闇に生き光に奉仕する男の話   作:ダレン シャン

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過去の話 ⑤

 

シンさんは僕と一緒に水族館へ行ってからずっと悩んでいるようだった。やっぱり僕が名前が欲しいなんてわがまま言ったのがいけなかったんだろうか?今日、シンさんに会ったら名前はもういいと言おう。・・・そうしよう。僕のわがままで迷惑はかけたくない。

そう思っていたある日、シンさんが僕の部屋を訪れて挨拶をする。

 

「おはよう、史八。」

 

「え!」

 

「どうしたんだい?」

 

「シンさん、今何て言ったの?」

 

「おはようって、」

 

「いや、その後!」

 

「史八。」

 

「ふみや?」

 

「そう、大神史八。それが君の名前だよ。」

 

「おおがみ・・・ふみや・・・。」

 

僕はシンさんが言った単語を噛み締めるように復唱した。名前。自分の名前。僕の・・・僕だけの名前。

気づいたら僕は涙を流していた。

 

「あ、あれ?・・・なんで?なんで涙が出てくるの?」

 

「気に入らなかったかい?」

 

「・・・ううん、違う。違うんだ。悲しくなんてない。逆に嬉しいのに涙が出てきちゃうんだ。あの時、シンさんが泣いてたのはこういうことだったんだね。」

 

僕は、前に体力テストのようなものをした時にシンさんが嬉しくて涙を流していたことを思い出していた。

 

「気に入って貰えたようで良かったよ。さて、今日も頑張ろうか。」

 

「うん!」

 

_________

 

ここに来てから食事は部屋で食べていたが、その日からシンさんが一緒に食べてくれるようになった。

シンさん曰く、「家族は一緒に食事をするものだ。」とのことだった。嬉しかった。大好きなシンさんと一緒に食事が出来ることが、シンさんと過ごす時間が増えたことが、とても嬉しい。

 

前から気になっていたことをシンさんに尋ねてみた。

 

「ねぇ、シンさん?あれはなんなの?」

 

僕は窓の外に見える高い塔を指差す。

シンさんも僕が指差した方向に視線を向ける。

 

「あぁ、あれは電波塔だよ。」

 

「電波塔?」

 

「ん~、簡単に言うとテレビやラジオに電波を送信するための建物だよ。」

 

「なんであんなに大きいの?」

 

「ふふっ。なんでだろうね?考えてごらん?」

 

「えーと。」

 

僕は電波塔が高いことによるメリットと低いことのデメリットを考える。

 

「・・・電波塔が低いと周りの建物に送った電波が邪魔されちゃって正確に電波が送られないから?」

 

「そう、正解!」

 

「えへへ~、やったぁ!」

 

そう言って、シンさんは頭を撫でてくれた。

 

「でも、あんなに高いと下から見上げたら首が痛くなっちゃうね。」

 

「はははっ、確かにそうだね。じゃあ、近い内に見に行こうか。」

 

「ホントに?!約束だよ!」

 

「あぁ必ず、一緒に見上げよう。首が痛くなるまでね。」

 

僕とシンさんはお互いの小指を絡めて指切りをした。

 

_______________

 

 

 

 

 

だが、幸せな時間はそう長くは続かなかった。

最近、アニムスに接続される時間が伸び、丸一日アニムスに接続されることもザラであった。

そして、いつもはアニムスで見た夢は漠然としか覚えていないのに最近ははっきりと夢の内容を覚えている。

夢の中の僕は、別の誰かとなり、たくさんの人を殺した。着ている服は殺した相手の返り血で染まり、血だまりを歩きながら仲間の骸を越える。両手は手首に隠しているナイフを伝い相手の血で真っ赤に染まっている。

 

最初はやけにリアルな夢だと思っていたが、それは違った。

過去に実際にいた人たちの人生を僕が体験していることに気づいた。気づけた理由は院長先生やシンさんから教えてもらった世界の歴史上の出来事や人物がいたからだ。

 

ある時はアメリカの独立戦争の戦場を駆け回り、またある時は海賊となりカリブ海を荒らし回った。エジプトではスフィンクスやピラミッドを見た。

歴史上の人物にも会った。

画家にして発明家、その他複数の肩書きを持つ天才芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチ。

クリミアの天使と呼ばれた、フローレンス・ナイチンゲール。

アメリカで電話の特許を取得した、チャールズ・ダーウィン。

世界三大美女の一人であり古代エジプトの女王、クレオパトラ。

 

アニムスは過去に実際にあった出来事を僕に見せる装置だ。

そして僕は、先人たち・・・・暗殺者(アサシン)たちの人生を追体験し、その技術をこの身に宿している。僕の身体能力が急に上がったのもこれが理由だ。

 

アニムスから目覚めても、自分の両手に相手の首にナイフを突き刺した感触が・・・・相手の命を奪った感覚が離れない。

幻覚のようなものも見えるようになった。廊下を歩く人の足跡や暗証番号を押した指紋の跡。

もっとひどかったのは実際には手は汚れてもいないのに両手が相手の血で赤く染まっているように見えてしまったり、部屋のベッドで眠るときに目を閉じるとアニムスで見た記憶のなかで殺してしまった人たちが僕を呪うような言葉を言っている。

 

この事をシンさんには言っていない。言ってしまったら優しいシンさんに心配をかけてしまう。僕は夜のベッドで泣きながら蹲るしかなかった。

 

 

 

もう、アニムスは嫌だ。

 

_________

 

ある時から、史八の様子が変わってしまった。

アニムスは嫌だと言い出したのだ。もう少しでこの子は完成するというのに急に今まで言わなかったわがままを言い出したのだ。

相手はまだ、子どもだ。一時的なものだと思って、しばらくの間そっとしていた。しかし、どんなに時間が経とうとも彼はアニムスを拒否し続けた。私は我慢の限界であった。

 

「いい加減にしろ!!史八!!!駄々を捏ねるんじゃない!」

 

急に私が怒鳴ったせいか彼は怯えた表情になり、泣きながら首を横に振った。

 

「もう、ヤだよ。アニムスだけは本当に嫌なんだ。」

 

「どうしてなんだ!前まであんなに協力的だったのに?!後、もう少しなんだ!!才能を創り出すのは!」

 

「・・・・・・。」

 

理由を尋ねても彼は何も答えなかったため、私は強引に行動に移った。

 

「もういい!!!」

 

私は無理やり彼の腕を取り、アニムスのある研究所へと向かい、嫌がる史八を、無理やりアニムスに横にさせる。

 

「嫌だ!シンさん、やめて!!本当に嫌なんだ!」

 

「始めろ!」

 

私は研究スタッフに合図を出すとアニムスが作動し、彼は静かに眠りについた。

 

______

 

その日以降、史八の抵抗が始まった。どうしても部屋から出なかったため、食事に睡眠薬を混ぜて眠らせている間にアニムスに接続したり、食事を取らなくなったら空調から睡眠ガスを流し込み眠らせるようにした。

 

彼が日に日に弱まっていくのは見ていて分かっていたが、流入現象の副作用としては許容範囲内だ。

私は史八を、アニムスに接続させていく。

 

 

 

 

 

 

このときの私は後にあんなことになるとは想像もしていなかった。

 

 

 

 





すみません、遅れました。
過去編が思ったよりも長くなってしまっています。後、3話ぐらいかな?分かりません。アニメが進むにつれ今浮かんでいるアイデアをはしょったりまた新しいものが浮かんだら追加するかもしれませんのであしからず。

吉松氏はオリ主君が流入現象で苦しんでいますがオリ主君自身が自分の中で留めてしまっているためかなり危険な状況であることが分かっていません。報連相って大事ですよね。
次回は何故オリ主君が記憶を失ってしまったかが判明するかもしれません。お楽しみに。

ところで、皆さん!小説は買いましたか?僕は買いましたが、まだ読めてはいません。とても楽しみです。
アニメではリコリスの存在が公となったり大変なことになってきていますね。最後のたきなちゃんの3コール目からのワン切り後の登場もカッコ良かった!EDの入りも最高かよっ!!
既に何回も観ています。次回も楽しみですねぇ!


最後に大変、私事ではありますが本日ようやくps5を手に入れることが出来ました。
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