本日の喫茶リコリコの営業も無事終了。
しかし、わたしたちは千束に大事な話しがあると呼び出され、ちゃぶ台を囲んで座っている。わたしたちと言っても女性メンバーだけが集められたようであり、店長とハチさんはすでに千束が帰らせてしまった。
最後にわたしたちを呼び出した張本人の千束が席に着いたため尋ねることにした。
「千束、それで大事な話というのは……?」
「うん、たきな。それはね………………。」
千束はいつものおちゃらけた雰囲気とはうってかわって真剣な表情だ。こんな千束は見たことがない。これから話す話しは相当大事なものみたいだ。そんな千束の雰囲気が伝わったのかクルミとミズキさんも真剣な表情になる。
私はごくりと唾を飲み込み千束の次の言葉を待った。
「これより、第238回喫茶リコリコGirl's talk会を開っ催しやす!!!」
千束は場を盛り上げるためにフゥ~とか言ってるが今はそんなことはどうでもいい。さっきまでのシリアスな雰囲気はどうした。返してほしい、わたしのシリアスな感情を。
忘れていた。私の相棒はこんな
どんな大事な話しかと思って身構えてしまった自分が恥ずかしいことこの上ない。
「千束…。」
「なぁに、たきなぁ。たきなは何を話してくれ、」
「ちょっと強めに小突いてもいいですか?」
「………小突く?」
「ぶん殴ってもいいですか?」
「いや、なんか強くなってない?!絶対、強くなってんじゃろ?!」
「
「ボクはそんな暇じゃないんだ。」
そう言って帰ろうと席を立つミズキさんとクルミを千束が止める。
「ちょ~ちょちょちょっ!まぁ、待ちなさいって!どぉせミズキは帰ってお酒飲む位しかないし、クルミだってパソコン、カタカタするだけでしょ~。」
「そんなことないわ!!!」
「まぁ、千束の言うとおりだが……。」
ミズキさんは否定するが、きっと晩酌するしかないんだろうなと私が思ったときに千束が口を開く。
「ほら、私たちって今までこういう類いの話しとかってしたことないじゃん!?だから、してみようかな~って。」
「千束、今までしていないなら何故238回なのでしょうか?」
「分からないのか、たきな?」
クルミにそう聞かれてしばらく考えるが思い付かない。
「ミズキさんは分かります?」
「けっ!」
ミズキさんは分かっているのか分からない反応を示した。
「まぁまぁ、そんな細かいことどうでもいいでしょ~。早速、始めまっしょう!」
「始めると言っても、何を話すんです?」
「え?そりゃあ………ガールズトークって言うぐらいだから先生やハチに聞かれちゃいけないような話しを……。」
「………それは、今までに何人殺したとか、そんな話しですか?」
「ちゃうわ!!!cuteでcharmingなガールズトークにそんな血生臭い話しを持ってくるな!それに私は殺したことないわ!」
「そうですよね。では、一体どんな話しを?」
「ほらぁ、あれだよ。化粧水とかシャンプーはなに使ってる~?とか恋バナとかさ、そう言う感じのやつぅ。」
「恋バナ?……恋愛面の話し…ですか?」
「そう!それだよ、たきな!」
「と言っても、わたしたちはリコリスですし、そんな色恋沙汰なんて……。」
「いやいや、たきなさぁ~ん。恋したことなくても好きなタイプの男ぐらいいるでしょ~。テレビに出てくるイケメン俳優とか~アイドルとかさぁ。」
千束にそう言われるが今まで考えたこともなかった。
そもそもわたしはテレビはニュース位しか見ない
わたしが答えあぐねていると千束は標的をわたしからクルミに変更した。
「じゃあ、クルミはどんな男の人がタイプ?」
「ボクかぁ?そうだなぁ………ん~、」
クルミは腕を組んで考えてから答える。
「バカな奴…と、プライドだけが高い奴は嫌だなぁ。」
「アッハッハ!天才ハッカーのクルミに比べたら世の男性はほとんどおバカさんになっちゃうよ!」
「ですね。」
「ほぉ~、あんたにもそう言う感情があったんだぁ。なんか安心したわぁ。」
「なんだと、ミズキ。」
「因みに、クルミちゃんはぁ~今まで付き合ってた男の人っているのかなぁ~?」
千束が話しの流れにのってそんな質問を猫なで声でする。
もし、答えてくれたらわたしがずっと気になっていたクルミの年齢も答えてくれるかもしれない。
「秘密だ。」
………まぁ、そうですよね。
予想通りの答えが帰って来て逆に安心しました。
「ちぇ~、なんだよ~。減るもんじゃないだろ~。……まぁ、いいや、じゃ次はミズキね。」
「あたしぃ~?」
「やっぱり高身長、高収入、高学歴の人がいいの?」
「そうねぇ、そこが最低ラインね。」
「ていうかさ、前に婚活サイトで知り合ったっていうバンクーバーのイケメンとはどうなったのよ?あの筋肉ムキムキの人。」
千束のそんなさりげない質問でミズキさんから少しばかりの殺気が漏れる。
「他のメスとくっついたわ!!!あいつSNSにイチャコラした画像載っけやがってぇ!あたしへの当て付けか!!こいつもテロリストの取引現場を偶然撮って命狙われればいいのよ!いや、むしろあたしがぶっ殺してやる!」
「そのバンクーバーのイケメンもとんだとばっちりだな。」
「だよねぇ。」
クルミの言葉に千束が苦笑いで答えてからわたしは気になったことを尋ねた。
「でも、ミズキさんって見た目もスタイルも良いんですから少し位妥協すればすんなり相手が見つかると思うんですけど…。」
「あたしみたいな良い女が妥協なんてするわけないじゃない!そもそもなんであたしが妥協しなきゃいけないのよ!?」
「ミズキ、そんなんだからだぞぉ。」
「なっんだと!」
「まぁ、ミズキはお天道様が高い内からお酒飲むし、そこもマイナスになるよねぇ。」
ミズキさんがクルミの頬を引っ張るが、千束はクルミに助け船を出すことなく、わたしに話しかけてくる。
「はい!じゃあ、次はたきなだよ!」
「すいません、先程から考えてはいるのですがあまり思い浮かばず……。」
「う~ん、そうだなぁ………。じゃあ、彼氏にするなら年上?それとも年下?」
「う、う~ん………。そうですねぇ、そんなこだわりはないので、どちらでも……。でも、あまり歳が離れているのは嫌かもしれないです。」
「ほぅほぅ、なるへそなるへそぉ~。じゃあ、次はどんな性格の人が良い?」
「性格?」
「そ、性格。何かないの?優しい人~、面白い人~とかさ。」
「そうですね、優しい人………頼りになる人が良いです。後は………、」
わたしは自分の相棒を見る。
「ん、どした?」
「……常識を持ってる人ですかねぇ。」
「おい!なんで私の方を見ながら言った?!まるで私が非常識人みたいになるじゃろがい!!」
「違うんですか?」
「ちゃうわ!!千束さん嘗めんな!」
わたしがそんなことを千束と喋っているとクルミが口を開く。
「優しい……頼りになる…常識人……なぁ、たきな?」
「なんですか、クルミ?」
「それって史八のことじゃないか?」
クルミにそう言われて初めて気がつく。
確かにそうだ。わたしが今言ったポイントにハチさんが当てはまる。でも、気にしたこともなかったし、そういうつもりで言ったわけではない。
そう思っていると千束が力強くわたしの両肩を掴んで激しく揺すってくる。
「だ、駄目だよ!たきな!!いくら大事な私の相棒でもハチは私んだから!!!」
「お、落ち着いてください、千束。そういうつもりで言ったわけではないですし、ハチさんにそんな感情は抱いていません。」
「あっ、そうなの?……よかったぁ~。初めてたきなとのケンカが勃発するトコだったわぁ~。」
わたしは千束を落ち着けるように言い、それに納得した千束はわたしの肩から手を離し自分が座っていた位置へと戻り、次はミズキさんが口を開く。
「というかさぁ、あの小僧は言うほど良い男か?」
「は?」
ミズキさんの言葉に、反応した千束は壊れたブリキの人形のような動きでミズキさんがいる方を向き彼女を睨み付ける。
それに怖じけつつもミズキさんは再び口を開く。
「い、いや、顔が良いのは分かるよ。贔屓目なしにイケメンなのは理解できるし、家事もできる。でも、そこまで入れ込むような男?」
「はい、ミズキが言っちゃいけないこと言った~!!人が好きな男によくもまぁそんなこと……、そこに直れ!!不調法者!!!第一彼氏もいないミズキにそんなこと言われる覚えはありませぇ~ん!あっ!男を見る目がないのかぁ~。だから、彼氏が出来ないんだねぇ。」
「ぐっ………、は、はん!ど~せあんたらなんかお互いに奥手すぎて、いざって時にチキンになってんだろ?!」
「はぁ~!?イチャイチャできますけど!!好きな人と思う存分イチャイチャしますけど!?ハグとかいっぱいして貰いますけど!?お、お風呂にだってこれから一緒に入っちゃいますけど!///あっ……、そうだった……。ごめんねぇ!?ミズキにはそう言う相手も居ないんだったねぇ!?そんなミズキに私ってばなんて惨い……、あっ別にマウントを取ってるわけじゃないんだよ?!そもそもミズキは…、」
「その辺にしといてやれ、千束。」
「クルミ。」
ヒートアップした千束をクルミが止める。
「見てみろ。ミズキのライフはもうゼロだ。これ以上はオーバーキルになる。いや、もうすでになってる。」
「ミズキさんの傷口に塩ではなくキャロライナ・リーパーを塗りたくりましたね。」
「そこまで酷かった!?」
「はい。」
ミズキさんは千束の猛攻に堪えきれなかったのかどこからか取り出したお酒を涙を流しながら飲んでいる。
そんなミズキさんを無視してクルミがニヤニヤしながら千束に質問した。
「まぁ、千束が史八のやつにお熱なのは分かっているが一体奴のどこに惚れたんだぁ?」
「え、えぇ?!そ、そうだなぁ?…………全部?」
「抽象的すぎる。もっと具体的に。」
「そりゃ~……、優しいところとか、好きとか恥ずかしい台詞を平気で言うし、ずっと私のことを想っててくれるし……。」
千束は顔を少しだけ紅らめもじもじしながら答える。
なんだろう、ちょっと可愛いと思ってしまったことが悔しい。
「あ!後、ハチってめっちゃ気が利くの!女の子の日に辛そうにしてるとブランケットとかココアとか持ってきてくれるの!」
「あれ?千束、コーヒー好きじゃなかったでしたっけ?」
「あぁ、女の子の日にねカフェインってあまり良くないみたいで、ココアのほうが良いらしいの。食物繊維もあるらしいし。」
「そういえば、わたしも前に店の空調が効きすぎて寒いなって思ってたときに、ハチさんが一言わたしに言ってくれれて店の空調を調節してくれたことがありました。」
「でしょ~!流石、私の友達以上且つ恋人よりも遥か上の人!!」
「それって夫しかないのでは?」
「お、夫って///ま、まだ早いよぉ~///もうたきなってば!気が早いんだからぁ!」
なんだろう。少しイラッとしてきた。
「千束。」
「なぁに、たきなぁ?」
「やっぱりぶん殴って良いですか?」
「なんで?!」
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「クシュン!」
帰り道、ボスと共に歩いていると急に鼻がムズムズし始めくしゃみをする。
「風邪か?」
「ですかね?おかしいな、バカは風邪ひかない筈なんですけど…。」
「ハハハ、ならバカではないということだ。良かったじゃないか。誰かがお前の噂でもしているんだろう。」
「俺のですか?誰がするんですか、俺の噂なんて。」
「さぁ?」
その後、ボスと別れてからもしばらくくしゃみは止まらなかった。