闇に生き光に奉仕する男の話   作:ダレン シャン

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喫茶リコリコ 仁義なき戦いの話

 

夜も更け、丸い月が夜空を美しく照らしている。

ここは喫茶リコリコ。地域住民のかたや常連のお客さんの憩いの場であるどこにでもあるなんの変哲もない喫茶店。

しかし、その実態はDA…、日本の平和を守るためリコリスという少女を使い、国の裏側で暗躍する組織の支部である。

そんな喫茶リコリコでとある少女たちがそれぞれ紅と蒼の着物を着ながらちゃぶ台を挟んで向かい合って座っている。

 

紅の着物を着た少女の名前は錦木千束。彼女はDAに所属するリコリスの中でも歴代最強のファーストリコリスと言われるほどのトップリコリスである。

その所以はなんといっても弾丸もを回避することができる類い希なる動体視力であろう。

 

蒼の着物を着た少女の名前は井ノ上たきな。現在は錦木千束のバディであるリコリスだ。彼女はセカンドリコリスであるが、射撃に関しては現在のファーストリコリスと比較しても同等かそれ以上のものであろう。

 

そんなふたりが真剣な表情で向かい合い、俺たちはそんな彼女たちを見守っている。

 

「まさか…、たきなとこんなふうに戦うことになるなんてね。」

 

「そうですね…。ですが、これは真剣勝負!さあ、来なさい千束!!!」

 

「むむむむむ………。よし!コレだぁぁぁぁ!…あぁぁぁぁぁぁぁ、またかよぉぉぉ〜!!!!」

 

千束はたきなの手にある2枚のカードのうちの1枚を引き抜くが、カードの内側を見た瞬間にその場に崩れ落ちた。

 

「くぅ~、またジョーカーだよぉぉぉ…。」

 

感のいい人ならもう気づいただろう。

彼女たちが戦っているのは、そう…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ババ抜きである。

 

 

 

 

 

 

 

_____

 

なぜこんなことになっているか一から説明していこう。

今日の仕事終わり、例に漏れずに急に千束がみんなでボドゲやりたい!とか言い出したのだ。まぁ、千束のこのような発言は今に始まったことではないから別にいいのだが、そこで何をするという話しになり初心に帰ってババ抜きをしようということになった。

そして、現在絶賛絶不調のふたり。それが千束とたきなだ。

今現在、5戦目の最終局面。ふたりとも2敗ずつ。

4戦目の最後にボスからもういい時間だから次で最後だからなという言葉で負けず嫌いのふたりはすっかりヒートアップしてしまっていた。

 

先程も言ったが千束とたきなは今日は絶不調だ。今もお互いにジョーカーを引き合っている。最初は楽しんでいたクルミも飽きてしまったのか、タブレット端末を手にゲームをし始めてしまっている。

 

「こっちです!………ぐっ。」

 

今度はたきながジョーカーを引いてしまったようだ。

 

「へっへ~ん!そっちはジョーカーですよ~。たきなチャンは~ババに好かれてるのかなぁ~?」

 

「うるさいですよ!千束も同じようなものでしょう!!」

 

千束の煽りにたきなが更に熱くなってしまう。

こりゃまだまだかかりそうだ…。

 

そんなときにクルミが話しかけてくる。

 

「おい、史八~。あのふたりまだかかりそうだからコレやらないかぁ~?」

 

クルミはそういいながら手に持ったあるボドゲを見せてくる。

それはXENOというカードを使ったボードゲーム。プレイヤーがふたり以上いればできる心理戦が肝のゲームなのだが……。

以前、これで痛い目を見たことがある。

 

「やだよ。それクルミが勝つまで終わらないやつじゃん。」

 

「当たり前だ、勝ち逃げなんて許さん。」

 

「こっちがわざと負ければそれはそれで怒ってくるじゃん。」

 

「それこそだろう?ボクが求めるのは完璧な勝利。勝利ってのは譲ってもらうものじゃない、自分で勝ち取るものなんだ!」

 

格好いいことを言っていると思うが、実際はそうじゃない。

このハッカー、まじで自分が勝つまで何回も再戦を要求してくる。それが2回とか3回とかなら俺も許容範囲だが、勝つまで何十回も再戦を要求してくると俺も正直めんどくさくなる。

 

俺はXENOが正直に言って得意だ。まぁ、第六感のおかげもあるかもしれないが…。だから、クルミにも気づかれないようにわざと負けてやったときこのめざとい天才ハッカー様はそれを見抜いて、見た目相応な反応を示してきた。

 

やんわりとクルミに断りを入れると彼女も諦めたのか千束たちのほうに目を向ける。

 

「お~い、ボクはもう寝たいからさっさとどっちでもいいからビリ決めてくれぇ~。」

 

その言葉を聞いたとき千束とたきなはほぼ同時にクルミのほうを睨み付ける。

 

「ビリじゃない!ファイナリスト決定戦と呼べ!!!」

 

「そうですよ!!それにわたしたちはジョーカーを死守しているだけ!むしろジョーカーのカードを守れていない皆さんが敗者なのでは?!」

 

おいたきなよ、ヒートアップし過ぎだ。落ち着いてくれ。熱くなりすぎてルールを根本から否定するんじゃねぇ…。

 

「でも、もう確かにいい時間だし…、ここら辺で勝負を着けようじゃないか……、相棒?」

 

「出きるんですか?今の千束に負ける気はさらさらありませんよ?」

 

たきながそう言うと千束は不適な笑みを浮かべる。

 

「ふっふっふ。ずっとDAにいたたきなは知らないと思ってたけどね。」

 

「?」

 

「このババ抜きには……、必勝法がある!

 

「必……勝…法!?」

 

たきなは一瞬だけ信じられないという表情をしたがすぐに余裕のある表情に戻る。

 

「その手には乗りませんよ、千束。」

 

「ほう?私の言葉がハッタリだとでも?」

 

「だってそうでしょう?もし本当に必勝法なんてものがあるなら初めから使えば良かったじゃないですか。」

 

「甘いねぇたきな。たきなのうんk……じゃない。ホットチョコパフェ以上に甘いよ。」

 

たきなに一瞬だけ睨まれてすぐに言い直した千束。

そんな彼女は必勝法の説明をしていく。

 

「私がさっきまで必勝法を使わなかったのは使えなかったからだよ。」

 

「使えなかった?」

 

「この必勝法はね、ある条件が揃わないと使えないんだよ。」

 

「では、その条件が揃ったと……、そういうことですか?」

 

「まぁね……、このターンで終わらせるよ!!」

 

「勝負です!千束!!!」

 

千束とたきなは決戦に挑むような表情をしている。

あれ?コレババ抜きやってるだけだよね??

なんか頭がバグりそうな感じであるが、そんなことを露ほどにも思ってないであろう千束が俺に話しかけてくる。

 

「ねぇ、ハチ?」

 

「ん?」

 

「たきなが持ってるカード、どっちがババだと思う?」

 

たきなが訳が分からないという表情を見せるがこのとき、あまり考えてなかった俺は直感で自分の答えを口にしてしまった。

 

「左。」

 

「よっしゃ。」

 

「えっ、ちょっ、」

 

狼狽えているたきなからカードを抜き取るとようやく絵柄が揃ったのか千束は手札を二枚同時に捨てた。

 

「うぉっしゃ~~~!ビリ回避ぃ~~~!!!」

 

なるほど、必勝法とは俺のことだったのか。そして、条件とは俺が暇をもて余していることか。

確かに俺なら第六感による直感でどっちのカードを引けばいいのか分かる。

 

千束は腕を高々と突き上げ、たきなは自分の残った手札を茫然としながら見つめる。

暫くしてたきなが再起動した。

 

「ちょっと待ってください千束!ズルじゃないですか?!?!」

 

「ズル?なにがぁ?」

 

「なにがって………、ハチさんに答えを聴いてたじゃないですか!?」

 

「それは違うよぉたきなぁ~。私はハチの意見(・・)を聴いただけであって、他のプレイヤーの意見を聴いちゃいけないなんてルールはありませぇ~ん!」

 

「うっ……。」

 

千束が煽りぎみにたきなにそう言うと何も言い返せない。

そんな彼女に千束が更に煽る。

 

「もし仮にハチがたきなの手札の中身が解ってた上で聞いたら、それは確かにルール違反だけど、ハチは私の後ろにいるからたきなの手札は絶対に見えない。……ハチが透視能力があれば別だけど。」

 

「…ハチさんなら……もしくは、」

 

「あってたまるかそんなもの。」

 

お前は俺をなんだと思ってるんだ?!

 

「とにかく、勝負アリだねぇ!じゃ、ババ抜きよわよわのたきなチャン、後片付けヨロシク!」

 

「ぐっ。」

 

たきなが何も言い返せないのをいいことに千束がたきなの横で体を横に揺らしながら更に煽る。

 

「残念だったねぇ、相棒!でも仕方ないよねぇ!相手が悪かったんだよ!だってボドゲつよつよの私だもん!しょうがないしょうがない!まぁ!私のほうが強かったというか?勝利の女神に愛されてるというか?私こそが勝利の女神というか?!だから、あまり気にするなよ!たきなクン!!!」

 

最後にたきなの肩をポンと軽く叩いてから千束は帰り支度をするためか更衣室へと移動していく。他の皆もいつの間にか居なくなっていた。

 

たきなのほうを振り向くと彼女は黙ってトランプを片付けていた………が、なんだろう?たきなの後ろからどす黒いオーラのようなものが見える気がする。

 

確かに今の千束の煽りは目に余るものがあった。後で注意しておこう。

 

そう思ったときにたきなが口を開く。

 

「ハチさん。」

 

「な、なんでしょう?!」

 

いつもと違う声色に敬語になってしまった。

 

「千束の土手っ腹に風穴開けていいでしょうか?」

 

「ホンットにすいません!!!」

 

これ程怖いたきなは見たことがない。

 

「あなたに謝られてもわたしの気は済みません。」

 

「な…なら、こういうのはどうだ?」

 

「?」

 

俺はたきなにあるアイデアを出した。

 

_____

 

「千束。」

 

お店の開店前にたきなが私に話しかけてきた。

昨日の夜はテンションが上がってしまいちょっとたきな怒ってるかなぁ~と思ってたけど、どうやらそんなこともないようだ。

見たところいつもどおりのたきなである。

 

「なになに~どったの、たきな?」

 

「問題です。」

 

「お、おおう。ホントにどうした?」

 

「うるさいです。では、問題。赤くて綺麗なのは夕日。青くて綺麗なのは海。では、黒くて汚いものは?」

 

「えぇ~、赤くて綺麗なのは私で、青くて綺麗なのはたきなでしょ~。」

 

私が冗談めかして言うと、

 

「そういうのいいんで。」

 

「あっ、はい。」

 

「あっ、もしかして解らないんですか?トップリコリスとあろう人が?そうですよね?注射もまともに打てない人ですもんね?」

 

おっと、コレは?

 

 

「た、たきなぁ?もしかして昨日のやつ気にしてる?」

 

「いえ、他意はありませんよ?」

 

めっちゃ笑顔でいうじゃん、コイツ!!

絶対、引きずってるじゃん!

 

「ほら、千束。早く答えを。」

 

「え…えぇと、黒くて汚いものだよね?………あっ!」

 

「解りましたか?」

 

そういえば、この前ミズキが自分の肌のことを気にしていた気がする。…ということは答えは……。

 

「黒ずみだ!」

 

「残念、違います。」

 

「えぇ~、じゃあ解んねぇよ~。答え教えてぇ~。教えてくんなきゃ気になりすぎて夜しか眠れなくなるよぉ。」

 

「ヒントはわたしの目の前にあります。」

 

たきなの目の前って……。

 

「おいおい、たきな。このperfectな千束サンに黒くて汚いところなんて、」

 

「千束の根性とお腹です。」

 

「たきなサン!?!?!?」

 

「あっ、根性の部分は意地でも良いですよ。」

 

たきなサン!?!?!?!?

なにいってんの?!?!ホントなに言ってくれちゃってンの?!?!?

しかもめちゃくちゃいい笑顔だね?!?!

穏やかな笑顔がめちゃくちゃ怖いよ!恐怖だよ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうたきなには必要以上に煽らないと決めた瞬間であった。

 

 

 





黒くて汚いもの。

根性が汚い、意地汚い、腹黒い、ということですね笑
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