闇に生き光に奉仕する男の話   作:ダレン シャン

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口は災いの元な話

 

今日も喫茶リコリコは営業中。

しかし、千束とたきなはリコリスの仕事をしているため店には居ない。

もうそろそろ帰ってくるだろうと思ったときに店のドアが勢いよく開けられる。

 

「はぁ〜い!みんなの千束が戻りましたぁ〜!」

 

「ただいま戻りました。」

 

対象的な挨拶をする看板娘たち。

今日も無事に仕事を終わらせてきたようだ。

そんな二人を見ると俺はあることに気づく。

 

「おい千束、それどうした?。」

 

「それ?」

 

「肩のとこ。」

 

「ん〜?」

 

俺が千束の肩の方を指差すと千束は自分の肩に視線を落とす。

俺の指摘で1stリコリスの制服の肩の部分が少しほつれていることに気づく。

 

「あ〜、さっき行方不明のヌコちゃん捕まえたときに茂みに入ったからその時に引っかけちゃったのかも。」

 

「新しいやつを用意してもらったえば?」

 

「えぇ~、いいよいいよこれくらい。まだ別のやつもあるしぃ。」

 

千束がそう言うとたきなが口を開いた。

 

「駄目です。」

 

「うぇ?」

 

「駄目です。リコリスの制服は普通の制服と違うんですよ。千束も1stリコリスなら知ってるかもしれませんが敢えて言わせてもらいます。この制服は防弾仕様なんです。言ってしまえばコレはわたしたちリコリスを守ってくれる防具なんです。その防具のメンテナンスを怠るとどうなると思いますか?確かに千束には銃弾を避ける驚異の動体視力がありますが絶対に避けられるという保証は何処にもありません。これからハチさんのような手練と遭遇するかもしれませんし、真島の様に策を弄してくる相手がいるかもしれません。そんな連中と中途半端な装備で勝てると本気で思いますか?思いませんよね!そもそも千束は1stリコリスとしての自覚が足りません!仮にも1stなんですからフキさんのような2ndや3rdのリコリスを牽引していく存在でないと困ります。この際だから言わせてもらいますが、私生活から千束はだらしないんですから。そもそも…、」

 

………すっげ、一発でたきなのエンジンがかかった。

千束に対して鬱憤でも溜まっていたのだろうか。

……まだ続いている。もうそろそろ止めてやれよ、たきな。

あの千束がシュンってなっちゃってるじゃん。

 

縮こまった千束が不憫に思ったためフォローを入れる。

 

「た、たきな。その辺で勘弁してやってくれ。千束もたぶん分かってると思、」

 

「ハチさんもハチさんです!」

 

「俺も?!」

 

あれ、おかしいな。矛先が俺のほうに向けられてない?

さっきまで千束がターゲットだったじゃん!なんで急に狙いを変えんの?!

 

「ハチさんが千束を甘やかすから千束の傍若無人さが助長するんです!大体、おふたりが付き合いだしてからそれが顕著になった気がします!仲がいいのは大変喜ばしいことですがこれとそれとは話しが別です!」

 

あれ、おかしいな?

なんかいつの間にか座敷に千束と一緒に正座してたきなの説教を受けてんだけど?

そもそもなんで今日のたきなはこんなにあたりが強いの?

 

俺は正座をしたきなの説教を右から左に受け流しながら小声で隣に正座している千束に話しかける。

 

「おい、千束。お前絶対たきなを怒らせるようなことしただろ!」

 

「ちょっと待ってよ!私がクロだって決めつけるの止めてよ!」

 

「たきなを怒らせるのなんてお前ぐらいだろうが!ほら、思い出せ!何やったんだ?!そして速く謝れ!」

 

「ちょっとだから……、いや待って。あれかな?いやそれともあっち?……あぁ!もしかしてあれかもしれ……………、コホンとにかく私じゃないよ。」

 

「いや無理だよ。誤魔化しきれてねぇよ!お前マジで何やった?!そんなんでよく自分はクロじゃないって言えたな?!」

 

千束とそんな会話をしていると説教中のたきなの怒鳴り声が響く。

 

「おふたりとも、ちゃんと聞いてるんですか!!」

 

「「はい!聞いてます!!!」」

 

たきなのあまりの気迫に千束と声を揃えて返事をする。

自然と背筋も伸びてしまっていた。

 

「大体、おふたりは……………、」

 

あぁ、これ終わんねぇやつだ…。

 

俺と千束は諦めて素直にたきなからの有難い言葉を頂いた。

 

____

 

「んぁ~?」

 

たきなの怒鳴り声で業務中なのに眠ってしまっていたミズキが起きる。起きた直後だと言うのに一升瓶からお猪口に酒を注ぐ。

 

「まだ呑む気なのかミズキ?」

 

「ケケケ、いいじゃない。アタシの勝手でしょ~。なんだか旨そうな肴もあるしぃ~。」

 

どうやらミズキはたきなの説教を受けている千束と史八を酒の肴にするようだった。

しかし、いくらお客が居ないからといってこのままというわけにはいかず各々に声をかける。

 

「ほら、ミズキ。まだ業務中だ。酒は仕事が終わってからにしてくれ。」

 

「えぇ~。」

 

「えぇ~じゃない。ほら、千束とたきなも店の服に着替えてきなさい。千束の制服は私から楠木に連絡して新しいものを用意させておく。今着ているやつは座敷にでも置いてくれればいい。史八、お前は厨房に入ってくれ。そろそろお客が来る頃だぞ。」

 

「はぁ~い、先生~!」

 

千束はそう言い更衣室へと走っていく。

たきなはそんな千束を追う。

 

「ちょっ!千束!まだ話しは終わってません!」

 

今日も変わらず喫茶リコリコは営業中である。

 

____

 

翌日

 

「おっは…、およ?」

 

店のドアを開けると誰も居なかった。ドアの鍵は開いていたし、店の電気もついているから、オッサンか史八あたりが既に来ていて着替え中といったところだろうか。確かにいつもより早く来てしまった。

 

店に入り、アタシも店の服に着替えようと更衣室のほうに向かおうとするといつもなら座敷にないものがあることに気付く。

 

「千束の服じゃん、なんでこんなところに?」

 

千束な服といっても店の着物ではない。リコリスの制服だ。

………そういえば昨日オッサンがなんか言っていた気がする。

 

ふむ……。

 

アタシはおもむろに千束の制服を手に取る。

 

JKの制服……。

着る機会がなかったから憧れがないと言えば嘘になるが、この歳になってJKの制服と言うのも……………、まぁ誰も見てないし、パッと着てパッと着替えればいいでしょ!

オッサンか史八が居るかもしれないけどめんどくさいしここで着替えちゃお!

 

千束の制服に袖を通して、窓ガラスに自分を見る。

 

「………おぉ~、あれぇ?思ったよりイケるじゃない?ちょ〜っち胸のあたりがキツイけど、…………中原ミズキ☆ピッチピチのJKでぇ〜っ…」

 

「あれ?ミズキさん珍しいですね。もう来たんで……、」

 

_____

 

【急募】着替えが終わり更衣室から出たらアラサーの身内がJKの制服を着てポージングしていた場面に遭遇した時の反応について。

 

………どうしよう。何これ?どんな状況?!なんか着替えを終えて座敷のほうに来たらミズキさんが千束の制服を着ながら『きゃぴっ☆』という擬音が出るようなポージングをしていた。

つーかなんでミズキさんが千束の制服を着てんの?!歳考えろよ!

いや、もうその事はいい!こういう時どんな言葉をかけるのが正解なんだ?!教えて神様!…あっ、神様なんていねぇや。教えて先駆者たち!……いや、流石の先駆者もこの場面の答えはもってねぇよ…。いや待てよ。こういう時こそ平常心であるべきだ。いつも通り。そう、いつも通り声をかければいいんだ!

 

なにしてるんですか?ミズキさん。

 

「キッッッッツ…。」

 

俺はこの時、自分の無力さを後悔した。

いつも通り話しかけようとしたがあまりの動揺に本音と建前が逆になってしまったことを……。

そうして、この時の俺が最後に見た光景はミズキさんの有らん限りの力が籠められた拳だった。

 

_____

 

「おっはよぉ~!千束が来ましたぁ!………ちょっとハチぃ、一緒に住んでるんだから起こしてくれてもよくない?おかげで遅刻………うわぁぁぁ!!!どうしたのその顔!!」

 

朝の挨拶のあと、起こしてくれなかったハチに軽く文句を言おうとしたらハチの顔がギャグマンガのように中心から渦を巻くようになっていた。

 

「気にするな……。」

 

「いや、気にするなって……。というかそういうのって自然に戻るもんじゃないの?ってかホントにどうしたのそれ?」

 

「……朝から理不尽な暴力にあっただけだ。」

 

「?」

 

 

 

 

 

 





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