初めてのアニムスに接続された日から僕は週4日のペースでアニムスに接続されていた。特に苦痛は感じなかった。
だって、シンさんが本当に嬉しそうに喜んでくれるから。
シンさんが喜んでくれると僕も嬉しい気持ちになる。最近は頭を撫でて褒めてくれる。それが何よりも嬉しかった。
でも、最近変なことが起きる。アニムスに接続された後、僕は必ず夢を見て、相も変わらず内容は漠然としか覚えていない。しかし、嫌な夢だということは理解している。
アニムスから覚めた後には軽い頭痛が起きるが、すぐに収まる。
後、シンさんがずっとアニムスに横になってばかりだと体調不良になってしまうと言ったので運動するために建物内にある広場で体を動かしていると体に違和感を覚えた。
「どうしたんだい?」
「何かいつもより体が軽い気がして。」
「・・・少しテストのようなものをしてもいいかな?」
シンさんは少し驚いたような声で提案してくる。
シンさんの提案でまずは、50m走をやることになった。
記録は6.6秒。
次に壁を登るボルダリングも6秒ジャスト。
最後に障害物を避けながら走るパルクールというものもやったが特に問題もなく走りきることが出来た。
これには、シンさんも驚きを隠せなかったようだ。
シンさんは急に僕に抱きついてきた。
「素晴らしい!素晴らしいよ!!」
「シ、シンさん?どうしたのさ、急に?!」
シンさんは更に力を込めてくる。
「あぁ、ようやく・・・ようやくだ。・・やっとだ。」
シンさんは泣いていた。
「シンさん?何で泣いてるの?僕、何かしちゃった?」
「ん?あぁ、すまないね。悲しいから泣いてる訳じゃないんだ。」
「?」
「嬉しいんだよ。とてもね。ようやく作り出すことが出来た。いや、まだ完成ではないがほぼ完成したと言ってもいい。君のお陰だ。ありがとう。」
「どういたしまして?」
シンさんが何故、嬉しいのか理解できなかったが僕はシンさんが喜んでくれるならそれで良かった。
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ある日、シンさんが僕の部屋を訪れ急に「水族館へ行こう。」と言ってきたため、僕はシンさんに飛び付き、シンさんと一緒に水族館へと車で向かった。
「シンさん、急にどうしたの?」
「いいじゃないか、最近、君は頑張ってくれているからね、そのお礼だよ。以前に約束もしたしね。あっ、もしかして別のところが良かったかい?」
「ううん!水族館がいい!今日はイルカショー観れるかな?」
「大丈夫だよ。今回は時間に余裕があるしイルカショーの時間も確認してきたからね。以前、観れなかったところも観れるよ。」
「ホントに?!やったぁ~!!」
そうして、僕とシンさんは水族館を一緒に楽しんだ。念願だったイルカショーも観られたしイルカが跳び跳ねた際に水飛沫がこっちに飛んできてシンさんと一緒になって濡れてしまったがお互いに笑いあった。
休憩所でジュースを飲んでいるときにシンさんが話しかけてきた。
「そうだ。忘れないうちにこれを渡しておこう。」
シンさんは胸ポケットから何かを取り出し、僕はそれを受け取った。見てみると金色の梟の様な形をしたアクセサリーだった。
「なぁに、これ?」
「それは君に才能があることの証明だよ。肌身離さず持っていなさい。」
「才能?僕に才能なんてあるの?」
「もちろんさ。君には才能がある。」
「どんな才能?」
「それは教えられない。君自身で見つけなさい。」
「知ってるなら、教えてくれてもいいじゃん。」
僕は不満の声を出したが、結局教えて貰えずシンさんは話題を変えてしまった。
「ふふっ。そういえば君、誕生日はいつだい?」
「え?誕生日なんてないよ。おひさま園では皆、誕生日が分からないからお正月やクリスマスに皆でお祝いしてたけど?」
そう伝えると、シンさんは少し考え込んでから提案してきた。
「そうか・・・なら今日を君の誕生日にしよう!」
「え?!」
「構わないだろう?私が君を引き取ってから今日で1年目だ。丁度いいじゃないか!」
「別にそれでもいいけど・・・。」
「なら決まりだ。本日、8月30日が君の誕生日だ。何か欲しいものはあるかい?」
「欲しいもの?」
「そう。誕生日といえばプレゼントだろう?何かないのかい?」
僕にはずっと欲しかったものがある。でも、それはシンさんから貰えるかどうか分からない。もし、貰えたら嬉しいけれど断られたらと思うと怖かった。
僕は下をうつむくしかなかった。そんな僕にシンさんが声をかける。
「どうしたんだい?遠慮せずに言ってごらん。大抵のものは買ってあげられるよ?おもちゃ?それともゲーム機がいいかな?」
僕は意を決してシンさんに向かって言う。
「な、」
「な?」
「な、名前。」
「え?」
「名前が・・・欲しい。」
「名前?」
「うん・・・院長先生が前に言ってたんだ。名前は大事な人から贈られる大切なものだって。本来は家族がつけてくれるんでしょ。でも、僕は孤児だから名前がなくて、院長先生にもお願いしたこともあるんだけど私にはつけられないって断られちゃって。」
「あっ!嫌だったらいいよ!こんなの僕のただのわがままだから。」
「・・・私でいいのかい?君の言い分だと私が君の家族になってしまうが。」
「シンさんが良いんだ!僕、シンさんのこと好きだし。何でも知ってるし、頭を撫でて褒めてくれるし、今日だって前にした約束を守ってここに連れてきてくれたし!」
「そうか・・・そうか。」
「やっぱり駄目・・・だよ・・ね。ごめんなさい、今のは忘れて。」
「駄目とは言っていないだろう?」
「え?じゃあ!!」
「あぁ、私なんかで良ければね。」
「~~っ!やったぁぁぁ!!!」
「でも、今すぐにはつけられないよ。私だってしっかりと考えたいからね。」
「うん!わかった。」
「それじゃあ、そろそろ帰ろうか。」
シンさんは椅子から立ち上がり僕に手を差し出してきた。
「え?」
「私たちは家族なのだろう?なら手を繋いで歩いても問題ない。」
「うん!」
僕はシンさんと手を繋いで歩きだした。
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私は自室に戻り、頭を悩ませていた。その理由は、
「まさか、名前が欲しいとはな。」
予想外の答えだった。いくらかプレゼントの予想をしていたがまさかの回答だった。
私は自室の椅子に座り、腕を組みながら天井を見上げ、独り言のように呟く。
「名前、名前か。佐藤太郎なんて安直な名前では駄目だ。彼は素晴らしい才能を持っている。アニムスの副作用である流入現象を利用し、無意識的に
そしてアニムスで歴史を我々に魅せてくれる。確か中国では昔、文書や記録を記した役職のことを「
八・・・神・・八神?、いや違うな。
私は彼に関することを羅列し組み合わせていき、とうとう決めることが出来た。
彼の名前は・・・
大神 史八。