闇に生き光に奉仕する男の話   作:ダレン シャン

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暗殺者の両手に華がある話 後編

 

千束のきせかえ人形にされてから数十分後、俺たちは千束が調べたカフェへと来ていた。

 

 

 

 

「フランボワーズ&ギリシャヨーグレットリコッタダッチベイビーケイクとホールグレイハニーカムバターウィズジンジャーチップス・・・ハチはどうする?」

 

「俺はこの苺ティラミスのミルクレープ、フランボワーズジャム仕立てでお願いします。」

 

俺たちがそう注文すると店員は「かしこまりました。」といい、店の中に入っていった。

というか、なんだ。この長ったらしい名前は。舌を噛みそうだった。

 

「名前からしてカロリーが高そうですね。」

 

「野暮なこと言わない。女子は甘いものに貪欲でいいのだ。」

 

「寮の食事も美味しいですけどね。」

 

「あの料理長、元宮内庁の総料理長だったらしいよ。」

 

「それってすごいんですか?」

 

たきなはこの事実がどれだけすごいことかいまいち分かっていないようだ。

 

「当たり前だろ。ガチの皇族に料理振る舞ってた人だぞ。つまり、リコリスは天皇皇后両陛下たちと同じ食事を食べてるってことだ。」

 

「そう考えるとすごいですね。」

 

「だろ?」

 

「でも、スイーツ作ってくれないからなぁ~。永久にかりんとうだから。」

 

「わたし、あのかりんとう好きです。」

「そりゃあなた、最近来たからだよ。10年あれだけは飽きるよ~。」

 

そんな会話をしていると俺たちの料理が運ばれてくる。

他のお客さんが少なかったのか思ったよりも早く運ばれてきた。

 

「お待たせいたしました。」

 

料理がテーブルに並べられると千束のボルテージが上がる。

甘いものが嫌いな女性はいない。甘いものを我慢できる女性はもっといない。

いや、これは偏見か。

 

「おほぉ~~~!美味しそう!!」

 

「これは糖質の塊ですね。」

 

「そりゃそうだ。旨いものは脂肪と糖質で出来ているといっても過言じゃない。」

 

千束はたきなに軽く頭をぶつける。

 

「たきな!人間一生で食べられる回数は決まってるんだよ。全ての食事は美味しく楽しく幸せであれ!」

 

「美味しいのは良いことですが、リコリスとして余分な脂肪はデメリットになります。」

 

「その分走る!その価値はこれにはあるよぉ~。おいひぃ~。」

 

旨そうに食うなぁ。奢ってやったかいもあるというものだ。

 

「千束の言い分も一理ある。特に俺たちのような裏側の人間なんていつ死ぬかも分からないんだ。食えるときに食いたいものを食ってもバチは当たらないさ。」

 

俺も料理を口に運んだ時に、後ろの席でフランス人のふたり組がメニューを見ながら困っていた。夫婦だろうか?

千束はそれに気付き、「ちょっと行ってくるね。」と俺とたきなに断りを入れてからフランス人たちに助け船を出しに行く。

 

「あの、ハチさん。」

 

「ん?」

 

テーブルにたきなと二人っきりになったときにたきなが尋ねてくる。

 

「前から気になってたんですけど、ハチさんと千束ってどれくらいの付き合いになるんですか?」

 

「ん~?もう10年以上になるかなぁ。あの電波塔事件よりも前からの付き合いだから。」

 

「そうなんですね。」

 

「急にどうした?」

 

「いえ、特にこれといった理由は無いんですけど。」

 

「なんだそりゃ。」

 

「もうひとつ、いいですか?」

 

「うん?」

 

「ハチさんはどうやってそれだけの力を付けたんです?」

 

「どう言うこと?」

 

「前に千束から聞きました。模擬戦を何回もしてるのにハチさんに勝てないって。あの弾避けもハチさんから教わったって。どうやって銃弾を避ける千束に当てられるんですか?」

 

「あぁ、そーゆうこと。」

 

「ひとつじゃなくね。」とも思ったが、答えられるものには答えよう。

 

「まず、弾避けだけどあれは、眼の使い方教えただけ。」

 

「眼?」

 

「そう、俺も千束以上に目がいいんだけど、それで銃口の角度や相手の目が自分のどこを見ているのか、腕の筋肉の動きなんかを見て相手の射撃タイミングと相手が何処を狙っているか予測しているだけ。」

「銃弾その物は見えていないから、まあぶっちゃけ勘で避けてるだけだし。」

 

「それでも、充分に異常なんですけど。」

 

聞き捨てならないセリフが聞こえてきたがスルーしよう。

 

「後、千束にどうやって弾を当てるってことだけど。」

 

「どうやって当てるんですか?」

 

「さっきも言ったけど、俺たちは見えてるから(・・・・・・)それを予測して避けているだけ。逆に言えば見えていなければ避けられない。つまり、死角からの奇襲やスモークなんかで視界を遮れば避けられる確率はぐんと下がる。前者に至ってはほぼ確実に当たる。」

 

「なるほど、逆転の発想。勉強になります。」

 

「ははっ、後は俺がどうやって力を付けたということだけど。」

 

たきなが真剣な目で俺を見ているがこればかりは教えることは出来ない。話したところで荒唐無稽な話しだし。この場をやり過ごすために少し嘘っぽく話してみるか。

 

「実はな、たきな。俺の記憶には世界中の裏で暗躍してきた凄腕の達人の記憶があってだな。」

 

そう言った瞬間、たきなが疑惑の目を向ける。

 

「真剣に聞こうとした自分がバカみたいです。あなたも千束と一緒で映画の見すぎなんじゃないですか?」

 

ずいぶんとご立腹のようだ。

 

「すまんな。」

 

こればかりは教えたくないんだ。

そんなときに千束が席に戻ってきた。

 

「ふたりで何話してたの?ってたきな?なんか怒ってる?」

 

「千束はハチさんがどうやって今の技術を身に付けたか知ったいますか?」

 

「えぇ~、ハチのこと~。」

 

千束は俺をチラッと見てくるが俺は首を横にふる。

俺がどうやって今の力を手に入れたのか千束は知っているがなにぶん説明した時は千束がまだ幼かった頃だ。よく理解してはいないだろう。

 

「ごめんね、たきな。それには答えられないや。少し事情は知ってるけどよく分かってないしね。」

 

「そうですか。」とたきなはこれ以上は聞いてこなかった。

少し、空気が悪くなってしまったがそれを打ち消すように千束がパンっと手を叩く。

 

「はい!この話しは終わり!食べ終わったら良いところへ行きま~す。」

 

千束はそう言って自分の料理を口に運ぶ。ホントに旨そうに食べる。

 

 

 

 

この笑顔を守るために

 

 

_____________

 

 

水族館にて

 

 

「いいとこってここですか?」

 

「うん、綺麗でしょ。ここ。私好き~。」

 

「よく来るんですか?」

 

たきなのその問いに千束はポーチから自慢げにあるものを取り出す。

 

「年パス~~。気に入ったらたきなもどうぞ。」

 

「ハチさんも?」

 

「俺は千束ほどは来ないがな。たまにクラゲを見に来る。」

 

「クラゲ?好きなんですか?」

 

「好きって訳じゃないけど、フワフワ泳いでるのを見てると色々考えていることを忘れられるから。」

 

記憶のなかで見たあの血で血を洗う血生臭い情景も。

 

「ハチも年パス作ったんだから来なきゃ損だよ?」

 

「俺の知らないところで勝手に作ったんだけどな。お前が!」

 

そんなことをいいながら、三人で水族館を回る。

そんな中で、たきなはタツノオトシゴが気になったようだ。

 

「どうしたの?」

 

「これ、魚なんですって。」

 

「まじ!ウオだったのか、こいつ。」

 

「この姿になった合理的理由があるんでしょうか?」

 

「ご、合理?り、理由?え~?」

 

「何かあるでしょ。」

 

「タツノオトシゴはまだ解明できていない部分があって諸説あるがこの姿が、一番プランクトンや小エビといった餌を捕食しやすいからだと言われているな。」

「後、タツノオトシゴはオスが出産するとよく勘違いされているが、実際はオスの育児嚢といわれるカンガルーのお腹の袋みたいなところにメスが卵を産み、卵が孵化するまでオスが卵を守っている。」

 

「そんなんですね。」

 

「ハチって無駄にそういう雑学、知ってるよね。」

 

「無駄とはなんだ、無駄とは。知識は力だ。いつどんな状況で自分の知識が生かされるか分からないだろ?知識量が手札の多さだ。手札が多ければ選択できる選択肢も増える。」

「まぁ、ここはもう良いだろ。次のところに行こう。」

 

次に見えてきたのはチンアナゴだった。たきなはまた、スマホで調べて「これも魚ですか~。」と呟く。

勉強熱心だなたきなは。俺の隣で両手をあげてゆらゆらと揺れているこいつと違って。

 

「おい、お前は何をやってるんだ?」

 

「え?チンアナゴだけど?」

 

「人が見てますよ、目立つ行動は、」

 

「なんで?」

 

「何でってわたしたちリコリスですよ。」

 

「制服来てないときはリコリスじゃありませぇ~ん。」

 

リコリス関係なく、他のお客さんがいるんだぞ。羞恥心というものがないのか?

 

「たきな、お前の相棒だぞ。あいつに羞恥心というものを教えてやれ。」

 

「ハチさん。」

 

「?」

 

「わたしはもう既にちょっと諦めてます。」

 

たきなは既に俺と同じように感じてしまうところまで来てしまっていた。

 

別の場所でも、千束はゆらゆらと揺れている。

そろそろ止めてほしい。恥ずかしいから。

たきなはそんな千束に話しかける。

 

「千束。」

 

「ん~?」

 

「あの弾、いつから使ってるんです。」

 

あの弾とは非殺傷弾のことだろう。

千束はゆらゆらするのを止めてたきなの隣に座る。

それにしても、たきなはどうしたのだろう?さっきもカフェで俺のことを聞いてきたし。

 

「なぁ~に、急に?」

 

「旧電波塔の時は?」

 

「あの時、先生に作ってもらったんだよ。」

 

「何か理由があるんですか?」

 

「なに?私に興味あんのぉ?ハチにもカフェで聞いてたし。」

 

「タツノオトシゴ以上には。」

 

「チンアナゴよりも!」

 

「茶化すならもう良いです。」

 

たきなは少し呆れたような声で返事をする。

俺がさっきカフェでちゃんと答えなかったことが尾を引いているようだ。

そんなたきなに千束は自分の気持ちを正直に話し始める。

 

「気分がよくない。誰かの時間を奪うのは気分がよくない。そんだけだよ。」

 

「気分?」

 

「そう!悪人にそんな気持ちにさせられるのはもぉっとムカつく。だから、死なない程度にブッ飛ばす!あれ当たるとめちゃくちゃ痛いのよ~。死んだ方がましかもぉ。」

 

そんな千束の答えにたきなは笑う。

 

「なぁんだよ。変?」

 

「いえ、もっと博愛的な理由かと。千束は謎だらけです。ハチさんもですけど。」

 

「mysterious girl!そうかぁ、そんな魅力もあったか私ぃ。でも、そんな難しい話しじゃないよ。」

 

「したいこと最優先?」

 

「おっ、覚えてるねぇ。」

 

「ハチさんもですか?」

 

「ん?」

 

「答えたくなければ良いのですが、ハチさんも千束と同じ理由であの弾を使っているんですか?」

 

急に話しをふられて少し驚いたが、さっきは答えてあげられなかったしここでは答えるか。隠すような話しでもないし。

 

「まぁ、千束と全く同じって訳じゃないけど、気分がよくないって意味では同じかな。」

 

「?」

 

「もう殺しはうんざりってことさ。」

 

「ハチさんも「したいこと最優先」なんですか?」

 

「ははは!俺は千束みたいに単純じゃないからしたいこと最優先には出来ないな。」

 

「なんだと~~!」

 

「では?」

 

あの人たちは教団の中でいくつかルールがあった。

「仲間を危険にさらすな」、「風景に溶け込め、」「罪なき者を傷つけるな」そして、

 

「「したいこと最優先」が千束の座右の銘なら、」

「「闇に生き光に奉仕する。」それが俺の信条(クリード)だ。」

 

「信条、なるほど。つまり、表の世界に気づかれることなく裏で悪人達を処理する。そう言うことですね。」

 

まぁ、実際には違うが説明するもの嫌だし、「そうだ。」と答える。

 

「千束はどうしてDAを出たのですか?殺さないだけならDAでも出来たでしょ?」

 

「あぁ。」

 

「それも?そうしたいって全部それだけ?」

 

「人探しぃ。」

 

「なんです?」

 

「会いたい人がいるの。大事な・・・大事な人。その人を探したくて。」

 

千束は目をつぶり首から下げている梟のペンダントに手を当てながら話す。

その後、直ぐにたきなに梟のペンダントを見せる。

 

「知ってる?コレ?」

 

 

少し話しが長くなりそうなので俺は場所を移すように提案し、人数分の飲み物を買ってくる。

休憩所で座りながらたきながネットに載っているアランチルドレンのチャームと千束が持っているものが同じであることを確かめていた。

 

「確かに、同じですね。何の才能があるんですか?」

 

「わからなぁ~い?」

 

千束は壁に貼ってあるポスターの女優と同じポーズをとる。

 

「それじゃないのはわかります。」

「恥ずかしいからさっさと座れ。」

 

俺とたきなのダブルコンボをくらって千束はテーブルに伏せてしまう。

 

「自分の才能が何とか分かるぅ~。」

 

「何かあると良いですけど。」

 

「そんな感じでしょ。」

 

「何言ってんだ。才能ならあるじゃないか。」

 

「「?」」

 

ふたりが俺に目を向ける。

 

「たきなは正確無比な射撃だろ?」

 

「あれは、訓練したからであって才能というわけでは。」

 

「いや、あれだけは正確な射撃は一朝一夕じゃ手に入らない。相当、訓練を積んだと思うし、何かに一生懸命になれることはそれ自体が才能だよ。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

たきなの顔が少し紅くなっている。

何故だ?風邪か?

 

「ねぇ、ハチ!私は!」

 

千束が目をキラキラさせて聞いてくるが、

 

「千束の才能は、千束を見てると自分の考えてることがバカみたいに思えてくることかな。」

 

「なっんだと~!さっきも私のこと単純って言ったり、まるで私が何も考えてないみたいじゃない。」

 

「違うのか?」

 

俺は少しニヤつきながら答える。

 

「うわ~ん。たきなぁ、ハチがいじめるぅ~。」と誰でも分かるような泣き真似でたきなにすがり付く。

たきなはそんな千束を突き放しながら尋ねる。

 

「で、見つかったんですか?これくれた人?」

 

「いんやぁ~。」

 

「10年も探して?」

 

「ハチにも協力してもらってるんだけどねぇ、これがぜぇ~んぜん。」

 

「ハチさんもその人を探してるんですか?」

 

「いや、俺もそれ持ってるけど記憶喪失だから会いたいとかないんだけどな。」

 

「は?」

 

「どした?」

 

「いえ、今新たにわたしの中でも新情報がふたつ更新されたので。え?ハチさんもアランチルドレン何ですか?て言うか記憶喪失って?」

 

「あぁ、ほら。」

 

俺はポケットの中から千束と同じ梟のチャームを取り出したきなに見せる。

 

「では、ハチさんにも何か才能があるんですか?」

 

「それが俺に至ってはわかんないんだよね~。記憶喪失だからいつ何処で貰ったか全っ然覚えてないし、もしかしたらどこかで拾っただけかもしれない。まぁ、千束に関してはコレをくれた人は恩人だからな。俺も一言何か言いたいから探してるんだよ。」

 

たきなは千束にチャームを返す。

 

「もう、会えないかもねぇ。ありがとうって言いたいだけなんだけど。」

 

「ごめんな。俺の力が足りないばかりに。」

 

「そんな、ハチが謝ることはないよ。これは私のワガママだし。」

 

「それでも、」

 

そんなとき、たきなはおもむろに立ち上がり、水槽の前で両手を合わせてつき出すように前にだし、片足を後ろに上げ魚のポーズをとる。

 

「さかなぁ~!!」

 

千束を励ますためだろうな。そんなたきなに千束は近づきたきなの隣でチンアナゴの真似をする。

 

「チンアナゴ~~。」

 

「ほらほら、ハチも一緒に!」

 

千束は俺に公開処刑されろと、そう言っているのか?

でもまぁ、普段は絶対にやらないがここはやってやろうじゃないか。

 

「クラゲ~~!」

 

俺は両手を広げてクラゲの真似をする。

うん、思った以上に恥ずかしいがなぜか笑みが溢れる。

千束も笑っているようだ。

 

そんな俺たちに釣られてたきなも笑顔になる。

 

「それ、隠さない方がいいですよ。」

 

「え?そう?」

 

「えぇ、めっちゃ可愛いですよ。」

 

たきなは洋服屋で千束に言われたセリフをそのまま返す。

それに千束も気づいた。

 

「あぁ~!こぉいつ~。ほら!ペンギン島いくぞぉ!」

 

「ペンギン?!」

 

千束の後にたきなは続く。

 

「ハチも~!そんなとこにいないで速くぅ~!!」

 

「今いく。」

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな日常がずっと続けばいいのに。

 

 

 

 

 

____________

 

同時刻 BAR Forbiddenにて

 

私は旧友であるミカと行きつけであるこのバーで待ち合わせていた。

 

「何故戻ってきた?」

 

ミカの問いに冗談交じりに答えるとミカは直ぐに本題を切り出してきた。

 

「ミカに会いたかったからさ。」

 

「からかうんじゃない。史八と千束だろ?」

 

私はまだ幼かった頃のあの子達の顔を思い浮かべる。

 

「史八はしょうがないにしても、千束も私を覚えていなかったな。」

 

「千束はあの時一度見ただけだ。無理もない。史八もあの時のショックで記憶を失ったままだ。シンジ、何故言ってやらない?千束はずっと君を探してるんだぞ。史八もそれに協力している。」

 

「アラン機関は支援した対象に関わることを禁じている。話したろ。」

 

「矛盾してるじゃないか。それなら店にだって来るべきじゃない。」

 

「消えろ・・・と。」

 

「そう言うつもりじゃ・・。」

 

「ミカ、約束は守れているのか?」

 

「あぁ、もちろんだ。」

 

「彼の流入現象は?」

 

「最近はめっきり減っている。史八が私に気を遣って隠していなければだが。」

 

「天才は神からのギフトだ。必ず世界に届けねばならん。類希なる・・・殺しの天才をな。」

 

私は、ミカの店で出会った成長した彼らの顔を思い起こす。

 

 

 

______________

 

 

俺は水族館からの帰り道にあることに気づく。

なんだ?リコリス?それも、サードばかりでセカンドやファーストは見当たらない。

千束とたきなの顔も険しくなっている。

 

「リコリス?」

 

「何だか多いですね。」

 

「駅が封鎖されてるな。」

 

駅が封鎖されてることで駅前に人だかりができているがその時、地下から爆発音が響く。

 

「何かあったんでしょうか?!」

 

たきなが私服のまま事件現場へ行こうとするので千束が止める。

 

「私服で銃出すと警察に捕まるよ。制服来てないときはリコリスじゃないって言ったでしょ。今日は帰ろう。ほら、戦利品も多いし。」

 

そう言い、千束は自分の持っている買い物袋をたきなに見せるように持ち上げる。

 

たきなも自分の持っている買い物袋(戦利品)に目を落とし、渋々と言った感じで千束の案を受け入れる。

 

「なぁんか、嫌な感じがするなぁ。」

 

俺の呟きはふたりには聞こえていないようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!そうだ。今日もハチんち泊まっててもいい?」

 

「帰れよ。」

 

 

_______________

 

 

翌日 喫茶リコリコにて

 

私はたきなのロッカーを漁っていた。いや、漁っているという言い方には語弊がある。たきなのロッカー内にある男物のトランクスを処分するために、朝早くから出勤し、たきなの許可も得て処分しているところだ。私は次々にたきなのトランクスをごみ袋に入れていく。

 

「はい、捨てま~す。捨てま~す。これも捨てまぁす。捨てま~す。捨てま・・・す~。」

 

最後の一枚を手に取ったときにたきなのセリフを思い出す。

 

(これ、いいんですけどね。通気性もよくて動きやすい。)

 

ただの好奇心だった。

今、はいているパンツを脱ぎトランクスを履く。

 

「おぉ~、これは!!」

 

「良い!」と言う前に更衣室のドアがミズキによって開けられる。よりにもよってミズキにだ。

 

「千束~!サボってないd」

 

私はなんとか言い訳を出そうとするが、

 

「いやあの、これは。」

 

「いやぁぁぁぁぁ!!!ハレェンチィィィィ!!!!!」

 

違うと何度も訴えるがミズキは私の首を締めて何かを吐かせようとする。

 

「おまっ!!男のとこに泊まってきたな。史八か!史八だろ!!やっぱりあんた達そう言う関係でっ!あたしへの当て付けか?!そうだろ!あたしより先には行かせないからっ!!!不潔よ~、不潔!」

 

ミズキの勘違いをどうやって解こうかと思っているとたきなが私の前に現れた。こんな時は正直に言う他ない。前にハチもそう言っていた気がする。

 

「たきなの!たきなのだから!」

 

私はそう言いたきなを指差す。

 

それを見たミズキはたきなの方に向かい遠慮なくスカートをたくし上げる。

 

「可愛いじゃねぇか。」

 

たきなは早速、昨日買った下着を付けているのだろう。それは嬉しい限りだが、この瞬間だけはトランクスを履いていて欲しかった。

 

「いや、だから、それを昨日買っt」

 

ミズキは店の方に移動してしまう。

 

「え?あっちょいちょいちょいどこへ?」

 

「みなさぁん、このお店に裏切り者の嘘つきやろうがいますわよぉ~。」

 

「うわぁぁぁぁぁ、止めろ止めろ止めろ止めろ!」

 

そう言いながら走ってミズキを止めようとするがミズキにかわされてしまい、スカートをまくられる。

 

「ひらり、らっしゃいやせぇ~。」

 

今度は羽交い締めに合い、目の前に扇風機をクルミに置かれ風でスカートが捲れる。

お客さんにも見られて恥ずかしい中、喫茶店の扉が開かれ特徴的な銀髪が見える。やはり、こういうときに頼りになるから一番信頼できるのだ。

 

「おはようございまぁす。」

 

そんな定番の挨拶をし店に入ってくるなり私たちに目を向ける。

 

「ハチ!早く助けて!お願い!!!」

 

ハチはそんな私を見て、数回瞬きした後、店に入らずにそっと扉を閉める。

 

「いや!なんで?!助けてよ!!たきなも笑ってないでさぁ~!!!」

 

 

___________

 

 

「で、今朝の一件はなんだったの?」

 

お店のピークが過ぎお客さんが減った頃に朝の奇行を尋ねる。

 

「黙れ!裏切り者その2!」

 

「裏切り者その2?」

 

ミズキさんからそんなことを言われるが身に覚えがない。

 

「だから、ミズキの勘違いなんだってぇ~。」

 

「うるさいっ!やっぱりあんた達そう言う関係だったのね、あたしが睨んだ通りだったわ!」

 

どうしよう。全く話しが見えてこない。

俺は中立であろうクルミに状況説明を求めた。

 

「千束がお前のパンツを履いていた。」

 

「は?」

 

こいつ、ついにその一線を越えやがったな。TシャツやYシャツはたまに失くなっているのに気づくと大体、千束が部屋着がわりに着ていることがある。そこは100歩譲って許そう。だが、下着はダメだろう。千束には俺の家を出禁しよう。そうしよう。

 

「千束・・・流石にそれはやベーって。」

 

「ホラ!ミズキが変なこと言うからハチも勘違いしてるじゃん!」

 

「どう言うことだ?」

 

「履いてたのはたきなのパンツ!ハチのじゃないよ!!」

 

「いや、大声で言われても、それも充分やベーって。他人のパンツ履いてる時点で。」

 

「あぁぁぁ!!ただの好奇心だったのぉぉぉぉ!!」

 

「ま、あたしの勘違いなら良かったわ。もし、あんた達が同棲でもしようものなら末代まで呪ってやるからね。」

 

「同棲ではないですけど、千束は昨日ハチさんの家に泊まったんですよね?」

 

「あ゛あ゛ん!!!」

 

たきなよ・・・それは薮蛇だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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