闇に生き光に奉仕する男の話   作:ダレン シャン

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久々の投稿で書き方を忘れて時間がかかりました。
話しのネタも思い浮かんでは消えての繰り返しで…。




それでは、どうぞ。


酒は呑んでも飲まれるなの話

 

喫茶リコリコの営業時間終了直後、まぁたミズキさんが晩酌を始めてしまった。まぁ、営業中も呑んではいたが。しかも、今日は既に出来上がってしまっているようだ。

 

「ぷっはぁぁぁぁ~~!あぁ~今日も酒が旨い!五臓六腑に染み渡るわぁ~。」

 

「ミズキさん、まだ閉店作業が終わってないんですから酒盛り始めないで貰えます?」

 

「いいのいいの、アタシぃ~明日休みだからぁ。」

 

「それは明日が休みで、今日の業務が終わった人が言うことのできるセリフですからね。」

 

「あぁ~ん?………分かったぁ~、肴作ってぇ!」

 

「会話のキャッチボールしてくんねぇか?ドッジボールじゃなくて…。」

 

ミズキさんの対応にイライラしてしまい言葉遣いを砕いた。

______

 

「ねぇねぇ、たきな。」

 

「なんです?」

 

「今、唐突に気になったことがあるんだけどさ。」

 

「?」

 

営業時間が終わり、千束と一緒に厨房を片付けていると、急に尋ねてきた。

 

「蛍ってさ……なんで光るの?」

 

「ホントに唐突じゃないですか…。そんなの番を見つけるためでしょう。一般常識ですよ。」

 

「そんなことは、私でも知ってるよ!」

 

「千束なら知らない可能性も考慮しまして…。」

 

「たきなは私のことなんだと思ってるの?!このヤロ~、おりゃ~!」

 

「ちょっと、止めてください!」

 

そう言いながらじゃれてくる。

千束を落ち着かせてから私は千束に尋ねる。

 

「そもそも、なんで知ってることをわざわざ聞いてくるんですか?!」

 

「ゴメンゴメン、聞き方が悪かったね。どうやって光ってるのかを知りたいんだよ。」

 

「あぁ、メカニズムのほうですか。」

 

「そそ、あいつらってお尻が光るでしょ。光ってるのに熱くないのかなぁって。たきなは知ってる?」

 

「光るメカニズムまでは流石に……、リコリスにはいらない知識ですし、養成所でも習いませんよ。」

 

「だよねぇ。」

 

千束とそんな会話をしているとホールのほうからハチさんの声が聞こえてきた。

 

「会話のキャッチボールしてくんねぇか?ドッジボールじゃなくて…。」

 

どうしたんだろうか?

ホールのほうにはミズキさんとハチさんしかいない。

ハチさんがミズキさんに対して敬語を外すなんて珍しいこともあるようだ。

 

「……よし、ハチに聞きに行こう!」

 

「ハチさんにですか?流石に知らないんじゃ、」

 

「ねぇ~ハチぃ、教えてぇ~!」

 

「ちょっ、千束!?」

_______

 

「ねぇ~ハチぃ、教えてぇ~!」

 

ミズキさんに呆れていると厨房のほうから千束が話しかけてきた。

後から来たたきなも顔をこちらに覗かせる。

 

「どうした千束。」

 

「蛍ってなんで光るのかなぁってふと思ってさぁ。たきなに聞いても分かんないみたいだからさっ。」

 

「その言い方だとわたしが悪いみたいな感じじゃないですか?!」

 

ふたりがそんな会話をしながらじゃれ合う。

もう見慣れた光景だ。

 

「なにがどうしてそんな会話になったのかは知らんが、蛍は番を見つけるために、」

 

「じゃなくてっ!光る………なんだっけ、たきな?」

 

「メカニズム。」

 

「そそっ、光るメカニズム!」

 

「あぁ、そっちかぁ。」

 

「お尻が光って熱くないのかなぁ~って思うんだけど。」

 

「ホタルの光ってのは発熱を伴わないから熱くはないんだ。所謂、『冷光』って言われる光なんだけど………、う~ん…。」

 

「どったの?」

 

「いや、専門用語とか出るから理解できるかなって…。」

 

「おいおい、千束さんなめんなよ。こちとら天下のファーストリコリスぞ?多分、分からんと思うけど取り敢えず説明してみ?」

 

「なんでちょっと偉そうなんだよ…。まぁ、いいや。だいぶかいつまんで説明すると、さっき言った冷光ってのはルシフェリン・ルシフェラーゼ反応で起こる光なんだ。」

 

「る、るし…?」

 

「簡単に言うと、ルシフェリンがルシフェラーゼとMg2+の存在下で酸化され、そこでオキシルシフェリンと二酸化炭素に分解される。」

 

「お、おき?……おしる?さ、さんか?」

 

「そのオキシルシフェリンのカルボニル基が電子的に励起された状態にあって、それが基底状態に戻るときに光が放出されるんだ。だから、光ったり消えたり……、分かったか?」

 

「……………あ~なるほどなるほど、OKOK!完全に理解した!」

 

「千束…、それは理解していない人が言うセリフですよ。」

 

「……そういえばこの間ジョニー・ディップ主演の海賊映画やってたじゃん?」

 

「急に話題転換するじゃん。」

 

「千束ですからね。」

 

「そこのカウンターに倒れてるへべれけミズキ見て思ったんだけどさ、どうして海賊にはラム酒ってイメージがあるの?」

 

千束たちと話していて気づかなかったがいつの間にかミズキさんがカウンターで潰れていた。

まぁ、静かになったから丁度いいか。

 

千束の疑問にたきなが抽象的に答える。

 

「それは……、ラム酒ばかり飲んでるからでは?」

 

「だったら、ラム酒だけじゃなくて他のお酒でもいいじゃん。それに、そればかりだと飽きちゃうでしょ~。」

 

「ラム酒じゃなきゃいけない理由がある……とか。」

 

「その理由って?」

 

「それは知りませんけど……、何かしらあるんじゃないですか?」

 

「たきなぁ~、そんなあやふやな答えじゃ花丸はあげられないよ?」

 

「なんで千束がそっち側なんですか!知らないんですよね!?」

 

「えへへへ~、ハチはどう?知ってるぅ?」

 

「海賊たちが闊歩していた所謂大航海時代っていうのは、」

 

俺が話し始めようとしたら千束とたきなは俺に背を向けてヒソヒソ声で話し始める。

 

「千束、普通に話し始めましたよ?なんで知ってるんですか?」

 

「たきな、こういう時はハチだからってことにしとかなきゃ。」

 

おい、いくら声が小さくてもこの距離なら余裕で聞こえてるからな。

コイツらはまじで俺のことをなんだと思ってるんだろう…。

 

「はぁ…、遠くの大陸に移動する遠洋航海の時代であって、当時の帆船がせいぜいが7ノット……時速12km程度の速度しか出ないから遠くの陸地に着くのに数ヶ月かかってたんだ。勿論、長旅になるし船を動かすには人手もいる、そして当然食糧が必要になってくる。肉や芋は干して、ある程度の保存は効くがこの時代には冷蔵庫なんて便利なものはなかったし、消毒技術もままならなかった。お前たちも知ってると思うが、人間てのは食事をしなくても2~3週間は生きれる。……が水は別だ。水がなければ人間は1週間と持たない。いくら新鮮な水を大量の樽に入れて積んだとしても数ヶ月の航海中にあっという間に腐って飲めなくなっちまうんだ。」

 

千束とたきなは真剣に俺の話しを聞いていた。

 

「そこで、当時の人達は考えた。水の代わりになるものがないかってな。始めはビールやワインが飲まれていたんだが、熱帯地域なんかにも行くと腐って飲めなくなっちまう。そんなときに重用したのがラム酒なんだ。ラム酒は焼酎と同じ蒸留酒でアルコール度数が40~50%と高く、長い航海中でも保存がきいた。後、ヨーロッパでお菓子が作られるようになってからラム酒はまさに飛ぶように売れたんだ。」

 

「どうして?」

 

「ラム酒の元になるサトウキビが大量に生産されるようになったからだ。お菓子に必要なのは砂糖だけだから、残ったサトウキビの糖蜜を安く仕入れることが出来て、ラム酒を今まで以上に作ることが出来た。だから、他の酒より安いから手に入りやすくなる。船員分買えるし、航海中に腐らない。さらに、水にラム酒を少量混ぜることで水の保存期間が伸びる。これらの理由があって当時に良く飲まれるようになって海賊=ラム酒ってイメージが付いたんだろうな。」

 

「ハチさん………。」

 

「どうした、たきな?」

 

「なぜそんな詳しいんです?」

 

「そりゃ~、その時代にいたからな。海賊やってた時期もあるし…、そのときに俺は一生分の酒を飲んだ気がするよ。…正直、もうラム酒……というか酒の類いはもう飲みたくない。」

 

「?」

 

たきなは意味が分からないという表情をしたが、俺の過去を説明するのは正直面倒くさいのでここではしない。

 

そんなことを思っているといつの間にかクルミが来ていたようだ。

 

「おっ、史八先生の歴史の授業かぁ~?」

 

クルミがニヤニヤしながらからかってくる。

そんなクルミに千束が話しかける。

 

「あっ、ねぇねぇクルミ!蛍がなんで光るか知ってる?!」

 

「ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応だろ?」

 

千束が身につけた知識を自慢しようとするが、そんな千束の思惑をクルミが両断する。

 

「ちぇ~、なんだよ~、知ってたのかよぉ~。」

 

「常識だろ?それにボクは無知であることが嫌いなんだ。だから・・・、」

 

クルミはそう言いながら俺のほうを振り向く。

 

「知らないこと・分からないことがあると知りたくなる性分なんだ。・・・さぁ、教えて貰おうか史八。アニムスと流入現象・・・エデンの欠片とは何なのか。」

 

「まぁだ、そんなこと言ってんの?教えないよ。めんどくさいし。それに・・・、話して楽しいモンでもないしな。」

 

「教えてくれたっていいじゃないか、減るもんじゃあるまいし。」

 

断る俺にクルミが喰い下がろうとしたときにカウンター席で潰れていたミズキさんがいきなり大声を出す。

 

「それはアタシん男だ!!!・・・あ?」

 

どうやらミズキさんは夢でも見ていたようだった。ミズキさんは寝ぼけたような状態で俺たちの顔を順番に見ている。

どんな内容の夢かは知ったこっちゃないが、これを機に話題を変えさせてもらおう。

 

「ほら、クルミ。俺の話しを聞く暇があるならミズキさんを介抱してやってくれ。」

 

「そんなこといくら金を積まれたってやってやるもんか。」

 

「でも、クルミがミズキのこと介抱してる姿見てみたいかも!」

 

「それは確かに見てみたいですね。」

 

「そんなことごめん被る。じゃあ、ボクはもう戻るぞ。」

 

「あれ?そういえばクルミぃ~、なんで秘密基地から出てきたの?なんか私たちに用があったんじゃない?」

 

「いや、ただの気まぐれだ。」

 

「そ。」

 

クルミが戻ろうとしたときに酔っぱらったミズキさんが口を開く。

 

「なぁ~にを~~!!!こんな顔も良くておっぱいもおっきい美女を介抱できる権利を不意にするとはぁ~!きさまらぁ~!…人生の殆どを無駄にしたなぁ〜。アッヒャッヒャッヒャ!!!」

 

「ミズキさん、もうそろそろお酒は止してください。すぐお水持ってくるので。」

 

「あらぁ~ん、きょうは~、たきなチャンが介抱してくれるのぉ~?」

 

ミズキさんがたきなにダル絡みをするとたきなは顔をしかめながら厨房のほうに消える。

 

もう今日は飲ませないように一升瓶は取り上げるか。

 

そう思って俺がカウンターに置いてある一升瓶を手に取るとミズキさんも不満な表情をしながら一升瓶を掴む。

 

「何するんですか?」

 

「アンタが~なにするのよぉ~?あぁ~、もしかしてぇ~アタシとナニ(・・)したいのぉ~?えっちぃ~~~!」

 

ブチッッッ

 

「あれクルミ、今なんか聞こえた?」

 

「あぁ、なんか千切れるような音が…。」

 

「安心しろ二人とも。ただ俺の堪忍袋の緒が切れた音だ。」

 

「全っ然安心できない!?!?ダメだよ!?いくらミズキでもグーはダメだからね!せめてパーに…、」

 

「千束、グーとかパー以前に止めてやれよ。」

 

「ミズキならしょうがないかなって。」

 

「………それもそうだな。」

 

千束とクルミが俺の後ろでそんな会話をしているが流石に手は出さない。こんなのでも(・・・・・・)ミズキさんは女性だ。

 

俺は一旦落ち着いてミズキさんから酒を取り上げようとするが結構な力で抵抗してくる。

 

「いい加減にしてください、ミズキさん!離せ!ちょっ!?力強っ?!。」

 

「やだ!!!これはアタシんだ!アタシの命の水なんだ〜!!!」

 

「駄々こねんな!」

 

俺とミズキさんの酒の奪い合いが始まる。

それをしばらく続けていくとミズキさんがニヤリとしていることに気づく。

 

「そんなにぃ欲しいならぁ〜……、くれてやるわよぉ〜!!!」

 

次の瞬間、俺の口に一升瓶の注ぎ口が突っ込まれる。

 

「むぐっ?!」

 

瓶の中に入っていた液体が俺の口腔内に侵入してくる。突然のミズキさんの行動にパニックになってしまった俺は侵入してきた液体を嚥下してしまう。その時、俺の中に侵入してきた酒の味は甘いのか渋いのか少し酸っぱいのかよく分からない味だったが、その時にはもう既に俺の意識は失くなっていた。

 

_____

 

ミズキさんのために水の入ったコップを持っていこうと準備していたときカウンターのほうから声が聞こえてきた。

 

「どぉだ~、アタシの酒は旨かろぉ~。」

 

「ちょっとなにしてんのさミズキ?!」

 

「え?だぁってぇ~欲しそうにしてたからぁ~。」

 

「取り上げようとしてたんだよ!……ちょっと大丈夫?!」

 

何かあったのだろうか?

水の入ったコップを手に移動して、状況を確認する。

 

「何かあったんですか?」

 

「あぁ、たきな。…なに、そこの酔っぱらいが無理やり史八のやつに酒を飲ませただけだ。」

 

「なるほど。」

 

クルミが簡潔に説明してくれた。

ハチさんのほうを向くと床に膝を付き無理やり飲まされたためか軽く咳き込んで千束はそんな彼の背中を擦っている。

 

「ちょっとミズキ、いくら酔っててもやって良いことと悪いことぐらい、」

 

千束がミズキさんに文句を言おうとしたときに千束の側から声が聞こえてくる。

 

「ちしゃと?」

 

ちしゃと?

そんな舌足らずな言葉遣いをする人はここにはいないはずだ。

そもそも、千束の側から聞こえてきたが、千束の近くにはハチさんしかいないはず……。

いったい誰が…。

 

声の主を確かめようと声のしたほうを向くとそこには顔をほのかに赤くし、目元がトロンと下がった………今まで見たこともない表情をしたハチさんがいた。

 

 

 

 

……………いや、誰?

 

 

 

_____

 

私たちは全員で座敷へと移動していた。

たが、私を含めた全員が今この状況を上手く飲み込めずにいた。

いつも冷静であるクルミでも、現在自分が目にしている現状を信じられずに目を見開いている。

では、そこで問題です。デデン!クルミでも信じられていないこの状況はどんな状態でしょうか?…………正解はぁ~、

 

「ちしゃと~~。」

 

ミズキのお酒で酔ったハチが、私に抱きついているからでした~!

 

 

 

 

 

………………。

 

 

 

 

 

どうしてこうなった?

………もう一度言おう。

 

 

 

 

 

どうしてこうなった?

 

いや、ホントにちょっと待って???

ハチって酔うとこんなんなるの???

そういえば、ハチがお酒飲んでるところなんて見たことないし、前に先生とあの洒落乙なバーに行ったときもジュース飲んでたとか言ってたし………。

いくら付き合いが長いと言ってもちょっとこの現状はまだ飲み込められない。

酔うと性格が変わる人はいるけど、ハチの場合はここまで変わっちゃうんだ…。

………いやまぁ、めっちゃ私に甘えてきてめっっっちゃ可愛いんだけどねっ!!!

 

私がそんなことを思っているとクルミが口を開いた。

 

「まさかここまで変わるとはなぁ。前もって教えろよ、お前ら。」

 

「私だって知らなかったんだよぉ~こんなんなっちゃうなんて。」

 

「わたし、一瞬誰だって思っちゃいました。」

 

「アタシも~。」

 

「ん?おい、ミズキ。正気に戻ったのか?」

 

「こんなことが起きれば酔いも覚めるわ。」

 

「ちしゃと〜〜〜。」

 

私達を現在進行形で困惑させている当の本人は私に寝っ転がりながら抱きついたままだ。

ハチの顔が私のお腹に埋められる。

 

あっ、どうしよう、何コレ、何この可愛過ぎる生物。反則だろ!こんなの!!!

 

そんなハチに我慢できずに頭を撫でながら声をかける。

 

「はいは〜い、あなたの可愛い彼女の千束ですよぉ〜。」

 

「ちしゃと〜〜〜。」

 

どうしよう………、ぐうかわっ!!!

 

「それにしても、ハチさんがお酒にこれほど弱いとは意外ですね。なんとなく強いイメージがありました。」

 

「ボクもだ。人は見かけによらないということだな…。」

 

「ねぇ、アンタ達。」

 

そんな会話をしているとミズキがとある提案をしてきた。

 

「この際だから、コイツに色々聞いちゃわない?」

 

「どういう意味ですか、ミズキさん。」

 

「言葉のとおりよ。酒ってのわねぇ…その人の本性をさらけ出すモンなのよ!」

 

「ミズキが言うと信憑性があるな…。だからお前、あんな女を捨てたような行動をしてるのか…。」

 

「っんだと!!このでこっぱち!!!捨てとらんわっ!!!」

 

「まぁ、ミズキのことは置いといて、」

 

「置いとくんじゃねぇよ!!」

 

「今の史八に色々聞くのは確かに面白そうだ。何かと秘密のある奴だからな。」

 

「ハチもクルミにだけは言われたくないと思うよ?」

 

「アンタ達だって気にならない?自己評価の低いこいつが自分やアタシたちのことをどう思ってるだとか。それにこいつ、こんな顔がいいのに自分のこと顔面偏差値が中の下とかほざいてるのよ?内心では自分のことイケメンだとか思ってたら次から弄れるじゃない〜。」

 

ハチに限ってそんなことはないと思うけど………、正直気になる。ハチが私達のことをどう思っているか……。はっ!もしかしたら私の嫌なところとかあるかもしれない!ここで聞いて次から気をつけなくては…。

 

「じゃ、まずはたきなからだな。」

 

「わたしですか?!普通千束からじゃ、」

 

「千束は大トリだ。」

 

クルミがそう言うとたきなも諦めたのかそれ以降黙ってしまい、それを肯定と受け取ったのかクルミがハチに尋ねる。

 

「おい、史八。」

 

「ん〜?」

 

「お前、たきなのことどう思ってる?」

 

「たきなのこと〜?」

 

ハチがそう言うとハチは少しだけ天井の方を見ながら考える。

 

「たきなはねぇ、がんばっへるよぉ〜。ちしゃとのこともよくみへくれてるしぃ、みせのことだってたいせつにおもってくれてるとおもうしぃ〜。いい子だよぉ、たきなはぁ〜。」

 

「あ、ありがと…ございます…。」

 

おやおや、たきなサン。顔を背けたって赤くなってるのがバレバレですよ?照れてるのかなたきなちゃんは?

カワイイでしゅねぇ〜!!

 

「…そうか、じゃあ次はミズキだ。ミズキのことはどう思ってる?」

 

「ミズキしゃんはぁ、ミズキしゃんはねぇ………、もったいらい!!!」

 

「「「「勿体ない?」」」」

 

ハチの思いもよらない発言に私達の声が重なる。

 

「だぁって、そうでしょ〜?こんらにびじんでスタイルだっていいのにぃ、ちょ〜っときをつければすぅ〜ぐかれしとかできそうなのになぁ〜………っていつもおもっへるぅ。」

 

「その気をつけるトコってどこよッ!!!」

 

ビックリしたぁ!

ミズキが、大声でハチの言葉に食いつくからちょっと耳がキィーンってなっちゃったじゃん!

 

でも、ハチはそんなことに慌てずに再び天井の方を見て考える素振りをする。

 

「えっとねぇ〜。」

 

「うんうん…。」

 

「んっとねぇ~……。」

 

「早く言いなさいよ。焦れったいわね!」

 

「………アハハ、わかんらい!」

 

「おいコラふざけんなっ!!そんなに引っ張っておいてわかんないって何よ!アタシャにゃ男なんてできないってか!?一生、独り身ってか?!自分で言ってて悲しくなってきてわ!!!」

 

「お、落ち着けミズキ!なにもそこまでコイツも言ってないだろ?!」

 

「落ち着いてられっか!!じゃあ、このでこっぱち娘はどうなのよ!?」

 

「クルミぃ〜?うぅんと〜、クルミはねぇ……、たよりにしてるよぉ。らんだかんだでクルミにはいつもたひゅけられてるひぃ、まじまのけんでもぉ…クルミがいなしゃったら、ヤバかったからなぁ〜。」

 

「確かにそうですね。クルミがいなかったらDAやリコリスの存在が世の中に知れ渡ってしまいましたから。」

 

「ふっ、ボクにとってはあんなの朝飯前だ…。チョロいね。」

 

「フッフッフ、最後は私だねっ!ねぇ、ハチぃ?」

 

「どぉした〜?」

 

「ハチは私のことどう思ってるの〜?」

 

「ちしゃとはねぇ……。」

 

「うんうん。」

 

「ちょっとだけれもいいからぁ、だらひにゃいところをなおしてほしぃかなぁ〜。」

 

あれっ?思ってたのと違う…。

 

「いえのリビングちらかすのは大体ちしゃとだしぃ、かじにもっときょうりょくてきでもいいとおもいましゅっ!メシだっておれがいつもつくっれるけど、おれだっておとこだよ?ちしゃとのてりょうりをたべてみひゃいしょぞんれすっ!」

 

「あっ、はい……。」

 

全部、事実だからなにも言い返せない…。

 

「なかなか、辛辣だな。もっと、砂糖を吐き出しそうな惚気でも出てくるモンかと思ったんだが。」

 

クルミは私達のことをどう思ってるのさ?!

 

そんなクルミに文句の一つでも言おうとしたときにハチが口を開いた。

 

「でもねぇ、おれはぁそんなちしゃとがだいすきらんれすっ!」

 

うぇ?

 

「ほれたよわみっていえばいいかなぁ?ほかのなによりもたいせつなんれす!どんなことよりもちしゃとのことがだいじなんれすっ!おれなんかにはもったいないぐらいいいかのじょなんれすっ!わかりましたかぁ?」

 

え、どうしよう?私の彼氏が今日もちゃんと彼氏してるんだけど?…………そうか、これが幸せか…。

 

「私もハチのことが大好きだよぉ〜!!!」

 

「えへへ〜。」

 

「…ミカにコーヒーでも淹れてもらうか。」

 

「そういえば店長は、」

 

「呼んだか?」

 

超絶タイミングのいいところで先生が部屋の中に入ってきた。

先生はハチの普段とは違う様子に顔をしかめる。

 

「どうしたんだ史八は?酔っているのか?」

 

「あぁ~、先生。実はかくかくしかじかでねぇ~。」

 

先生にことの顛末を説明する。

説明しているうちに私の膝を枕にハチはどうやら眠ってしまったようだ。規則的な寝息が聞こえてくる。

 

「なるほどな…。」

 

「ミカ…、お前も知らなかったのか?」

 

「あぁ、初耳だ。…確かに今思い返してみればこの子が成人しても酒を飲んだところは見たことないし、飲もうとしたこともなかったからな。………それにしても、困ったな。」

 

「何が困るの?」

 

「いや、この状態では千束と2人に帰るにしても難しいだろう?」

 

「あ。」

 

確かに、私もリコリスとして一般人よりかは筋量が多いとしても、ハチは私よりも大きいし重い。私一人でハチを移動させるのは無理がある。

 

「じゃ、どうすればいいの先生?」

 

先生はしばらく考えた後に口を開く。

 

「………仕方ない。史八には今日ここに泊まってもらおう。クルミもそれでいいか?」

 

先生はお店で匿っているクルミに許可を求めるとクルミもため息をつきながらそれに応じる。

 

「ま、しょうがないだろ。こんな状態じゃ仕方ない。」

 

「よし。たきな、向こうの押し入れに布団がしまってあるはずだ。出してきてもらえるか?」

 

「了解しました。」

 

それから、たきなが準備してくれた布団にハチを横にさせるときに起きてしまったようだ。

 

「や~。…まだ、ねりゃい。」

 

「でも、ハチ。明日もお店の仕事があるんだから…。」

 

「じゃあ、ちしゃともいっしょにねりゅ~。」

 

そう言ってハチは私を抱き枕がわりにして布団へ横になる。

 

…………えぇぇぇぇ!!!ちょっと待ったハチ!家じゃないんだよ?!皆いるんだよ??!こんなところで、

 

 

「スピー。」

 

あ、もう寝てますわこいつ。

この野郎。私の純情を弄びやがって……。

そんな気持ち良さそうな寝顔されたら何も言えなくなるじゃん。

取り敢えず、写真とらせろ。それでもチャラにしてやる。

 

そんなことを思っていると。

 

「千束、史八のことは任せたからな。」

 

「え?」

 

「では、千束。お疲れ様です。」

 

「バイバァ~イ!」

 

そう言って、先生とたきなとミズキが帰り支度を始めてしまう。

 

「ちょっと待ってよみんな、」

 

そんな三人に何か言ってやろうとしたときにクルミに声をかけられる。

 

「千束。」

 

「なに、クルミ?」

 

「……分かっているとは思うが。」

 

「うん。」

 

「ここにはボクもいるからな?」

 

「分かってるよ、クルミはここにいないと危ないもんね。……それがどうしたのさ?」

 

「……………。」

 

「なに?」

 

「夜の大運動会なんてするなよ。」

 

「しないよ!!!何言ってんの?!?!」

 

「そうか、それならよかった。まだ、防音の類いは整備されてないからな。」

 

「防音仕様があろうとなかろうとすぐ近くに知り合いがいるところでしようとも思わねぇよ!!!」

 

「知り合いが近くにいなかったらするのか?」

 

クルミがニヤニヤしながら聞いてくるが、コメントは控えさせてもらおう。

そんな私たちの会話を聞いていたたきなが近くにいたミズキに尋ねる。

 

「ミズキさん、夜の大運動会ってなんですか?」

 

「それはねぇ~、」

 

「そんなこと言わんでいい!!!!!」

 

たきなに無駄な知識を与えようとするミズキを止める。

全くミズキは。油断も隙もない。私の大切な相棒に何を教えようとするのか。たきなにはピュアのままでいて欲しい。

……こんなことを言うと私がピュアじゃないような言い方になるかもしれないが………、まぁ気にしない方向でいこう!

 

______

 

「んん…。うん?」

 

カーテンから差し込む光で目が覚める。

いつもと違う天井。…だが、知らない天井ではない。

 

「店?……なんでこんなところで寝て、」

 

なんでこんなところで寝てるんだ?

 

そう思いながら起き上がろうとすると隣で千束が着物のまま寝ていることに気づく。

そして次に自分も着物姿でいることに気づいた。

 

どういうことだ?ここで寝ていたことも着物姿のままなのも疑問が残る。

昨日のことを思い出そうとするが上手く思い出せない。

 

そんなとき隣で千束の体が動く。どうやら目を覚ましたようだ。

 

「おはよう、千束。」

 

「おぉ~、おはようハチぃ。今日もいい朝だねぇ。ふぁ~。」

 

目が覚めたばかりで可愛いあくびをしながら千束が朝の挨拶を返す。

そんな千束に昨日のことを尋ねることにした。

 

「なぁ、千束。なんで俺たちのここで寝てるんだ?昨日なにかあったんだっけ?」

 

「なにがぁ~?いつもどおりじゃ~ん?」

 

「寝ぼけてんのか?ここは店だぞ。」

 

「お店ぇ~?…………はっ!!!」

 

ようやくここが俺たちのセーフハウスではなく喫茶リコリコであると気づいたらしい。

千束は急に俺の両頬に手を当ててくる。

 

「ハチ、大丈夫?!」

 

「大丈夫って、何が?」

 

「私の名前は?!」

 

「千束。……なぁ、どうしたんだよ?なんか変だぞ…。」

 

「変なのはハチのほうだよ!………え、まさか覚えてないの?」

 

「覚えてないって?」

 

「……ハチ、昨日のことどこまで覚えてる?」

 

「昨日……。」

 

先程もそうだったが昨日のことが上手く思い出せない。

 

「悪いが、上手く思い出せないんだ。……確か、ミズキさんの酒を取り上げようとして、急にミズキさんが俺の口に一升瓶を突っ込んで来てそれから……、ダメだ。ここから全然、思い出せない。」

 

「…そっか、そうなんだね。」

 

「なんかあったのか?」

 

「イヤ,ナニモナカッタデスヨ。……ホントダヨ。」

 

相変わらず嘘が下手くそだな。

そんな千束に追求しようとするが、先に千束が口を開く。

 

「ハチ、世の中には知らなくてもいい事実ってのがあるのさ。」

 

「そういうのがあるのは知ってるが……。」

 

なんか何時にもまして説得力があるような…。

ホントに何があったのだろうか?

 

「そんなことよりも約束して!」

 

何故か千束が何時もより力強く言ってくる。

 

「?」

 

「ハチは今後私のいないところでお酒飲んじゃダメだからね!!!」

 

「???」

 

ホントに何があったんだ?

 

 

 

 

 





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