闇に生き光に奉仕する男の話   作:ダレン シャン

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灰色の世界の話

 

ハチがいち速く真島に気付いて真島の銃撃から私たちを守ってくれたけど一発だけ防ぐことが出来なく、それが不運にもフキの相棒のサクラの左脇腹に当たってしまった。

 

「エリカ、ここ押さえてて。」

 

「はい。ガーゼまだある?」

 

「私の使って!」

 

「ありがとうございます。」

 

今はたきなとエリカと呼ばれるリコリスが手当てをして、私の分のガーゼを渡す。ガーゼで止血を施すが当たりどころが悪かったのか出血が酷い。白いガーゼがたちまち赤く染まっていく。

 

「ど…、どんな感じっスか?結構、痛いっス。」

 

「ちょっと血が出てるが絆創膏貼っとくからな。」

 

たきなのことを散々煽っていたあの元気そうな声は成りを潜め、どんどん弱々しくなっている。

フキは相棒を元気付けるために声をかける。

 

「危なかったぁ……。」

 

そう言って、サクラの意識がなくなる。

 

「サクラ、こっち見て。」

 

「おい、サクラ!…司令部!!!」

 

フキは司令部に連絡して指示を仰ぐ。

 

「……ALPHA-1 了解!!おい、サクラ!下で救護隊が待機してるってよ!おいっ!!」

 

そんな時、エレベーターが止まり電気が消える。いや、延空木内の電気が止まったのだろう。

確実に真島の仕業だ。

 

「ハチ……。」

 

ハチなら大丈夫。そう自分に言い聞かせる。

しかし、この時の私には胸騒ぎがしていた。

彼が彼でなくなるような……、そんな嫌な感じがしていた。

 

____

 

千束たちをエレベーターで送り出した後、俺は真島と対峙していた。

突然、電気が消えるがここは延空木の展望台。旧電波塔の時のように窓のシャッターは降りておらず、夕日が差し込んでいるため、真島の姿ははっきりと見える。

 

何が狙いだ?外との分断か?

そう思っていると真島が口を開いた。

 

「これでしばらく二人っきりだぁ。……うぜぇハッカー共も電気がなきゃ何も出来ねぇだろ。」

 

「今日はもう疲れたから帰りたいんだけど…。お前に撃たれて肋骨折れてるし。」

 

「つれねぇこと言うなよ。わざわざここまで来てやったんだ。」

 

「頼んでねぇし。それに、俺の気持ちも考えてくれない?」

 

「あ?」

 

「ここは延空木の展望台。時間は夕暮れ時。傍から見れば結構ロマンチックな状況でJKの尻を追っかけるストーカー気質のおっさんと二人っきりなんだぜ?今の俺の気持ち分かる?」

 

俺の台詞に真島は大声で笑う。

 

「ハハハハハっ!!!そいつはわりぃことをした!でも俺は、乳クセぇガキなんかに興味ねぇよ。」

 

そもそも何故、真島がここにいる?

千束とたきなが拘束したはずだ。あの二人が簡単に外せる拘束なんてするわけがない。

俺は真島に尋ねる。

 

「それで、何の用だ?もう終わっただろ?」

 

「いいや、まだ終わってねぇ。それと、俺がここに来たのはお前に用があるからだ。暗殺者(アサシン)。」

 

「俺に?」

 

真島はそう言って、ポケットからスマホを取り出す。

真島がスマホの画面に触れると画面に映っていたタイマーが動き出す。

 

「………。」

 

俺が何も言わずに真島を睨み付けると俺の意図が伝わり説明してくれた。

 

「この塔がここに建ってる残り時間だ。」

 

「……………嘘だな。」

 

今度は真島が俺を睨み付けてくる。

 

「お前がさっき言ったことが本当なら延空木に爆弾の類いが仕掛けられてるかもしれないが、直感で分かるよ。…嘘だって。なぜそんな嘘をつく?」

 

「…………驚いたな。本当に嘘を見破れるのか。ヨシさんが言ってた通りだなぁ。」

 

やはり、吉松さんから俺と千束の情報は聞かされていたか。

 

「こうでも言わないとお前は暗殺者(アサシン)として、本気で闘ってくれないと思ったんだ。」

 

「俺との決着が目的か?なら、また今度にしない?100年後とかどう?」

 

「ハハっ!それもいいなぁ!だが、……決着は今、ここでだ。」

 

「やんのか?千束とたきなに勝てなかったお前が。」

 

俺は戦闘体勢に入り真島に向けて殺気を放つ。しかし、真島は俺に襲いかかってこず手をこちらに向けながら言う。

 

「まぁ、待てよ。お前との決着をつけるのは俺がここに来た目的の1つでしかない。」

 

「まだ何かあんの?」

 

「お前の言ったとおり、俺の仕事は終わったぁ。いくら隠蔽しても人々の疑念の種は育ち、やがてDAを滅ぼす。」

 

「で?」

 

「俺がここに来たのは俺が恐怖を感じた奴らとの……、お前との決着をつけることと…………、話しをするためだ。」

 

「話しだと?」

 

「あぁ。ヨシさんから聞いてるぜぇ。お前は色んな時代の様々な世界で生きてきた。そんなお前に聞きたい。お前には………今の世界がどう見える?」

 

世界……か。

 

「……その質問に答えてやってもいいが、まずお前から答えてくれ。……お前は一体何がしたかったんだ?」

 

「世間にモザイクなしの現実を見せる。」

 

俺は真島の答えに反応せずに奴の次の言葉を待つ。

 

「俺は世界を守ってるんだぜぇ。自然な秩序を破壊するDAからなぁ。バランスを取ってるだけだ。」

 

「……つまり、DAが気に入らないんだろう?」

 

「端的に言うとそうだな。」

 

真島は笑いながらそう答える。

 

「DAが消えれば俺も消える。先に言っとくが俺は悪者やってるつもりはねぇよ。俺はいつも弱い者の味方だ。…もし、DAが劣勢なら俺は喜んでDAに協力するぜ。」

 

「…そうか。あんたのこと勘違いしてたよ。」

 

「おいおい、まさか俺が面白半分に行動してたとでも思ってたのか?」

 

「うん。」

 

「ハッ、即答かよ。失礼な奴だ!」

 

真島にも真島なりの信念があったのか。

 

信念を持つことははるかに素晴らしい。信念を何ひとつ持たないよりは…。

 

「現実は正義の味方だらけだぁ。良い人同士が殴り合う。それがこのくそったれな世界の真実だぁ。」

 

「俺はそうは思わないな。」

 

「なんだと?」

 

「………真実はなく、許されぬことなど無い。」

 

「ん?」

 

「この世界には正義()()もない。……この世界は正しくもなく、間違ってもいないことだらけの灰色の世界なんだよ。」

 

「へぇ、正義も悪もない……かぁ。リコリスの親玉より面白ぇこと言うな。続けてくれ。」

 

「一般的には法やルールを守る人が正義。破る奴が悪だと言われる。または、自分と逆の行動を取る人間を悪と見なし、自分を正義と正当化する。……あんたとDAみたいにな。」

 

真島からの発言はなかったので俺は言葉を続ける。

 

「法やルールは言ってしまえば俺たち人間が定めた約束ごとだ。そして、人間は神じゃない。時には間違えてしまう不完全な存在だ。そんな不完全な存在が定めたルールが正しいと…、正義だと思うか?だから、この世界には正義も悪もない。……もしかしたら、あいつらなら知ってるかもしれないが。」

 

「あいつら?」

 

「先駆者………、かつて来たりし者だよ。」

 

真島は顔をしかめる。

 

「……悪いな、歴史には疎いんだ。後で勉強しておくから、もうちょっと分かりやすく説明してくれねぇか?」

 

「すまないな、話しが脱線した。それと勉強しても意味ないさ。正史には語られていない部分だからな。話しを戻そう。俺が言いたいのはこの世には正義も悪もないから自分達で勝手に決めれば良いってことさ。」

「お前は自分を正義と正当化してDAを潰したい。逆にDAは自分達の正義の名の元にお前らテロリストを潰したい。」

 

俺がそう言うと、真島は手で後頭部を掻きながら尋ねてくる。

 

「正直、お前の立ち位置がよく分からねぇんだが……。DAに所属してるんじゃねぇのか?」

 

「俺はDAの協力者だよ。」

 

「協力者だぁ?なら、お前もDAと同じように自分を正義として悪である俺と対立するのか?」

 

「言っただろ。この世に正義()()もないって。俺にとってはDAもお前も正義()でも()でもない。……どっちつかずの灰色なんだよ。」

 

「ほぉ、お前にとっては俺もDAと同じってことかい。なら、DAに協力するお前も灰色か?」

 

「そう思うなら、そう思えば良いさ。」

「でも俺は……、俺たち暗殺者(アサシン)は自分達を正義()だと正当化したことはない。………いや、中にはいたのかもしれない。だからあいつら(騎士団)に寝返る奴もいた。でも少なくとも、組織が設立した当初は自分達を正義()だとは思っていなかったはずだ。………暗殺者(アサシン)たちは人々の自由を守るために…、自分達の信条(クリード)を貫くために……、人々が定めた法を破って来た。人殺しという形でな。それは人々が定めた法に触れ、世間一般には許されざる行為だ。だから暗殺者(アサシン)は表の舞台へ立つことはない。自分達は守るべき人々からしたら裁かれるべき()だから。だからこそ、最初に自分達をこう呼称した。隠れし者(・・・・)と………。暗殺者(アサシン)という存在はあいつら……、騎士団()を裁く()なんだよ。」

 

「……俺にとってはこの世界は正しくもなければ間違ってもいない灰色の世界。でも、そんな灰色の世界で白い部分を見つけようと……、白い世界を作り出そうと懸命に生きてる奴を俺は知っている。最初は綺麗事だと思った。出来るわけがないってな。…でも、そいつとずっと一緒にいる内に本当にこいつなら出来るんじゃないかと思い始めた。そいつは光みたいな奴で……、眩しくて……、自分の命が残り少ないにも関わらず、その短い命を惜しげもなく使って自分の周りの人たちを幸せにする。…………俺にとってはそいつ(千束)正義()なんだよ。でも今、そんな光を曇らそうとする灰色の存在がいる。そして、そんな灰色の存在の相手をするのは灰色でもなく、ましてや白でもない。」

 

「へぇ、じゃあ……、誰が相手してくれるんだ?」

 

真島の銃口が俺を捉えるが、俺は気にせず真島の質問に答えた。

 

「もう分かるだろ?灰色の存在を処分するのは正義()じゃない……………………。()だよ。

 

それが開戦の合図となった。

 

_____

 

フキは司令部と連絡を取り合い、これから予備電源でこのまま降下するようだ。

しかし、私はさっきから嫌な予感がしていた。

真島がハチに勝てるはずがない。そう思うが何故か不安が拭えない。

私はハチのもとへ向かおうとエレベーターの上についた救出口から脱出しようとする。

 

「千束!?何をやってる!!」

 

「ごめぇ~ん、フキ。ちょ~っちハチが心配だから私は上に戻るねぇ。」

 

「ふざけるな、私の現場だ!私の命令に従え!!」

 

「私、フキの部下じゃないしぃ~。」

 

「おい!」

 

私とフキがそんな言い合いをしているとたきなが割り込んできた。

 

「千束。」

 

「たきな………。たきなは、このままフキと一緒に下へ降りて待ってて。すぐに戻るから。」

 

たきなにそう伝えると、たきなはフキの方を振り向く。

 

「……フキさん、わたしも千束と一緒に行きます。」

 

「たきな!お前までなに言っ………、あぁ、もう!!勝手にしやがれ!!!この問題児ども!!」

 

「千束もそれでいいですよね?」

 

「でも、」

 

「わたしは千束の相棒です。そして、ハチさんはわたしを身内と言ってくれました。わたしもハチさんを助けたいんです。それに、ハチさんに千束のことを頼まれましたし。……早く終わらせましょう。3人で。」

 

「……ありがと、たきな。」

 

そう言って私たちはエレベーターから脱出し、梯子を使ってハチのもとへ向かう。

待ってて、ハチ。

 

梯子を使って上に向かう途中で大変なことに気付く。

 

「あぁ、たきな!!」

 

「なんです?!真島ですか?!」

 

「…下からパンツ覗かないでね。」

 

「………早く登ってくれませんか。蹴り飛ばしますよ。」

 

相棒からの視線が冷たい。

 

 

さぁ、そろそろクライマックスです。そんなわけでこの物語が終わりしだいネタが思い付いたら番外編のような小話も書きたいと思っています。オリ主君離反ルートも考えていますがどう考えても鬱展開というか我らが千束ちゃんを曇らせてしまいます。

  • 番外編・小話を書いてほしい。
  • 曇らせてもいいから、離反ルート。
  • 黙ってどっちも書け。コノヤロー。
  • 別に書かなくてもいい。
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