「う~ん……。」
店にある休憩室のちゃぶ台でノートパソコンを使い唸りながらデータ入力を行う。
やっぱ最近、売り上げが右肩下がりになってるなぁ。前はたきなのうんk………ホットチョコパフェがバカ売れしたからどうにかなったけど…、またなにか対策を考えなきゃいかんか?
そんなことを考えていると千束とたきなそれにクルミが部屋に入ってきた。3人はたきなが自動販売機を今まで使ったことがないと言うので千束が使い方を教えるためにたきなに同行し、クルミはおもしろそうだからという理由で付いていったが、帰ってきたようだ。
「ねぇ~、ハチ聞いて!たきなってば当たり付きの自販機のデジタル音を爆弾のカウントダウンと勘違いして自販機の前で防御したんだよ!面白くない?!」
「千束っ!恥ずかしいから言わないで下さいって言いましたよねっ?!なんでそんな舌の根も乾かぬうちに言っちゃうんですか!」
「あっれぇ~、そうだったっけぇ~?」
「口に潤滑油でも塗ってあるんじゃないかぁ?」
3人はそんなことを言いながら部屋に入ってくる。
俺がまだ、仕事をしていることに気がつくとクルミがニヤニヤしながら話しかけてきた。
「おっ、今日もよく働いてるじゃないか。その調子できりきり頼むぞぉ~。」
「…お前も居候なら少しくらい手伝ってくれてもバチは当たらないと思うんだが…。データ入力なら得意分野だろ?」
「それはそうだが……、それはミカがお前に任せた仕事だろ?任された以上、責任を持ってするのが社会人ってもんじゃないのかぁ?」
「はいはい、そ~ですね。」
俺がそう返答すると、クルミは俺の向かい側に座る。
どうしたのだろうか?いつもなら直ぐに押し入れに戻るのに。
「どうした?秘密基地に戻らないのか?」
「史八、ちょっとボクのことバカにしてるだろ。」
「まさか。」
そう言ってデータの入力作業に戻ろうとする。
「いい機会だ。前から聞きたかったことを聞こうと思ってな。」
「
画面を見ながらクルミに尋ねると今度は千束が俺の膝を枕に横になる。
「おい、千束。」
「もうすぐお店も終わるから良いでしょ~?そ・れ・にぃ~昨日はハチがなかなか寝かせてくれなかったじゃ~ん。だから今、とっても眠いの~。」
「ほう?」
クルミがオモシロイ話題を見つけたような声をだす。
「おい、誤解を生むような発言をするんじゃない。」
そんなクルミに弁明するように事情を説明しようとするとたきなが話しかけてきた。
「おふたりで昨日、何かしてたんですか?訓練ですか?」
「「「たきな、そのままのお前でいてくれ。」」」
「……?、はい。」
たきなの純粋な心から自分達の心がどれだけ汚れているのか自覚した。
その後、千束の発言による誤解を訂正する。
「そもそも、仕事終わりに映画を5作品も観ようとしたのはお前だろ千束。眠くなって当たり前だ。」
「えぇ~、良いじゃん!面白かったでしょ~。」
「………お前が先に寝堕ちて、ベッドまで移動させたの俺なんだけど?」
「………。」
「…しかも今朝、お前を起こしたのも俺だし。朝食は…まぁいいとして、俺が居なかったら今日完全に遅刻してたからな。」
「………zzz」
「こいつっ……。」
「甘やかしすぎですよ、ハチさん。」
「……自覚はしてる。」
「ボクが聞きたかったのはそこだよ。」
「ん?…あぁ、なんか聞きたいことがあるんだっけ?」
「あぁ、千束には前に聞いたんだが。」
「?」
「お前は、千束のどこに惚れたんだ?」
千束に惚れた理由?
説明するには昔話を踏まえて説明しなければいけないので少し面倒だと感じていると、ふと千束の顔に目がいく。どうやらさっきまでは狸寝入りしていたが、本当に眠ってしまったようだ。
そんな千束の頭を撫でながら昔を懐かしみつつ言葉にする。
「どうせクルミのことだから俺が昔、DAにいたことは知ってるんだろ。」
「あぁ。」
「その頃、アニムスの副作用の流入現象で色々と精神的に参っててな。自暴自棄になってたんだ。」
「アニムス?流入現象?副作用ってハチさん、病気だったんですか?」
聞き慣れない単語を耳にしたためかたきなが尋ねてきたが説明すると長くなってしまうため割愛させて貰う。
「まぁ、そのことは一旦こっちに置いといて…。」
「ボクも詳しくは知らないから教えてくれてもいいんだぞ。」
「やだよ、めんどくさい。……まぁ早い話しが当時、色々と腐ってた俺を救ってくれたのが千束なんだよ。」
「その時から、千束のことを好意的に思ってたんですか?」
改めてそう聞かれると悩んでしまう。
「……そうなのかなぁ?」
「違うのか?」
「う~ん、千束のことを幸せにしようと思ったのがその時だけど……、好きかどうかって聞かれると…。」
「そんなこと思ってたのに好きじゃなかったのか?」
「ん~、そうかもなぁ。気付いたら好きになってた感じ?」
「なんで疑問系なんですか?」
「ガキの頃からずっといるからなぁ。いつ千束のことを好きになったのか自分でももう分からん。」
「そんなものですか。…今更ですがハチさんは本当に千束でいいんですか?この人しょうもない嘘つきますよ?」
「確かにあの嘘は酷かったな。自販機でおでんを買おうとしたたきなに鍋って。」
自販機のおでんに鍋?どういうことだ?
そんなことを思っているとたきながクルミを睨み付ける。
「クルミ。貴方も知っていた上で黙っていたのなら同罪です。」
「分かった、黙ってればいいんだろ。」
「話しの内容が一切見えてこないんだが………、まぁ、いいじゃないか。…しょうもない嘘しかつけないバカ正直なところがこいつの長所だ。」
俺は膝の上で眠りについている千束の頭を撫でながら答える。
「……まぁ、それもそうですね。嘘が得意で人を騙すことをなんとも思わない。そんな千束は千束じゃありませんから。というかそんな嫌な千束は想像できません。」
「嫌な奴でもいいじゃないか。嘘が上手いのは頭が良いからだ。人を騙して心が痛まないのは、そうしてでも遂げたい目標や目的があるからだ。………俺は良い奴の千束が好きなんじゃない。千束の個性である『良い奴』が好きなんだ。だから、こいつの悪いところもそれが千束の個性なら受け入れられる気がする。…まぁ、何て言うか………、たとえ千束がどんな悪人でも、きっと俺はこいつのことが好きなんだと………そう思う。」
俺の膝の上に頭を乗せながら眠っている千束の頭を撫でながらそう答えるとたきなとクルミは黙ってしまう。
なにか変なことでも言ってしまったのだろうか?
______
ミ、ミスったぁぁぁぁぁ~!!!
完っ全に起きるタイミング見逃したぁぁぁぁ!
どどどど、どうしよう、確かにハチの膝枕が思った以上に快適すぎて一瞬だけ意識がなくなってたけど、たきなたちが面白そうな会話をしてるから寝たふりして盗み聞きしてやるかぁって安直な考えをしてたらいつの間にかとんでもない会話になってたぁ!
というか、こういう話って普通本人が居ないところでするんじゃないの?!いくらご本人が寝てるからって普通する?!しないよね?!えっ、しないよね……。
っていうか、クルミもクルミだけどハチも何答えてるんだよぉ…。
いや、嬉しいけど、嬉しいけど!ハチの心が少し覗けたようでGood jobクルミ!って正直思ったけども!なぁんで私の彼氏はこんな恥ずかしいセリフを恥ずかしげもなくスラスラ言うの?羞恥心どこ行った?記憶と一緒にどっかにやっちまったのか?おっ?
まぁ、知ってましたけどね。ハチが恥ずかしいセリフを言うのは今に始まったことじゃないですから…。
「ハチさん……、よくもまぁそんな恥ずかしいセリフをスラスラ言えますね。こっちが恥ずかしくなってきました。」
そうっ!流石、相棒っ!!!これぞまさに以心伝心!私の気持ちを代弁してくれるたきな、ホント好きぃ~。
よぉし、たきな!その調子でこの空気を変えてくれ!そして私が起きるタイミングを作ってくれ!!
たきななら出来るって信じてるっ!
「そうか?そこまで恥ずかしくないだろ。俺の気持ちを言っただけだし。」
「普通、そういう気持ちは隠すようなものなんですよ。まぁ、ハチさんがそれで良いなら良いですけど……。そろそろ私は向こうで店長の閉店作業を手伝ってきますね。では。」
「あぁ、頼む。」
「頑張れよぉ~。」
そう言ってたきなは休憩室から出ていきそれをハチとクルミが見送る。
…………ちょっと待って?!
なんでたきな出てっちゃうの?!コレじゃあ私、いつ起きれば良いか分かんないじゃん?!?!まだ、ミズキだっているし先生とミズキに任せればいいじゃんっ!いや、ちょっと待てよ。どうせミズキはお酒飲んでて戦力にならない。ということは先生ひとりじゃ閉店作業もままならない。つまり、何時までたっても閉店できない!そしてこの状況を作り出した諸悪の根元は真っ昼間っからお酒を飲んでいたミズキということになるっ!………くっそ~ミズキめっ!
「で?コレでお前の疑問には答えられたか、クルミ?」
「あぁ、充分だ。想像以上に面白い話しが聞けた。千束に聞いたときはお前が優しいところ~とか抽象的な話しか聞けなかったからな。にしても………、ふぅ~熱い熱い。こっちまで熱くなったきた。」
クルミがそう言うと押し入れに戻る音が聞こえてくる。
「まったく。」
ハチがそう言うとキーボードを叩く音が速くなる。
その後、私が寝たふりをしているため特に会話もなく時間だけが過ぎていく。
き、気まずい!
私は何時まで寝たふりをしてればいいの?!
寝たふりって思いの外しんどいんだよ?!
もう誰でも良い!誰か!誰かこの状況を何とかしてくれぇ!!!
そんなことを思ってると数分後、キーボードを叩く音が止みハチが上半身を伸ばす。
「うぅ~ん。終わったぁ。……お~い、千束。そろそろ起きろぉ。」
あっ、普通に起こしてくれるのね…。
「そういえば、史八。さっきの話だが。」
「ん、どうしたクルミ?」
「絶っっっっっ対、ミズキには言うなよ?」
「まぁ、聞かれなきゃ答えないけど………なんで?」
「多分、ミズキが聞いたら嫉妬で半狂乱するから。」
「………なんで???」
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この話しにはリコリスリコイル 公式コミックアンソロジーリピート2のたきなvs自販機の話しが面白かったので組み込みました。
自販機のおでんに鍋のくだりが気になった方は是非、購入して読んでみてください!
よろしければ感想、評価のほうもよろしくお願いします。