闇に生き光に奉仕する男の話   作:ダレン シャン

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過去の話 ⑬

 

俺が部屋の中に入るとボスと紫のスーツを着たおっさんがいた。部屋の中には俺たち4人しかいない。

俺はスーツのおっさんも本能的にウマが合わないと感じた。

 

俺は部屋に入ってからどうしても気になったことがあった。

聞いても良いのかと迷っているとスーツを着たおっさんが口を開く。

 

「さて、貴様には色々と聞かなければならないことがあるが………まず、名前を聞こうか?」

 

「その前に色んな事置いといて一つ聞いてもいいですか?」

 

俺以外の三人の視線が俺に集まる。

俺は視線を気にせずスーツを着たおっさんに向けて言う。

 

「その髭なに?」

 

俺の一言で空気が凍りつくのを感じる。

ボスは目に手を当てながら天を仰ぐ。

 

いや、だってしょうがないじゃん!気になっちゃんたんだから!

なにあの髭?!上向いてるよ!重力に逆らってるよ!

なに、ワックスで固めてんの?髪の毛なら全然わかるけど髭を?おかしくないこの人?!

 

おっさんが青筋を浮かべながら俺に向けて言う。

 

「貴様は礼儀を知らないようだな。」

 

「申し訳ない。孤児な上に記憶喪失なもので教えられた記憶がないんです。……あぁでも、貴方も知らないようだから教えてあげますよ。他人の名前を聞くときはまず自分から名乗るのが普通みたいです。良かったですねぇ。次からは恥を掻かずに済みますよ。その歳で恥は掻きたくないでしょう?」

 

俺が煽るとおっさんの視線が鋭くなるがとりあえずは怒りを納めたようだ。

隣ではボスが俺に何か言いたそうな顔をしているが知らないふりをする。

 

「………そうだな。まずはこちらから自己紹介させて貰おう。私は虎d、」

 

「あぁ、いいです、いいです。貴方の名前は知りたくもないし、覚えるつもりもありませんから。あっ、因みに俺は大神史八って言います。以後お見知りおきを。」

 

目の前のおっさんのこめかみに血管が浮かび上がる。

相当頭に来ているようだ。そりゃそうだ。こんなガキにバカにされたら誰だって頭に来る。

 

俺がそんなことを考えていると隣からボスが口を開く。

 

「史八、目の前にいる男の名前は虎杖。リリベルの司令官だ。」

 

「リリベル?何ですか、それ?リコリスの仲間ですか?」

 

「いや、リリベルは男児で構成されている。リコリスとは完全に別だ。」

 

別?

ボスらしくもないあやふやな表現に違和感を覚える。

何か言いづらいことなのだろうか?

……まさか。

 

怒りを納めたであろうおっさん……もとい虎杖は俺に向かって言う。

 

「…君のような無礼なガキでも私から2つの選択肢を選ばせてやる。リリベルになるか……死ぬかだ。」

 

選択肢なんてあってないようなものだ。

明確な脅しだった。

 

「2つと言いながら1つしか選択肢がないような気がするのは俺だけでしょうか?」

 

「だからなんだ。それで?貴様の答えは?」

 

「はぁ、死にたくはないですね。俺にも目的があるので。」

 

「では、リリベルとして君を迎え入れよう。」

 

虎杖が俺に手を差しのべるが俺はそれに答えるつもりはさらさらない。

 

「勘違いしないでください。俺はリリベルになるつもりもありませんから。」

 

虎杖の目を細める。

 

「なんだと?」

 

「遠回しな言い方はやめましょうよ。あんたはこう言ってるんだ。命と衣食住は保証してやる。だから、自分のために死ぬまで働け。もしくは死ね。……ってね。」

 

「それの何が悪い。君に選択肢はこれだけしかない。」

 

「そもそも、リリベルなんてリコリスを抹殺する組織(・・・・・・・・・・・)に所属するなんてゴメンだ。殺しはうんざりなんでね。」

 

俺の言葉に楠木の表情が明らかに変わる。

カマを掻けただけだがどうやらビンゴだったようだ。

俺の確信を得た表情を見て虎杖は楠木に視線を移す。楠木は虎杖の視線には耐えられなかったのか下を向いてしまう。

 

「いや~、ずっと疑問だったんですけど謎が解けましたよ。」

 

「謎?」

 

ボスが俺に聞いてくる。

 

「なんでDAが秘匿され続けられているのか、ということですよ。」

 

俺は言葉を続ける。

 

「DAに所属するリコリスが現場に行き事件を解決する。でも、絶対に成功する訳じゃない。失敗する可能性だってある。今回の電波塔のようにプロ相手だったら殺されるか、最悪、リコリスが捕縛される可能性だってある。リコリスの装備品から特定される危険もあるし捕まれば拷問されてリコリス自身が情報を流出してしまう恐れだってある。まぁ、拷問に耐える訓練もされてるかも知れないが、所詮は子供だ。100%情報を吐かないという保証はない。だから、情報の流出を防ぐためにリコリスを抹殺する組織が必要。それが…リリベルだ。違いますか?」

 

ボスはなにも言わないが難しい顔をする。

どうやら当たっていたようだ。

しかし、ボスはリリベルの事を快くは思っていないだろう。

そう思っていると虎杖が口を開いた。

 

「リリベルがどうかなんて今はどうでもいい。リリベルにならないと言うのなら貴様には死んでもらうほかないな。」

 

そんな虎杖に俺はため息をはく。

 

「頭が固いですねぇ。歳はとりたくないものです。」

 

「なんだと?」

 

「あんたはさっき2つしか俺に選択肢がないと言っていたが他にもあるんじゃないか?」

 

「ほう?ほかにどんなものがあると言うんだ?」

 

「…協力しましょう。あなた方(DA)に。」

 

「協力だと?」

 

「えぇ、今回の件のようにリコリスで対処不可能な時には俺がリコリスの代わりに対処しましょう。人知れず何かを成すのは得意なんでね。勿論、協力関係にあるならDAの情報も流出させるつもりもありません。」

 

「話しにならんな。貴様のような一個人が我々(DA)に協力するだと?ふざけるのも大概にしてもらいたいものだ。」

 

「電波塔で力は示したつもりですが?」

 

「………。」

 

「まぁ正直、ここで話し合っても意味はないでしょう。上層部なんかと話し合ってそこで俺の処遇を決めてください。まぁ、処分するってなったら逃亡はさせてもらいますが。」

 

「逃亡などさせると思うか?」

 

「さっきも言ったでしょう。人知れず何かを成すのは得意だって。逃亡したらDAのあることないこと言わせてもらいますね。協力関係にないんですから当たり前ですよね。」

 

「情報規制は完璧だ。やれるものならやるがいい。」

 

「それはネットを介して…ですよね。だったらアナログな方法でやりますよ。ネットよりは確実に遅いでしょうが、ゆっくりとだが確実に噂は広まっていきますよ。人の口に戸は立てられないですからねぇ。」

 

俺の煽りについに虎杖が憤慨する。

 

「その小僧を独房に閉じ込めておけ!」

 

そう言って虎杖は部屋を出ていった。

虎杖の退室を確認してからボスが話しかけてくる。

 

「史八、何故あんなに煽ったんだ。君らしくもない。」

 

「煽る必要があったからですよ。」

 

「?」

 

「今回の件でボスと千束に迷惑はかけられません。出来るだけ俺に奴のヘイトを集めたかったんです。」

 

「お前と言う奴は、」

 

「指令。」

 

ボスが何かを言う前に楠木が割ってはいる。

 

「彼を独房に。」

 

「すまない、史八。」

 

「大丈夫ですよ。独房にぶちこまれるのも馴れてます。1700年代のジャマイカの牢屋よりはましでしょうし。」

 

ボスは申し訳なさそうな顔をしていたが、楠木が俺を独房へ連れていった。

 

______

 

DA本部のとある場所

 

「虎杖からの報告を聞いたか?今回の件。」

 

「勿論、電波塔でテロリスト共を一人のリコリスとおかしな少年が鎮圧した件だろう?虎杖からこの少年の処遇をどうするべきか判断を仰がれている。」

 

「殺せば良いではないか?電波塔の件は現場にいたリコリス一人で解決したことにすればいい。幸いにも生き残ったのはそのふたりなのだろう?他のリコリスに知られれば士気の低下の恐れもあるかもしれないからな。」

 

「彼を処分するのは反対だな。電波塔での映像を見ただろう?彼の実力は本物だ。リリベルにするべきではないか?」

 

「虎杖が既に強制したみたいだが断られたみたいだ。代わりに彼自身が我々(DA)に協力を願い出た。」

 

「協力だと?この少年個人が?」

 

「そうだ。リコリスで対処出来ない任務があれば自分が解決すると言っているみたいだ。」

 

「そもそも、この少年は何者なんだ?」

 

「どうも、リコリスの司令官が隠し持っていたらしい。」

 

「明らかな規約違反ではないか!だから、言ったのだ!傭兵上がりの者なぞ迎え入れるべきではないと!」

 

「リコリスの司令官の処罰は後で決めるとして、今はこの少年をどうするかだ。正直私は、彼の要求を受け入れて良いと思っている。」

 

「なぜだ?!」

 

「彼の実力を見ただろう?殺すには惜しい。だったら手中に収めて飼い殺せばいい。」

 

「奴が情報を流出したらどうするつもりだ。」

 

「勿論、これ以上彼には情報を持たせないようDAから出ていってもらう。…そうだな。都内に小さい支部を作ろう。彼にはそこで活動してもらう。」

 

「なら、リコリスの司令官もそこに異動させれば良いのでは?それが今回の処罰ということにして、情報を流出させないように少年を監視させればいい。」

 

「まだ一つ問題が。」

 

「なんだ、まだあるのか?」

 

「今回、生き残ったのリコリスなんですが心臓移植の手術をやったそうです。」

 

「それの何が問題なんだ?」

 

「移植された人工心臓がまだ世に出ていない代物であるそうなんです。そんなものどこで手に入れたのか…。」

 

「はぁ、………アランか。」

 

「アラン機関と繋がっているリコリスということか?!」

 

「確定ではありません。疑惑の段階です。」

 

「疑惑でも充分だ!殺せ!あの訳のわからん組織にこちらの情報が流れたら何をされるか………。」

 

「殺すのは不味いのではないか。何でもそのリコリスは歴代最強のリコリスなのだろう?」

 

「ふむ。……なら、そのリコリスも同じ所に異動させ監視させればよい。皆、異論はないかな。……………では、そのように。」

 

______

 

俺は今、独房の中にいる。

 

体感だと一週間ぐらいは経過しただろうか?

何せ外も見えないし、時計もない。食事も最低限にしか来ない。

暇な時間が続く。

 

千束は大丈夫だろうか?

ボスもいるし、あいつはリコリス最強だ。簡単には処分されないと思うが、やはり心配だ、俺と一緒に行動してたんだ。何かしらの罰を受けていなければ良いのだが。

…考えても仕方がない。今は信じよう。

 

そう思い、時間を潰すため目を閉じ眠りに付こうとするとふたり分の足音が聞こえてくる。

足音は俺が入っている独房の前で止まった。

足音の正体はボスと……なんだっけ?あぁ、確か虎杖だったか。

 

虎杖は不機嫌そうな顔で独房を開けながら俺に言う。

 

「…全く持って腹立たしい限りだが、DAは貴様の要求を受け入れることになった。」

 

虎杖の言葉で俺が計画していた逃亡計画を実行する必要がなくなった。

取り敢えず、第一関門は突破か。

 

「貴様は正式にDAの協力者ということになった。精々、我々のために働いてくれ。勿論、情報を流そうものなら、」

 

「分かってるさ。精々、不慮の事故(・・・・・)に合わないように気を付けますよ。」

 

「ふん。」

 

虎杖は不機嫌なままこの場を去る。

ボスが俺の手錠を外しながら言う。

 

「さぁ、これから忙しくなるぞ。」

 

「これからどうするんです?」

 

「そうだな、1つずつ説明しよう。」

 

俺はボスから説明される。

簡単に要約するとこうだ。

 

1, 俺はDAの協力者になった

2, 俺を匿い規約違反したボスはDA支部へ異動

3, 俺もボスの監視のもとDA支部へ

4, 千束も何故か支部へ異動。

5, DAの情報を他言しないこと

 

俺は純粋な疑問をボスにぶつける。

 

「何故、これから忙しくなるんです?聞いたところ俺たち三人がそのDAの支部に行くことになっただけでそんなに忙しくならないような気がしますけど……、っていうか支部なんて合ったんですね。」

 

「…支部なんてものはまだない。」

 

「え?支部に行くんですよね?」

 

「あぁ、そうだ。」

 

ん?独房生活で頭がおかしくなってしまったか?

ボスの言っている意味がわからない。

待てよ。さっきボスは何て言った?………まだ(・・)ない?

大体は察したが現実逃避したかった。

 

「……どういうことですか?」

 

「これから作るんだ、私たちで。」

 

「作る?支部を?……それに私たち(・・)って………。」

 

「私と千束と………お前だ。」

 

「……………………………マジかよ。」

 

切実にボスに冗談と言って欲しかった。

 

______

 

車でこれからDAの支部となる建物に移動してる時に俺は千束に尋ねた。

 

「ホントによかったのか?DAには友達も居たんじゃないか?」

 

千束は笑顔で返事をする。

 

「あぁ!フキとかね!いいよいいよ!別にこれから先、会えなくなる訳じゃないしね!まぁ、ちょっち寂しい気もするけど、代わりに先生とハチが居てくれるしねぇ~!」

 

車が目的地に着くと千束が建物を見て興奮する。

 

「おっほぉ~~!いいじゃん!いいじゃん!ふたりとも中に早く入ろうよ!」

 

「落ち着きなさい、千束。まずは、荷物を下ろしてからだ。」

 

「そうだぞ。ほとんどお前の荷物なんだからな。」

 

「はぁ~い。」

 

三人で協力して荷物を下ろしたあと、建物のドアを千束が勢いよく開けるが、中には何もなく、寂寥としていた。

先程まで興奮していた千束も中の様子を見て気持ちが冷めてしまっていた。

 

「これは……外観とのギャップがすごいな。」

 

「そうだね。これはリフォームが必要だよ。うん。」

 

「ふたりともそんな入り口にいつまでも立ってないでこれからの話し合いをするぞ。」

 

「話し合い?」

 

「そう。ここをどうするか……だ。」

 

「どうするってどういうこと?」

 

「そうか。DAは秘匿されている組織。だったらその支部も秘匿されなきゃいけない。この建物の表の顔をどうするかってことですね。」

 

俺は気付いたことをそのまま言った。

 

「そういうことだ。」

 

「何かしらの制限とかってあるんですか?」

 

「いや、そういうのはない。ただ、これから千束のリコリスの活動費という名目でDAからの支援金が出る。そこから現場への移動費などを出す予定なのだが……。」

 

ボスが何故か言いづらそうにする。

 

「なにか問題でも?」

 

「……非殺傷弾の製作費用もここから出すとなるととんでもない額となる。」

 

「あぁ、ということはここも何かしらで資金集めができる場所のほうが都合がいいと…そういうことですね。」

 

「話しが早くて助かる。」

 

俺がボスとそんな話していると千束が頬を膨らませている。

明らかに不機嫌ですという顔であった。

 

「むぅぅぅ~。難しい話しばっかりしてないで私にも分かるように言ってよぉ~!」

 

俺とボスはため息をして俺は千束に向き合って分かりやすくジェスチャーをしながら説明する。

 

「いいか、千束。よく聞けよ。」

 

「うん。」

 

「俺たち、金、ない。ここ、金、集める。OK?」

 

「なんで片言?!私の事バカにしてるだろぉ!」

 

千束のじゃれあいに対応しているとボスが1つ咳払いをする。

 

「ふたりともその辺にしろ。資金集めをするためのいいアイデアは何かないか?」

 

「すぐ思い付くところですと、何か物を売ったり出来れば楽なんですけど…。」

 

俺がなんとなくの意見を言ったあと千束が元気よく手を挙げる。

 

「ハイハイはぁーい!私にいい考えがありまぁ~す!美味しいものを作って売る!これっきゃないでしょ~!」

 

「レストランということか?」

 

「レストランは難しいんじゃないか?俺たち3人しか居ないわけだし。それに人を雇おうにもあくまでもここはDAの支部だから雇えない。」

 

「いやいや、レストランなんて仰々しいものじゃなくてもいいんだよ。誰でも気軽に入れてお客さんに癒しを与えるようなお店でいいんだよ。」

 

「カフェということか?」

 

「そう!どう、ふたりとも?」

 

ボスは腕を組んで考えるような素振りを取る。

 

「カフェか。」

 

「俺は良いと思いますよ。」

 

千束に聞こえないようにボスに耳打ちをする。

 

「それに、千束がやりたがってます。やらせてやりましょう。もし上手くいかなかったらそのときに考えれば良いですし。」

 

俺の言葉にボスはしばらく黙って考え込む。

 

「……わかった。やってみよう。」

 

ボスの言葉に千束が跳び跳ねながら喜ぶ。

しかし、ここでカフェをやるとなるとやらなければいけないことが山ほどある。

取り敢えず千束を落ち着かせよう。

 

「千束、落ち着け。これからやらなきゃいけないことが山のようにあるぞ。」

 

「決めなきゃいけないこと?」

 

「そうだ。建物のリフォーム・内装の整備・備品の購入・数種類のメニューの発案及び価格の設定・食材の仕入れ・エトセトラ。やることは山積みだ。」

 

「うへぇ~。そんなにあるのぉ~。」

 

「仕方ないだろう。それに、問題はまだある。」

 

「問題?」

 

「俺は簡単なものしか作れないが……ふたりとも、料理の経験は?」

 

「「あ。」」

 

千束とボスの声がハモる。

どうやらふたりとも料理をしたことがなく、俺たち3人は思った以上に前途多難なようだった。

 

______

 

それからは慌ただしい日々が続いた。

カフェをやるというのにコーヒーもまともに入れられないボス。

 

「どうだ。」

 

「不味い。泥水みたい。」

 

「右に同じく。ただ、苦いだけって感じですね。」

 

「ダメか。史八はなんであんなに紅茶を入れるのが上手いんだ?」

 

「イタリアとフランスで何度か入れたことがありますし。」

 

「アニムスか。」

 

_____

 

リフォームしたばかりの壁に絵を描く千束。

 

「おい、千束?!なんでこんなところに絵なんて描いた?!」

 

「え~、そっちの方がいいじゃん!少しはお店の雰囲気が明るくなるでしょ~。」

 

「リフォームしたばっかだぞ!ってか油性ペンで描いたな!消えねぇ!」

 

「まぁ落ち着け、史八。壁に額縁に入った絵でも掛ければ隠せるだろう。」

 

「…まぁ、ボスがそれでいいなら。」

 

_____

 

勿論、DAからの要請にも答える。

任務で千束がちょっとした負傷をしたときに行った医療施設で千束が山岸先生を紹介してくれた。

 

「ハチ、この人は山岸先生。DAの医療担当の先生なんだよ。」

 

「初めまして、大神です。よろしくお願いします。」

 

「あんたの話しは聞いてるよ。なんだい、思っていたよりも礼儀正しいじゃないか。」

 

「ありがとうございます。」

 

「ん?千束、これ自分で応急処置したのかい?」

 

「ううん。ハチがやってくれた。」

 

「あの、何か不味かったでしょうか?」

 

「いいや、完璧だよ。誰に習ったんだい?」

 

「え~と、………クリミアの天使に。」

 

「……………面白いこと言う子だね。」

 

____

 

3人で話し合い店の作業服が決定。

 

「わぁ~、着物だぁ!いいねぇ!」

 

「カフェなのに着物ですか?動きづらくないです?」

 

「店は和洋折衷にするからな。こう言うところで他の店との違いを見せないと。」

 

「なるほど?」

 

_____

 

あの電波塔事件から色々なことがあった。

そうして、ようやく店が完成した。

 

「おぉ~!ついに完成だね!ハチ、先生!」

 

そんな千束をボスがまだだ、と否定する。

 

「まだ、店の名前が決まっていない。」

 

「そうじゃん!お店の名前かぁ。何がいいかな?」

 

「千束が決めてくれ。カフェをやるって言い出しっぺはお前だ。」

 

「そうだな、千束が決めなさい。ただし、変な名前にするなよ。」

 

千束は頭を抱える。

 

「う~んと、え~とねぇ、……そうだ!」

 

千束は答えが出たのか手を叩きながら言う。

 

「喫茶リコリコにしよう!どう?!」

 

「「リコリコ?」」

 

俺とボスの声がハモる。

リコリスとかけているんだろうか。だが、シンプルな方がいいだろう。

 

「いいんじゃないか。喫茶リコリコ。ねぇ、ボス。」

 

「そうだな。ではこれより、喫茶リコリコ開店だ!」

 

「「おぉ~~!」」

 

その後、そうだ!と、千束が何か思い付いたらしい。

 

「3人で写真撮ろうよ記念にさ!」

 

「俺はいいよ、写真苦手だし。俺が撮ってやるから。」

 

「記念写真なんだから3人で撮らなきゃ意味ないでしょうが!」

「ほらほら、タイマー始めたからハチも先生も並んで並んで!」

 

千束はそう言って俺の手を引き店の前に並ばせる。

そうしてボスをふたりで挟む位置でシャッターがきられた。

 

次にボスが提案してくる。

 

「ほら、今度はお前たちのツーショットだ。並びなさい。」

 

「ちょっ!まだ、撮るんですか?!」

 

「ほら!ハチ、もっとくっついて!」

 

面白がっているボスとテンションの高い千束。

俺は諦めるしかなかった。

 

「はい、チーズ、」

 

ボスの掛け声と共にカメラのシャッターがきられる。

そこには、赤い着物を着た少女が白黒の着物を着た少年に笑顔で腕を組んでいるところが映されていた。

 

写真は苦手だが、俺はこれを見たとき不思議と気に入ってしまった。

______

 

こうして無事、喫茶リコリコは開店された。

しかし、最初は当然上手くいかない。お客さんが来ない。

来たとしても1日で数人。しかし、ボスの作る和菓子やコーヒーが良かったのか着実にお客さんの数は増え常連さんと言える人も出てきた。

まぁ、それでも経営的にはカツカツだったが俺は楽しかった。

 

たまにDAからの要請もあるが、千束がいてボスがいてお客さんの笑顔があって困っている人を助けて忙しい毎日だったが、充実した毎日だった。

 

千束が野良犬を拾ってきたときは犬の名前で一悶着起きた。

 

「この子の名前どうしよう。ハチ、何かない?」

 

「じゃあ、セヌ。」

 

「セヌ?」

 

「昔いた相棒の鷲の名前。」

 

「いやこの子、犬だし。犬に鷲の名前つける?普通。」

 

「じゃ、千束は何がいいんだよ?」

 

「ん~とね、リキ!今日からお前はリキだよぉ~!」

 

千束がそう呼ぶと犬……もといリキがワンっと、吠える。

 

「ほら!リキの方が良いって!」

 

「ハイハイ。」

 

_____

 

数年後、喫茶リコリコに仲間が1人加わる。

 

「彼女はミズキ。元DAの情報部だ。今日からここで働いてもらうことになった。仲良くしろよ。」

 

そう言ってボスが俺と千束に一升瓶を片手に持った女性を紹介してくれた。

 

「よろしく。後、そこの銀髪のガキ。」

 

「俺ですか?」

 

「顔は好みだけど、いくらあたしが美しいからって惚れるんじゃないわよ。」

 

「はぁ。」

 

俺はどう返事をしたらいいか分からずよくわからない声を出したが千束から刺のある言葉が出てきた。

 

「ハチがおばさんを相手にするわけないじゃん。」

 

「なっんだと!クソガキっ!」

 

そこから千束とミズキさんの取っ組み合いが始まり、俺とボスは同時にため息を吐く。

 

____

 

それからさらに数年が経ち。

 

「よろしくお願いします。井ノ上たきなです。」

 

たきなが喫茶リコリコに来て。

 

「クルミ。」

 

ウォールナット……もといクルミが仲間に加わり。

 

喫茶リコリコで働きながら依頼で困っている人を助けて、たまに来るリリベルを千束と共に撃退しながらDAの任務を片付ける日々が続いた。

 

そんな日々が続いて、俺は…………目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目覚めた場所は無機質な研究室のアニムスの上だった。

 

 

 

 

 

 





はい、という訳で今回で過去編終了です。
かなり駆け足で描きましたが思った以上に長くなってしまいました。
過去編が長くなってしまいましたが、オリ主君がアニムスで眠ってからまだ、1日しか経過しておりません。

次回から現代編に戻ります。
お楽しみに。
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