闇に生き光に奉仕する男の話   作:ダレン シャン

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過去の話 ②

 

都内のとある山奥に人知れず小さな建物が建っていた。

 

ここは「おひさま園」。僕たちみたいな親のいない子供たちが集められ生活する孤児院だ。

もうすぐご飯の時間だから院長先生の声が聞こえてくる。

 

「皆ぁ~!晩御飯が出来たから席に着いて~。」

 

「「「「「「「「はぁい!」」」」」」」」

 

僕たちは院長先生に元気よく返事を返す。

おひさま園には僕のほかに7人の僕と歳の近い子供たちと院長先生のしかいない。でも、特に寂しいと思ったことはない。

だって、院長先生は怒ると恐いけど優しいし、他の皆とも仲良しで毎日楽しい。おやつの取り合いでたまに喧嘩したりもするけど数分後には喧嘩したことも忘れて一緒に遊んでいたりする。

僕はここが大好きだ。

 

「今日は皆の大好きなカレーよ。それじゃ手を合わせて、いただきますをしましょう。せ~の、」

 

「「「「「「「「いただきまぁ~す!!」」」」」」」」

 

院長先生のご飯はとても美味しい。僕も院長先生みたいに美味しいご飯が作りたくて、たまにお手伝いもしてる。

 

「皆、今日のカレーは美味しい?辛くはないかしら?」

 

僕たちは目の前のカレーに夢中になりながら院長先生に答える。

 

「美味しいよ!」

「院長先生が作ってるんだから美味しいに決まってるじゃん。」

「いつも、ありがとね。先生!」

 

「あらあら、ありがとね。皆。」

 

_________

 

おひさま園の1日は朝ご飯を食べたら午前中に院長先生が僕たち全員にお勉強を教えてくれる。その後お昼ご飯を食べて、午後は皆と遊ぶ。おやつを食べたり、お昼寝したり、基本自由時間だ。

 

おひさま園には決まりごとがある。

それは、決しておひさま園からは出てはいけない、ということだ。何故かは分からないが院長先生から絶対に駄目と言われている。おひさま園の庭までは外に出てもいいと言われているが、それ以上は駄目らしい。だから僕たちはおひさま園より外のことを全く知らない。でも、僕はそんな事どうでもよかった。

だって、ここが大好きだから。

 

________

 

僕はある時、気になったことを院長先生に聞いてみた。

 

「ねぇ、院長先生?」

 

「どうしたの?」

 

「何で僕たちには名前がないの?」

 

僕たちには名前がない。

だから、僕たちはそれぞれ同じ色の服しか着ない。それで判断しているのだ。ちなみに僕は紺色の服を着ている。

院長先生は僕の質問に困ったような笑顔で答えてくれた。

 

「名前というのはね、大事な人から贈られるとても大切なものなの。」

 

「大切なもの?」

 

「そう。本来は両親・・・家族から贈られるものなんだけど、ここにいる子たちはそういう人がいない。だから皆、名前がないの。」

 

僕は院長先生の答えを聞いていい考えを思い付いた。

 

「じゃあ、院長先生がつけてよ!」

 

「わ、私?!」

 

「うん!皆、院長先生のことが好きだし、大丈夫だよ!」

 

僕の考えを聞いても、院長先生の顔は曇ったままだった。

 

「ごめんなさい、それは出来ないの。」

 

「なんで?!」

 

「私には貴方たちに名前はつけられない。その資格もない。」

 

「どうしても駄目なの?」

 

「ごめんなさいね。でも、大丈夫。いつか貴方の家族になってくれる人が貴方に素敵な名前をきっとつけてくれるわ。」

 

「家族?」

 

「そうよ、人は成長して貴方もいつか家族として迎えられここから出ていかなくちゃいけないときが絶対にやってくる。」

 

「養子になるってこと?」

 

「そうよ、よく勉強してるわね。」

 

「僕、養子なんてやだな。ずっとここにいたい。」

 

うつむきながら僕は答えた。

 

「どうして?」

 

「ここが大好きなんだ。皆と、院長先生とも離れたくないよ。」

 

皆とお別れしなきゃいけないことを考えると涙が溢れてきた。

でも、院長先生は涙が溢れる前に僕を優しく抱き締めてくれる。

 

「大丈夫よ。離れてても、ずっとそのままっていう訳じゃないわ。」

 

「本当?」

 

「本当よ!離ればなれになったとしてもいつか必ずまた会えるから。先生が嘘ついたことある?」

 

「!、ない!!」

 

院長先生はとても暖かかった。

 

_______

 

月日が経ち、今日は皆とボール遊びをしていると見たこともない1人のおじさんが訪ねてきて院長先生と何か話していた。

皆、見たこともないおじさんの話しをしている。

 

「誰かな?」

「知らなぁ~い。」

「あたし、知ってる。あのおじさんの着てるのスーツって言うんだ!先生に前に教えて貰った。」

「スーツ?」

「え~っとね、たしか、仕事をするようの服だったかな?」

「へぇ~、なんか格好いいね。」

「そう?なんか首が苦しそうでなんか僕はやだな。」

 

皆はそれぞれの感想を言い合って数分後には飽きたのかまたボール遊びをし始めた。

 

見たこともないおじさんは院長先生との話しが終わったのか車に乗って帰ってしまった。

僕は院長先生に聞いた。

 

「院長先生、さっきのおじさんはだぁれ?」

 

「え?あぁ、あの人はねここの孤児院を建ててくれた偉い人なのよ。」

 

「あれ?院長先生が建てたんじゃないんだ?」

 

「そうよぉ。私はここで皆のお世話を任されているだけなの。」

 

「へぇ、そうだったんだぁ。」

 

________

 

あのおじさんが来てから数週間が経った頃、晩ごはん前に院長先生が皆を集めた。

 

「今日は皆にお知らせがあります。」

 

「なになに?」

「どうしたの?」

 

院長先生のお知らせが気になっている様子で皆、口々に質問していた。

そんな中で院長先生は「おいで。」と、緑の服を着ている子に自分のところに来るように促す。

院長先生は緑の服の子の肩に手をおきながら僕たちに言った。

 

「この子が新しい家族に迎えられることが決まりました。とても急だけど明日にはお別れです。だから皆!笑顔で見送ってあげましょう。」

 

僕は信じられなかった。それは他の子たちも同じだったようだ。

 

「なんで!?そんな急なの!?」

「ここから出ていくって言うのかよ!」

「もう一緒に遊べないの?」

「明日も一緒に遊ぼうって約束したじゃん!!」

 

皆、それぞれの意見を言うがそんな中で緑の服の子が口を開く。

 

「みんな、ごめん。俺が先生に頼んだんだ。今日まで黙っててくれって。俺が出ていくことになったのは2週間ぐらい前からなんだけど、皆に言ったら俺に気を遣っちゃうと思ったから、本当にごめん。」

 

その言葉を聞いて、僕も皆も泣きそうだった。

初めてのお別れが突然やって来たのだ。

僕はその時、以前に院長先生から聞いた言葉を思い出した。

 

「また、会おうよ。」

 

「え?」

 

「明日でお別れだけど、いつかまた絶対に会おう!約束!!」

 

僕は彼に右手の小指を突き出す。

彼も、笑って小指を突き出しお互いの小指を絡める。

 

「「ゆ~びき~りげ~んま~ん、嘘ついたら針千本の~ます!!ゆ~びきった!!!」」

 

その光景を見て院長先生は微笑んでいた。

その日の夜、細やかながら送別会が開かれた。

最後の夜だから皆で一緒に布団を並べて、夜遅くまでお喋りしたが院長先生にそろそろ寝るように叱られてしまった。

 

朝になり、朝ご飯を食べ終わった時におひさま園の門の前に黒塗りの車が着ていた。

とうとう、お迎えが着てしまった。

 

緑の服の子は僕たち皆に最後の挨拶をする。

 

「じゃあ皆、俺はもう行くけど元気で。先生も今まで、ありがとね。」

 

「元気で、風邪引かないようにね。」

 

院長先生は緑の服の子を抱き締めながら言う。

緑の服の子は車に乗って行ってしまうが、僕はどんどん小さくなってしまう車に向かって叫ぶ。

 

「いつかまた、絶対に会おうねぇ!!約束だよぉ~!!!」

 

緑の服の子も車の窓から身を乗り出して答えてくれた。

 

「もちろん!約束だからなぁ~!!!」

 

僕たちは車が見えなくなるまで手を振り続けた。

 

 

_________

 

緑の服の子がここから去ってから月に1,2回の間隔で子どもたちは

養子に出されるようになった。

僕は、おひさま園から出ていってしまう子全員と指切りを忘れずにした。また、会えることを願って。

 

子どもたちの数が最初の頃の半数をきったとき、前に来たことのあるスーツを着たおじさんが訪ねてきた。

 

院長先生は「大事な話しだから。」と、僕たちは外でボール遊びをしていた。でも、僕は院長先生とスーツのおじさんの大事な話しがどうしても気になり、他の子たちにトイレに行ってくると嘘をついて院長先生がいるであろう部屋の近くに行く。

何かの話しをしているようだがうまく聞き取れない。

しかし、急に院長先生の大きな声が響く。

 

「ふざけないでください!!!」

 

僕は突然の大声に驚いた。院長先生のこんな大きな声は初めて聞いたからだ。

僕は壁に耳を当てるがやはり会話の内容は上手く聞き取れなかった。

 

「今・・の子ど・たちで・してみ・・あまり、・・結果とはな・・・った。」

 

「そのような・しをしてい・わけでは・・・せん。理・しているのです・?貴方はあ・子たちを・・モットか何かだと思ってい・・・すか?!」

 

「私・・の計・を絶対に成・・・なければならない。才・を創・・・ためにね。犠・があるのはしょうがない。」

 

「しょうがない?では、あの・・・は何のため・・まれてきたんですか?!貴・の計画・・牲になる・・・とでも!?」

 

「君になんと言われようが私・・見は変わらな・・。引き続き子ど・・・の世・を・・よ。」

 

「ちょ・と待・・・ださい!今・・の子・・・ちは・事なんで・・ね?!そうで・・・!?」

 

「実験に・・られずほとん・・・だよ。」

 

「・・・そんな、そんな。」

 

院長先生は何故か泣いているようだった。

 

突然、部屋のドアが開かれスーツのおじさんが僕を見つける。

おじさんは僕を1度見るが、院長先生の方を向き、「では、引き続きよろしく頼むよ。」と、言ってから何処かに行ってしまう。

 

僕が部屋の中を覗くと院長先生は泣きながら俯いていた。

声をかけると院長先生は少し驚いていた。

 

「今の話し、聞いてたの?」

 

「ご、ごめんなさい。でも、上手く書き取れなくてあのおじさんと何のお話をしてたの?酷いこと言われたの?」

 

僕が院長先生に近づくと突然、院長先生に泣きながら抱き締められた。

 

「ごめんね。ごめんね。」

 

「何で謝るの?院長先生は悪くないよ。何があったの?」

 

僕が何があったのか問うが院長先生は「ごめんね。」と謝るだけで何も答えてはくれなかった。

 

___________

 

更に月日が流れ、ついにおひさま園には僕と院長先生だけになってしまった。院長先生は子どもが養子に出される度に涙を流していた。最初はあんなに嬉しそうだったのに、何があったんだろうか?

もう子どもは僕だけしかいないから院長先生と過ごす時間が増えた。院長先生は日に日にやつれ、涙を流すことが増えた。その度に僕は院長先生を慰めるが「ごめんね。」と答えてくれるだけだった。

 

 

そして、ついに僕も養子に出される時が来た。

僕を迎えに来たのはあのスーツのおじさんだった。

おじさんは僕に挨拶をしてきた。

 

「初めまして。私は吉m」

 

「初めましてじゃないよ。」

 

僕に突っ込まれたのが以外だったのかおじさんは少し驚いた表情になった。

 

「前に院長先生とお部屋で話してたときに会ったでしょ?院長先生と喧嘩してたの?」

 

おじさんは「あぁ。」と当時のことを思い出したような声をだす。

 

「はははっ、喧嘩じゃないよ。ちょっと意見が食い違っただけさ。それに、彼女も理解してくれた。」

 

「そうなの?」そう言って、院長先生の方を振り向くと院長先生は寂しそうな顔で笑うだけだった。

スーツのおじさんは話しを続ける。

 

「改めて、私は吉松シンジ。君を引き取りに来た。」

 

「よし、つ?しん、し?」

 

「上手く聞き取れなかったかい?呼びたいように呼んでくれて構わないよ。」

 

「じゃあ、シンさん!」

 

「え?」

 

「あっ、駄目だった?年上の人には名前の後に「さん」をつけるように言われてたけど。」

 

「あぁいや、大丈夫だよ。そんな風に呼ばれたことがなかったから少し驚いただけだ。その呼び方で構わないよ。それじゃあ、行こうか。」

 

「ちょっとだけ待って。最後に院長先生に挨拶したい。」

 

「いいよ。」

 

おじさん・・・シンさんから許可も得られたので僕は振り返り、院長先生に抱きつく。

 

「院長先生、僕も行ってくるよ。でも、近いうちに絶対ここに遊びに来るから待っててね。だから、さよならは言わない。・・・またね、先生。」

 

俺がそう言うと院長先生からも強く抱き締められるが、院長先生は何も言わない。泣いているだけだった。

 

「院長先生?」

 

「・・・・・・・。」

 

「・・・泣かないで、今くらい笑ってよ。」

 

僕の言葉に院長先生は顔をあげる。

 

「最近、ずっと泣いてばっかだったじゃん。僕、院長先生の笑った顔が好きなんだ!」

 

僕がそう言うと、院長先生は少し笑った後、覚悟を決めた様な表情をする。

 

「・・・先に行った他の子たちに伝えられなかったから貴方に全部伝えるわね。」

 

「う、うん。」

 

「貴方がこれから生きていく上で必ず楽しいことや辛いことがある。もしかしたら、辛いことの方が多いかもしれない。・・・でも、貴方ならきっと乗り越えられる。貴方は他の子よりも強くて、優しいから。」

 

「僕、そんなに強くもないし、優しくもないけど。」

 

「ふふっ。そんなことは無いわ。他の子たちの喧嘩の仲裁に入ったり、自分のおやつを分け与えたり、泣いてる駄目だった私を慰めてくれた。なかなか出来ることじゃないわ。」

 

「そうかなぁ~?」

 

「自分のことを過小評価し過ぎるのは玉に瑕だけどね。」

 

「かしょうひょうか?院長先生、難しい言葉使わないでよ。」

 

「あらあら、まだまだ勉強不足ね。」

 

「じゃ、もっと勉強して今度会ったときには院長先生をビックリさせてあげる。」

 

「そう。楽しみにしてる。」

 

院長先生に笑顔が戻ったため、僕はシンさんの方に振り向くが、後ろから手を引かれた。

 

「院長先生?」

 

「・・・何があっても絶対に諦めないで。どんなに暗くても必ず明るくなるときが来る。貴方の光が見つかる時が必ず来る。・・・絶対に幸せになりなさい。」

 

「よく分かんないよ。」

 

「今は、分からなくてもいい。いつか分かるときが来るから。それじゃあね、元気で。」

 

そう言って、院長先生は手を放す。

 

僕はもう一度院長先生にお礼を言ってからシンさんの車に乗り込む。

車が動き出す。

後ろを振り向くと院長先生が手を振ってくれていた。

僕も院長先生が見えなくなるまで手を振り続けた。

 

別れは寂しいがまた再会できることを願った。

 

だけど、この時の僕は知らなかった。

ここが僕の人生の大きな分岐点であることを・・・・・。

 

 

 





申し訳ありませんが、明日、明後日と投稿できなくなるかもしれません。出来るだけ早く投稿できるようにしますのでよろしくお願いします。

高評価、感想お待ちしております。
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