今日も相も変わらず喫茶リコリコは営業中。
だが、1つだけ変わったことがあった。
「今夜飲みに行くぞ。史八。」
「はぇ?」
突如、ボスからの酒の誘い。
予想も出来なかった問いに俺はよく分からない返事をするしかなかった。
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ボスが「一度、家に戻ってジャケットか何かに着替えてこい。」と言うので、俺はパーカーからジャケットに着替える。
「飲みに行くのにわざわざ着替える必要ある?ボスはもうなんか決まってますけど。」
ボスはもう既に普段の紫の着物ではなく白のジャケットを羽織っていた。
「いいから、付いてこい。」
ボスと一緒にタクシーに乗り込み目的地へと向かう。
到着したのはかなり高いビル。
俺は黙ってボスに付いて行くが、ボスが壁に手をあてると壁の一部が上がり、暗証番号用のボタンが出てくる。
すっげ!映画かよ。
ボスは手慣れた様子で番号を入力すると横にある扉がゆっくりと開いていく。
「BAR Forbidden?」
俺は受付の上にある店の名前であろう文字を読む。
「禁断」とは良く言ったものだ。
ボスはそんな俺に構わず、受付をしている男性に話しかける。
「ようこそ、いらっしゃいました。会員証はお持ちですか?」
「あぁ。」
ボスはそう言い、胸ポケットから黒い会員証を出す。
「ありがとうございます。そちらの方は・・・。」
俺に振られてもここは初めてだから困るのだが。
そんな俺の変わりにボスが答えてくれる。
「すまない、彼はここは初めてなんだ。私の紹介で彼の会員証を作ってくれないか?」
「畏まりました。それではお名前を頂戴します。」
「大神史八です。」
受付の男性は「ありがとうございます。」と言って手元の端末を操作し始める。
「それでは次に、入会金として20万円頂きます。」
・・・・・俺の耳がバカになったのか?この人、今なんて言った?入会金に20万?ふざけているのか?ぼったくりバーにもほどがあるぞ。
「カードで。」
俺がそんなことを思っているとボスが隣からカードを差し出す。
「どうしちゃったの、ボス?こんな大金をポンっと出すなんて。」
「クリーナー代を平気で出す君に言われたくはないよ。」
受付の男性はボスにカードを返してから月会費が3万円ほど掛かることを告げる。
それからボスと共に店のなかに入ると、なかなかに高級感が漂う、内装だ。高い金額も頷ける。
俺達は空いているカウンター席に座る。
バーテンダーが「いかがなさいますか?」と聞いてきたため、ボスは「いつもの。」と注文する。
「お前はどうする?」
「オレンジジュース。」
「おい、ここに来てオレンジジュースはないだろ。」
「ボスも、知ってるだろ?俺は酒は苦手なんだ。」
そう俺は、アルコールは苦手だ。
それもこれも、あの荒くれどもと一緒に船の上や酒場で浴びるほどラム酒を飲んだ。ただでさえ苦手だったものを、記憶のなかでは自分の意思は働かないため無理やり飲まされる感覚だ。
・・・・思い出しただけで胸やけがしてきた。
「
バーテンダーは「畏まりました。」といい、準備をしていく。
オレンジジュースあんのかよ。
バーテンダーは直ぐに俺達の前に注文したものを出してくる。
「それじゃ、乾杯といくか。 」
「オレンジジュースじゃかっこ付きませんけどね。」
グラスを合わせ乾杯をしてから俺は、本題を話し始めた。
「で、俺に何の話しがあるんですか?」
「常日頃から頑張っている従業員を労るのは店長としての役目だろ?」
「だったら俺じゃなく、ミズキさんを連れてくれば良かったじゃないですか?」
「冗談は止めてくれ。彼女を連れてきたら店の酒と私の財布の中身が一晩で失くなってしまう。」
「たしかに。」
ボスは笑いながらそう答えると俺も釣られて笑ってしまった。
しかし、冗談はここまでにしよう。
「で、高い会員費を払ってまで俺をここに連れてきたのは店で話せない話しをする為じゃないんですか?」
ボスは俺のセリフを聞き、笑うのを止め真剣な表情になる。
「・・・・・君の過去についてだ。」
なるほど、そういうことか。
「俺の過去と言っても、あなたも知ってるじゃないですか?今さら話すことなんてありませんよ。」
「流入現象はどうだ?」
「・・・そうですね。最近はめっきり減りましたね。まぁ、アニムスに長い間、接続されていないからって理由が大きいんでしょうけど。」
俺は運ばれてきたオレンジジュースを飲みながら答える。
「本当か?もし、まだ流入現象があるなら、」
「本当ですよ。最近は全くない。急にどうしたんですか、ボス?」
「すまない。」そう言ってボスは顔を両の掌で覆ってしまう。
「・・・ボス、俺に何か隠し事があるんじゃないですか?」
ボスは「ふぅ~。」と息を吐く。何も言わないが雰囲気で分かる。
「まぁ、無理に聞きはしませんよ。貴方にもそれなりの理由があるんでしょうし。これでも、感謝しているんですよ。」
「私ではなく千束に・・・だろ?」
「もちろん、千束にも感謝してますよ。あの時の俺を救ってくれた。育ててくれた貴方にも感謝してる。」
ボスは「そうか。」と少し辛そうな表情で言った。
そんなボスは急に話題を変える。
「そういえば最近、千束とはどうなんだ?いつも、君のところに入り浸っているのか?」
「いつもって訳じゃないですけどね、大体は俺の家に居ますよ。ボスからも何とか言ってやってくださいよ。付き合ってもない年頃の男女が一つ屋根の下っておかしいでしょ。」
「君が言っても聞かないなら私が言ったところで変わらないよ。」
「いや、俺だって千束の要望は出来るだけ叶えてやりたいですよ。実際。あいつには心臓のこともありますしね。」
「千束が家に一緒に居ると何か不都合でもあるのか?」
わざと言ってるのか?こいつ?
「別に!!」
年頃の男には色々あるのだ。
俺はそっぽを向くがボスに笑われてしまう。
「お似合いだと思うんだけどな。」
「俺と千束がですか?冗談は止めてください。」
俺は溶け始めたグラスの中の氷を弄りながら答える。
「あいつは光で、俺は影だ。絶対に交わらない。それに、」
「俺は、俺の目的の為なら喜んで
「君の目的とは何だ。」
俺は少し考えてから、
「自由のために戦う・・・・です。」
俺の言葉を最後に夜は更けていく。
はい、という事で今回もオリジナル話でした。
続きが気になっていた方がいらしたらすみません。
話しの構築を考えていくとやっぱり、こういったところでちょっとした伏線を張らなければオリ主君が活躍できないため、ご了承下さい。
リコリス・リコイル9話見ました。
以下ネタバレ注意!!
千束ちゃんとたきなちゃんは別々の道を行くことになってしまいましたねぇ。また、再会できることを信じています。
最後に真島さんが襲撃したところも気になります。
作者は最後にヨシさんが持っていたアタッシュケースのなかに千束ちゃんの新たな人工心臓が入っていると睨んでいます。
それを千束ちゃんへの交渉材料に使おうとしてたが、真島さんに取られてしまい~、と言う流れでしょうか?
次回第10話!今から気になります!!