闇に生き光に奉仕する男の話   作:ダレン シャン

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紅と蒼の彼岸花との共同生活が始まる話

 

とある日の昼下がり今日は喫茶店の定休日だったため俺は食材の入った買い物袋を手から下げ帰宅中である。

しかし、家には食材は充分にある。

では、何故俺が買い物をしていたのかというと原因は千束にあった。

今日の昼飯は暑いので素麺にしたのだが、それが気にくわなかったのか晩飯はハンバーグをお願いされた。合挽き肉が無かったためそれを断ると「やだ!やだぁ~!」と園児顔負けの駄々をこねられても困るため、こうして足りない食材の調達に出ているといるわけだ。

 

「ったく、あいつは。このくそ暑いのに買い物になんか行かせやがって。」

 

俺がそう、愚痴をこぼすとスマホの着信音が鳴る。

画面には「ボス」の文字が。

 

「もしもし、どうしました?」

 

「休日にすまないな、史八。」

 

「いえ、大丈夫ですよ。これから仕事を~何て言わない限り。」

 

「はははっ、大丈夫だ。仕事ではないよ。」

 

「なら安心しました。それで?」

 

「今、千束は君のところに居るのか?」

 

「えぇ、まだ入り浸ってますよ。俺は今夜、ハンバーグが食べたいじゃじゃ馬姫のために買い出しの帰りですけどね。」

 

「いつも、すまないな。」

 

「そう思うなら、貴方からも千束に言ってくださいよ。」

 

「少しでも君に甘えたいのだろう。」

 

「そうですかね?」

 

「そうだとも。」

 

いかん、話しが脱線してしまっている。

それに気づいたボスは話を戻す。

 

「ここ最近、リコリスが襲われているという報告があった。」

 

「リコリスがですか?」

 

「あぁ、今現在襲われたリコリスは4名。全員死亡し、犯人の目処も立っていない状況だ。遺体から判断するに複数犯のようだ。」

 

「何故リコリスが特定されるんです。」

 

「わからん。しかし、リコリスが襲われているのは事実だ。君も気を付けてくれ。」

「勿論、君なら大丈夫だと思うが念のためだ。」

 

「わかりました。気を付けます。」

 

「あぁ、それと、」

 

俺が通話を切ろうとしたときにボスは爆弾を投下する。

 

「たきなを君の(セーフハウス)に向かわせた。今頃、到着している頃だろう。」

 

「・・・・・・・・・・・何故?」

 

ボスが何を言っているのかわからない。

 

「君のところに千束が居るのだろう?リコリスが狙われている現状、出来るだけ単独行動は避けたい。そこでたきなを千束の元に向かわせた。」

 

なるほど、なるほど。つまりこういうことだ。

 

リコリスが何者かに襲われている→リコリスである千束とたきなは単独行動を避けたい→千束は俺の家に入り浸っている→たきなは俺の家に向かっているorもういる←今、ココ。

 

ふむ、理解できた。

 

「いや!おかしくね!!!」

 

「どこがおかしいと言うんだ?」

 

「いや!おかしいでしょ!普通に考えて!!年頃の付き合ってもいない男女がひとつ屋根の下で生活してる時点でおかしい!!」

 

「千束と生活してるじゃないか。」

 

「あいつが勝手に入り浸ってるだけです!!!」

 

「とにかく、さっきも言ったように君も襲われる可能性がある。出来るだけ単独行動を防ぐためにだ。分かってくれ。」

 

思うところはあるが理屈は理解できる。

 

「・・・分かりましたよ。用件はコレだけですか?」

 

「あぁ、では頼んだよ。」

 

「了解。」

 

今度こそ通話を切り、空を見上げる。

空には雲ひとつ無く太陽が輝いていた。

さっきのやり取りで熱くなってしまったためか電話がかかってくる前よりも暑く感じる。

 

「あっつ。」

 

早くクーラーの効いた部屋に入るために足早に帰宅することにする。

彼岸花が一本増えているであろう自宅に。

 

_____________

 

(セーフハウス)の扉を開けると、電気の点いていない真っ暗な部屋が広がる。それもそのはずこっちはダミーの部屋で、使っているのは下の階の部屋だ。

下の階には気配がふたつある。おそらく、たきなが既に到着しているのであろう。

 

俺は梯子を使って下の階に降りるてからリビングに繋がるドアを開ける。

 

「た~いま。」

 

「おかえり~、ハチ!買い出しご苦労様です~!」

 

「え?何故ハチさんが?」

 

千束は俺に軽い敬礼をして、たきなは俺がこの場にいることが理解できていないようだった。

ボスから聞いてるはずだが?

 

「あっつい、千束、冷たいお茶くれ。」

 

手に持っていた買い物袋を台所に置き、千束から氷と緑茶の入ったグラスを受けとる。

 

「ねぇ、ハチ?たきながいることに驚かないの?」

 

「あぁ、帰ってくる前にボスから連絡があったし、部屋のドアを開けたところから気配は感じてた。」

 

緑茶を飲みながら、千束の質問に答える。

千束は「あ~、なるほどね~。」と、返答しする。

今度はたきなから質問が来る。

 

「あの、何故ここにハチさんが?」

 

「何故ってここ俺の家だし。」

 

たきなは「え?」と言ってから顎に手を当てて何か考えている。

とりあえず、何かしらの答えは出たようだ。

 

「お二人は同棲していると言うことですか?」

 

「何故そうなる?!」

 

「だって、さっき千束が私のセーフハウスって。」

 

俺は無言で千束を睨み付ける。

当の本人は頭の後ろで手を組んで、下手くそな口笛を吹いている。

千束、吹けてねぇぞ。

 

「はあ、千束に何言われたか知らんが、ここは俺の(セーフハウス)(リコリコ)が近いからって千束が勝手に入り浸ってるだけ。」

 

「えぇ~いいじゃ~ん。同棲してるってことで!もしかして、ハチってば照れてんの~?お?照れてんのか~?」

 

「はい、今日のお前の晩飯、素麺に決定!」

 

そう千束に伝えると俺の服の裾を握りながら止めてくれと懇願してくる。

 

「というか千束、俺が買い出しに行く前に言ったよな。テーブルの上を片付けておけって。俺の目が悪くなったのか?一向に片付いてるところが見受けられないんだが。」

 

「あっ!い、いやコレは、片付けしようと思ってたときにたきなが来ちゃって~、出来なかったと言いますか・・・。」

 

「正直に言えば晩飯の素麺は勘弁してやる。」

 

流石に、昼飯と晩飯が同じなのはかわいそうだ。

 

「すいません!忘れてました!!」

 

「はぁ、たきなもいるんだから晩飯までに片付けておけよ。」

 

「はぁ~い。」

 

「たきなは千束から家の案内はされた?」

 

「あっ、はい。お風呂やトイレの場所も既に確認済みです。後は、わたしの就寝場所はソファーでも構いませんか?」

 

「ダメ(だよ、たきな)。」

 

「いえ、ですが、」

 

「部屋は余ってんだ。千束のとなりの部屋を使うと良い。それが嫌なら今日から千束と一緒に寝るか?」

 

「!、そうしよう!たきな!!」

 

「喜んでお部屋をお借りします。」

 

「なぁ~んでだよ~。」

 

千束は目を輝かせて言うが、食い気味に断られてしまった。

 

「そんなことより、お二人は家事とかどうしていたんですか?分担してやってたんですか?」

 

「いや、食事と掃除は基本俺だな。たまに千束が掃除をやってくれるときもあるが年に数回あるかないかだ。」

 

「千束。」

 

「いや、だぁってハチのご飯の方が美味しいし・・・。」

 

「そんなんだけど洗濯だけはやりたがるんだよな。」

 

「だって、下着見られるの嫌だもん。あぁ、あとトイレはたきなも下の階のあるやつを使っても良いよ。ハチが上の階の奴を使ってるから。」

 

「了解しました。でも、それだとハチさんの負担が大きくないですか?」

 

「まぁ、俺の負担が千束よりでかいのは事実だな。」

 

「では、こうしましょう。共同生活を送る上で公平な家事分担です。」といい、壁に一枚の画用紙を張り付ける。そこには家事分担スケジュールと書かれた1週間の予定が書かれている紙に千束とたきなの名前が書かれていたが、そこに俺の名前はなかった。

 

「たきな?俺の名前が書かれていないんだけど?」

 

「ハチさんには居住スペースをお借りしているため家事には参加してもらわなくても大丈夫です。わたしと千束で分担させてもらいます。」

 

いや、そんなこと気にしなくても良いのに。真面目かっ。

 

このスケジュールに不服なのか千束から「つまんな~い。」という声が上がる。

 

「つ、つまらない?で、ではジャンケン・・とかがいいですか?」

 

!たきな、それは!!

 

「いいね、それいいね!ジャンケン!!」

 

たきなの案に千束は機嫌良く乗る。

こいつ、まさか・・・。

 

それから、千束とたきなのジャンケンが始まる。

千束の元気の良い最初は、グー(・・・・・・)という掛け声から始まり一見すれば、ただのジャンケンだが俺は知っている。

これがただの茶番だということに。

これは昔俺が千束に教えてしまった手前、今現在たきなにものすごい罪悪感を感じている。

すまん、たきな。

 

彼女らは計21回のジャンケンを終えるがスケジュール表には千束の名前はなく、全ての空欄はたきなの名前で埋められていた。

たきなは信じられないという表情をし、千束は、何事もなかったかのようにストローでアイスコーヒーを飲んでいた。

 

・・・こいつ、平然と自分の相棒をカモりやがった!!!!

 

コレはかわいそうだ。罪悪感もある手前、俺は食事担当を願い出る。この願いは簡単に受け入れられた。

 

______________

 

翌日、3人でリコリコへ出勤する。

 

「おっはよう!労働者諸君!」

 

「おはようございます。」

 

「はよーっす。」

 

俺達はそれぞれ挨拶をするとカウンターで大量のスイカを切っているミズキさんに声をかけられた。

 

「きぃたよ~。えらいことになってるわねぇ。」

 

「あぁ~、私らDAじゃないから大丈夫だよ~。」

 

「可能性はゼロじゃありません。」

 

「たきなの言うとおりだ。俺だって狙われてる可能性だってあるのに。」

 

俺とたきなは千束の楽観的な感想を否定しながら店の準備をするため店の裏側に回る。

そこにはおそらく楠木と通話中であろうボスがいた。

 

「次の被害を防ぐためにもなると思うが、あぁ、そうか。分かった。」

 

「楠木さん?」

 

「指令は情報くれそうですか?」

 

「極秘だとさ。」

 

「流石、天下のDA様だ。秘密の多いことで。

 

俺は精一杯の皮肉を込めて言う。

そんな時に、座布団をふたつ織りにして枕にし座敷で寝っ転がっているクルミが「勝手に覗いちゃうから、いいよぉ~。」と言った。

 

流石、天下の天才ハッカー様だ。言うことが違う。

 

____________

 

店が繁盛するのはとても喜ばしいことだが、お客さんが多すぎても忙しすぎる。

俺は伝票を見て次に何を作れば効率が良いかと考えながら動く。

 

「はい、三色団子あがり。千束~、3番さん卓に持ってってくれ。」

 

そう言うが、千束の返事はなく、代わりにたきなが来てくれた。

 

「千束はホールにはいませんよ。調理場にいないんですか?」

 

「ん?おかしいな。こっち(調理場)にもいないけど・・・。」

 

まさか・・・。

俺は座敷に移動する。

俺の読みは正しく、千束は座敷でクルミとボードゲームで遊んでいた。

俺は気配を消しているので遊んでいる2人は気づかない。

 

「コレ、もぉらい~。」

 

「あぁ~、そのタイル持ってくなよぉ。」

 

ミズキさんは千束と遊んでいるクルミに今回の事件の調査を調べるんじゃないのかと尋ねる。

 

「情報をダウンロードして、後でゆっくり調べるんだよ。」

 

「あんた!DAをハッキングしてんの?!」

 

「流石はクルミさん、ヤバイね。」

 

「ちょろいね。」

 

クルミは俺がさっき作ったあんみつをかきこむ。

食べ終わったクルミが丁度通りがかったたきなにあんみつのおかわりを所望するが、ここは俺に任せてもらおう。

 

「ヤバイのは今、この店の状態でちょろいのはそこで遊んでるお前らふたり組だ。」

 

俺の存在に気づいた千束の顔が徐々に変わっていく。

 

「あっハチ~。そんな怖い顔しないで。折角のカッコいい顔が台無しだよ。ほら、笑顔笑顔~~。」

 

「千束、今は営業中だ。お前はいつから営業中に遊べるまで偉くなったんだ。是非、教えてほしいなぁ。」

 

「ハチ?怒ってる?怒ってるよね?」

 

「今すぐ店の営業に戻るか、次の体術訓練で俺に全力で投げ飛ばされるか、好きな方を選べ。」

 

「すぐに戻らせていただきます!!」

 

そう言ってから千束はダッシュでホールの方に移動していく。

 

___________

 

本日の営業が終わり三人で帰宅する。

食事も終わらせ、今は皿洗いなどの片付けをしている最中だ。

千束はリビングでバラエティ番組を見ているのか笑いながらテレビを見ているが、たきなは皿洗いを手伝ってくれている。

 

「ハチさん、おかしくないですか?」

 

「何が?」

 

「ジャンケンの勝率は運の要素も絡んできますが、統計的にどの手も3割なのに、千束に勝てないんです。」

 

「あぁ、それは・・・。」

 

どうしたものかと考えている時に上の階から人の気配を感じる。

尾行されたつもりはない。ドローンかなにかで監視されてたか?

 

「ハチさん?」

 

「千束~。招ないお客さんが来たみたいだ。」

 

「えぇ、マジ~。今良いとこなのに。」

 

そう言っていたら千束のスマホが鳴り響く。

この音は上の階に侵入者がいるときの音だ。

 

「おぉ~、ほんとだぁ。流石ハチ。」

 

千束だけでも大丈夫だが、こいつに任せるとまた窓ガラスが凄惨なことになってしまうため俺も行くことにしよう。

 

はしごを上がるとふたり組の男が俺達を探している様子であった。

俺は気配を消して侵入者のひとりに近づく。

 

「どちら様?」

 

「「なっ!」」

 

侵入者は俺の存在に気づくが返答を待たずに俺は侵入者のひとりに意識を失わない程度の相手の首に回し蹴りを入れる。意識を奪ってしまうと自分の足で帰ってもらえなくなるからだ。

 

もうひとりの侵入者が俺に銃口を向けるが、梯子のところに隠れていた千束が発砲する。もちろん、非殺傷弾だ。

千束はわざと外しながら犯人達を追いかけるように発砲し続け、犯人の戦意を削ぐ。

 

俺はベランダに繋がる窓ガラスを開き、千束と一緒に犯人達を外のごみ捨て場に捨てる。

 

「「せーの、でっ!!」」

 

犯人達は完全に怯えてしまっているが2度と戻ってこないように千束とふたりで銃口を向け犯人達を脅す。

犯人達は完全に怯えてしまい逃げ帰るようにその場を去る。

 

「ふぅ、今回は窓ガラスが割れなくて良かった。」

 

「そうだねぇ、前は割られちゃったし。」

 

「違う、お前の発砲で割ったんだろ?」

 

「あれぇ?そうだっけ?」

 

「ったく。」

 

千束とそんな会話をしていると「このためのセーフハウスだったんですね。」とたきなが言う。

 

「今回は、ただのチンピラだったから手早く終わって良かったよ。」

 

「昔は、リリベルも来てたしねぇ。」

 

「リリベル?」

 

「ん~?男の子版リコリス?みたいな?」

 

「それってハチさんのことじゃ。」

 

「俺をあんな奴らと一緒にするな。」

 

「リリベルって人たちは普段、何してるんですか?」

 

「知らん。」

 

「なにぃ、たきな。男の子に興味あるのぉ~。」

 

「そう言うことじゃないです。」

 

俺達は話しながら下の階の移動する。

このときの俺は窓の外にいた緑色のドローンに気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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