皆さん、お久しぶりです。
待っていられた方がいるかどうかは分かりませんが取り敢えず初手言い訳をさせてください。
内容は更新が遅れてしまった理由についてです。
何故か保存していた4,5話分の下書きが消えてしまい、失意のドン底に落とされたことがひと~つ。
再び気力を振り絞って書いた3話分の下書きが知らん間に失くなってたことがふた~つ。
みぃ~t…………えっ?前置きが長い?分かりやすく端的に言え??
分かりました。簡潔に言いましょう……。
マジ、すんませんでした!!!!
……コホン、話を変えましょう。
今話は、喫茶リコリコが出来る直前のお話しです。
なので、時間軸は原作の10年程前……完全に捏造です。
苦手な方は回れ右をしていただくと無駄な時間を過ごすこともありません。
捏造でも構わないよという方は下にスクロールしていただき、少しでも暇が潰せたら幸いです。
それでは、どうぞ。
カーテンの隙間から朝の日差しがあたり眠りから覚める。
上半身を起こして欠伸をひとつ。周りを確認すると、どうやら俺が一番乗りのようだ。
まだ眠っている同居人の2人を起こさないように階段を降りてから厨房に向かう。
厨房の壁にかけてある時計を確認すると現在時刻は5時30分。
「ほんじゃ、ちゃっちゃと支度をしましょうかねぇ。」
寝間着から着替えた服の袖を捲り、眠気覚ましにコップ一杯の水を飲んでから朝食を作り始める。
冷蔵庫の中身と相談をして本日のメニューを決める。
「取り敢えず、ご飯と鮭の塩焼きと味噌汁………、後はだし巻き玉子でも作るか。」
今朝のメニューを決めて慣れた手つきで朝食を作り始める。
ここの厨房は小さい千束のために水道などが少々低く設計されているが、今のところはそんなに気にはならない。
……数年後にどうなっているかは分からないが。
そんなことを思っていると、厨房の出入り口のほうから足音が聞こえてくる。どうやら同居人の一人が起きてきたようだ。
「おはよう、史八。」
「おはようございます、ボス。」
同居人の一人のボス…もとい、ミカさん。ここの管理者だ。もともとは傭兵で日本の独立治安維持組織『DA』のリコリスの司令官や教官もやっていた??……俺もよくは知らないし、改めて本人に聞かないが……まぁ、なんやかんやあって今はこうして同居している。
「いつもすまないな。朝食を作ってもらって。」
「いえいえ、別に気にしなくてもいいですよ。苦に感じてませんし、まともに料理できるのは最初、俺だけでしたし。」
「しかしだな…、」
ボスが何か言いかけると彼の後ろからドタドタとこちらに走って来る音が聞こえる。
どうやら最後の同居人が来たようだ。
「おっはよ!センセ!!あっ、ハチもおはよ!」
寝癖でアホ毛が一本だけぴょんと立っている彼女が最後の同居人である錦木千束。
見た目は幼い少女だが、その正体は銃器を用い犯罪者を処分することを任務とするDAの実働部隊『リコリス』の一人である。
まぁ、彼女は俺と共に不殺を誓い、DAからのはみ出し者なのだが……、その実『リコリス』で歴代最強という声もある。
こんな俺の作ったありふれた朝食に目を輝かせて腹の音を鳴らしているのが歴代最強リコリスだなんて………、人は見た目によらないな。
「なにさ、ハチ?何か変なこと考えてない?」
「気のせいだろ?ほら、もう出来てるから冷める前に腹に入れよう。皿を並べてくれ。」
「ほっほほぉ~い!」
千束が持ってきてくれた茶碗や皿に料理を盛り付けていく。
厨房の真ん中にあるテーブルの上に並べて三人で手を合わせる。
「それじゃ!いっただきまぁす!!!」
「「いただきます。」」
俺と千束とボス。いつものように三人で朝食を食べる。いつの間にかこれが普通になっていた。
「いや~、やっぱハチのご飯が一番だね!一番最初に先生が作ったのが、アレだったからさ。」
「千束…、それを言わないでくれ。」
「そういうお前だって、味噌汁に出汁入れるの知らなくて味気ない味噌汁だっただろ?具もよく分かんなかったし。」
「ギクッ!…いや、だってしょうがなくない?!お味噌汁なんだからお味噌入れればいいと思うでしょ普通?」
「どっちもどっちってこった。」
俺は味噌汁を啜りながら答える。
うん、味はまぁまぁかな。
そう。最初はローテーションで朝食を作ろうという話しになったのだが、いかんせんこの二人……、立場上今まで料理をすることに縁がなかったため、ロクなものが作れなかった。ボスは泥のようなコーヒーを淹れるし、千束は千束で自分のインスピレーションに頼って料理をする。…流石、『やりたいこと最優先』。だが、時と場所は考えて欲しい。
「いやでも、やっぱり卵焼きは甘いのに限るよ。ね!先生もそう思わない?!」
「私は甘くない方が好みだが…。」
「えぇ~、砂糖が入ってないなんて邪道だよ、邪道!」
「邪道かどうかはいいとして、今日のやつには砂糖は入ってなくないか?」
「え!いやいや、入ってるでしょ!!だって甘いよ!ちょっと先生大丈夫?!」
千束がボスに辛辣な台詞にボスは怪訝な表情を見せるが、実はこれ、二人とも正しい。
「千束のにだけ砂糖を入れました。前に作った時に砂糖が入ってる方が好きって言ってたんで。」
答え合わせをすると、千束は両手を頬に添えてわざとらしく体をくねくねとさせる。
「もう、ハチってばぁ///私のこと好きすぎかよっ///」
「いや、後で文句言われるのがめんどくさいだけだ。」
「ちょいちょ~い!?!?」
俺が食いぎみに言ったのを千束がつっこむ。
それを見て笑うボス。
そうこれが、今の俺たちの日常だ。
______
「「ご馳走さまでした。」」
「お粗末様でした。」
二人の挨拶に答えてから後片付けをする。あらかた終わったあとにボスから声がかかった。
「ふたりとも少しこっちに来て座ってくれ。」
「どったの先生?」
ボスは店のカウンター前の座敷に座っていたため俺も千束とともにちゃぶ台を挟んで座布団の上に座る。
なにやら真剣な表情だ。
「これからの話しをするぞ。勿論、知っていると思うがここはDAの支部。しかし、表の顔はカフェにするという千束の案に決まった。」
「そうですね、大々的に言うわけにはいきませんしね。リリベルも黙ってないでしょうし……、そもそもあいつらどうにかなりません?最近そろそろうざったく思えてきたんですけど。」
「あぁ~、確かに。こないだお店にまで来たときは苦労したよ。」
話しがそれてしまうが俺は最近の不満を口にした。それは千束も同じようだった。
不満というのはDAを出てから、リリベルをけしかけられることがたまにある。
リリベルの司令官………たしか虎杖?とかいうヒゲはDAの情報が外に漏れることを恐れているためか知らないが、リリベルを使って俺と千束を殺そうとしている。
俺たち二人の不満を聞きボスが申し訳ないという表情になってしまった。
「すまないが、それはもうちょっと待っててくれ。その件で今、楠木と話し合ってはいるんだ。」
「はぁ…、楠木ですか。あの人、千束はともかく俺は殺されてもいいとか考えてません?………まぁ、俺はリコリスじゃないし別にいいですけど。すみません、話しの腰折っちゃって。続けてください。」
「…えぇと、どこまで話したかな?」
「千束の案でここをカフェにするというところまで。」
「そうだったそうだった。千束と史八の協力もあって店内もリフォーム出来たし、メニューも大体出来て、後は煮詰めるだけだ。」
「そうですね。価格設定とかも他店と比べる必要もあったし少しめんどくさかったですけど、なんとか形になりましたしね。」
「ただ…。」
「ただ?」
そういってボスは腕を組み考え込んでしまう。そして顔をあげて店内を見渡す。
俺も釣られて見渡してみるが何かおかしなところでもあるのだろうか?
「何か……寂しくないか?」
寂しい………。確かに言われてみるとそうだ。ここで暮らしているから、今のこの風景が当たり前になってしまっているのだろう。外から来たお客さんが見たらここがカフェなのかどうなのか分からないかもしれない。
「物が少なすぎるんだよ。空いてるスペースに小物とかを置いて……後、そこの階段の上!今まで物置にしてたけどテーブルとイスを置けばお客さんもまだまだ入れるよ!」
っ!!!
千束が珍しくまともなことを言ったことに驚くと千束はこちらを目を細めてじっとみてくる。
「また、何か失礼なこと考えてたでしょ?」
「いやまさか。千束が珍しくまともなことを言ったこと以外は考えてないよ。」
「ほらぁもぉぉぉ!!!」
千束のじゃれあいを鎮めていると今度はボスが口を開く。
「でも、確かに千束の言うとおりだ。物置場は見た目も悪くなるし、和洋折衷の店な訳だからテーブル席もあった方がいい。席が増えればお客の回転率も上がるからな。」
「俺も同意見です。でも、客席が増えるなら事前に買った食器類も足りなくなる可能性もありますよ。買い足します?」
「そうだな、そうしよう。」
意見がまとまったため行動しようとした矢先。
「ねぇ、それならさ!みんなでここ行ってみない?」
千束はボスが読み終わった今朝の朝刊に入っていたであろうチラシを見せてきた。
「あぁ、これってアレじゃん。最近、出来た大型ショッピングモール。」
「そう!ここならぁ、新しいテーブルとイスはもちろん、足りなくなった食器類も小物も買えるよ!ねっ!行ってみようよ!!」
「いや、でもなぁ。」
リリベルの件もあるし、なるべく目立つ行動は避けた方がいいとも思う。
俺と同じ事を考えているであろうボスに目線を飛ばし意見を乞う。
「………千束、すまないがやはり目立つ行動は…、」
どうやらボスと俺の意見は同じのようだ。
「そ・れ・にぃ~、今なら開店記念セールってのやってるみたいだよ!」
「行ってみるか。ショッピングモール。」
ボスっ?!?!?!
開店記念セールって単語だけで考えが540度変わったぞ!?!?
「ちょっと!?いいんですか?!」
「すまない…史八。」
「?」
「我々は………金欠なんだ。」
あっ…。
千束のリコリスの活動資金という名目でDAから資金援助があるが、それも無限ではない。非殺傷弾の作成や店のリフォーム、メニューの開発・試作、調理器具や店の光熱費その他諸々……。
うっ!考えただけで頭が…。
_________
「と、いうわけでぇ!やって来ました!!ショッピングモォル!!!」
ここについてから千束のテンションがハイになってやがる。
周りにいる家族づれの目線が痛いっ!恥ずかしいぃぃ!!穴があったら入りたいっ!!!
「すごいすごい!ホントにおっきいね!ねぇハチ!!」
「そりゃ、ショッピングモールだからな。」
「見て見て!お店の中にお店がある!」
「そりゃ、ショッピングモールだからな。」
「人もいっぱいいるねぇ!」
「そりゃ、ショッピングモールだからな。」
「ホントに大っきい!!DAとどっちが、」
「ちょ~っと!あっちに行こうかぁ千束!!!」
「えっ!なになに!!あっちになにかあるの?」
千束は目を輝かせているが、こいつ今なに口走ろうとした?!?!
人混みから外れ人のいないスペースに移動する。
「おい、千束。ここに来る前にした三つの約束…、もう忘れたか?」
「ハ、ハチ?なんか後ろに般若みたいなのが見える気が……。笑顔なのになんか怖いよ?」
「忘れたのか???」
「も、ももも、もちろん覚えてるよ!千束サン嘗めんなよ?これでも私はファースト、」
「言ってみ?」
「え、ええ、えぇと……。ほら、あれだよ…。国民主権、平和主義……、基本的人権の尊重……だっけ??」
「違う!全く違う!誰が憲法の三原則言えって言ったよ?!」
どうせ千束のことだ。約束ごともここに来るのが楽しみすぎで話し半分も聞いていなかったのだろう。今までDAから出たことがないみたいだからしょうがないとも思えるが……。
「……はぁ。もう一度言うぞ。はぐれない・目立たない・余計なことはしない、だ。」
「そうそう!それそれ!」
「ホントに頼むぞ、千束。」
まだ来たばっかりなのにどっと疲れた。
「それでは、そろそろ行こうか。」
「りょ~かい!センセっ!」
何故だろう、もう既に嫌な予感がする……。
______
それから俺たちは店内をまわり必要なものを買った。
時間も昼頃になっていたため現在はフードコートで各々好きなものを食べている。
「でも、良かったねぇ。テーブルとかイスとかおっきい荷物はお店まで届けてくれるようになって!」
「そうだな、まぁ持って帰るってなっても千束が持つだろうから大丈夫だ。」
「えっなにハチってば、私みたいな非力でか弱い女に荷物持たせる気だったの?」
「本当に非力でか弱い女性は自分でそんなことは言わない。そもそも歴代最強のリコリスがなに言ってんだ。」
「今は制服着てないのでリコリスじゃありませぇ~ん。」
「はいはい、そうでしたね。」
そんなに俺たちの会話をボスが微笑ましく見ている。
こんなのの何が面白いのだろうか?
食べ終わったので俺は立ち上がる。
「すみません、ちょっとトイレに行ってきます。」
「じゃあ、ここで待ってるぞ。場所は分かるか?」
「大丈夫です、把握してます。」
俺はそう言って席を離れた。
______
トイレで用をすませてフードコートに戻ると千束の姿が見えなかった。
「あれ?ボス、千束は?」
「ん?トイレに行ったが途中で会わなかったか?」
「いえ、会ってないですけど?もしかしたら別の場所のトイレに行ったのか?」
「そうかもしれないな。もう少し待ってみよう。」
ボスとそんな会話をしたが10分経っても、15分待っても千束が戻ってくる気配はなかった。
ボスも様子がおかしいと感じたようだった。
「おかしい。流石にそろそろ戻ってきてもいいと思うのだが…。」
「もしかして……、」
「……なんだ?」
俺は最悪の状況を想像してしまう。
「リリベルが関わってるんじゃ…。」
「まさか……、千束だぞ?」
「俺もいつもの千束だったら心配もしませんよ。でも、今のあいつは丸腰ですよ?頭数揃えられたら取り押さえられるかもしれない…。」
俺の言葉でボスの表情が変わる。
「史八、千束を探すぞ!」
「了解!」
ボスと同時に立ち上がりあらかじめ集合場所を決め、別々に千束を探し回った。
数十分間探したが千束の影も形も見当たらない。
集合場所でボスと合流し、どうだったか聞いてみたが首を横に振るだけであった。
くそっ!本当にどこに行ったんだ千束!
「ボス!俺はもう一度上の階から探してみます!ボスは下から、」
俺が走りだしながらそう言った時…。
ピンポンパンポーン
なんだ?館内放送??
『本日も当店にお越しいただき誠に有難うございます。お連れ様のお呼び出しを申し上げます。喫茶リコリコからお越しのせ、先生様、ハチ様? 7歳の女の子、千束ちゃんをお預かりしております。至急本館4階総合案内所までお越し下さいませ。繰り返し申し上げます……、』
ズコーーっ!
盛大にこけてしまった。……というか。
「迷子かよっっっ!!!」
______
ボスと共に4階にある総合案内所を訪れると、そこのスタッフに奥の部屋へ案内された。
部屋の中に入ると、千束がお菓子を食べながらここの職員であろうお姉さんと楽しそうに喋っていた。
視線に気付いたのか千束がこちらを向く。
「あっ、
千束はお菓子を口に詰め込んでいるためなんと言っているか分からないが………取り敢えず、
「お前、なに呑気に菓子食ってんの?!どれだけ心配したと思ってる?!」
俺がそう言うと先程まで千束と喋っていたお姉さんが話しかけてきた。
「まぁまぁ、お兄ちゃん落ち着いて。千束ちゃんだって好きです迷子になった訳じゃないんだから。」
「は、はい……。申し訳ございません。お手数をお掛けしました。」
というか、俺は千束の兄じゃないんだけどな…。端から見るとそう見えるのか…。
「あら、そんな難しい言葉を使えるなんてスゴいのね。」
「えぇ、まぁ。」
俺は乾いた笑みで答える。
こちとらアニムスで人生何周したと思ってる。
精神年齢だけならこのお姉さん……、ましてやボスより上だぞ。
「千束ちゃん、もうここに来ちゃダメだよ。今度からしっかりお父さんかお兄ちゃんと手を繋いで歩いてね。」
「先生もハチも、別にお父さんとお兄ちゃんじゃな」
「さぁ、千束!そろそろ帰るぞぉ!お世話様でしたぁ~!」
千束が口を滑らす前に慌ててその場を後にする。
_____
無事、千束と合流して時刻は午後の4時。買い物も終わってる。後は帰るだけだ。
「はぁ、疲れた……。」
「おつかれだな。お前がいてくれて良かったよ。私だけだったら心労で倒れてたかもしれん。」
「もう帰りましょう。今日は速く寝たい…。」
「そうだな。」
いざ帰ろうとすると、再び千束の姿が見えない。
「あの、バカっ!また、」
鈴でも付けてないと直ぐにどこかに行く!
「落ち着け史八。千束ならあそこだ。」
ボスが指差した方向へ顔を向けると千束がいた。
何故か壁のほうを向いている。何してるんだ??
千束に近づき声をかける。
「なぁ、千束?何してるんだ?もう帰るぞ。」
千束は壁のほうを向きながら答える。
「ね、ねぇハチ?」
「ん?」
千束はようやくこちらを向く。
「こ、この『強く押す』の強くってどのくらいの強さなのかなぁ~???」
千束は壁に備え付けられた
っ!!!
「ま、待て!待ってくれ千束!!押すなよ。絶対に……押すなよ。」
「………………。」
「………………。」
俺たちの間を長い沈黙が通りすぎる。
自分の唾を飲み込む音がゴクリとやけに大きく聞こえる。
「………………………。」
「………………………。」
「………………………………フリ?」
「違う!いいか、まず落ち着こう。そして考えてみてくれ。例えばペンキ塗り立ての貼り紙が貼ってあるベンチにお前は座ろうと思うか?」
「一回だけなら座ってみたいと思ってる!」
「あぁ!ダメだ!こういうやつだった!!……頼む千束、ここは俺の指示に従ってくれ。」
俺は出来るだけ千束を刺激しないように説得を試みる。
「まずは、そのボタンに向いている右手をゆっくり下ろしてくれ。いいか?ゆっくりだ。そして、」
「でもさ、ハチ?」
「どうした?」
「気になっちゃったんだ。」
おい、なんだ。そのなにかを悟ったような顔は。
「気になっちゃったら…さ………、しょうがないよね。」
「おい、止めろ。止めてくれ、まだ間に合うから戻ってこい!」
「いっけぇぇぇぇ!!!」
「やめろぉぉぉぉ!!!」
次の瞬間大きなサイレンの音がショッピングモール内にけたたましく鳴り響いたのは言うまでもない………。
____
現在、俺とボスは周りのお客さんや周囲の店の職員に平謝りを続けていた。
職員さんから厳重注意をボスが受けてようやく帰れそうだと思ったところに一人の男性が近づきボスに話しかけてきた。。
「失礼。」
「あ、はい。」
「私、こういうものですが。」
男性は懐からメモ帳のようなもの…警察手帳を取り出し、軽く開いて中身をボスに見せる。
そう、ドラマでよく見るあれだ。
「け、警察のかたでしたか。」
「生で初めて見た。」
「千束、うるさい。」
「警視庁の安倍です。一応、通報があって来てみたのですが…、今回はそこにいるお嬢ちゃんがいたずらにボタンを押してしまった……という事で間違いないですか?」
「えぇ、全くもってその通りです。私の責任です。」
「申し訳ございません。」
俺も頭を下げ謝罪をしてから、千束の頭を無理矢理下げさせる。
「ごめんなさぁい。」
「あぁ、いえいえ。責めている訳じゃないんですよ。何事もなくてホッとしました。ただ……、」
阿部さんは千束の前にしゃがみこんで目線を合わせる。
「いいかい、お嬢ちゃん。今回は大丈夫だけど次からは気を付けてね。悪戯にあのボタン押しちゃうといろんな人に迷惑がかかっちゃうから。」
「はぁ~い!」
千束が元気よく返事をすると阿部さんは千束の頭を軽く撫でてから立ち上がり、ボスのほうへ向き直る。
「ところで……、」
「?」
「この二人はあなたのお子さんですか?」
………………。
………………。
………しょ、職質されてるぅぅぅぅ!
いや、でも普通に怪しいもんな!大柄の黒人男性が顔も似ても似つかない子どもをふたりも連れて歩いてたら!
俺だったら2度見ぐらいする自信があるねっ!うん!
あっ、やべぇ。ボスが予想外のことで軽くパニックになっちゃってる。流石のボスも今までに職務質問なんてされたことがないか…。
どうしよう、助け船出した方がいいかな?
「最近、この辺りで子どもが誘拐される事件がありましてね。その件は既に犯人も捕まり、解決しましたが、一応ね。」
あぁ、今朝のニュースでなんかやってた気がする。
「あっいや、この子達は……その……、」
いや、めっちゃ動揺してんじゃん!!!
ほら!警察の人も疑いの目向けちゃってんじゃん。
事実無根なんだから堂々とバレない程度に嘘付いちゃえばいいのに。
このままだと帰るのが更に遅くなりそうなため、助け船を出すことにした。
よし、出来るだけ子どもっぽく行くぞ。
「
ボスの袖をつまみ軽く引っ張りながらそういうとボスが驚いた顔をこちらに向けてきた。
そりゃそうか。いきなりお父さんなんて呼ばれたら驚くよね。
そして今度は警察の阿部さんに声をかける。
「ねぇ、お巡りさん。」
「なんだい、ボク?」
「お父さんは、最近僕達ふたりをじどーよーごしせつ?ってところから引き取ってくれたんです。だから、悪い人じゃないんです。」
俺は阿部さんに見えないように腕を体の後ろに回し、千束にフォローをいれるように手招きをする。
俺の意図が伝わったのか、千束が口を開いた。
「そうだよ!お巡りさん!先生は悪い人じゃ、」
「先生?」
「あっ!」
千束は両手で口をふさいだが吐いた唾は飲めないし、もう後の祭り。
「児童養護施設から引き取った子どもに先生なんて呼ばせてるんですね?」
「あっいや、それは……。」
阿部さんが再び疑惑の目をボスに向けてしまったため俺は再びフォローをいれる。
「勉強を教えてもらってるんです!今通ってる学校が今まで通ってた学校より進んでて…。勉強教えてもらってるときに千束がふざけてお父さんのこと先生って呼んでるだけなんです。なっ!千束!」
「そっ、そうそう!そうなんです!!」
「………なるほど、そういうことでしたか。疑ってしまい申し訳ない。」
「あぁ、いえ。私のような人間が子どもを連れていたら疑われるのは当然です。」
「そうだ、お巡りさん。」
「ん、どうしたボク?」
「もうすぐこの近くのところに喫茶店を開くんです。もしよかったら来て下さい。サービスしますよ。」
「はははははっ。その年で商売上手だね。…わかった。機会があれば寄らせてもらうよ。」
「お待ちしてます。」
「では、私はこれで。」
阿部さんはボスにひとつお辞儀をしてから帰っていった。
姿が見えなくなるのを確認してから素に戻る。
「ふぅ~、やっと行ったか。」
「助かったよ、史八。しかし、店のことは言わなくても良かったんじゃないか?相手は警察だぞ?」
「身元もわからない不審者疑いの人物とどこで何をやってるか分かってる不審者疑いの人だったら後者の方を信用するはずです。この場はこうするのが一番だと勝手に判断しちゃいました。………いけませんでした?」
「いや、君の判断が正しい。」
「それじゃ今度こそ帰りましょうか。」
「えぇ~!もう帰るの?!もうちょっと遊んでこぉよぉ~。ねぇ~ってばぁ~。」
「ダメ。帰ったら説教だから。」
「なんで?!」
「当たり前だ!!」
______
今日は買い物に来ただけだったのに濃密な1日になってしまった。
買い物も既に済んでいる。後は帰るだけで出入り口に差し掛かったところで史八がふと足を止めとある店を見つめていた。
その店はペットショップのようだった。
犬か猫が欲しいのか?
こういうところは年相応なのかとほっこりして聞いてみた。
「どうした、ペット飼いたいのか?」
「ボス、……あぁいえ、そっちじゃなくて。」
「ん?」
史八は犬猫の赤ちゃんが入っているガラスケースではなく、その横にあるペット用品の方を見ていた。
ペット用品?
何かほしいのだろうか?いやまさか、ペットもいないのにペット用品は必要ない。
「やっぱり、」
「?」
「今回の騒動で分かりました。」
「何がだ?」
「帰ったら千束には鈴を付けようと思ってたんですけど、」
「ハチ?!」
「多分、鈴だけを付けてもどっかに行っちゃいます。だから……、犬用のリード付ければ良いのかなって。でも、千束は動き回るから長くなるリードにした方がいいと思うんですけど、そっちはどうしても値段が高くなっちゃって。」
「ハチさん?!?!」
息子の言葉が真剣な分、涙が出そうになった。
「史八。」
「なんです?」
「せめて…、ハーネスにしよう。」
「先生まで?!?!」
おまけ小話
お店でくつろいでいると、先生がハチに話しかけた。
「そうだ、史八。これを渡しておこうと思ってたんだ。」
先生はそういってあるものをハチに渡す。
あれは……。
「通帳と……、印鑑?誰のです?」
「お前のだ。」
「えっ?俺の!?あっ、たしかに俺の名前が書いてある。でも、誰が?」
「君の前の身元保証人……つまり、私の前任者だな。前に預かってたのを忘れてしまっててな。確かに渡したぞ。」
「渡すのが遅れたのは別にいいですけど…、参ったな。」
「何が参るの?」
「いやだって、記憶喪失なんだぞ。前の俺の身元保証人の人の顔も名前も思い出せないのに、お金だけ貰うなんて……。」
「あぁ、なるほど。……使いづらいよねぇ。」
「シン……、前の保証人はそんなことは気にしない。自由に使うといい。ただし、無駄遣いはダメだぞ。」
先生は何か言いかけたが、何を言おうとしたのだろうか?
不思議に思ったが考えても仕方のないことなのでハチに声をかけようと彼の方を向くと、手帳の中身を見て何故か固まっていた。
「ボス?」
「なんだ?」
「俺の前の身元保証人って………。」
「「?」」
「アラブの石油王かなんかですか?」
「…………。」
「…………。」
「……いや、私も詳しくは知らないが少なくとも石油王なんかではないはずだが………、何故そんなことを聞く?」
ハチは無言で先生に通帳の中身を見せる。
私も見ようとするが、先生に見せているため身長的に中身が見えない。
通帳の中身を見た先生が頭を抱えてしまった。
「・ンジ………お前・言・・つは。」
小声だったためよく聞こえなかったが、今はハチの通帳の中身が気になる!
懸命に手を伸ばしてようやく掴んだ。
さてさて、中身はぁ~~、
「わぁ、すごい!0がいっぱいある!!!」