闇に生き光に奉仕する男の話   作:ダレン シャン

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一難去ってまた一難な話

 

状況を整理しよう。

たきながシャッターを突き破って突入してくれたお陰で真島のフィールドである暗闇の密室は破られた。まだ、光が差し込んでいる場所は一ヶ所だけではあるが、頭数は此方が有利。

 

「千束、たきな。真島はお前たちに任せてもいいか?俺は吉松さんを。」

 

「分かった。ここは私たちに任せて!」

 

俺の提案に千束が答える。

 

「たきな、千束を頼むぞ。」

 

「分かっています。それよりもハチさん、吉松が!」

 

たきなが何か言いかけるが、俺はたきなの前に手を突き出して答える。おそらくたきなが言いたかったのは、千束の心臓のことだろう。なぜ彼女が知っているのかは今はどうでもいいか。

 

「皆まで言うな。分かってるから。」

 

俺はそう言って吉松さんの後を追おうとするが足元に威嚇射撃が入る。

 

「おいおい、暗殺者(アサシン)。つれねぇじゃねえか。」

 

「お前の相手をいつまでもしている暇はないんだよ。こっちはお前らのせいで予定がつまってるんだ。それに、あんたの聴覚は大したものだよ。だがそれは、あんたの長所であり最大の弱点でもある。」

 

俺は千束たちに真島の弱点のヒントを与えながら真島の横を通り過ぎる。

その際、真島が射撃体勢に入るがたきなの発砲に阻まれる。

 

「ハチさん、今のうちに!」

 

「あぁ!」

 

そう言って、真島を千束とたきなに任せ、俺は吉松さんの後を追う。

吉松さんが拘束されていた場所に戻り、タカの眼を使って吉松さんの痕跡を調べる。

どうやら上へ行ったようだ。

 

俺は血痕や足跡を辿って更に上の階に向かう。

 

_____

 

「ALPHA-4が真島を押さえました!」

 

「旧電波塔です!」

 

「なに?クリーナーを向かわせろ。」

 

部下から旧電波塔に居る真島を押さえたと言う報告が入る。

クリーナーを出すように指示したとき、横から聞きたくもない男の声が聞こえた。

 

「もう、クリーナー頼りか?」

 

声のする方を向くと武装した部下を連れた初老の男性、虎杖が居る。

 

「全員、そこまで!上層部の決定だ。リコリスは処分する。」

 

「どうするおつもりですか?」

 

「リリベルで対応する。残念だがリコリスは、全員消えて貰う。」

 

リコリスを処分させるわけにはいかない。

私は助手にアイコンタクトで指示を出すがどうやら筒抜けだったようだ。

助手は銃を向けられてしまった。

 

______

 

私が避難しているところに史八が来た。

 

「吉松さん。」

 

「史八。」

 

「撃たれた腕はどうです?」

 

「あぁ、掠めただけだ。大丈夫だよ。そんなことよりも君が気にしているのは、これだろう?」

 

そう言って私はケースを史八の前に出す。

 

「……えぇ、まぁ。」

 

「私も真島に捕まるとは思っていなかった。奴を侮っていたよ。君のところへ持っていこうとしたときに捕まってしまってね、こんな場所で申し訳ないが受け取りなさい。」

 

私は史八にケースの中身が見えるように開く。

彼が心臓を確認してから簡単に説明する。

 

「これは今現在、千束の心臓に入っているものの完成品だ。一度入れてしまえば、定期的に充電する必要もない。」

 

そう言ってから私はケースを閉めて史八に渡そうとする。

彼はケースに手を伸ばすが、私は伸ばした彼の手を掴み最後の忠告をする。

 

「いいか、史八。これは取引なんだ。もし、君がこれをもって逃げたとしてもアラン機関は、」

 

「大丈夫です。」

 

史八は私の声を遮るように言ってくる。

 

「約束は必ず守ります。俺の才能を世界に届けると。悪人を処分し続けると……。だから、もう隠れてないで出てきても良いですよ。」

 

史八がそう言うと私も姫蒲君に降りてくるように指示すると彼女は上の鉄骨から降りてきた。

 

「いや、すまない。一度君には幼いときに逃げられているからね。釘を刺しておきたかったが………、杞憂だったみたいだ。良い眼だ。第六感も健在のようだね。」

 

「この人を見つけたのは第六感じゃありませんよ。ここに来てから殺気を感じてました。うまく隠しているようでしたけどね。」

 

姫蒲君は私のボディガードも兼ねているかなりの手練れだ。

殺気を隠すのにも長けているだろう。

だが、史八はそんな彼女の気配を簡単に感じ取っていたようだ。

 

「はははっ!素晴らしい!今の君は間違いなく暗殺者(アサシン)だよっ!………それで、君はこれから一体どうするのかな?」

 

「状況が状況なので、これから一件、依頼が入りそうなんですよ。それを解決してから千束の心臓を交換して、千束の意識が戻り次第…………、貴方との約束を果たそうと思います。」

 

「そうか。なら、私たちはここで失礼させて貰うとしよう。千束にも挨拶をしておきたかったが、それは契約違反というやつだ。やめておこう。」

 

そう言って、私は姫蒲君と一緒に部屋を後にしようとする。

そうすると、後ろから声がかかってきた。

 

「俺は、こんな貴方との約束よりも………昔の約束を果たしたかったです。」

 

史八は此方を見ずに言う。

 

「昔の?」

 

「延空木を一緒に見上げるっていう。…………貴方が覚えてるかどうか分かりませんが。」

 

あぁ、そういえばした記憶がある。

今まで忘れていたが、確か連れて行こうとしたが史八が脱走してしまいそれどころではなかった。

 

「……あぁ、私もだよ。」

 

史八の機嫌を損ねないようにそう言って今度こそ部屋を後にしようとする。

 

「さようなら………シンさん(・・・・)。」

 

シンさん、久しぶりにそう言われて懐かしさで心が踊るが、それと同時に私の胸にチクリとした痛みを感じた。

 

______

 

俺が吉松さんと別れてから数分後に千束とたきなが来た。

 

「あれぇ?ハチ、ヨシさんは?!」

 

「安全な場所に移動して貰ったよ。千束には悪いと思ったが、いつまでもここにいるのは危険だからな。傷も弾が掠めたようだったし大丈夫だよ。」

 

「そう…か、会いたかったな。……でも、しょうがないね!今生の別れってやつでもないし!」

 

「ごめんな。」

 

「もう、ハチが謝んないでよぉ~!いいってぇ、ホントにぃ~!」

 

違うんだ、千束。

吉松さんがこれからお前と会うことはない。お前はもう二度と吉松さんには会えない。俺が……そうしてしまった。

 

俺がそんな風に思っていると俺が左手に持っているケースが気になったのかたきなが尋ねてくる。

 

「ハチさん、そのケース。」

 

「あぁ、千束の新しい心臓だ。」

 

「えっ!?!?」

 

千束から素っ頓狂な声が上がる。

 

「というかたきな、なんでお前がケースの中に心臓があるってことを知ってるんだ?」

 

「クルミが教えてくれました。」

 

「ちょいちょいちょ~い、」

 

「はっ!流石はウォールナット。あいつが敵だったらって思うとゾッとするよ。」

 

「そうですね。」

 

「ちょいちょい、お二人さん?聞こえる?聞こえてますか~?」

 

「しかし、たきな。どうやってここまで来たんだ?」

 

「……………気合いで。」

 

どうやら教えてはくれないようだ。

 

「お~い!!ねぇ、私の声聞こえてる!?私にとってちょ~重要な単語が聞こえてきたんですけど!?」

 

「さっきからうるさいぞ、千束。」

 

「少し落ち着いてください、千束。」

 

「あっれぇ~?!もしかして私が悪いの?!ってちがぁ~う!私の心臓がなに?!」

 

正直、どうやって俺が心臓を手に入れたのか一から説明する気はない。吉松さんとの取引のことを説明しなければならないからだ。

どうやって誤魔化したらいいか考えていると窓の外にヘリが止まる。

ヘリのドアが開き、そこからクルミとヘリを操縦するミズキさんが確認できた。

 

「お~い、お前ら無事か~?ミズキがうるさいんだ。早くしろぉ!これ、風凄いな。口も目も乾くんだよ!ゴホ、ゴホっ。

 

クルミがそう急かしてくるため3人でヘリに飛び乗る。

まぁ、公になってしまったリコリス関連だろう。

 

____

 

「依頼ぃ~?リコリスの救出がぁ?誰の依頼よぉ。」

 

「それは、ミカに聞け。」

 

「先生は?」

 

「用事があるそうだ。あぁ、これ預かったぞぉ。」

 

クルミは自分の横に置いてあるケースを軽く叩き千束に渡す。

ケースには非殺傷弾のマガジンがいくつか入っていた。

 

「おぉ、マガジンだぁ!助かった~。店から持ってきた分、残り少なくなってたんだよな~。ハチはまだある?」

 

「俺はまだ余裕があるから千束が持ってな。」

 

「さんきゅ~!」

 

千束が鞄にマガジンを詰め込んだ後に俺が口を開く。

 

「今回の依頼は十中八九、九分九厘、楠木からだろうな。少なくともDAのスタッフの誰かだろう。」

 

俺がそう言うと千束が尋ねてくる。

 

「なんで楠木さんからだってわかんのぉ?」

 

「リリベルが動いている可能性があるからだ。」

 

「なんで、あいつらが?」

 

「千束、忘れたのか?リコリスの存在が真島のせいで公になってるんだぞ。」

 

「あ。」

 

千束はそんな俺の言葉にたった今思い出しましたと言わんばかりの声を出す。

 

「おい、冗談だろ?まさか本当に忘れてた訳じゃないよな?!」

 

「あははは、まっさかぁ~!」

 

千束は乾いた笑いを浮かべながらへたくそな口笛を吹く。

これは完全に忘れてたな。

 

「リリベルって前に千束とハチさんが言っていた人たちですよね?何故、その人たちが出てくるんです?」

 

「それが奴らの仕事だからよ。」

 

「?」

 

たきなの疑問にミズキさんが答えるが言葉足らずのため彼女の疑問は消えないようなので俺から説明する。

 

「リリベルの仕事は………リコリスの抹殺だ。」

 

「!」

 

俺の言葉にたきなが驚愕の表情を示す。

 

「俺もリリベルについてはそんなに詳しくはないが、奴らの仕事のひとつはリコリスの処分ってことだけは知ってる。」

 

「何故そんなことを?!」

 

「DAは世間からは秘匿されている組織だ。そして、言ってしまえばリコリスはDAの情報の塊。ネット上でのデータはラジアータが完璧に情報規制してくれるが…、」

 

「現場で第2、第3者にリコリスの存在が知られたらラジアータでの情報操作は出来ない、そういうことですね。」

 

たきなは俺が言おうとした言葉を言う。

 

「そういうことだ。リコリスが敵に捕まって、DAの情報を吐かせようと拷問する可能性もある。DAの情報を外に漏らさないようにリリベルってのがいるんだ。」

 

「昔はよく店にも来てたよぉ~。千束と史八を殺しに。」

 

「なんで来なくなったぁ?」

 

ミズキさんの言葉にクルミが反応した。

 

「おっさんと楠木が上と交渉したのよ。」

 

「良い奴じゃないか、楠木。」

 

ほぉん、そんなことしてたのか楠木のやつ。

少し見直したよ。まぁ、-100が-99程度になったぐらいだが。

 

「リリベルがリコリスを処分するのは理解できました。千束が昔襲われた理由も千束が持っているDAの情報が外へ流出するのを防ぐためですね。」

 

「その通り。」

 

「では、何故ハチさんも襲われたのですか?千束と一緒にいるからって理由ではないでしょう?」

 

「俺も一時期、DAで暮らしてた時期があってな。それに……、俺はあの髭に嫌われてんだ。」

 

「「髭?」」

 

たきなと千束が同時に尋ねてくる。

 

「リリベルの司令官のことだ。まぁ、そんなことはどうでもいい。クルミ、ラジアータのカバーはどうなってる?」

 

俺の問いにクルミはパソコンを弄りながら答える。

 

「動作不良でダウン中だ。ロボ太だな。」

 

へぇ、あいつラジアータをクラッキング出来るのか。

思いの外やるやつみたいだ。

 

「クルミ、もしロボ太とやり取りすることがあったら奴のサインを貰っといてくれ。」

 

「なんだそれ。」

 

俺の言葉にクルミはそう答えた後にたきなが口を開く。

 

「それじゃあ、どうしようも。」

 

「まだだ。」

 

クルミは千束にUSBメモリのようなものを投げ渡した。

 

「それを延空木の制御室に差してこい。後は何とかしてやる。」

 

「でも、ラジアータが動かないんじゃ。もう偽造も出来な、」

 

「あぁ、もうそんなポンコツ。」

 

たきなの言葉にクルミからやれやれという感じの声が出る。

 

「ウォールナットに任せろ。」

 

クルミは堂々と俺たち3人に向かって言う。

ホントにこいつは……カッケェな。

 

「聞いたか、2人とも。DAの最強AIをポンコツ呼ばわりですよ。……で、どうすんだ千束?この依頼、喫茶リコリコとして受けるのか?」

 

俺はそう千束に尋ねる。

 

「……よし、リコリコ営業再開だ!行こう!!」

 

「バッチコイ!!!」

 

ミズキさんの声を最後に俺たちを乗せたヘリは真っ直ぐに延空木へ向かっていく。

 

_____

 

私はスマホを耳に当てヘリが延空木へ向かって飛んでいくのを確認した。

 

「行った。お前という依頼ということは伏せといたぞ。」

 

史八にはバレているとは思うが。

 

「どうも。」

 

スマホから楠木の声が聞こえる。

 

「リリベルはどれくらいで来る?」

 

「50分程です。」

 

そう言って通話が切れる。

 

虎杖の奴、余計なことを。

私はそう思いながらみんなの無事を願い呟くように言う。

 

「無事に帰ってこい。」

 

そう言ってから私はやること成すために旧電波塔に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千束、史八。

許してくれとは言わない。

これはただの……………、私の我が儘なんだ。

 

 

 

 

 

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