闇に生き光に奉仕する男の話   作:ダレン シャン

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暗殺者の両手に華がある話 前編

 

翌日 北押上駅前にて

 

俺は集合時間の、30分前に駅前に着ていた。

今の俺の服装はグレーのチノパンに白いVネックTシャツの上から黒いジャケットを羽織っている。

普段からこういう服装はしていないが、以前に千束と出掛けたときに痛い目にあったため千束と出掛けるときは彼女が選んだ物を着るようにしている。

 

スマホで時間を潰しながらふたりを待っていると、後ろから「ハチ。」と呼ばれたため振り返る。

そこには白のショートパンツに黒のシャツの上にロング丈のアウターを着ている千束がいた。

相変わらず何着ても様になる。

 

「早いじゃん、ハチ。もしかして私たちとのデートが楽しみすぎて昨日眠れなかったんじゃな~い。」

 

「デートなの、これって?」

 

「男女が一緒に遊ぶ。これをデートと言わずしてなんと言う。」

 

千束は腰に手を当ててさも当然という風に答える。

 

「それは、男女の比率が一対一の場合だろ。今日はたきなもいるんだからデートではないだろ。」

 

「うーん、それもそっか。それよりも良かったよ。今日ハチが、普通にパーカーとか着てきたらどうしてくれようかと思ってたから。」

 

「あぁ、前に痛い目に遭ったからな。」

 

そう、以前に千束と出掛けたときにパーカーを着ていったらそれに千束は呆れて、都内の洋服店をかけずり回されきせかえ人形にされたことがある。

あれは、一種の拷問だった。

まぁ、そんなことはさておき・・・

 

「やっぱり千束は赤が似合うな。」

 

俺が純粋に千束への感想を言うと、彼女は顔を赤らめる。

 

「え?!そ、そう?」

 

「あぁ、普段の制服や着物も赤だけど洋服はまた違いがあっていいんじゃないか?」

 

千束の顔が更に赤くなる。

風邪だろうか?

 

「ふっ、不意打ちは卑怯だって///」

 

「不意打ち?何のことだ?」

 

「な、何でもない!それよりもたきなはまだかな?」

 

話題の変え方が下手くそだったが、これ以上突っ込んでほしくないようなので乗ってやることにした。

 

「まだ10分前だがたきなの性格上、もうすぐ来るんじゃないか?。」

 

そんな話しをしているときに「お待たせしました。」と話しかけられる。

声がする方に顔を向けると私服姿のたきながいたが。

・・・・これは、なんと言うか、新鮮だけど「The 部屋着」という感じの服装であった。それは千束も同じだったのか

 

「お、おお~。し、新鮮だな。」

 

「問題ないですか?」

 

たきなは問題ないかと俺たちに尋ねてくるがこいつ、休みの日でも銃持ってんのかよ。まぁ、そこら辺は千束が指摘するだろうから黙ていよう。

 

「銃、持ってきたな。貴様。」

 

「駄目でしたか?」

 

「抜くんじゃねぇぞ。」

 

「千束とハチさんは、その衣装は自分で?」

 

「衣装じゃねぇ。」

 

一連のやり取りを見ていたが明らかに千束は笑っているが笑っていない。俺がパーカー着てきたときもそうだった。

 

__________

 

 

俺たちは歩きながら目的地である大型ショッピングモールに向かう。

 

「一枚も持ってないの?スカート。」

 

「制服だけですね。普通そうでしょ。」

 

「前までDAにいたから私服があまりないって理由も頷けるな。」

 

「まぁ、リコリスはそうだね。ねぇ、買おうよぉ~。たきな絶対似合う!」

 

「よく分かりませんし、千束が選んでくれたら(・・・・・・・・・・)。」

 

「え!いいの!おお~やったぁ!テンション上がるわぁ!」

 

一気に千束の機嫌が良くなる。

千束からしたら願ってもないことだろうな。

しかし、たきなはこれから自分に起こるであろうことがまだ分かっていない様子だったため、経験者として教えておこう。

 

「たきな、今の一言は余計だったぞ。」

 

「どういうことですか?」

 

「たきなよ。・・・・・・きせかえ人形になったことはあるか?」

 

「?」

 

「ねぇ、ハチ。そういうことだから先にたきなの買い物を済ませちゃってからでもいいかな?」

 

「いいぞ。本来の目的はそっちだからな。」

 

 

 

_______________

 

大型ショッピングモールに到着し、早速洋服店に入る。

有名ブランドなのだろうか?わたしたちの他にお客さんもまばらにいる。

千束は店に入るなり物色し始め、あーでもない、こーでもないとぶつぶつ言っていたが次々とわたしに服を手渡し、試着室で試着していく。

なるほど、ハチさんが言っていたのはこの事か。

 

「良い!いいねぇ!めっちゃ可愛い!」

 

「基が良いからな。何着せても似合っちゃうんだな。」

 

ふたりは誉めてくれるが普通に恥ずかしい。

わざとそっけなく返事をする。

 

「どーも。」

 

千束にエンジンがかかってしまったのか本来の目的を忘れてしまっているのか分からないがわたしにリップグロスの有無を聞いてくる。

 

「千束、そろそろ本来の目的を。」

 

「そうだった。下着だった!」

 

千束は目的を思い出したようで一緒にランジェリー売り場に向かう。

 

「じゃ、俺は適当なところで待ってるから終わったら教えてくれ。」

 

ハチさんはそう言い、わたしたちふたりと別れる。

 

 

 

___________

 

 

ハチと別行動になってからたきなと一緒にランジェリーショップに入る。

たきなの好みが分からないためたきなのフィーリングで選ばせた方がいいだろうか?

 

「どう?好きなのあった?」

 

「好きなのを選ばなきゃいけないんですか?」

 

「え?」

 

「仕事に向いているものがほしいですね。」

 

「あぁ~銃撃戦向きのランジェリーですかぁ。ってそんなもんあるかぁ~!!」

 

今の物には様々な機能が付いているものがあるが銃撃戦用のものはない。たきなのボケにノリツッコミを入れるが、たきな自身はボケているつもりはないんだろうなぁ。

 

「これ、良いんですけどねぇ。通気性もよくて動きやすい。流石店長だなって。」

 

確か、昔ハチがトランクスはボクサーパンツより解放感があって良いと聞いたことがあるが今は、そんなこと関係ない。

私はたきなに呆れながら言う。

 

「いや先生、そんなこと考えてるわけないだろ。大体、トランクスなんて人に見せられたもんじゃないでしょ~。」

 

「パンツって見せるものじゃなくないですか?」

 

「いざって時、どうすんのよ?」

 

「いざってどんな時です?」

 

私は少し考える。いざって時はもちろん男女の関係で。

ここではたきなに説明出来ないし、したくない。他の女性のお客さんもいるし。

私にもそのいざって時が来るかもしれないことを考えるとハチの顔が思い浮かぶ。

もし、ハチとそんな関係になったら・・・。

顔が紅くなるのが分かる。

 

「知るかっ!!!」

 

そう答えた瞬間、たきなに手を引かれ試着室に連れ込まれる。

 

「なに?」

 

「千束のを見せてください!」

 

「は?!」

 

「見られて大丈夫なパンツかどうか知りたいんです。」

 

「え?あっ、えぇ、ええ?」

 

「早く!!」

 

たきなが私の前で屈む。

 

この時の私の行動は完全におかしかったと思う。

たきなに試着室に連れ込まれ、自分のパンツを見せてほしいなんて言われたら正常な判断が出来なくなってもしょうがない。

そう思うことにしよう。

 

私はベルトをはずしショートパンツを少しずらしてたきなにパンツが見えるようにする。

 

「んー、これがわたしに似合うっていうと違いますよね。」

 

「その通りだよ。何で見せたの私!!!!」

 

本当にこの時の私はおかしかった。

 

その後、たきなの下着を数着買う。

 

「これで、トランクスとはおさらば。男物のパンツは全部処分するからね。」

 

「はい。」

 

「さて!次はハチの服を買いにいくぞぉ~。それが終わったら、千束さんお待ちかねのおやつタイムだぁ!」

 

私はたきなにそう言い、店を出てハチのスマホに連絡を入れるようにするとたきなが話しかけてくる。

 

「千束、あそこにいるのハチさんじゃないですか?」

 

たきなはそういうと、モール内にある椅子や机が並んでいるいわゆる休憩スペースにいるハチを指差す。

そこにいるのは別に構わない。男であるハチが私たちと一緒にランジェリーショップに入るわけにはいかない。

しかし、誰だ(・・)?その横にいる年上女性は(・・・・・)

 

 

________________

 

 

俺は千束達と別れてから休憩スペースで自販機で買ったアイスティーを飲んでいる。最近はシトラスティーがお気に入りだ。

口に含んだ瞬間、シトラスの香りが鼻腔を通り抜ける感じが堪らない。

そんな呑気なことを思っていると、1人の女性が話しかけてきた。

 

「ねえ、そこのお兄さん?」

 

「僕ですか?」

 

「そうそう、誰かと待ち合わせ中?この後何か予定ある?もしないならお姉さんとそこのカフェでお茶しない?」

 

何だ?なんかの勧誘か?それとも高い壺でも買わされんのかな?

俺はやんわりと断りを入れる。

 

「すいません、今連れが買い物に行ってまして、それを待ってる最中なんですよ。ですので折角ですが。」

 

「えぇ~、いいじゃない少しぐらい。それにお友達も買い物してるんだったらすぐには戻ってこないんじゃない?ほら、行こっ!」

 

ずいぶん、押しの強い人だな。こういう人は苦手だ。押しが強いのは千束も同じだが、あいつは決して無理強いだけはしない。けど、この人は違う。

どうしたもんかな。ふたりとも早く来ないかな。と考えていたときに不意に声がかけられる。

 

「何をやっているのかな?ハチ。」

 

そこには、何故か修羅を背負った千束がいた。

だが、これで向こうも諦めるだろう。高い壺が売れなくて残念だったな。

 

「やっと来たか。では、連れが来たので僕たちは失礼しますね。」

 

そう言い、2人を連れてその場から離れる。

 

「ふぅ~、助かったよ。良いタイミングで来てくれた。断ってもしつこかったから困ってたんだ。」

 

「その割には鼻の下が伸びてたような気がしますけど~。」

 

「? 何で俺があの人に鼻の下を伸ばさなきゃ行けないんだよ?」

 

「知~らない!でも、以外だったよ。ハチってああいう人が好みだったんだね!!」

 

「なに怒ってんだよ。どうした?俺、何か悪いことしたか?」

 

「別に!!」

 

えっ、本当に何?千束が怒ってる理由が分からない。

 

「う~ん?千束、すまん。本当にお前が怒ってる理由が分からない。何で怒っているかだけ教えてくれ。そうすれば次から直すよう努力はしてみるから。頼む。」

 

俺は頭を下げる。

千束も少し頭が冷えたのかさっきまであった怒りが少し収まっているようだった。

 

「別にいいよ、頭なんて下げなくて。これはただの・・・。」

 

「ただの、何だよ?」

 

「何でもない!!」

 

再び怒ってしまったのかそっぽ向いてしまう。

その後、たきなが口を開く。

 

「しかし、驚きました。ハチさんってモテるんですね。あれが噂に聴く逆ナンというやつですか?」

 

「逆ナン?何のことだ?」

 

「さっきの女性ですよ。違うんですか?」

 

「え~、違うだろ。確かにお茶に誘われたけどそこで高い壺とかを売る目的だったんじゃないかな?俺に逆ナンなんてあり得ない、あり得ない。」

 

俺が笑いながらそんなことを言うとふたりが目を細めてじ~っと見てくる。なんだよ?

 

「はぁ、これだから心配なんだよ。いつも通りといえばいつも通りなんだけどね。」

 

「無自覚って恐ろしいですね。」

 

「?」

 

俺にも解るように言ってくんない?

 

「とりあえず、たきなの買い物は終わったんだろ?これから甘いものでも食べに行こう。何故か千束も怒らせちゃったし、ふたりとも俺が奢ろう。」

 

「ホントに!いぃやったぁ~~!!」

 

「そんな悪いですよ。」

 

「いいからいいから、ついでだし。千束には奢ってたきなには奢らないなんておかしな話だからな。ちょっとくらいカッコつけさせてくれ。」

 

「分かりました。ありがとうございます。」

 

「よし!決まり。千束~、店は何処にする?」

 

「私が決めて良いの~!」

 

「もちろん、俺とたきなじゃあんまり詳しくないからな。だろ?」

 

「そうですね。千束が決めてください。」

 

「えぇ~、ホントにいいの~。じゃあ、どこにしよっかなぁ。」

 

千束はスマホで近くにある店を調べている。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・計画通り!!!

千束の頭の中からもう俺の服を買うということはスッポ抜けているだろう。きせかえ人形になるくらいならスイーツ代位安いものだ。

千束は店が決まったようなので俺たちを先導する。

 

「よし!ここに決~めた!じゃ、しゅっぱ~つ!!」

 

 

ここまでの俺の計画はほぼ完璧だった。そう、ほぼ(・・)完璧だった。

思わぬところから横やりが入り俺の作戦は瓦解する。

 

「・・・あの、千束?ハチさんの服はいいのですか?」

 

 

その一言は余計だぞ、たきなよ。

その後、俺がきせかえ人形になったことはいうまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

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