闇に生き光に奉仕する男の話   作:ダレン シャン

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やっぱり、他の人が書いてるリコリコの方が面白いんですよねぇ。


我が儘を聞いて貰う話

 

わたしは今、千束と共にリコリスとしての仕事をしている。

本来ならばハチさんもいるはずだったが、店長から配達が遅れているという知らせを受けたため千束とふたりで任務中である。

 

路地裏で3人の男を拘束し、千束は電話で報告している最中だ。

 

「うん。終わったらったったぁ~、うん、りょ~か~い、じゃあ、よろしく~。」

 

千束のスマホからミズキさんの声が聞こえてくるが、わたしは別のことを考えてしまっている。

今までにこんなことはなかったはずなのに。

…千束はもうすぐ、

 

「ん、たきな?後ろ。」

 

千束の声で我に返る。

後ろを振り返ると拘束していた男の一人が走って逃げていく。

 

「あ。」

 

「ここ、お願い!」

 

千束は私に指示したあと、逃げた犯人を追ってしまう。

千束にここを任されたのにも関わらず千束と共に男を追い、近くの公園で捕まえる。

 

「すみません、走らせてしまって。」

 

動いた分だけ千束の寿命は減ってしまう。

それなのに千束は走って犯人を捕まえる。

罪悪感を感じるしかなかった。

 

「ううん、向こうの奴らは?大丈夫?」

 

「あっ!」

 

「あ~、いいよいいよ、やっとく!」

 

「あ。」

 

「そいつ、よろしくねぇ。」

 

「走らないでください!!」

 

そう言うが、千束は先程の路地裏まで走って行ってしまった。

 

何をやっているんだ、わたしは。

任務中に千束の心臓のことばかり考えてしまい集中できず、挙げ句の果てに千束の仕事量を増やしてしまって、………自分が嫌になる。

 

空を見上げるとわたしの気持ちと同じような色をしていた。

 

______

 

今日は天気があまり優れず、お客さんも入ってこないため、表札を準備中に変えてからカウンター席に座り普段はあまり吸わないたばこを吸う。

 

クルミがわたしの近くにコーヒーを置きながら言う。

 

「吸うんだな。」

 

「罪悪感を覚えると吸いたくなる。……自分を痛めつけるには丁度いい。」

 

「そんな不味そうに吸うなら止めろ。」

 

クルミの言葉に軽く笑うしかなかった。

 

「調べたぞぉ。もっと早く相談しろよ。」

 

「何か分かったか?天下のウォールナットは。」

 

「今んとこ、お手上げだなぁ~。」

「…アラン機関、吉松シンジ、ネット上には彼らにまつわる情報はみな消された後しかない。」

 

「だろうな。」

 

「それと、史八に至っては情報もないし、消された後もない。」

 

「……………。」

 

「で、直接知る人間から聞こうと思って慣れない茶など淹れたわけだが……。ミカ、これは千束の為だ。気付いてるんだろう?サイレントジンの件。千束の心臓を壊した女。黒幕が……吉松である可能性に。」

 

わたしは迷った。言っていいものかと。

私はクルミのコーヒーを口に含んでから語ることにした。

 

「まず、史八はシンジと関わりがある。………いや、あったと言った方が正しいな。」

 

「あった?」

 

「人工心臓を提供して貰う代わりにシンジから引き取ってほしいと言われた。」

 

私はクルミに当時のことを全て話した。

史八が苦しんでいたこと。それを千束が救ったこと。

千束の手術への恐怖を史八が取り除いたこと。

私と千束と史八の親子ごっこが始まったこと。

あのふたりと接していく内に私の中にあった親子ごっこという感情が変わり、ふたりのことを本当の娘と息子のように思ってしまっていたこと。

 

私の説明のあとにクルミが口を開く。

 

「皮肉だな。しかし、何故千束の命を狙う?」

 

「…使命を果たさない者を処分するつもりか。」

 

「それならあの看護師が殺してるし、史八のやつも狙われるはずだ。……まぁ、分かった。僕を狙ったアランは多分吉松だし、あの日、武器を受け取った真島とも繋がってる。思想的に奴を支援する理由も理解できたしなぁ。」

 

クルミとそんな会話をしていたとき、カウンター裏から雨で濡れたであろうたきなが姿を表した。

 

 

「真島を捕らえれば千束の心臓について分かるってことですか?」

 

「聞いていたのか!?」

 

「はい、ミズキさんも。」

 

「あたしまでバラさなくてもいいじゃないぃ。」

 

どうやらミズキも聞いてしまっていたようだ。

ミズキは隠れている理由もなくなり私たちの前に出てくる。

クルミはたきなとミズキを気にせずに言葉を続ける。

 

「奴の足取りが掴めない以上、動きの派手な真島から辿るのが早い。DAの作戦に参加できるのはチャンスだ!」

 

「………断ろうと思っていました。」

 

「なぜ!望んでた復帰だろ?!」

 

「…千束の、最後の2ヶ月だもんねぇ。」

 

「…でも私、DAに戻ります。千束が生きる可能性が少しでもあるなら。」

 

たきなが意を決するように言う。

そんなたきなに話しかける。

 

「私から千束に言おう。」

 

「いえ、自分で言います。時間をください。」

 

そしてたきなは誰かにメールをしたようだった。

______

 

店への帰り道、雨が突然降ってきたのでどこかで雨宿りしようと、どこかいい場所がないかと探す。

辺りを見回すと近くに三島橋が見えたため橋の下で雨宿りしようとそこまで走る。

しかし、そこには既に先客がいた。

 

「千束。」

 

「あれぇ、奇遇じゃ~ん。ハチも雨宿り?」

 

「どうした?たきなと任務中じゃなかったのか?」

 

「うん。仕事は終わったよ!その後、たきなと別れたら急に降りだしちゃったからここに避難してきたんだぁ。」

 

「別れたって……何かあったのか?」

 

俺の問いに千束は顔を曇らせながら言う。

 

「……たきな、完全に私のこと気にしちゃってるみたいで……、ちょっとね。」

 

「…なるほど。」

 

千束の顔が暗くなってしまったため話題を変える。

 

「なに見てるんだ?それ、楠木から返して貰ったカメラだろ?」

 

「あっ!ハチも見る?昔のヨシさん!」

 

そう言って千束はカメラの画像データを俺に見せてくる。

そこには、千束の方を振り向いている吉松さんの姿があった。

 

「こう見ると10年も経ってるのにあまり変わってないな。」

 

「そう言えばそうだね!美魔女だ!美魔女!」

 

「美魔女って、この人男だぞ。」

 

俺はカメラの画像データを指差しながら言う。

 

「えぇ~、じゃあ美魔男だ!」

 

「なんだそれ?」

 

俺たちはその後、笑いながら意味もない会話をした。

会話が途切れたところで俺は真剣な表情で千束に尋ねる。

 

「なぁ、千束。」

 

「どったの?」

 

「前にも聞いたと思うけど……もし、俺の心臓をお前にやるって言ったら………お前はどうする?」

 

千束はしばらくの間、呆気にとられていたがすぐ笑顔に戻った。

 

「お断りしまぁ~す!!!」

 

俺はそんな千束の返答に微笑する。

 

「だよな。お前ならそう言ってくれると思ったよ。」

 

そんな時、俺のスマホの通知音が鳴った。

メールが届いたようだ。差出人は珍しくもたきなからだった。

なんでも、千束に内緒で相談したいことがあるということだった。

 

_____

 

その日の夜、俺はたきなを家に招いた。

千束には内緒ということだったため千束は無理やり自分の家に帰らせた。

しかし、千束が居ないとたきながここにいることに違和感を感じるが、気にしないことにしよう。

 

「すみません、ハチさん。夕飯までご馳走になってしまって。」

 

たきなは申し訳ないように言う。

俺とたきなは向かい合うように座り、テーブルには俺が先程の作った夕食が置かれている。

 

「気にするな。一人分も二人分も作る手間はそう変わらない。」

「そんなことより、相談って?」

 

たきなは言いづらそうな顔をするが口も開いた。

 

「実はハチさんが今日、配達に行っている間にDAから復帰の辞令が届きまして、真島討伐の作戦があるみたいなんです。」

 

俺は何も言わず、たきなの次の言葉を待つ。

 

「わたしはDAに復帰しようと思います。」

 

たきなの目を見ると決意は固いようだった。

 

「そうか、たきなの人生だ。俺からは何も言わないさ。念願の復帰だもんな。おめでとう。」

 

「ありがとうございます。それで、相談なんですけど。」

 

「皆まで言うな。詰まるところ、DAに戻る前に千束と思い出作りがしたい。そんなとこだろ?」

 

「本当に店長の言う通り話が早くて助かりますね。」

 

「それで?」

 

「千束が喜ぶようなところを教えて貰いたいんですが…。」

 

千束が喜ぶ……ねぇ。

俺はしばらくの考えるが、結論は1つしか出なかった。

 

「千束はたきなと一緒ならどこでも楽しいって言いそうな気がするな。」

 

たきなは俺の言葉にそういうことを聞いてるんじゃない、という顔をしてきたため、俺はまたしばらく考える。

千束の好きなものといえば……。

 

「………車かなぁ。」

 

「車ですか?」

 

「そう。クルミの護衛任務中に千束がスーパーカーでテンション上がってたの覚えてる?」

 

「そんなこともありましたね。では、自動車学校に行けば良いですか?」

 

また、頓珍漢なことを言い出したぞこの娘は。

たきなはたまに天然なところがある。

 

「いや、何でだよ!遊びに行くのに何で自動車学校だよ!自動車学校の人にも迷惑だし、スーパーカーなんてねぇよ!」

 

「では、どこに行けば?」

 

「いや、普通にゲーセンのレースゲームとかいいだろ。」

 

「ゲーセン?……ゲームセンターですか。なるほど。」

 

たきなは納得したように言う。

 

「因みに、プランとしてはどこに行くつもりなんだ?」

 

「そうですね。先に雑貨などを見て回ろうと思っていたんですが、ゲームセンターに先に行ってからにしましょう。そうすると15分ほど時間をずらして、」

 

何か嫌な予感がした。

 

「ちょっと待て、たきな。」

 

「なんです?」

 

「まさかとは思うが、分単位でプランが決まっているのか?」

 

「そうです。いけませんでしたか?」

 

たきならしいといえばたきならしい。

時間を決めて行動するのは悪いことではない。

しかし、たきなの性格上トラブルが起こり時間通りに進まないと混乱するとも思ったがそこは千束に任せるとしよう。

 

「いや、いいんじゃないか?困ったら千束に聞いてみるといい。お前らは相棒なんだから。」

 

「……はい。」

 

その後は、ふたりで夕食を食べた。

もうそろそろいい時間なのでたきなに帰り支度をするように促す。

 

「すみません。洗い物もせずに。」

 

「いいよ、もういい時間だし。気ぃつけて帰れよ。」

 

「はい。」

 

「明日は千束を迎えに店まで来るんだろ?」

 

「そのつもりです。」

 

「あっ、制服着てくるなよ。私服な。銃も禁止。」

 

「はい、分かっています。夕飯ごちそうさまでした。失礼します。」

 

そう言ってたきなは帰っていった。

 

______

 

トイレを済ませて椅子に戻ろうとすると真島が僕のアジトにまた侵入し、椅子に座っていた。

 

「い、いつの間に?!」

 

真島は僕の問いに答えずに質問してくる。

 

「奴が言ってた例のヨシさん、誰?」

 

おそらく、アラン機関の吉松のことであろう。

しかし、契約上バラすわけにはいかないのでシラを切ることにした。

 

「さ、さぁ~?」

 

真島が笑いながら銃口を向けてくる。

こいつなら本当に撃ちかねない。まだ死にたくない。

僕は吉松のことを白状した。

 

「あぁ!わかった!あいつを支援した、アラン機関のエージェントだぁ!」

 

「やはりそうかぁ。」

 

真島は銃を下ろして僕に言う。

 

「ロボ太ぁ、作戦を思い付いた。」

 

真島は不気味に笑っていた。

 

 

______

 

翌日、店は営業しているが閑古鳥が鳴いていた。

千束はふざけて手を叩きながら誰に言うでもなく客を呼び込んでいた。

そんな千束にミズキさんからの指摘が入る。

 

「いぃらっしゃいまっせ~!いっらっしゃいませ!いらっしゃいませぃ!へいらっしゃい!へいへいへい!へいらっしゃ、」

 

「じゃかぁしぃ!!」

 

「あぁ、ごめん。」

 

「ったく。」

 

千束は素直にミズキに謝る。

 

「はぁ~あ~、暇だなぁ。」

 

千束がそう言うと店のドアが開いた。

 

「あっ!いらっしゃいまs、おっ、お~、おかえり。」

 

千束は対応しようと声をかけるがそこには私服姿のたきながいたため千束は戸惑っていた。

そんなたきなは千束に近寄り口を開く。

 

「ちょっとお話しが。」

 

「へ?あ、あ~。ん~?」

 

千束とたきなはちゃぶ台を挟んで座る。

 

「何ごっこ?」

 

「え?」

 

「え?」

 

千束の元気のいいセリフにたきながよく分からない声をだし、千束もそれに応じた声を出す。

たきなは自分の鞄からひとつの冊子を取り出した。

それはたきなが自分で描いたであろうペンギンの絵が書かれたあそびのしおりだった。

千束が数回瞬きをした後たきなが口を開く。

 

「出かけましょう。」

 

たきなからの初めての遊びの誘いに千束は満面の笑みを浮かべてボスに視線で確認をとる。

 

「行ってこい。」

 

ボスも笑みを浮かべながら許可を出すと千束のテンションがMAXまで上がった。

 

「よっしゃぁ~!たきな、ちょっち待ってて!準備してくるから!ハチも速く準備していくよ~!」

 

千束が俺も誘ってくるがやんわりと断りを入れる。

 

「いや、2人だけで楽しんでこい。相棒同士、水入らずでな。」

 

「えぇ、ハチも行こうよぉ。」

 

「いいから、はよ行け。」

 

そう言うと千束は大人しくたきなと共に店から出ていった。

 

 

 

ふたりが店を後にして数分後、ボスが口を開いた。

 

「この調子ならお客はあまり来ないだろうから早いがもう店を閉めてしまおうか。」

 

「えっ!まじ!じゃあ、これから飲みに行こ~。」

 

ボスの言葉にミズキさんから歓喜の声が上がる。

 

「飲みに行くって、まだ午前中ですよ?店なんて開いてないんじゃないですか?」

 

「バカね。夕方まで宅飲みして、それから夜の街に繰り出すのよ!」

 

午前中から酒を飲もうとするバカにバカと言われてしまった。釈然としない。

 

それから俺とボスとミズキさんで閉店の準備をした。

ミズキさんは終わり次第帰り支度を済ませて店から出て行ったため俺とボスだけが店に残った。

正確にはクルミもいるが、押し入れの中にいるため俺たちの会話は聞こえないだろう。

俺はボスに話しかける。

 

「上手く、ミズキさんを追い出しましたね。」

 

「なんのことだ?」

 

「あれ?俺に聞きたいことがあるのだと思っていましたが、勘違いでしたか?」

 

俺は少しおどけた風の言葉を口にしたあとボスは観念したのか本題に入る。

 

「………千束の心臓の件だ。史八、お前は、」

 

「大丈夫ですよ。」

 

俺はボスの言葉を遮る。

ボスはよく分からないという表情をしたためもう一度言う。

 

「大丈夫です。千束は死なない。」

 

「…何故だ?」

 

「何故って……そりゃ、そんな気がするからで、」

 

「嘘をつくな。」

 

今度はボスが俺の言葉を遮る。

 

「お前の直感力が異常に鋭いのは昔から知ってる。」

 

「ならなんで、嘘だと言うんです?」

 

「先程のお前の千束は死なない、という発言には何か確信めいたものがあった。…違うか?」

 

「………流石ですね。」

 

「もうお前たちとの付き合いも長い。嫌でも分かるさ。」

 

「はぁ、誰にも言わないでくださいよ。」

 

俺は観念してボスにだけ伝えることにした。

 

 

「取引をしました。」

 

「取引?」

 

「吉松さんと。」

 

俺の言葉にボスは驚愕の表情を示した。

いつもより大きな声で俺に問い詰めてくる。

俺はボスに落ち着くようにしたあと説明する。

 

「いつだ!」

 

「落ち着いてくださいよ。取引したのは千束の心臓を壊された後。俺は千束の新しい心臓の提供とと今後一切、アラン機関から千束に接触しないことを相手に要求しました。」

 

「シンジはなんと?」

 

「快く承諾してくれましたよ。」

 

「ふざけるな!シンジがそう簡単に首を縦に振る筈がない!何を差し出した?!」

 

「差し出してませんよ。……まだ…ね。」

 

「まだ?」

 

嘘をついてもいいが俺は正直に言うことにした。

 

「…俺は人殺しの才能を世界に届けることを約束しました。」

 

「史八!自分が何を言っているのか分かっているのか!?殺しは嫌だと…自由のために闘うと言っていたじゃないか!?それがお前の自由なのか?!」

 

ボスは俺に向かって震えた声で言う。

 

「…俺は、少なくとも自分の自由のために闘ったことは1度もありませんよ。」

 

「では、一体誰の、」

 

そう俺に問いかけようとするボスの言葉が途中で止まる。

どうやら気付かれてしまったようだ。

ボスは目を見開いて言った。

 

「……………千束か?」

 

ボスの問いかけには肯定も否定もせずに別の言葉を口にする。

 

「俺は千束に救われた。千束は俺の光なんです。だからそれを護るためなら…。」

「………屍を踏み越え、血溜まりを歩き、両手を血で赤く染め、相手の返り血を浴びるのも厭いません。…喜んで地獄に堕ちましょう。」

 

俺の言葉にボスは遂に目に涙を浮かべてしまう。

ボスはうつむき、絞り出した声は更に震えていた。

 

「…何故だ?………何故そんな犠牲になることを……。」

 

「そんな哀しいこと言わないでください。」

 

ボスが俺の顔を見てきたので笑顔で答えた。

 

「俺は犠牲だなんて思っていません。千束には幸せになってほしい。俺はそれだけで充分なんです。それだけで………俺は幸せだ。」

 

ボスは何も言わない。

俺はボスに罪悪感を感じつつも言葉を続けた。

 

「千束の心臓が変わって大丈夫なことが確認できたら、俺は消えます。」

 

ボスは絶望した表情をする。

 

「みんなにどんな顔して会えばいいか分からないし、悪人だけを殺すとはいえ人殺しの俺を見てほしくないんです。」

 

「……千束が知ったら、」

 

「だから誰にも言わないで欲しい。この事は、ボスの心に留めて置いてください。」

 

話しは終わったと俺は席から立ち上がる。

帰り支度をしようとボスに背を向けたとき声がかかる。

かかってきた声は涙で震えていた。

 

「…………私はお前たちを本当の子供のように。」

 

ボスの言葉に俺も泣きそうになる。嬉しかったからだ。俺もボスのことを父親のように感じていた。……シンさんもそうだ。

 

しかし、涙は流さない。

これは俺が決めた道だ。覚悟はとうの昔に決まっている。

 

「ごめんなさい、ボス。」

「でも、お願いします。これが俺の最初で最後の……………あなたへの我が儘なんです。」

 

そう言ってから俺は帰り支度を済ませ店から出ていった。

空を見上げるとまだ空はどんよりとしていた。

 

 

 

 

 

 

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