Prrrrrr....prrrrr....
目覚ましのアラームとは違う音で目が覚める。
これは、着信音?誰からだ?
そう思っても自分に電話してくる人物など限られているが・・・。
スマホの画面に表示文字は「ボス」となっている。
気だるい声で通話ボタンを押した。
「もしもし?」
「おはよう、史八。起きたばかりで申し訳ないが・・・仕事だ。」
電話越しの声でこちらの状況を把握したようだ
謝罪の言葉とともに、朝1番に耳にしたくないセリフが耳に入ってくる。
まぁ、できれば永遠に耳にしたくはないが・・・。
「随分と急ですね?そんなにヤバい状況なんですか?」
「あぁ、銃取引の現場でトラブル発生、セカンドのリコリスが1名人質になっている状況だ。すでに、千束も向かっている。」
リコリスが1名人質か。思っていたより状況は悪いようだ、しかし・・・
「千束が向かってるんですよね?俺いります?」
「楠木からの要請だ。お前にも来てもらわなければ困る。」
ハァ・・・。あのクソババァ今度会ったら覚えてろよ!
心のなかで大嫌いな司令官殿に文句を垂れる。
要請が来ているなら無視することは残念ながらできない。
「了解しました。これから向かいます。目標地点を教えて下さい。」
「すでにそっちの端末にひと通りのデータは送ってある。」
「ありがとうございます。」
「なるべく早く頼むよ。現場で千束と合流してくれ。」
「了解。」
まだ早朝だし道も空いている筈だ。少し位飛ばしても構わないだろう。
そう思い、愛車であるバイクに跨り現地へと向かう。
「朝からだるいなぁ。」
文句とともについたため息はまだ人通りの少ない東京の空気の中に霧散していく。
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銃取引が行われているという件のビル付近に着くと赤い制服を着ている黄色みがかった白髪のボブカットに赤いリボンをつけてこちらにブンブンと手を振る人物を発見する。
「おはよう。朝から任務なんてついてないねぇ。」
「まったくだ。朝くらいゆっくりしたい。っと、お喋りはここまでにしよう。状況は?」
「ちょっと待ってね。先生?ハチと合流したよ。そっちの状況は?」
「思っていたより速かったな。状況はあまり変わっていないが犯人たちがいつ発砲するかもわからない。かなり興奮している。現場はビルの6階だ。すぐに非常階段で向かってくれ。」
「6階〜〜〜!!エレベーターは?」
千束が信じられないという声を出すが・・・
「千束、武器商人が銃取引してるビルにエレベーターなんかで上がっていったらただでさえ興奮してる犯人共がさらに興奮しちゃうだろ。」
「ですよねぇ〜。」
「俺だって嫌だよ、朝からビルの6階まで走るのは。とりあえず行こう。」
走って非常階段を昇って行くと2階あたりで千束が話しかけてくる。
「ねぇ、ハチ!良いこと思いついた!」
「どうせ碌でもないことだろうけど言ってみ。」
「ハチが私をおぶって6階まで上がらればいいんだよ!そうすれば私の体力の温存になるし!お姫様抱っこでも可!」
思った通り、碌でもないことだった。その作戦なら俺の体力も考慮してほしい。
すごくキラキラした目で俺を見てくるが・・・
「黙って走れ。」
「なぁんでぇ〜。いいじゃん、ケチ〜。」
そうこうしているうちに6階に辿り着く。
ボスにビルの内部の状況を確認しようとしたとき・・・・
「たきな!待っt!!」
ズダダダダダダダダダダダダダ!!!!!!!
ビル内部から女性の声が聞こえた瞬間、それをかき消すように一般人には聞き覚えのない騒音とガラスの割れる音が強制的に鼓膜を振動させる。
「うわっはっはっはぁ〜〜。」
「えぇ、まじかよ。武器商人は捕らえるって話しじゃなかったっけ?」
明らかな機銃掃射。発砲音の方角からしても現場のリコリスが発砲したのは間違いない。
武器商人生きてんの?これ?ってか人質になってたリコリスは大丈夫?
様々な考えが思考を乱すが右耳に付けていた通信機からボスの声が聞こえてくる。
「任務終了だ。二人とも。直ぐにその場から離れろ。」
「りょ~か〜い、先生。」
「了解しました。これより、退却します。」
骨折り損だな。家に帰るか・・・いや、この時間ならもう店に向かったほうがいいなと考えながら愛車を停めた場所まで向かうと何故か千束までついてくる。
「えっ?なんでついてくんの?千束の原付はあっちだろ?」
そう言いながら千束が停めたであろう原付の方を指差す。
「いや、そうなんだけどね。よく見てよ、あれ。」
千束の原付を見ると機銃掃射でバラバラになったガラスの破片が地面に散らばっており原付のほうにもかなり甚大な被害があった。
「一応、乗れるだろうけどあの傷だらけの原付に乗って東京の街中を移動するのはちょっとね、あれじゃん?だからDAに回収してもらおっかなって。」
「なるほどな、確かにあれじゃあ目を引く。でも、それで俺のところに来るのはなんでだ?」
「えっ?」
「えっ?」
お互いに素っ頓狂な声を出す。
何故だろう?話しが噛み合っていない気がする。
「乗せてくれないの?」
「歩けばいいだろ?」
「ここから歩いてお店まで行くのは無理があるよ~。乗せてよ〜、お願いだから〜。」
どうせ、こんなことを言ってくるだろうと思って千束用のヘルメットはバイクのサイドバックに入れて持ってきている。
「わかった、わかったよ。店に向かうから後ろに乗れ。」
「イィやったぁ~〜!!」
バイクで風を切りながら我らが働く店もといDAの支部・・・喫茶リコリコへ向かう。
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機銃掃射の一件から少し日が流れ、リコリコの管理者であるボスから話しかけられた。
「史八、少しいいか?」
「なんでしょう?」
「実は今朝、楠木から連絡が来てな、明日この店に1人リコリスが転属になるみたいだ。報告が遅くなってすまなかった。」
「遅くなったのは構いませんけど、転属ってまた急な話ですね。それとも、何か事情が・・・あっ」
気づいてしまった。気づきたくなかったことに。
「ボス、嘘だと言ってください。まさか、ここに転属になったリコリスってこの間の機銃掃射したリコリスじゃないですよね・・・。」
「君は話しが早くて助かるよ。」
「うっそでしょ〜。ただでさえ千束相手に苦労してるのに、その上、機銃掃射したヤツの面倒も見ろっていうんですか?」
これは転属ではなく、左遷なのでは?という疑問も生まれたが今はどうでもいい。
「そのへんは大丈夫だろう。君は千束よく見てくれているしお手の物だろう?それにこれから来る新人の相棒はもちろん千束だ。全て面倒を見なくていい。フォローする感じで構わない。任せたよ。」
「ボス、貴方は俺を過大評価し過ぎです。」
「君は自分を過小評価しすぎているよ。」
「・・・・・・・・。」
無言で最後の抵抗を示す。
「まぁ、この件はもう決定事項だ。変更はできん。よろしく頼むよ。」
「ど畜生!!!!!」
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DA本部にて
「転属ですか?」
楠木司令に呼び出されたと思ったら転属・・・いや、左遷を言い渡された。
「司令を無視して作戦を台無しにした責任は重い。現場指揮官からも越権行為の報告が来ている。扱いきれないとな。」
楠木司令の仰ることは最もだがあの場で撃たなければエリカは武器商人に撃たれていたかもしれないし、少々不満はあるが左遷先で成果を上げれば復帰できると信じて嫌々ながら左遷を受け入れる。
「転属先にもリコリスと協力者が1人ずついる。2人とも生意気なクソガキだが腕は立つ。得られることも多いだろう。」
私は自室にある荷物をまとめ楠木司令に言われたDAの支部へと向かう。
力をつけ再びこの憧れの地に戻れることを信じて・・・・。