「ハチさんって弱点とかあるんですか?」
リコリコの営業終了後、たきなが突然そんなことを聞いてきた。
「じゃ、弱点?いきなりどうした?」
「いえ、前から気になっていて興味本位で聞いてみただけですけど。」
たきなとの会話が聞こえていたのか奥の方から千束がやってくる。
「なになに?何の話ししてるの?私も混ぜてよ!」
「千束、片付けは終わったのか?」
「当っ然!っで!何の話ししてたの?」
千束は自分の胸を叩きながら主張する。
「ハチさんに弱点がないか聞いていたところです。」
「弱点?ハチの?なんで?」
「ずっと気になってたんです。今までお店の業務やリコリスとしての仕事の中でもハチさんの弱点って見つからないなぁって。少し前から、体術の指導も受けてもらってるんですけど、簡単にあしらわれちゃうし、千束も模擬戦で1回も勝ったことないんですよね。」
「そうだねぇ、撃っても簡単に避けられちゃうし、ハチは私の動きを先読みして当ててくるし。」
「体術、銃撃戦。パッと見、弱点らしい弱点が見当たらなかったので。」
俺のこと人外かなんかだと勘違いしてませんか?たきなさん?
「生活面でも、家事全般できるし、あ!後っ、マッサージとかも上手いよ!私、偶にやってもらうんだぁ。」
「おまえ、途中で寝ちまうからその後ベッドまで運ぶの大変なんだぞ。」
そう、千束は「やってやって。」と駄々をこねるが始めると数分後には寝てしまう。本人は気持ち良すぎると言ってくれるが。
「前々から思っていたんですが、ハチさんって千束を甘やかし過ぎでは?」
「うん。その自覚は充分ある。でも、こいつのワガママを聞かないと恥も外聞も捨てて駄々こね始めるから後が面倒くさいんだよ。」
「えぇ〜。たきなぁ、ハチは私だけに優しいからそうしてくれているんだよぉ〜。」
「・・・千束がこうなったのもハチさんが原因じゃないですか?」
「その可能性も、充分ある。たきなにはすまないと思ってる。・・・・いや、割とマジで。」
「おい、貴様ら。私もそろそろ全力で泣くぞ。って、違うでしょ〜ハチの弱点の話しじゃん!」
「そうでした!それで、弱点はあるのですか?」
ふたりはそう言って脱線していた話しを元に戻した。
「弱点かぁ?ん~~?普通に苦手な物はあるけどな。」
「苦手なものですか?」
「あぁ!コーヒーとか?ハチって案外、お子ちゃま舌だから飲めないもんねぇ。オレンジジュースとかオムライスとか好きだし。」
「苦手なだけで飲めないわけじゃない!後、オレンジジュースもオムライスも旨いだろうが、馬鹿にすんなよ。」
「いやいや、馬鹿にはしてないよ。ハチが、そういうのが好きっていうのが意外ってだけ。」
「他には?」
「虫も嫌いだよね。後は、暑いのもだめ。」
千束の言ったことに間違いはないので特に否定もせずに俺も言葉を続けた。
「あぁ、たしかにそうだなぁ。夏は嫌いだ。どちらかといえば秋か冬がいい。」
「虫が嫌いなんですか?」
「うん。6本以上足のある生物は俺の敵だ。まぁ、触れるやつには触れるし、嫌悪感がするってだけだけど。」
「敵・・・多くないですか?」
「嫌いなもんは嫌いだ、しょうがないだろ?」
「う〜ん、コレといったものは無い感じですね。」
たきなは収穫なしという風な声を出す。
なんか、すまんな。
「たきな!諦めるのはまだ早いよ。ハチには最大の弱点がある!」
「本当ですか?!」
最大の弱点?そんなものあっただろうか?苦手なものや嫌いなものはさっきの話しに大体出ていたが。
俺が自身の弱点のことを考えていると千束が笑顔で近づいてきて、耳元に口を近づける。
その瞬間、俺の最大の弱点に気づいた・・・いや、思い出したが少し遅かったようだ。
「フゥ~。」
千束が俺の耳に息を吹きかけてきた。
「うわぁぁぁぁぁ!」
「あっははは!相変わらず、耳が弱いねぇハチ!」
「この野郎。」
俺は自分の耳を押さえて千束を睨みつけるが千束はそんなこと意にも介さずに笑ってある。
くそっ、やられた。
俺の顔も今はちょっと赤くなってんだろうな。
「分かった?たきな。ハチの弱点は耳だよ。耳元で息を吹きかければいいの!」
たきなは千束に目を細めて問いかける。
「戦闘中にどうやってそれを実行するんですか?」
「え〜?だから今みたいにハチに近づいて・・・あっ。」
「次は容赦なくぶん投げるぞ。」
「で、近づいてどうするんですか?」
たきなはまだ目を細めながら千束に問うが千束からの返答はなかったどだけ言っておこう。