闇に生き光に奉仕する男の話   作:ダレン シャン

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バランスを取りたがる男と一戦交える話

 

「なんだ、こいつ?これを見せれば真島は興味持たないか?」

 

僕は先ほど撮られたドローン映像を見ながら言う。

その映像には、カーテンの隙間からしか確認できないが、僕が雇ったチンピラふたり組をあっさりと撃退するふたり組が写し出されていた。

ひとりはフードを被っていて顔と性別は確認できなかったが、真島に興味を持たせるには充分だろう。

 

そう思っているといきなり僕のアジトのドアが屈強な男達に無理矢理こじ開けられた。

 

「ドア~!!」

 

ドアの向こう側から真島がやってくる。

何故、このばアジトの場所がわかったのか?

 

「もう3日経ったぞ~。」

 

「どうして、ここが?」

 

「そんで?」

 

真島は僕の質問には答えない。

僕は真島にどう説明するか頭のなかで情報を整理するが真島は待ってくれないようだ。

 

「いや~、あ、あの。」

 

「そんで?」

 

「ちょ、ちょっと、待て。待て!い、嫌だ。なん、何だよ?!止めて!」

 

ふたりの屈強な男達に両腕を固定され無理矢理その場に座らせられる。真島はそんな僕に近づき、僕の眉間に銃口を突き付ける。

 

「ま、まて!リコリスが、」

 

先ほど手にした映像を真島に見せようとするが、真島は僕の話を聞く気がないようだった。

 

「リコリスじゃねぇよ。」

 

「待て!待て!見てほしいものがあるんだ!」

 

「他の奴らは死んでんだよぉ。」

 

怖い!死にたくない!こいつ、目が完全に逝ってる!数秒後には銃弾が僕の眉間を貫くのだろうと死を覚悟した。

折角、あの目障りなウォールナットを殺し、僕の天下だったのに!

 

「まて!スゴい映像が!」

 

「バランス取らなきゃなぁ~!!!」

 

「頼む、ビデオを見て!お願いだから!!待て!え!うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

そんな時、僕のPCが勝手に作動し、先程のドローン映像が画面上にリピート再生される。

何故?まぁいい。動画が突然、再生され真島は画面をまじまじと見ている。

 

「こ、こいつがトップのリコリスだ!フードの方もリコリスかは分からないが、DAを襲撃前にコイツらを殺しておかないとお前らは全滅させられるぞ!」

 

少し大袈裟に言ってしまった気がするが、真島は銃を下ろし僕から離れていく。

 

「明日、そいつらを倒しに行く。直ぐに作戦を考えろ。」

 

どうやら僕の命は助かったようだ。

 

__________

 

 

翌日、喫茶リコリコで俺と千束はクルミの話しを聞いていた。

クルミがPCを操作しながら喋る。

 

「地下鉄襲撃犯とリコリス襲撃犯は例の銃を使ってるみたいだなぁ。」

 

「例の?」

 

「前の銃取引の時の銃か?」

 

「そうだ。」

 

クルミはそう言い、PCの画面に以前ストーカー被害で護衛をした沙保里さんからもらった画像を写し出す。

 

「あぁ、じゃ、あん時のDAハッキングしたのもコイツら?」

 

千束の言葉にクルミがビクッと反応する。

そう言えば、まだクルミのやつみんなに説明してなかったな。

タイミングの良いときに言っとけって言ったのに。

 

「あ、あ~、それは・・どうかな?」

 

クルミは目をそらしながら言うが、珍しくはっきりしないクルミの反応に千束も違和感を覚えたようだ。

 

「んー?」

 

「あー、いや・・もうちょっと調べてみる。」

 

「にしても、どうやらやってリコリスを識別してるのかなぁ~?」

 

「さてな、一般の女子校生が襲われたって話しもないしな。あちらさんはなにかにらの理由で判断してるのは間違いない。」

 

「はっきりとは分からんけどその制服がバレてるんじゃないのか~?」

 

俺と千束は、赤い制服を見る。

 

「「おぉ、なるほど!」」

 

流石、クルミさん。目から鱗だ。

 

__________

 

俺はその後、1人でホールに戻る。既に本日の店の営業は終わっているためお客さんはいないが、たきなが難しい顔をしていた。

 

「う~~~ん。」

 

「どったの?あんた?」

 

そんなたきなにミズキさんが尋ねる。

 

「勝てないんですよ。」

 

「え?」

 

まさか、この話しは・・・。

 

「共同生活を始めてから千束と家事の分担をジャンケンで決めたのですが一回も勝てません。」

 

そんなたきなの言葉にボスとミズキさんは顔を見合わせた後、目を細めて俺のことを見てくる。

止めて。そんな目で見ないでくれ。俺だって罪悪感を感じているんだ。

 

そんなミズキさんが俺に声をかける。

 

「あんた、まさか説明してないの?かわいそうに。」

 

「いや、俺が千束に教えてやってしまった手前、どうしても言いづらかったと言うか・・・。」

 

コレでは先程のクルミのことを強くは言えないな。

 

「え?どう言うことですか?」

 

「最初はグーでやってるでしょ。」

 

「それでは千束と史八には勝てない。」

 

「え?!」

 

「史八、説明してやれ。」

 

「了解。」

 

罪悪感を感じながら俺はたきなに説明する。

 

「いいか、たきな。俺と千束が相手の服や筋肉の動き、銃口の角度や相手の目線で、どのタイミングでどこを撃ってくるか予測して弾を避けてるのは知っているな。」

 

「はい。」

 

「コレは、ジャンケンにも応用が出来る。」

 

「?」

 

「つまり、最初はグーから始めると次の一手を変えるかどうか読めるんだ。筋肉の動きがなかったら相手はそのままグーを出すからこっちはパーを出せばいいし、もし、筋肉の動きがあったら相手の手は確実にチョキかパー。この場合こっちはチョキを出せば最悪、あいこにできる。負ける確率は0%。後はこの繰り返しだ。」

 

俺の説明を受けていると徐々にたきなの顔が絶望的なものに変わっていく。

 

いや、ホントにすまんとは思っているんだ。

 

「どうして、教えてくれなかったんですか!!」

 

当然、たきなはご立腹だ。

 

「すまん!ホントにすまなかったと思ってる!代わりといっては何だが千束にジャンケンで高確率で勝てる方法を教える!それで勘弁してくれ!」

 

「・・・どうやって勝つんですか?」

 

「逆の手を出せばいい。」

 

「?」

 

「いいか、要は千束に筋肉の動きが分からなくしてしまえばいい。」

 

「けど、手を出したら見えてしまうじゃないですか」

 

「だから、次の一手では逆の手を出すんだ。例えば右手で最初はグーのグーを出せば次は左手で次の一手を出す。そうすれば千束には、自分の出す手を読まれなくすることが出来る。」

 

「でも、それだと通常のジャンケンが成立するだけで高確率では勝てないのでは?」

 

「そこで、千束の心理的な裏を読むんだ。千束は、確実にジャンケンに勝つために必ず自分から最初はグーと掛け声を言う。これが千束の必勝パターンだからな。」

 

「はい。」

 

「そこで、たきなが無理矢理「ジャンケン、ポン!」の「ジャンケン」の掛け声を言う。そうすれば、千束の必勝パターンは崩れて千束は高確率で慌てる。」

 

「それでも、勝てる確率は五分ですよね。」

 

「いや、人は急にジャンケンを始めると高確率でグーかパーを出す。個人差はあるが、チョキはグーとパーと比べ形が作りづらいからな。」

 

「でも、そこでわたしがパーを出したとしてもあいこであったら千束の必勝パターンになってしまうのでは?」

 

「いや、この話しの肝は千束が慌てている(・・・・・)という状況だ。千束が慌てている状態で急にジャンケンをすると圧倒的にパーを出す確率が多い。100%とは言えないが、7,8割ならこの方法で勝てる。」

「今度、機会があったらやってみるといい。」

 

そんな説明を終えたところで裏から黄色いポンチョ着た千束が現れる。

そんな千束に俺達は意味深な目線を向ける。

 

「組長さんとこに配達に行くわぁ。・・・何よ。」

 

「いいえ、別に。」

 

「俺は過去の過ちを後悔してることだ。ほっといてくれ。」

 

「えぇ、なになに?」

 

「いぃから、早く配達いってきな。」

 

千束と一緒に行くため「すぐ支度します。」と制服に着替えるためたきなが立ち上がるが千束がこれを断る。

 

「あぁ~、大丈夫。制服がバレてんるだろうってクルミが。」

 

「リコリス制服ですか?」

 

「あぁ、だからポンチョを着てるのか。」

 

「そそ~、これなら~ぜったぁ~い、わかんな~い。」

 

「私服じゃ銃は使えないんだぞ」、「警察に掴まっちまえ。」とボスとミズキさんがそれぞれ指摘するがポンチョの下に制服を着ているようで千束はポンチョを軽くめくる。

 

「んなこと分かってるよ。下に着てます~。ほらぁ。」

 

「じゃあ、わたしもそれで。」

 

たきなも同じように準備しようとするが千束は、ひとりで行くようだ。

 

「あぁ、大丈夫。ハチぃ、今日の晩御飯はチキン南蛮がいいなぁ。」

 

「はいはい、作っておくから気を付けていけよ。近いとはいえもう暗いし、襲われる可能性だってあるんだから。」

 

「はいは~い、いってきまぁ~す!」

 

そう言って千束は、店を後にする。

 

このときの俺は、千束を一人で行かせたことを後悔することになるなど微塵も思っていなかった。

 

___________

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

千束が店を出てから数分後、聞きなれない慌ただしいクルミの叫び声が店内に響き渡る。

珍しくクルミが慌てている何事であろうか?

こんな慌てているクルミは初めてだ。

クルミは手に持っているタブレットの画像を俺達4人に見せてくる。

 

「見てくれ!!これは銃取引の時のDAのドローン映像!殺されたのはこの4人だ。これが犯人に流出して顔がバレてたんだ!」

 

「なんでそんなもんが流出するのよ。」

 

「あの時のハッキングか。」

 

「DAもそのハッカー見つけられていないようです。」

 

「あんたの仲間じゃないのぉ~。さっさと調べなさいよ~。」

 

3人がそれぞれの感想を言ってあるが、そのDAをハッキングしたハッカーは目の前にいる。

クルミは難しい顔をしている。どうやら今から白状するようだ。

 

「あの時のは、ボクだ。」

 

「はぁ~!!!」

 

「どういうことだ?!」

 

クルミの台詞に三人は驚きの表情をクルミに向ける。

クルミも自分の言い分を主張する。

 

「依頼を受けてDAをハッキングした。そのクライアントに近づくためには仕方なかったんだ。」

 

「ちょっと、あんたが武器をテロリストに流した張本人って訳?!」

 

このミズキさんの訴えにクルミは強くは否定する。

 

「それは違う!!指定の時刻にDAのセキュリティを攻撃しただけだ!」

 

「そぅですかぁ、おかげでぇ正体不明のテロリストがぁ山ほど銃を抱き締めてぇたきなはクビになりましたぁ。」

 

「もういい!!止めろ、ミズキ!」

 

ボスが強くミズキさんを止める。

まぁ、たきなはクビになった訳じゃないけど。

 

「映像はそれで全部ですか?」とたきながクルミに確認するが、クルミは千束の所在を聞いてくる。

 

「おい、千束はどこだ?」

 

「配達に行きました。」

 

「全部じゃないんだ。」

 

なんか嫌な予感がしてきた。止めてくれ、俺の嫌な予感は大抵当たる。

 

クルミはタブレットを操作し、別の画像を出す。

その画像にはストーカー被害の時に撮られてたであろう俺と千束が映っていた。俺はフードを被っていた顔は映ってていないが千束は違う。

 

「マジかよ。」

 

「いかんな、これは。」

 

俺はすぐに千束のスマホに電話をかける。

全員に聞こえるようにスピーカーをONにする。

頼む、出てくれ。千束!!

 

数コールした後に俺のスマホから千束の呑気な声が聞こえる。

まだ、襲われてはいないようだ。

 

「もしもしもしもし~。ハチぃ、どったの?」

 

「千束!敵がお前を狙ってる!!周囲に気を付けろ!今何処にいる?!」

 

「え?」

「う、うわぁ!!ちょっ、ちょいちょいちょいちょ~い!!!」

 

「千束!!千束!!!聞こえるか。おい!千束!!!」

 

千束の言葉の次に車のエンジン音と何かがぶつかるような大きな音が聞こえ、通話は途切れてしまった。

 

「なんかスゴい音したよ!」

 

「たきな!すぐに支度しろ!とりあえず、俺のバイクで組事務所に向かう!」

 

「了解!」

 

「こちらも千束の位置が分かり次第情報をそっちに送る!クルミ!千束を探せ!」

 

「わかった!」

 

それぞれが千束を捜索するため行動を開始する。

 

____________

 

バイクで移動するためたきなに千束のヘルメットを渡してから組事務所に向かっているとクルミが千束のスマホのGPSを捉えたのか位置情報が送られて来た。

 

そこでバイクを停め、周囲を確認するが千束の姿はない。

 

「クソッ!!どこ行ったんだよ!」

 

「ハチさん!コレ、千束のスマホとポンチョです!」

 

俺はたきなに近づくとたきなはボス達に連絡を入れる。

千束のスマホとポンチョがあった側には車のブレーキ痕などを見つけた。

 

「何処に行ったんだ、千束。」

 

その瞬間、急な頭痛に襲われる。

 

「うっ、・・・・がぁ・・・ぁ。」

 

あまりの痛さに俺は両手で目と頭を抑える。

 

なんだ?流入現象か?・・なんで、こんな時に?

・・・いや、違う。似てはいるが・何かが違う。・・・なんだ、これは?

眼が・・・熱い?

 

少し頭痛が収まったので頭から手を離し眼を開くと視えないはずのものが視えた。

 

「な・・んだ、コレ?」

 

眼を開くと、目の前に半透明になった千束が視えた。千束は俺が見えていないのか、何者かから襲われ、逃げているようであった。

まるで数分前の出来事がここで行われているような・・・。

これじゃあ、まるでタカn

 

「・・・チさん!・・・ハチさん!」

 

「あっ、・・あぁ、どうした?たきな。」

 

どうやら何回かたきなに声を掛けられていたみたいだ。

 

「どうしたじゃないですよ!急に苦しみだして。大丈夫ですか?もし、ダメなr」

 

「い、いやもう大丈夫だ。急に頭痛に襲われたがもう収まった。本当だ。」

 

「本当に大丈夫ですか?あまりの無理はしないでください。」

 

「すまない、ありがとう。でも、本当に大丈夫だから。」

 

現に頭痛は嘘のように収まっていた。

 

「それならいいですけど、依然千束の行方は分かりません。」

 

「大丈夫。多分こっちだ。」

 

俺は先ほど視た千束の後を追うようにたきなを案内する。

 

「どうして分かるんですか?」

 

「今は、説明してる暇はない。急ごう。」

 

そう言ってたきなと共に千束を追う。

 

道を進んでいくと、遠くで複数人の男の声が聞こえる。

その方角に目を向けると数台の車と複数人の男達が、千束と緑色の髪の男を取り囲んでいた。

緑髪の男が千束を殴り付けてから千束に銃を向けている。

千束は頭から出血しているようであった。

 

それを見た時、俺の中で何かのスイッチが入るような感じがした。

 

 

 

___________

 

ハチさんの後に着いていくようにすると遠くで千束が襲われているのを発見する。

 

「ハチさんどうしm」

 

ハチさんの指示を仰ごうとするが言葉が最後まで出なかった。

原因はいやがおうにも分かる。となりにいるハチさんからの殺気だ。

自分に向けられているものではないと理解しているがわたしの本能が嫌でも感じ取ってしまっていた。

以前に、沙保里さんを囮にしたときも感じたが今回はその比ではない。桁が違う。なんなのだ?本当にこの人はさっきまで一緒にいた人と同一人物なのかと疑ってしまう。

だが、その殺気は一瞬で消え、最終的には感じ取れなくなってしまった。

 

「たきな。」

 

「は、はい!」

 

「おまえは、茂みに隠れて俺の射撃開始の合図を待て。俺が千束のところに行く。」

 

わたしの「了解。」の声も待たずにハチさんはフードを被り行ってしまった。

 

わたしも足早に千束が囲まれている付近の茂みに向かい、ハチさんの射撃許可を待つ。

 

__________

 

しくじった!

相手の目潰しで避けられなかった。

ハチにも訓練の時に気を付けろって言われてたのに。

私は目の前の男に殴られ倒れたところに銃口を向けられる。

だが、もう目は見える。次は避ける。と、思ったがあることに気づいた。

私の視界に入って取り囲んでいた男達が数人、姿を消していた。

それも誰も気付いていない。

こんな芸当が出来る人物はひとりしか知らない。

良かった、来てくれた。ハチが視界に入った。でも、何だろう?いつもと雰囲気が違う気がする。

 

「あんた、後ろに気を付けた方がいいよ。」

 

「あ゛? 何言っt」

 

「おい。」

 

男は回りに自分の仲間が取り囲んでいるため、背後への警戒を怠った。

まぁ、警戒してたとしても相手が相手なので結果は変わらないが。

 

男は突然現れたハチに銃口を向けるがそれでは遅い。

ハチは自分の右足を男の足の後ろに入れるよう移動し、腕で相手の首を抑えてから思いっきり地面に男をたたきつけた。

 

地面にたたきつけられた男の肺から「かはっ」と空気が出る音がした。

あれ、痛いってより苦しいんだよね~。私はあんなに思いっきりたたきつけられたことはないけど。数秒間は、動けないだろう。

そんなことを思っているとハチが私の前で膝をつく。

 

「千束!大丈夫か?!怪我は?!頭をやられたか?!!」

 

おそらく男の目潰しで目の辺りが汚れていることで勘違いしてるのであろう。ハチはひどく慌てている。

 

「大丈夫、これは、私の血じゃない。唾かけられただけだから。」

 

「そうか、良かった。」

 

ずいぶんと心配させてしまったようだ。先程の雰囲気とうって変わりホッと息を吐く。

私の顔についた唾をコートの袖で拭ってくれた。

 

「悪いな、今タオルがないから。」

 

「いいよ、大丈夫。気にしないで。ありがと。」

 

そんなやり取りをしていたら緑髪の男が銃口をこちらに向けながらゆっくりと起き上がり、ハチが私の前に立つ。

 

「おいおい、やってくれたなぁ~!何者だ!てめぇ!!」

 

「俺が何者かはどうでもいい、お互いこの辺りで手打ちにしないか?」

 

ハチが両手を軽く挙げながら緑髪の男に提案する。

 

「ふざけてんのかぁ!てめぇ、面白くもない冗談言いやがって!」

 

「俺はこいつを連れて帰りたいだけ。お前らがこのまま引くって言うならこちらも追撃はしない。」

 

「状況が分かってねぇようだな。今のこの状況で逃げられるとでも思ってんのか!」

 

「解ってないのはおまえの方だ。・・・てめぇらごときいつでも殺せる。はっきり言わなきゃ分からないか?逃がしてやるって言ってんだよ。」

 

「あ゛ぁ゛!!」

 

緑髪の男が激昂するがハチが「交渉決裂だ。」といい、両手を下ろす。

その瞬間、男の手から拳銃が撃ち落とされた。

たきなだ!

横の茂みから正確無比な射撃を行い、次々と男達を無力化していく。

 

「千束!逃げるぞ!!」

 

ハチの言葉を聞いて落とした自分の拳銃を拾ってからハチと一緒にたきなの援護射撃を行う。

そんな時に、見慣れた赤い車がこっちに向かってくるのが見える。

車は私の近くに止まり、先生がドアを開けるのが見えた。

 

「千束!乗れぇ!!」

 

「とりゃぁぁぁ!」

 

私は勢い良く車に飛び乗る。たきなも反対側の扉から飛び込んでくる。

 

「せ、せまい。」

 

「詰めてください。」

 

「ミズキ、出してくれ!」

 

「バッチこい!!」

 

「ちょっ!ハチがまだ乗ってないよ!!」

 

「俺は殿(しんがり)だ!速く行け!!」

 

車の外で犯人の応戦をしながらハチが叫ぶ。

 

「そんな?!危険だよ。速く乗って!!」

 

「いいから行け!」

 

そんな言葉を最後にミズキは車のアクセルを踏む。ハチも犯人を1人ずつ確実に無力化してくれているが頭数が多いため対応しきれていない。

そんな状況なのに無人の車が突っ込んでくるがミズキはこれをスレスレでかわしてから通信機を介してハチの声が聞こえてくる。

 

「不味いぞ!RPGだ!車が狙われてる!!どうにかしてくれ!」

 

車内から射撃するがたきなは弾切れ、私は敵が遠くて当たらない。

 

「あぁ~、ダメぇだ!ヤバイヤバイヤバイ!」

 

「クルミ!」

 

ハチがクルミに指示を出す。

 

「しょうがないなぁ~。」とクルミの気だるげな声が聞こえた次の瞬間、クルミの黄色いドローンがRPGで私達を狙っていた男に直撃し、射線がズレ私達の車から少し後ろに離れた車に当たる。

 

私達の乗った車は現場から無事離脱するが、ハチからの連絡がない。私は心配になり通信をいれようとしたときにハチからの通信が入る。ハチも無事逃げられたようだ。

 

「よかった!ハチ、今何処にいるの?」

 

「今、バイクで移動中だ。そっちはそのまま店に戻ってくれ。俺は尾行の恐れもあるから遠回りしてからそっちに戻るよ。」

 

「了解した。何かあったらすぐに連絡してくれ。」

 

「了解しました。」

 

________

 

俺がバイクでリコリコへ戻るとエンジン音が聞こえたのか千束が店から出て抱きついてくる。

 

「よかった、ハチ。無事で!どっか怪我してない?」

 

俺は千束を引き離しながら言う。

 

「逃げるのは俺の十八番だからな。あの連中からなら余裕だ。」

 

「とりあえず、お店に入ろっ!」

 

「あぁ。」

 

そう言って千束に手を引かれながら店に入る。

 

__________

 

 

店に到着してから一息ついたところでクルミが床の上に正座をする。

そんなクルミの前にはたきなが立っており、ミズキさんはもう既に酒を飲んでいる。

ボスはカウンターでなにか作業し、俺は千束の腕についた擦り傷などの手当てをする。

千束は、消毒用のアルコールが染みるのか顔をしかめている。

 

「ハチぃ、もう少し優しくやってよ。」

 

「優しくやってもアルコールが染みるのは変わらない、我慢しろ。」

 

「う~。」

 

千束から文句を言われながら傷の手当てをし、とりあえず包帯を巻いて手当てを終わらせる。

 

千束も俺が店に到着する前にボスから今回の一連の騒動の原因を聞いていたようだ。

 

「つまり、全部こいつが原因ってこと。」

 

「何だよ、助けてやっただろ!」

 

「たきなぁ、あんたは被害者なんだから言ったれ、言ったれぃ!」

 

そんなミズキさんの悪のりに千束も乗っかる。俺も面白いから乗っかろ。

 

「どうすんのぉ、たきなぁ?やっちまうかぁ?」

 

「この時期の黄泉比良坂(よもつひらさか)は涼しいのかなぁ?」

 

「千束、史八まで~。」

 

クルミは完全に観念したのか正直に、たきなに頭を下げる。

 

「ごめん、たきな。」

 

「あれは、わたしの行動の結果でクルミのせいじゃありません。」

 

その言葉を聞いて俺と千束から笑みがこぼれる。

数か月前のたきなじゃあ今の言葉は絶対に出てこない。

最悪、クルミを撃ち殺していても可笑しくはない。

たきなは確実に、人としても成長していた。

 

「でも、あいつは捕まえる。最後まで協力してもらいますよ。」

 

たきなからの許しが出たためクルミが顔を上げる。

 

「もちろんだ!早速だが奴の名前が分かったぞ。」

 

そう言いクルミは後ろに隠していたタブレットの画面を見せてくる。そこにはドローンで撮影していたのか先程の犯人達が叫んでいるシーンのようだ。

ひとりの男が男の名前を言っている。

その音声と被らないようにクルミも今回の主犯格の名前を言う。

 

「まぁじまさぁ~ん。」

 

_________

 

同時刻 都内のとある場所にて

 

僕が今回手に入れたデータを整理していると突然、ドアが蹴り開けられた。

 

「また、ドアぁぁぁぁ!!」

 

ドアを蹴り開けた真島は全身、ずぶ濡れだ。前髪で目が見えなくなっていて表情が読めない。

 

真島が僕の座っていた椅子に座り、その後ろに部下であろう作業着姿の男達が数人立ちふさがり、完全に退路が絶たれる。

僕は真島達の前で正座をしていた。

 

「あっ、皆さんご無事でぇ。」

 

僕はこれからどうなってしまうのだろう?

 

「よぉ、ハッカァ~。」

 

「はいぃぃぃ!」

 

真島は僕に近づきながら予想外の言葉を口にした。

 

「見直したよ。」

 

「え?」

 

「面白い奴を見つけたなぁ!あれじゃなきゃ俺とはバランスが取れねぇ!」

 

「え?」

 

「これから忙しくなるぞぉ!あのリコリスとフードの奴のことをもっと教えろ!ハッカァー!!」

 

「ひぇぇええええええ!!!!!」

 

________

 

翌日

 

ここはDAの息のかかった病院。

俺は千束とたきなと共に山岸先生のいるこの病院に来ていた。

理由は千束の怪我の治療だ。俺が処置した手前、何か問題があったら不味いと思ったので千束とたきなに同行していた。

 

山岸先生が千束の傷の処置をし新しい包帯を巻く。

 

「山岸先生、傷のほうはどうでした?」

 

「あはは!心配性だねぇ!あんたは。大丈夫。うまく処置できていたから傷跡も残らないでしょ。」

 

「そうですか。」

 

俺は安心して息を吐く。

 

そんな俺に山岸先生が言う。

 

「あんたは自分の傷には鈍感だけど、他人のこととなると敏感になるからねぇ。相手が千束だとそれが顕著だ。愛されてるねぇ。」

 

「ちょっ!先生!なに言ってるんですか?!冗談は止めてください!」

 

「おや、違うのかい?」

 

「違いますよ、なぁ千束?」

 

俺は千束に声をかけるが、

おい、なぜここで紅くなる?

 

先生が気を遣って話題を変えてくれる。

 

「それにしても、怪我するなんて珍しいわね。」

 

「千束の弱点は目ですね。」

 

「いやいや、誰だってそうだろ。」

 

「ふっ、良いコンビよ。」

 

「そうでしょ~。たきなぁ、このままいれば安心だし、しばらく共同生活続けないと~。」

 

「共同生活を続けるのは良いが俺の家からは出てけよ。ふたりでやってくれ。」

 

「えぇ!良いじゃん!3人のほうが楽しいよ!!」

 

「では、ジャンケンで千束が勝ったら続けましょう。」

 

えっ!何言ってんの?!

たきなさん?!確かに昨日、千束の勝ち方を教えたがここでやるのか?!

止めてくれ!出来れば俺を巻き込まないでほしい。

 

そんなたきなを、心の中で応援する。

 

千束は、勝ちを確信しているのか笑っているが果たしてどうなるか。

 

「よぉし、いくよ~。さいしょh」

 

「ジャンケン!!」

 

「えっ?!え~~!」

 

「ポン!!!」

 

千束が出した手は俺の予想通りパー。そして、たきなが出した手はチョキであった。

たきなの勝ちだ!

 

「う、うわぁぁぁ!」

 

千束は、自分の勝ちを確信していたのか信じられないと言う声を上げる。

 

逆に、初めて千束に勝ったたきなは全身で喜びを表現していた。

そんなに嬉しかったのか。

 

 

とりあえず、これで短かった3人での共同生活は幕を閉じたが

・・・・・千束が俺の家に入り浸ることを止めることはなかった。

 

 

_________

 

病院の帰り道たきなが話し始める。

 

「でも、少し残念です。ハチさんの料理美味しかったので。」

 

「え?そう?」

 

「はい、千束が美味しいと駄々をこねる理由も頷けます。」

 

「じゃ、たきな!このまま続けようよ!そうすれば、ハチのご飯食べ放題だよ。」

 

「食べ放題な訳じゃないだろ。」

 

「いえ、確かに美味しいですがこのまま甘えてしまうと、千束のようになってしまう可能性があるので止めておきます。」

 

「「?」」

 

そんな会話をしているとリコリコに到着する。

ドアを開けるとミズキさんが俺に声をかけてきた。

 

「史八!あんた!クルミから聞いたよ!あの子がDAハッキングしてたこと、あんた知ってて黙ってたでしょ?!」

 

ミズキさんの言葉に千束とたきなが驚愕を示す。

 

「き、気づいてたって一体いつからですか?ハチさん?!」

 

俺は首をかしげ

 

「さぁ?何のことかさっぱり?」

 

と惚けることに撤した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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