闇に生き光に奉仕する男の話   作:ダレン シャン

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恩人からの最後の贈り物の話

 

『セレモニーの悪役だった俳優の個人名は未だ明かされておらず、各芸能事務所が関係を否定しており、警察では……、』

 

『次のニュースです。全豪オープン三連覇を達成したアランチルドレン。スティーブン・ウェルズ選手が婚約を発表。』

 

「ちっ、ど~せすぐに別れるわよぉ~。」

 

ミズキはテレビを消しながらたった今放送されていたニュースに対しての文句を言う。

 

「人を呪わば穴二つだよ。ミズキちゃん。」

 

「うっせぇな!その穴を埋める男を探しとんじゃあ!!!」

 

ミズキが常連さんとそんな風に会話をしていると、上の階のクルミに声をかけられる。

 

「ミカ!友達がやっと喋ったぞ!あんみつセットB ブレンドだ!」

 

「お~う。ほら、ミズキ。」

 

「はいはぁ~い。」

 

ジンからの注文を受け目の前のカウンター席に突っ伏しているミズキに注意を促と、やる気のない返事が帰ってくる。

上の階ではクルミがジンをおちょっくっている様子が聞かれる。

 

「その二つ名自分で付けたのぉ~?……なぁなぁ、サイレントジィ~ン。」

 

そんな時に店のドアが開かれる。

ドアの方へ視線を移すとフキとサクラが来店した。

サクラから元気な声が聞こえてきたのでもう傷の具合は良いようだった。

 

「ちぃ~っす!」

 

「いらっしゃい。」

 

「こんにちは、先生。」

 

フキとサクラはカウンター席へ座り、クルミが注文を取りにくる。

 

「注文は?」

 

「あれ!スペシャルのや~つ!」

 

「はいよ~。」

 

「やっと食べれるっス~!!」

 

カウンター席の後ろの座敷に座っている常連さん達はフキとサクラの制服を見て制服を見てどうやらずっと店にいないあの子達の心配をしているようだった。

 

____

 

ボクはたった今受けた注文をミズキに伝える。

 

「千束スペシャルだ。」

 

「受けんじゃねぇ!儲からないってたきなに怒られんだぞ!」

 

「しょうがねぇだろ~!みんなあいつらが懐かしいんだ。」

 

「かっ飛ば!!!」

 

ボクがそういうとミズキは持っていた果物ナイフを壁に貼ってある写真に向けて投げる。

写真には浜辺で笑顔で走っている見慣れた男女が映っていた。

 

「~っ!……あの、バカ共。」

 

____

 

サクラが念願のパフェに夢中になっているときにフキから質問される。

 

「先生………、たきなは?」

 

「……仕事だ。」

 

たきなには私の子ども達を迎えに行って貰っていた。

 

____

 

わたしは飛行機で宮古空港に到着し、そのままタクシーを使い今回のターゲットのいる目的地まで移動する。

移動中に店長から報告された今回のターゲット達の情報を思い返す。

 

(ターゲット達は正午から19時30分まで勤務。15時の休憩時を狙え。…慎重にな。)

 

目的地周辺に着いたためわたしはタクシーを降り、地域住民に聞き込みを行いターゲット達の位置を特定する。

 

とある森林でターゲットの一人を発見する。

周囲を索敵するがもう一人のターゲットは近くにはいないようだ。

ターゲットが単独であるのは好都合。流石に2対1は条件が悪すぎる。

 

わたしは木の影に隠れながらターゲットに接近する。

まだこちらには気づいていないようだが、ふとしたときにターゲットの足が止まった。

 

気づかれたと思ったときには既に遅く店長から受け取った非殺傷弾を使うがターゲットには隠れられてしまった。

横から発砲音が聞こえ、体を仰け反らせて避けることに成功する。

その後、ターゲットと平行に走りながら撃ち合いになるがお互いの弾は当たらない。

 

このままでは埒があかないのでワイヤーを使い拘束しようと隠れていた木の影から出た瞬間、向こうも同じ事を考えていたのかお互いの利き腕と両足を拘束し合ってしまった。

 

____

 

千束に頼まれていた飲み物を両手に待ち合わせている場所に向かおうとしたときに銃声が聞こえる。

 

「あぁ、そろそろだと思ってたけど、今日来たのか。」

 

俺は舗装されていない道を走るより木の上を移動した方が速いと判断し、木の枝を足場にして銃声の聞こえた方角へ進む。

 

というか、もう喧嘩してんのか、あのふたりは?

仲良かっただろ。

 

そう思いながら移動しているとじゃれあっている彼岸花達の声が聞こえてきた。

 

「た、たきなぁ~?!」

 

「なんで、逃げるんですか?!」

 

「い、いや!撃ってくるからだろぉ!!」

 

「逃げるからっでしょ!!」

 

「一発かなり当たったよ!ってぇなぁ~!!」

 

「鈍ってるっ証拠ですよ!!」

 

「声かければいいでしょ~!」

 

「そんな訓練はしてないんで!」

 

「アホかぁ~!」

 

「アホはそっちでしょ~!!」

 

俺は木の枝に座り言い合っているふたりに声をかける。

 

「お前ら……、なんでもう喧嘩してんの?」

 

「「ハチ(さん)!!」」

 

「喧嘩するほど仲が良いとよく言うが…、再会そうそう銃撃戦とは…。脱帽ものだよ。」

 

木から降りてそう言うと千束から声がかかる。

 

「ちょっと、聞いてよハチ!たきなってばいきなり撃ってきたんだよ!!酷くない?!私、相棒だよ!?一発かすったんだよ!」

 

「当たらないくせによく言いますよ!そもそも千束が逃げなければ撃つつもりはありませんでした!!!」

 

「なにをぉ~!!」

 

「やりますか!!」

 

「はいはい!取り敢えずストップ!!ふたりとも熱くなりすぎ。少し、落ち着け。」

 

あぁ~、なんか喧嘩してる奴らを宥めると孤児院にいた頃を思い出す。

こうやって喧嘩してるみんなを宥めたことがあったっけ。

……あのときも大変だったなぁ~。

 

俺がそんな風に昔を懐かしんでいるとたきなから声がかかる。

 

「ハチさん、ひとまずこの拘束を解いて貰えませんか?」

 

「ん。」

 

そう言ってたきなを拘束しているワイヤーをリストブレードで切断すると千束から文句が飛んでくる。

 

「あっ!ハチ、普通私からでしょ!こういうときは!!」

 

「順番だ順番………っと、よし切れた。」

 

たきなのワイヤーが切れたため千束の方に向かおうとたきなに背を向けた瞬間、俺の体にワイヤーが巻き付いた。

 

「………………あれ、たきな?いや……………、たきなさん?これはいったい?」

 

「今回の私の任務はお二人の捕縛です。ハチさんをどうやって捕まえようかと直前まで考えていましたが……、油断してくれてよかったです。」

 

たきなはそう言うと近くの木に俺と千束を縛りつけスマホで写真を撮り始めた。

_____

 

「千束ちゃん達がいたぁぁぁぁ~!?!?」

 

たきなから送られてきた画像を確認し、常連さんやフキに達に伝える。

常連の皆さんはどれだけ心配したかとあのふたりにに文句を言いつつもふたりが無事であることに安堵した様子だった。

フキも千束のことを心配いていると思い、たった今たきなから送られてきた画像を見せる。

 

「直に帰ってくる。」

 

私のスマホの画面には、仏頂面の千束と呆れながら笑う史八が木に縛り付けられていた写真が映し出されていた。

______

 

「さて、たきな。ここまで来て疲れたろ。バイトしてる店に案内するからなんかご馳走するよ。」

 

俺はここまで迎えに来てくれたたきなを労うために店に案内しようとするが、たきなは何故か俺を睨んでくる。

何かしただろうか?

 

「………ハチさん。」

 

「ん?」

 

「なんで、いつの間に拘束を解いてるんですか?!わたし、そんな甘い拘束した覚えがないんですけど!?」

 

「え?いや、こう………、ちょちょいと。」

 

「………もしかして拘束されたのもわざとですか?」

 

「…悪いな。俺のは"油断"じゃなくて…、"余裕"なんだ。」

 

俺の台詞にたきなは頭を抱えてしまう。

 

「俺が言うのもなんだけどまぁ、あまり気にすんな。」

 

「……はい。」

 

たきなはあまり納得していないような返事を返すが、そんな彼女をバイトしている店に案内しようとする歩みを進めると、後ろから声がかかる。

 

「ちょっと!ふたりとも!!私のこと忘れてるでしょ!!早くこれ(拘束)解いてぇぇぇ~!」

 

____

 

千束とハチさんがバイトしているお店に案内され、千束と向かい合うようにテラス席に座る。ハチさんは向こうでこの店の店長のような男性と話しをしている。

 

わたしは海が気になり、眺めていると千束が声をかけてきた。

 

「綺麗でしょ。」

 

「…海の色が、」

 

「スゴいよねぇ。…………何故、ここが分かったん?」

 

千束がわたしにそう質問してくるとハチさんがわたしたち人数分のドリンクを持ってきて千束のとなりに座りながらドリンクをわたしたちの前に置く。

 

「それは、俺も気になってた。ここにはネットもカメラもないのにどうやって見つけた?結構、気を付けてたつもりなんだけど…。」

 

わたしは黙って、今回ふたりを見つけられたきっかけの画像を見せるためにスマホを千束に渡す。

スマホの画面には以前、依頼で護衛をした沙保里さんがSNSに上げた彼氏とのツーショット写真が映し出されていた。

 

「おっ、沙保里さん。彼氏と続いてるのねぇ。」

 

「ホントだ。微笑ましいな。でもこれがどうした?」

 

 

「「……………あ!」」

 

ふたりとも当時の武器取引のことを思い出したのだろう。

ふたりは顔を見合せ、その直後に千束は画像を背景をズームする。

 

「まさか!………ったはぁぁぁ。沙保里さんその内、宇宙人とか撮っちゃいそうだな。」

 

「これ、俺が千束に水ぶっかけられて追いかけてた時のやつだよな。……撮られてたとは……、気付かなかった。」

 

「そんなことよりも………、なんで消えたんですか?千束だけならいざ知らずハチさんまで。」

 

わたしはふたりが姿を消した理由を問い詰める。

 

「だぁってぇ、ハチが私と旅行に行きたいって言うから~。」

 

「おい、呼吸をするように嘘をつくな。」

 

「えへへへ。」

 

夫婦漫才なら他でやって貰えないだろうか?

それにしてもなんだろう?先ほどから違和感を感じる。

いつものふたりとなにか違う。少し会っていなかったからそう感じるだけなんだろうか?ふたりの距離が以前よりも近いような?

そう思っているとハチさんが口を開いた。

 

「ちゃんとメモは千束の病室に残しておいただろ?」

 

「"ちょっと、旅行に行ってきます。"と一言残されただけで納得できると思いますか?」

 

「時間がなかったんだ。悪いとは思ってる。……すまん。」

 

ハチさんから謝罪の言葉が出てくるが、今度は海の方を向きながら声をあげる。

 

「あっ、見て!」

 

千束の声でわたしとハチさんも海を見る。

丁度、夕日が水平線に沈んでいた。

 

「この時間が一番好きぃ。」

 

三人でしばらく海を眺めているとハチさんがわたしに尋ねてくる。

 

「ずっと気になってたんだけどさぁ……、それなに?」

 

ハチさんはわたしの足元に置いてあるアタッシュケースを指さす。

わたしはアタッシュケースをハチさんに渡す。

 

「ハチさんにです。」

 

「俺に?」

 

「ふたりが姿を消してから一週間ぐらいでしょうか?店に宅急便で届いたんですよ。ミズキさんが勝手に段ボールを開けたらコレが入っていました。………安心してください。爆発物がないことは確認済みです。」

 

「お、おう……、流石だな。たきな。」

 

「なになに?通販でなんか買ったの?」

 

「ん~?いや、こんな仰々しいアタッシュケースに入るような物、買った覚えはないと思うけど……、なにが入ってるんだ?」

 

「いえ、ハチさん宛に届いた物なので中身までは……。」

 

「段ボールは勝手に開けといて?」

 

「それは、ミズキさんに言ってください。」

 

そんな会話をしてから、ハチさんはアタッシュケースをゆっくりと開ける。

 

「………これは。」

 

ケースの中身を確認した瞬間、ハチさんの目が見開かれた。

どうやらケースの中身は所々に赤色が入った黒を基調とするフード付きのコートのようだった。

 

「おぉ~、黒のコートだぁ!すっごぉい!カッコいいね!誰から届いたの?」

 

「いえ、それが送り主は不明で……、」

 

「いや、大体の予想はつく。いや違うな。あの人しかいない。」

 

「「?」」

 

「すまない、ふたりとも。……一人にしてくれ。」

 

「ハチ、大丈夫?」

 

「あぁ、大丈夫だ。ただ少し……時間をくれ。」

 

「………わかった。たきな、行こう。」

 

「え、えぇ。」

 

どうやらハチさんにはあのコートの送り主が分かったようだったが急に神妙な雰囲気になってしまったため何故か少し罪悪感を覚えながら千束と共に浜辺へ向かう。

 

____

 

「ん、ん~。」

 

千束と史八の晴れ着を地下の倉庫に片付けているときにクルミが声をかけてきた。

 

「なんだぁ、それ?」

 

「なぁに、早とちりして開けたもんだ。」

 

史八の晴れ着は開けるのが遅くなってしまったが。

 

私は脚立から降りて杖を使いながら一階への階段に向かう。

 

「杖、まだ使うのかぁ?」

 

「………………………黙ってろよ。」

 

クルミとのすれ違いざまに一応、釘を刺しておく。

 

「………あぁ、お前が一番怖ぇからなぁ。」

 

「よっこらしょ。」

 

私は杖をつきながら一階へ登り、喫茶店の仕事へと戻る。

 

____

 

俺はケースの中に入っていた黒のコートをテラス席のテーブルの上に広げる。

その時、ケースの中に一枚の二つ折りになったメッセージカードがあることに気付いた。

俺はメッセージカードを開いて読む。

 

〝おめでとう。これは、私から君への最後のプレゼントだ。私は君のこれからの活躍と数ある幸せを心より願っている。〟

 

「シンさん……。」

 

結局、あの人とは最後まで分かり合えなかったな……。

 

俺がこの黒いコートに袖を通すことはないだろう。

だが、自分への戒めとしてこのコートはありがたく受け取っておくことにした。

 

_____

 

千束と一緒に浜辺で海を見ていると、彼女の首から下げられていたものが別のものに変わっていることに気づいた。

 

「どうしたんですか、それ?」

 

「あぁ、これ?いいでしょ~!ハチとお揃いなんだ!」

 

「前のやつはどうしたんですか?」

 

「あぁ~、ごめんねぇ。……捨てちゃった。」

 

「何故わたしに謝るんです?」

 

「めっちゃ可愛いまで言われてたしぃ。」

 

「………誰にです?」

 

「え?」

 

「ハチさんにですか?」

 

「えぇっ!!!お前だ、お前!」

 

千束に指を指され指摘されるが、そんなわたしが千束にめっちゃ可愛いなんて言った記憶はない。

千束の記憶違いだろう。

 

「わたし?言わないですよ、恥ずかしい。」

 

「たきなぁ、そういうトコだぞぉ~!ハチは言ったこと覚えてるのにぃ~!!」

 

そう言って千束はいつかのようにわたしを抱き上げる。

 

「知らないですよ~!言ったのは多分、ハチさんですよ!」

 

「ハチはいつも言ってくれるもん!それに、たきなも言いましたぁ!!!」

 

千束はわたしを抱き抱えたままぐるぐると回ろうとするが浜辺で足場が悪かったのか、わたしが暴れてしまったのかは分からないが千束はバランスを崩し、倒れてしまいふたりしてずぶ濡れになってしまった。

 

千束に文句を言おうとした瞬間、後ろから声がかけられる。

 

「…いくら暖かいと言ってもそのままだと風邪引くぞ、ふたりとも。」

 

そこにはアタッシュケースを持ったハチさんが立っていた。

 

「たきな、悪いんだが今日はこっちで一泊して貰えないか?バイト先の店長に最後の挨拶もしたいし。」

 

「そうだね!あっ!先生達のお土産も買わなきゃ!どんなやつがいいかな?」

 

「ミズキさんには泡盛でいいんじゃね?」

 

「はいそれは決定!」

 

「常連の皆さんもお二人のことをかなり心配しているので常連さんの分もお願いしますね。」

 

「マジか~。それは悪いことしたなぁ~。…となるとかなり大荷物になりそうだから明日、空港で揃えればいいか。」

 

「それで、これからはどうするんですか?」

 

わたしの質問に千束とハチさんは一度だけ顔を見合せてから、千束が口を開く。

 

「ふっふっふ~、実はもう決めてあるんだなぁ~。ほらぁ、行くぞぉぉ~!」

 

「行くってどこにです?!」

 

「ワイハだ、ワイハぁぁぁ~!!!」

 

千束はそう言って走っていってしまった。

相変わらずわたしの相棒はマイペースのようだ。

そう思っているとハチさんから声がかかる。

 

「これからも、千束のことよろしく頼むな。」

 

「仕方ないですね。……相棒ですから。でも、ハチさんの手も貸してくださいよ?」

 

わたしたちは肩を竦めながら千束のあとを歩いて追いかけた。

 

 

 





吉松さんからのプレゼントはシェイの衣装にしました。

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