喫茶リコリコ 地下の射撃場にて
千束とわたしとハチさんは自身のハンドガンで射撃練習をしている。ハチさんは時折、ハンドガンを置いて自身の左腕に着いている物を操作しているが今はこっちに集中しよう。
しかし、集中していても狙ったところに弾は当たらない。
それもそのはず。わたしが使っているのは通常の銃弾ではなく、店長謹製のゴム弾だ。
熱でゴム部分が溶け弾道がおかしくなるため、狙ったところに行かないのも当然である。
「なんですか?これ?」
「私も、当たんない。」
「だからですか。」
わたしは千束の今までの戦闘シーンを思い返す。
確かにこの弾では
「そう!近寄れば絶対当たる!!」
首を横に振りながら、ゴム弾から通常弾に切り替える。
「わたしには、無理ですね。この命中率では自分を守れない。」
マガジンを新たに装填し、ターゲットに向けて発砲する。
銃弾は思い描いた通りに進み、ターゲットの中心の赤い部分に命中していく。
「すごいね、たきな。機械みたい。」
「確かに、これは俺や千束にも真似できんな。実弾でそれだけ上手なら急所を避けられるだろ。」
「だよね、無理に先生の弾撃つことないよ?」
「思いの外、高いしな
「急所を撃つのが仕事だったんですけど?」
わたしは少し笑いながら言う。
「もう違うでしょ。」
千束は振り向きながら言ってくれた。
「そういえば、ハチさんが使っているものが気になるんですけど。」
「ん?ハンドガンはお前らが使ってるものと同じだぞ。コルトガバメント。」
「いえ、腕に着いている方です。」
「あぁ、こっちか。」
ハチさんは袖をまくりながらわたしに見せてくれた。
しかし、見たことのない装具だ。
よく見てみると左右同じものを着けているようだが若干違う。
どちらもナイフが飛び出すような作りだが、左側の物は収納されているナイフの横に銃口が付いていた。
「名称はリストブレード。アサシンブレードやヒドゥンブレードと呼ばれることもある。昔から存在しているものだ。まぁ、ちょっと俺用にカスタマイズされているが。」
「聞いたこともない武器ですね。」
「だろうな、歴史あるものだとしてもこれらを使っている人物達が表に出てくることはなかったからな。」
「どれくらい前からあるものなんですか?」
「記録に残っているものだと、古代エジプト時代の第26?いや、7だったか?まぁ、紀元前460年ぐらいの頃から使われているものだ。」
「そんなに昔からですか?!」
「あぁ、広まったのはプトレマイオス朝時代の皆さんご存じ、クレオパトラが友人にプレゼントしてそこから広まっていったらしい。まぁ、その友人にクレオパトラは毒蛇の毒で毒殺されたらいしけど。」
「歴史に詳しいんですか?ハチさんって。」
「あ、い、いや?別に詳しいってことはないよ。ちょっと前に気になったから調べたってだけで。」
ハチさんは明らかに動揺しながらわたしに返答する。
何か隠してあるが別に聞かれたくないならば聞かない。
その方が良いだろう。
「そうですか。」そう言って、わたしたちは射撃場を後にする。
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俺は今現在、夜道を歩いている。理由は何てことはない。ただの配達だ。それも、終了しリコリコへ向けて歩いている。
目的がもう目とは鼻の先にあり、店に入ろうとしたときに千束の「勝ったぁ?っしゃぁぁぁ!!」という声が聞こえてくる。
これはまた注意せねば。どうせまたクルミのゲームでもしているんだろ。
「おーい、千束。喜ぶのは良いが、少し声を抑えろ。外まで丸聞こえだし、ご近所さんにも迷惑だぞ。」
「ごめんなさ~い。」
千束は何処か心ここにあらずという風な声を出す。
「?まぁ、いいや。そろそろ帰り支度始めろよ。たきなも。」
「はい。」
たきなは返事をしてから店の更衣室に移動するが、千束は椅子に腰掛けたまま動かずに、腕を組んで何か考えている。
「どうしたんだ?」
「あぁ、うん。ちょっと、・・・クルミ。」
千束はゲーム機の片付けをしているクルミに話しかける。
「ん~?」
「たきなのパンツって見たことある?」
「あるわけないだろ。」
千束の問いをクルミは即答する。
「ちぇ~、なんでも知りたいんじゃないのかよ~。」
「ノーパン派か?」
「いやいやいや。」
「ならなに履いてようがたきなの自由だろ?」
千束とクルミはそんな会話を繰り広げるが俺には全く話しが見えてこない。
さっきから俺の第六感が全力で「速く帰れ。」と言っている。速く帰り支度を済ませて帰ろう。
というかこいつは何てこと聞いてんだ?!俺の居ないところで話してくんない?!
そんな時、千束がおもむろに立ち上がり、更衣室のあるほうに走っていく。俺も帰り支度をすませよ。
俺が帰り支度を済ませて帰ろうとしたときに、カウンターにいるボスに千束が言い寄っているのを見つける。
さっき、第六感が警告したのはコレかと思いながら店を後にしようと小さく「お疲れさまで~す。」といいドアノブに手を掛けたところで肩を掴まれる。
俺の肩を掴んでいるのはもちろん最強のリコリスだ。
「ちょ~いちょい。何処に行く気、ハチ?」
千束が微笑みながら言う。
俺も出来るだけ微笑みを返しながら言う。
「いやいや、もう仕事は終わったし今日はボドゲ大会はない。いい時間だから帰ろうかなって。」
「私たちが何の話しをしているのか気にならない?」
「まぁ、気にならないと言えば嘘になるけど、明日は店は休みだし明後日にでも教えてくれ。じゃ、そうゆうこt」
俺はそのまま帰ろうとするが肩を掴んでいる手に更に力が込められる。
「帰れると思ってんの?」
仕方ない、もう勢いに任せるしかない。
「あぁ!帰るよ!帰らせて貰うよ!正直、さっきから俺の中の第六感がガンガン警告を出してんだよ!!速く帰らないと面倒ごとに巻き込まれるぞってな!以上!!!俺は帰る!」
「ハチ、お願いだから今だけは力を貸して。」
俺が言いたいことを言い終わった後に千束の顔を見るとなぜか死にそうな顔をしていた。
まじで何があったの?!
とりあえず、話しは聞くことにした。
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「で、結局何があったんだ?」
千束の横のカウンター席に座りながら事情を聴く。
「あのね、」
「うん。」
「たきながトランクスを履いてたの。」
うん?トランクス?たきなが??ああ、なるほど。
「いや、別にいいだろ?」
「何で?!」
「だって、トランクスって言っても女性用だろ?俺はファッションには疎いけどそれくらいあるのは知ってるよ。」
「・・・男物なの。」
「はい?」
「たきなが履いてるやつ、・・・男物なの。」
・・・うんうん、たきなが男物のトランクスをね。
なるほど、なるほど。女性用ではなく男性用ね。レディースではなくメンズね。女物ではなく男物ね。
・・・・・・・・・なるほど、理解した。
「いや、おかしくね!!」
そんな俺の発言に千束は「でしょ~!!」と答える。
「えっ?なんで?最近はそういうのが流行ってんの?俺がしらないだけで。」
「流行ってないよ、そんなの。」
「たきなは先生から
へぇ、このきっさてんのしていのしたぎってトランクスだったのかぁ。よかった、ボクサーパンツじゃなくてトランクスはで。そんなのはつみみだぁ。
・・・いかん、頭が働いていない。
「ど、どうしてそんな話しになったんだ?」
「それを今、先生に問い詰めてるところ。で、聞かせて貰いましょうかぁ。」
千束はバンっとカウンターを叩きながら尋問するかのようにボスに聞き始める。
「店の服は支給するから下着だけ持参してくれと。」
「どんな下着がいいか分からなかったので。」
ここまでの会話の流れはまぁ、一般的だ。
千束が呆れながら「だからって何でトランクスなの~?」とボスに尋ねるが悪びれもせずにボスは言う。
「好みを聞かれたからな。」
「「アホかぁ~!!!」」
これではっきりした。
今回の戦犯、ボス。
「これ、履いてみると結構開放的で、」
「そうじゃなぁ~い!」
そういいながら、千束はドアを開きながら明日の予定をたきなに伝える。
「たきな!明日12時!駅に集合ね!」
「仕事です?」
「ちゃうわ!!パ・ン・ツ!買いに行くの!」
やっと終わったか。俺も帰るか。
そう思ったとき、千束が話しかけてくる。
「あっ、ハチも明日駅前集合ね。」
「嫌です。」
俺は即答するが千束には関係なかったようだ。
「この前の休みの日に服を見に行ったんだけど、そのときにハチに似合いそうな服を見つけたから明日、買いに行きます。」
「去年、お前に選んで貰った服がまだあるし、それに先週通販でも買ったばっかだから結構です。」
「また、通販なんかで服買ったの?」
「別にいいだろ?」
「いいけど、出来るだけ試着してから買った方が良いって前に言ったよね。」
「別に服なんて着れればいいだろ?」
「ふ~ん、そんなこと言っちゃうんだぁ?じゃあ、明後日からのハチの
「そういう意味で言ったんじゃねぇよ!!!」
「あはは!じゃ、ふたりとも!明日12時に駅前集合ね。」
千束はそう言い、店を後にしたがすぐに戻ってきてたきなに釘を刺す。
「あ!制服着てくんなよぉ。私服ね、私服。」
そう言ってから今度こそ千束は、店を後にする。
千束が出ていった後、たきなが俺とボスに尋ねてくる。
「指定の私服はありますか?」
「指定の私服ってなんだよ。そんなん私服じゃねぇよ。」と思いながらたきなの問いには答えられずボスとともに頭を抱えた。
明日、バックレようかなとも考えたがバックレたらその後がめんどくさくなるし、最悪明日中に家に突入されるかもしれない。
・・・時には諦めって肝心だよね。