「自己防衛反応?」
「えぇ、その可能性が充分にあります。」
私は直ぐに医療スタッフを呼び出し診察させた。
診断結果は多大なストレスによる防御反応ということだった。
「格闘技をやっている人の中にも許容範囲を越える恐怖や痛みの体験は、肉体が拒否して脳が削除することが稀にあります。今回、彼に起こったのはそれと似たケースかと・・・。」
「・・・・彼はどれだけのことを覚えているんだ?」
「基本的なことは覚えているようです。自分の名前、誕生日、一般常識、ただ不可解なことが・・・。」
医療スタッフが口ごもる。
「不可解なこと?」
「・・・・・・、彼は孤児院でのことと貴方のことそれに加えてアニムスで見た一部の記憶を失っているようです。」
「それの何が不可解なんだ?」
「先程も申し上げた通り、彼は多大なストレスによって自らの記憶に蓋をしている状態です。考えられるストレスはアニムスによる流入現象が大きいのでしょうが彼はアニムスで見た記憶を一部しか失っていません。その代わりに貴方と孤児院のことを忘れているようですが・・・。」
不幸中の幸いなのはアニムスで見た記憶を一部しか失っていないことだ。彼の中には
「それで、どうしますか?」
「どうする、とは?」
「もちろん、彼をアニムスに接続するか否かです。正直、私はこれ以上彼をアニムスに接続することは反対です。」
医療スタッフの言葉に私は激昂し彼の胸ぐらを掴む。
「っ!何故だ!もう少しなんだぞ!史八はもう少しで完成するんだ!!」
「これ以上彼をアニムスに接続したら、流入現象が悪化する恐れがある!彼にこれ以上ストレスを与えたらどうなると思いますか?!廃人になりますよ!今までの我々の努力が水泡に帰しますよ!それでも構わないというのならどうぞご自由に!!」
私の体から力が抜けていくのがわかった。
そんな・・・せっかくここまで来たのに・・・こんなところで!!!
くそっ!何故こんなことになってしまったんだ!!
そんな私にスタッフは話しかけてきた。
「しかし、打つ手がないわけではありません。」
「!!」
「今現在、彼の精神はとても危険で不安定な状態にあります。彼の精神状態が安定すれば再びアニムスへの接続も可能となるでしょう。」
「・・・どれくらいで史八の精神は安定する?」
「最低でも10年は必要かと。それと、貴方も出来るだけ彼と関わらない方がいいかもしれません。彼は貴方のことも忘れていた。少なからず貴方にもストレスを感じていたんでしょう。」
ずいぶんと私は嫌われてしまっていたようだ。それにしても10年か。
長いな。しかし、史八を廃人にするわけにはいかない。
私は断腸の思いでこの計画を中止した。
_____
私は史八の処遇に悩んでいた。いつまでも彼をここに居させるわけにはいかない。今まで通りここで暮らせば私と遭遇しかねない。
妙案が浮かんだ。
信頼できる彼に預けられないかと。
直ぐに彼にこれから会えないかと連絡をした。
「もしもし今、少しいいか?」
受話器から愛しい声が聞こえてくる。
「あぁ、問題ない。それよりどうしたんだ、シンジ?」
「折り入って、君に頼みたいことがあるのだが今夜、いつもの場所で会えないか?」
「ちょうど良かった。私も君に頼み事があるんだ。」
「ほう?それは、とても興味深いね。では、今夜いつもの場所で。楽しみにしてるよ。・・・・
「あぁ。」
そう言って、通話が切られた。
私は以前にある機会に知り合った黒人男性である私の愛しい人といつもの場所・・・「BAR Forbidden」で会う約束を取り付けた。