が苦しんだから、という動機なのでしょうか」
「ティルティはそんな殊勝な奴じゃないわよ」
「そうでしたら、私たちとしてもありがたかったのですが」
ユフィリアの見当違いな解釈にアニスフィアは思わず鼻を鳴らし、クルーガーはため息を吐きながら訂正を加えた。
「そもそも呪いというのは、薬や魔法で治療できない症例全般を指します。逆に言ってしまえば、どのような手段であれ治療方法が見つかればそれは呪いではなくなります。そういうわけで、ティルティ嬢はそのような症例を見るのはお好きなのですが、解明はまだしも解決されるおつもりはほとんどありません。そうしては呪いではなくなってしまいますからね。だからこそ、“呪いの研究家”ではなく“呪いの蒐集家”なのです」
「はぁ・・・」
「ご丁寧に説明をどうも。私から言うことがなくなってしまったけど」
「ま、深いことは考えなくていいわよ。ただの変人って覚えておけばいいわ」
「あら、魔法が使えないくせに魔法の研究に命を懸けてるアニス様に変人って言われたくないわよ」
「はいはい、似た者同士という奴ですね」
「「似てないッ!」」
本人たちは否定しているが、それでも肝心なところでは息がぴったりになるあたり、やはりイリアの言う通りこの二人は似た者同士と言う他なかった。
そして、話題がだいぶ横に逸れてきたところで、ティルティは本題に話を引き戻した。
「それよりも、ドラゴンの呪いってどういうことよ?」
「私も感覚的なものでしかないけど、呪われた実感はあるのよ。ただ、それで具体的にどう前と変わったか説明できないというか、ドラゴンの知識から推察できるけど・・・」
そこまで言って、アニスフィアは一度言葉を切り、やや前のめりになっているティルティや心配そうに見ているユフィリアやイリアを気にしながら答えを口にした。
「感覚的な説明になるけれど、私はたぶん、ドラゴンに近づいていくんだと思う」
「ドラゴンに近づいていく?それはどういう・・・」
「大丈夫だよ。ちゃんと上手く活用できれば私にとって好都合な話よ」
不安げに手を伸ばしてきたユフィリアの手を握り返しながら、アニスフィアは安心させるように話しかけた。
その後ろで、クルーガーがアニスフィアがこれからしようとしていることを何となくだが把握した。
「好都合、魔薬に代わる新しい技術・・・ドラゴンから託された知識の中に、魔薬とは違う魔石の活用方法に関する技術がある、ということですか?」
「だいたいそんな感じ。上手くいけば、魔薬を使わなくても魔法が使えるようになるかもしれない」
「なるほど。ということは、具体的な手段もまとまっているということでしょうか?」
「うん、これがその構想かな」
そう言って、アニスフィアは魔石を運んでいたものとは別のカバンから資料を取り出してクルーガーに渡した。
クルーガーも渡された資料に目を通すが、最初は僅かに怪訝そうに眉を顰めただけだったが、読み進めるうちに眉間のしわは深くなっていき、読み終わると同時に今日一番のため息を吐いた。
「あら、その反応気になるわね。私にも見せなさいよ」
「えぇ、どうぞ」
次に、クルーガーの表情の変化から興味を持ったティルティが資料を受け取って内容を確認する。
ティルティが最初に見せた表情は呆れだったが、次第に不敵な笑みへと変わっていき、読み終えると資料を机に置いてからアニスフィアの方を見た。
「くくっ!相変わらずの破天荒さね。だけど、なるほど。貴方がこれを思いついたのがドラゴンからの受け売りと言うなら、確かに呪いだわ」
「あの、すいません。私とイリアにも資料を見せてもらっていいですか?」
クルーガーとティルティの反応に不安を覚えたユフィリアが手を上げ、それに気づいたティルティが資料をユフィリアに渡した。
ユフィリアとイリアの反応は2人よりも顕著で、ある程度読み進めたところで呆れ半分信じられない半分でバッ!とアニスフィアの方を見た。
「・・・本当に、これを自分に施すつもりなのですか?」
「うん。これは私には必要なものだと思っているから」
今回ばかりは、ユフィリアも否定的な感情が強いのか、明らかに渋るような反応を見せている。
だが、何かを言おうと口を開こうとしたものの、結局何も言えずに大きくため息を吐いた。
「・・・本当に、姫様には困ったものですね。止めても聞かないだろうところが尚更に」
イリアもユフィリアと似たような反応だが、それでも付き合いの長さと年季の差で飲み込むのはユフィリアよりも早かった。
アニスフィアも少しばかり申し訳なさそうにしながら、それでも止まることは考えていないと言わんばかりに提案した。
「もちろん、今すぐってわけじゃないよ。ちゃんと検証をしてから施すつもり。その過程で問題があったら施さないから。だから協力してほしい、4人にね」
「私は面白そうだから問題ないわ」
「私には姫様が本当にそうされるというのなら、止める権利はありません」
「自分もです。というより、止めようと思って止まってくれたことなんてありませんしね」
ティルティは楽しそうな笑みを浮かべながら、イリアはどこか諦めたような様子ながらも淡々と、クルーガーはイリアよりも感情を露わにしながら、それぞれアニスフィアの提案に頷いた。
残るユフィリアも悩む様子を見せながら、それでも切実に訴えかけるように口を開いた。
「・・・わかっています。止めようとしたって、貴女は本当に必要なときは一切譲らないと。だから、せめて検証だけはしっかりとさせてください。それが条件です」
条件付きではあれど、ユフィリアもアニスフィアの提案を呑んだ。
こうして、いつもの4人にティルティが加わった5人で、表には決して出せないであろう秘密の実験が始まることとなった。
* * *
のだが、実際は必ずしもそうなるというわけではなかった。
というのも、アニスフィアが提案した新技術は男のクルーガーが一緒にいるところでは施しづらいものであり、そのためクルーガーの役目は材料などの開発と処置を施した後の動作確認が主となる。
その結果、クルーガーには暇な時間が増えることになった。
「まぁ、それだけが理由ではないだろうが」
クルーガーが一緒にいると処置ができない(というよりイリアとユフィリアが許さない)のは事実であり、そのような技術を選んだのもそれが最も自身の目的に近い物だからというのも本音だろう。
だが、それを差し引いても、アニスフィアはクルーガーから気持ち距離を取るようになっていた。というより、一度離れて距離感を測り直しているようにも見えた。
「やはり、あのドラゴンから変なことでも吹きこまれたか。とはいえ、
そんなクルーガーは現在、ティルティが住んでいる別邸の庭で時間を潰していた。
そろそろ本格的に新技術をアニスフィアに施すということで、ユフィリアとイリアによって半ば追い出される形で庭で待っているようにと言いつけられたのだ。
ただ待ち惚けしているだけというのも落ち着かないため、庭の手入れをしながら待つこと1時間ほど。
屋敷の中からティルティが出てきた。
「おや、珍しいですね。まさかティルティ嬢が外に出るとは」
「ユフィリア様とイリアが離れようとしないから仕方ないでしょう?アニス様の処置は終わったわ。しばらくは様子見ってところね」
「そうですか」
ティルティの言葉に、クルーガーは満足げに頷いた。
その様子を見たティルティは、不機嫌さを隠そうともしないで鼻を鳴らした。
「ふんっ、随分と満足そうにしてるじゃない。最初はあまり乗り気じゃなかったんじゃないの?」
「おや、そう見えましたか。まぁ、最初は納得し難い部分もありましたが、こうしてやると決まった以上、それはそれ、これはこれです」
「最近、アニス様から嫌われてるようにも見えたけど?」
「さて、どうでしょう。今回は試すものがものですからね。距離を取られるのは仕方ないことでしょう」
「・・・相変わらず、掴みどころがないわね」
実のところ、ティルティは最初に会った時からクルーガーに対して警戒心を抱いていた。それこそ、最近のアニスフィアよりも。
「あなたなら、アニス様が言ってたことと、今回の処置の意味、分かるんじゃないの?」
「『ドラゴンに近づく』ということですか?」
「そうよ」
「たしかに、私にも思うところはあります。ですが、元々アニス様にはそのような節がありました。『魔法を使えるなら、たとえ人から遠ざかるとしても』、と。そして、あのドラゴンの呪い。偶然と言うよりは、運命的と言った方が前向きに捉えられるものでしょう?とはいえ、陛下がこれをお知りになったら白目を向いて倒られるでしょうが」
「いやに目に浮かぶわね、その光景」
嫌悪感を隠しもしないティルティと、あくまで友好的なクルーガー。この2人のやり取りは、アニスフィアのいないところで幾度も繰り返されてきたことだ。
「・・・本当に、いったいどんな手段を使ったのかしらね?陛下から、アニス様の相談役を打診されるだなんて」
「巡り合わせ、というものでしょう。あるいは、あのような形でアニス様と出会っていなければ、このようなことはあり得なかったかもしれません」
「かもしれないわね。あまりにもご都合的な気はするけども」
「どのような偶然も、積み重ねれば作為的に思われるでしょうが、本当にただの偶然の積み重ねと言うこともあります。証明のしようがないのが残念ですが」
「チッ」
「仮にも貴族令嬢が舌打ちをされるものではありませんよ」
今日もまた核心的な情報を掴めなかったことに、ティルティは舌打ちをした。
そのため、これだけは聞いておかねばならないことを、直球で尋ねた。
「・・・アニス様を人の道から遠ざけるようなことをして、あなたは何を企んでいるの?」
「割とノリノリで加担した貴女に言われたくはないですが・・・別に何も。私はただ、アニス様の願いをかなえるために力添えをさせていただくだけです」
「・・・チッ、そう」
今日もまた、呪いに焦がれる令嬢は、得体のしれない旅の魔法使いの腹の内を暴くことができなかったことに敗北感と苛立ちを覚えながら、一つ舌打ちをした。
ティルティはアニスよりも数段くらいクルーガーのことを警戒しています。
というかティルティくらいの反応が普通までありますが、他の貴族は『あいつ明らかに怪しいけど、こっちに害を与えないなら放っておこう。あの王女と関わりたくないし』という感じでアニスから距離をとっているので指摘される機会がほぼ皆無となっています。
逆にアニスに近い面々からは『アニス(様)が気に入ってるなら、まぁ大丈夫か』という感じで半ば放任気味になっています。一応、悪意に敏感なアニスに対する信頼もありますが。