わたしは現在、真島が行動を起こしたことで作戦を変えることとなり、DAのバスのなかで楠木指令の説明を聞いている。
私のとなりにはエリカが座っていた。
「たきな、戻れて良かった。………あの、私ずっと話そうと思ってたんだけど!」
バスのモニターに延空木強襲作戦の実行部隊編成表が映し出される。わたしはalpha隊でフキさんと同じ隊であった。
しかし、わたしは編成表の中に信じられない文字を目にする。
charlie-6 錦木千束
わたしは前に移動し、備え付けられているカメラに向かって楠木指令に直談判する。
「千束を呼んだんですか?!」
『席に着きなさい。』
「指令!千束は!?」
『奴は来ない。連絡が着かなくなった。』
「連絡が?店長もですか?」
『そうだ。』
「ハチさんとも?」
『ハチ?誰だそいつは?』
「真島が言っていた
『知らんな、そんな奴は。皆目検討もつかない。』
楠木指令にシラを切られる。
「何故です?」
『知らん。我々には関係ないことだ。』
「会議中だぞ!」
後ろからフキさんの注意する声が聞こえるがわたしはいてもたってもいられなかった。
「この状況を見て3人と連絡つかないなんて絶対変ですよ!」
「お、おい!」
「作戦までには戻ります!」
フキさんがわたしを止めてくるがそれを振り切ってバスから降りお店に走ってむかう。
_____
俺たちは準備が出来たため、ロボ太の指示通りスマホを店に置いて車に乗り込む。
既に車はハックされていて車内からロボ太の声が聞こえてくる。
「携帯は置いてきたな。」
「あぁ。」
千束が答えるが、声色からしてマジギレ5秒前と言ったところか。
「以降はこの通信だけを許可する。誘導にしたがえ。」
ロボ太の命令口調に千束は舌打ちをする。
かなりイライラしている様子だがそういう俺もかなりイライラしていた。こいつらのせいで俺の計画に大幅な修正を入れることとなってしまったから。
「分かったから、さっさと誘導してくれねぇか。ロボ太さんよぉ~。」
自分の名前を知られていることが嬉しかったのかロボ太のテンションが分かりやすく上がる。
「おぉ!僕のこと知ってるのかぁ!今やウォールナットわ越える最強ハッカーだからなぁ。あっははは!」
そうか。ウォールナットは死んだことにしてたんだっけ。
ロボ太は余裕綽々で笑っているが、真実を知らないとはいっそ哀れに思えてくる。
「はぁ~、ウォールナットの遺言でお前の名前を聞いただけだ。お前は全然有名になってないよ。」
「なっ、なんだと!」
「まぁ、これから有名になるかもしれないなら後でサイン貰いに行ってやるから……さっさと誘導してくれや。」
「はっ、発進しろ。」
声色を変えながらそう言うとロボ太は素直にしたがった。
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「ラウンっジ!さいっこぅだわ~。」
あたしは空港のファーストクラスのラウンジを満喫していた。
赤ワインの入ったグラスをテーブルに置きながら言う。
「初めてあんたと一緒で良かったと思ったぁ~。」
「もう行くからな。」
「はいは~い。」
「…ボクはともかく、お前こそ最後まで千束といるべきじゃなかったのか?」
妹のように思ってる千束がいなくなった時、絶対に泣いてしまう。この歳になってボロ泣きしてる所なんて他人に見られたくなかったし、…それに、千束の前ではあたしはあたしのままで居たかった。
それをクルミに悟られないようにクルミにも同じような質問をする
「充分、一緒に居たわよ。あんたこそになに遠慮してんの~。リコリコに馴染んでたくせに。」
クルミは意外そうな顔をしてから答えた。
「…あぁ、楽しかったな。」
「あんたとも最後かな。」
「そうだな。………じゃあな。」
「ファーストクラスのチケット、ありがとね。」
あたしは手に持っているファーストクラスのチケットを振りながらクルミにお礼をいった。
「お前のはエコノミーだ。」
「エコ!?!?」
真実を告げられファーストクラスのチケットと思っていたものを握りつぶしてしまった。
____
わたしはバスから降りて走ってお店に向かうが距離があったため、途中でバイクを
緊急事態だ。しょうがない。
バイクに乗って喫茶リコリコまで向かい、お店の前にバイクを停めるとドアに張り紙が貼ってあった。
「閉店?」
鍵はかかっていないようだったのでお店にはいったが、誰もいない。
「どうして?」
何故、閉店してるのか?何故、誰もいないのか?
疑問は増えるばかりであった。
再び千束に電話をかけるが、近くから着信音がなり、何かがカウンター席から落ちた。
千束のスマホだった。バイブレーションでスマホが揺れて落ちたのだろう。
千束のスマホを拾い上げると自分のスマホが鳴る。
楠木指令からだった。
「はい。」
『あと、30分で再突入だ。戻れ。』
わたしは現状を司令に報告する。
「店に千束がいません。スマホを置きっぱなしで。」
『それがどうした。』
「なにか変です。真島が絡んでるかも。」
『何故そう思う。先日、真島に話した吉松とは…何者だ?』
「千束の恩人です。」
『心臓の提供者か?』
「はい。真島は千束が吉松を探しているのを知っていました。」
『真島は延空木にいる。知りたいことがあるなら本人に聞け。奴が死ぬ前にな。』
「………すみません、戻ります。」
直前まで迷ったが千束なら大丈夫だと、ハチさんも一緒なら大丈夫だと、そう思いわたしはわたしに出来ることをやるために司令の指示通り戻ることにした。
____
ボクは飛行機に乗ってから千束の心臓のことを調べていた。
「一番、千束の心臓に近いのどれ?」
ボクはそう言って検索をかける。
様々な情報が出てくるが、川辺楓という女が引っかかる。心臓血管外科の外科医で論文も様々な心臓に関する物を書いている。
「これの著者、洗い出して。…そうそ、どうせ名前変えてるから~。メタデータよりフェイシャルイメージ!」
そんな風に調べていると、不振に思ったCAが話しかけてきた。
「飛行機が飛ぶときはやめてね。」
「当分、飛ばないだろ。」
真島が行動を起こしたせいで全ての便が離陸を見合わせていた。
ボクは再びゴーグルをかけて調べる。
「おっ!あたりか?!」
川辺楓という女の着ているスーツにアランのチャームが付いているのを確認した。
「場所お願い!」
画像の女の瞳に反射している場所からどこで取られた画像なのか調べる。
「何もない。……10年前。」
映し出される画像が過去のものへと変わっていく。
「町工場か。」
残されている監視カメラの映像を確認していく。
「何かあるぅ?なんか吉松っぽいの。」
見つけた。
画像の女と吉松らしき人物。
「そんじゃ、振動解析。音出して。」
ノイズが酷いがしばらくするとノイズは消え話している内容が聞こえてくる。
『直接会うのはご法度では?ミスター吉松。』
女が目の前の男を吉松と呼んだ。
「ビンゴ!!この骨格でそのあと、10年照合して。」
10年間の吉松の足跡を辿るが。
「去年?」
『我々は手助けをしただけだ。少女の命ひとつであなたの才能が結実するなら安いだろう。』
『その子にこれを。救ってあげて。』
『君が心配すべきは、これからの幾人の患者だ。被験者のことは私に任せてくれ。君同様、アランの子だからね。』
人工心臓が映る。
「あったぁ~!!!」
こうしてはいられない。
ミズキを呼び戻さないと!
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「お客様。」
あたしがアイマスクをしてゆっくり眠っているとそんな声が聞こえてくる。
誰だ、あたしの眠りを妨げる不届きものは。
アイマスクを外し声のした方を見るとCAがいた。
「生き別れの娘様が~あちらでお待ちです。」
「むすめぇ~?」
このCAは何を言っているんだろう?
あたしに娘なんていないし、そもそも結婚していない。
というかCAってモテるんだろ?あたしに男を紹介しろ。
そんなことを思って促されるまま窓の外を見るとクルミが何やら騒いでいた。
「は・や・く! ミ・ズ・キ!」
なにをやってるんだ?あいつは。
なんかめんどくさそうだから惚けておくか。
「知らない子です。」
そうCAに伝えるがそんなわけにも行かないのだろう。
あたしは飛行機から降りてクルミと合流する。
「バンクーバーの彼に連絡しなきゃ~!」
あたしがスマホを取り出すとクルミに引ったくられる。
「まだ、付き合ってないだろ!」
どうやらあたしのスマホからたきなのところに連絡をするようだ。
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わたしはチームと合流し作戦を実行中。
突然、耳につけている通信機からクルミの声が聞こえてきた。
『千束の心臓!もうひとつあるぞ!』
「っ!どこに?!」
『多分、吉松が持ってる。アランの支援を受けた研究者が改良した心臓を作ったんだ。それを吉松が持ち出してる。』
「吉松はいまどこに?」
『わからない。ここ数日の足取りがさっぱりだ。また連絡する。』
「待って、クルミ。リコリコに行ったんですが。」
『あぁ、閉店してたろ。すまん。千束の希望でな。』
「スマホだけ置いて千束とハチさん、店長も居なくって。」
『なにかあったか?』
「これ、解析できますか? 」
わたしは店から持ち出した千束のスマホを握りしめて言う。
「分かった。ちょっと待ってろ。」
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『奴らが着たぞぉ。』
「準備はいいかぁ?ハッカぁ~。」
『抜かりなく~、と、と~。』
『はぁ、僕たちは絶対できるぅ。』
「さぁ、第2幕だ。」