この話しはオリ主君の離反ルートです。
本編のアニムスを利用し、記憶が戻ったところから始まります。
オリ主君は千束ちゃん絶対助けるマンなのは変わりませんが、それと同時に吉松絶対殺すマンであります。
鬱ルートです。
結構、スッキリしない終わり方だと思いますが、暇潰しに読んでみてください。
それでは…どうぞ。
嘘の話 前編
アニムスから目覚めた俺は覚束ない足取りでビルから脱出する。
人目につかないよう路地裏に入り、一つずつ失っていた記憶をを確認していく。
「…………嘘だ。嘘だ嘘だ。シンさんが……、あんなことするはずない。シンさんがみんなを殺して…、院長先生を追い詰めて…。俺は……、それを忘れて……、くそっ、なんで、なんでこんな大事なことを忘れてたんだ。」
信じたくなかった。あの優しい笑顔で笑うシンさんが孤児院のみんなの仇だと……。自分はその事を一切覚えていなかったことを。
だが、アニムスで見た俺の記憶は過去にあった事実で変えられようのない真実だった。
………
…なら、俺のすべきことはもう決まっている。
俺が…………、
吉松を殺す。
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千束が謎の看護師に襲われ、目を覚ました数時間後私は一人店にいた。そんな時にスマホに電話がかかってくる。
画面には千束が襲われてから何度も電話をしたが繋がらず連絡を寄越すようにメールを残した相手の名前が映し出されていた。
『もしもし。』
「史八!ようやく繋がった。良かった、無事か?」
『えぇ、それよりもどうしたんです?何度も電話をかけてくれてたみたいですけど?』
「史八、落ち着いて聞いてくれ、不味いことになった。」
『?』
「お前の不在中、千束が山岸先生のところで謎の看護師に襲われた。」
『襲われた?…千束は無事なんですか?』
「…今のところはな。しかし、千束の心臓が破壊されて、千束の残り時間が短くなってしまった。」
『………。』
「史八?」
『千束はどれくらい持つんでしょうか?』
「山岸先生曰く、2ヶ月。動かなければ、それから少し伸びるそうだが…。」
『……そうですか。』
なんだ?さっきから何か史八の様子がおかしい。
シンジのところで記憶を取り戻したからか?
それにしても、今の彼に違和感を覚えた。
「史八……、大丈夫か?」
『ボス……、千束を襲った看護師に心当たりがあるんじゃないですか?』
「!」
『…俺は暫く単独行動します。これから俺に連絡はつかないかもなので、店のみんなには極秘任務が継続してると伝えておいてください。』
「なっ!ちょっと待て、」
『では。』
「史八!」
引き留めようとするが無理矢理、通話を切られてしまった。
記憶を取り戻した彼が何を考えているか分からない。
「史八……、お前は何をしようとしているんだ?」
私は切られてしまったスマホの画面に視線をおとしてそう、呟くしか出来なかった。
_______
最近、良いことがない。
たきなに心臓のことがバレてなんかギクシャクするし、そんな時に限って楠木さんに呼び出され、真島討伐作戦に参加しろと言われた。それはたきなをDAに戻すことを条件に了承したが……、
「ハチ、今どこにいるのかなぁ?」
まだ、ハチは帰ってきていない。
先生からは極秘任務中であるということしか聞いてない。
あ~、失敗したなぁ。DAに行った時に楠木さんに聞いとけば良かったぁ~。
そんなことを思いながら楠木さんから返して貰ったカメラで撮った画像を見ている。
「おぉ~、ホントにヨシさんだぁ。」
画像を見ていると当時の懐かしい記憶が思い出される。
ハチとの出会い。ちょっとしたケンカもしたこと。手術を怖がっている私を元気付けてくれたこと。安心させてくれたこと。
DAから出てからも先生と一緒に………、ずっといてくれたこと。
「………ハチ、寂しいよ。早く……、早く帰って来て…。」
_____
わたしはフキさんからDAへの復帰の辞令を受け取り、千束の心臓の情報を手に入れるため吉松と繋がっている真島と接触しようと一時的にDAに戻ることを決意する。
そのため、千束との思い出を作るために現在、千束と街へ遊びに出ている。
予定では水族館の予定だったのだが閉まっていたため、千束の提案でわたしたちは釣り堀に来ていた。
「楽しいですか?」
「楽しいよ!…たきなと居ればさ!」
千束はそう言ってくれているが、ふとしたときに彼女の顔が暗くなるときがある。
おそらく、彼のことだろう。
「………ハチさんのことですか?」
「えっ。」
「いえ、ここ最近千束の表情が暗くなるときがあるので…。」
「あ、あぁ~。………うん、ちょ~っち心配。」
「大丈夫だと思いますけどね、ハチさんなら。」
「うん…、先生も便りがないのは無事な証拠って言ってくれてるけど、こんなに長い間居ないのは初めてだから……。」
千束は自分のスマホの画面を見る。
おそらく、何度もハチさんに連絡を取ろうとしているのだろう。
店長からハチさんの極秘任務が長引いていることを知ってから千束はスマホの着信音に敏感になっている。
そんな時にわたしのスマホのアラームが鳴る。
「おぉ、時間ですな。」
それからわたしたちは一緒に電車に乗って、ゆうひの丘で雪が降るのを見届けてからそれぞれ別の道を歩きだした。
千束と別れてからDAに連絡した後、自宅へ帰るために人混みのなかを歩いているときに、ここに居ない筈の人の声が耳には入ってきた。
「千束のことをよろしく頼む。」
わたしはその場で振り返り、声の主の姿を確認しようとするが彼の姿は確認できなかった。
「ハチさん?」
彼は楠木指令からの極秘任務でここには居ないはずだ。
帰ってきたのか?…なら何故姿を隠す?
わたしの気のせいだろうか?
考えても、結局答えは出ずそう結論付けてわたしは自宅へ歩みを進めた。
_____
クルミと一緒にリコリコの開店前に千束の心臓について調べている時に千束がお店を閉店すると言い出した。
最初は冗談で言っていると思っていたがどうやら本気のようだ。
あたしはバンクーバーにいる未来の旦那に会いに行くためにクルミと一緒にタクシーに乗っている。
「まだ、たきながいる。」
延空木を見ながらそう呟くクルミに尋ねる。
「……あのバカの居所、まだ掴めないの?」
「あぁ、情けない話だが見つけられそうにない。…本当に史八が存在しているの疑いたくなってくるくらいだ。」
あの天下のウォールナットでも匙を投げるレベルか…。
「あの
あたしは窓から見える風景を見ながらそう呟いた。
_____
ミズキ達を見送ってから、お店の閉店のため掃除をしていたがいつの間にか夜になってしまっていた。
先生ときりの良いところで本日は終了とし、残りは明日へと回した。
カウンター席で先生のコーヒーを飲みながら尋ねる。
「………ねぇ、先生。」
「……なんだ?」
「…ハチから連絡とか来てないの?」
そう尋ねると先生は一瞬だけ体を硬直させるが、すぐに普段通りになる。
「いや、来ていない。………心配か?」
「…心配だよ~。こんなこと、今までなかったじゃん。」
私はカウンターに突っ伏しながらそう言った。
「何度も、電話とメールしてるんだけど、一切返事がないし……。」
「便りがないのは、」
「無事な証拠って言うんでしょ。……でも、不安だよ。便りがないのは……。」
「…………………そうだな。」
「もう、私は永くない。ハチが無事に帰ってきてくれればそれで、」
「千束、史八の前でその言葉を言うなよ。」
「分かってるよ。こんなこと言ったらハチに怒られることぐらい。」
でも、怒られてもいいからハチに会いたい。
最期の時まで会えないなんて嫌だよ。
………どこにいるの?ハチ。
______
翌日、真島が行動をおこし、以前に、取引された銃が都内にばらまかれ、ヨシさんも囚われてしまった。
私はロボ太の指示に従い、延空木はたきな達リコリスに任せ、旧電波塔にいるヨシさんを救出しに行く。
しかし、延空木にいるはずだった真島と遭遇し、地の利を活かされピンチになるが、たきなが助けに来てくれた。
たきなと協力して真島を拘束した後に、私はヨシさんを探しに行く。
階段を上がって上の階に到着するとヨシさんがいた。
_____
千束の後を追い、階段を上がったところで千束と吉松の声が聞こえた。
わたしは隠れてふたりの会話を聞く。
「君は分かっていないようだ。人生の役割が明確な人間は少ない!だが、君にはある。これ程幸せなことはない。」
「幸せ………?殺しが私の幸せなの?」
「君だけじゃない……、彼も、史八もそうだ。彼は記憶を取り戻し完全な
「……私は結構、幸せだった。出来れば誰かの役に立ちたかったんだけど…、あなたが私にしてくれたみたいに!」
「私はそんなことのために死にかけの人形のぜんまいを巻いたわけじゃないよ。」
「…………人形。……人形…か、上手いこと言うなヨシさん。」
わたしはもう限界だった。
クルミ曰く、吉松……、いやあいつは千束の新しい心臓を持っている。おそらくあのケースだろう。ここであいつを殺して奪う。
千束に恨まれようとも関係ない。
わたしは手に持っている銃のセーフティーを外す。
「君にその銃は相応しくない。返してくれ。」
千束は俯きながら奴に銃を渡してしまう。
奴は千束の銃から店長の弾の入ったマガジンを抜いて実弾の入ったマガジンを代わりに入れる。
「君には、実弾が相応しい!」
そう言って千束に向けて発砲するが、千束はそれを避ける。
「素晴らしい!」
わたしは奴に威嚇射撃をしながらふたりの前に出る。
「動くな。次は眉間に撃ち込みますよ。」
「たきな、銃を下ろして!」
千束にそう言われるが、千束を助けるためにもう手段は選んでいられない。
「吉松、お前が真島と共謀して、千束をここに誘い込んだのは分かっている。いや…、真島も利用したんでしょう。真島に武器を渡したのもお前、ウォールナットにラジアータをハックさせたのも殺したのもお前……!あぁ後、松下もお前だ。そして…、千束の心臓も壊したのもお前。………だけど、そんなことはもうどうでもいい。そのケースさえ手に入れば。」
わたしはそう言いながら、千束が射線から外れるように移動する。
千束が吉松の足元においてあるケースに目を向ける。
「クルミが掴みました。そのなかに千束の命がある。」
「ハハハ!物知りだねぇ、たきなちゃん。」
「千束。」
吉松はそう言うと、ネクタイを緩め、シャツのボタンを外して胸部を露にする。
そこには、皮膚が赤黒く変色した傷跡があった。
「お前を生かす心臓は今は…ここにだよ。私を撃って手に入れなさい。」
そう言って吉松は実弾を込めた千束の銃を彼女の手に握らせ、銃口を自分の額に突き当てる。
「これで、君はまだまだ生きられる。さぁ!躊躇うな。史八の様に君自身の価値と人生を取り戻すんだ!そのためなら、私は命を捧げるよ!」
「狂ってる。」
「千束!!!」
「バカにしないで!!撃てるわけないでしょ!!!」
千束にはもう時間がない。この狂人の茶番には付き合いきれない。
わたしは千束に近づき、彼女の肩を掴み退けてから吉松に向けて撃つが千束にそれを阻まれてしまう。
「なにしてんの?!」
「千束が出来ないなら、わたしがやります!」
「そういうことじゃな、」
「ハハハハ!千束の前で君が私のことを撃つことなどできないよ、たきなちゃん。」
いちいち癇に触る奴だ!
「その心臓、私が引きずり出してやる!!!」
心臓に手を伸ばすが千束に止められ届かない。
「離して、千束ぉ!!!」
心臓の愉快そうな笑い声が頭に来る。
わたしにあの人のような……、ハチさんのように力があればこんな奴!!!
そんな時、わたしと千束の眼前をナイフが通りすぎる。
上を見ると鉄骨の上に千束を襲った女が立っていた。
「お前ぇ。」
わたしは女の蹴りを腹部に二発喰らい窓際まで吹き飛ばされる。
衝撃で後ろのガラスがひび割れる。
次に女の膝蹴りに当たった瞬間、後ろのガラスが完全に割れ、わたしは運良く、下にある鉄骨にぶら下がる。
女がナイフを振り下ろそうとするが、千束がそれを阻む。
その後、ワイヤーで女の片腕を拘束が、吉松が上からわたしに向かって発砲してくる。
「やめてぇ!ヨシさぁん!!!」
次の瞬間、千束の方から銃声が聞こえる。
どうやら千束が実弾を発砲してしまったようだ。
「あぁぁぁぁぁあ゛ぁぁぁぁぁ!」
千束の悲痛な叫びが聞こえる。
そんな彼女にわたしは声をかける。
「行って!」
千束は目を涙を浮かべながら、心臓のもとに走って向かう。
あの傷では自力でまともに動けないだろう。
後は、わたしが千束を襲った女を何とかすればいいだけだ。
____
私はヨシさんのもとに走って向かい、壁を背に座っている彼の傷を確認する。
「…良かった。弾は抜けてる。」
こんな時にハチがいてくれれば完璧に処置してくれるのに…。あぁ、もっとちゃんと教わっとけばよかったぁ!
私がそんなないものねだりをしているとヨシさんが口を開く。
「これじゃあ、死なんぞ。」
ヨシさんは私の手を取り銃口を自分の胸に当てる。
そんな彼に私は我慢できなくなって彼の頬を叩く。
「命を粗末にする奴は嫌いだ!」
「………嫌いだよ…。ヨシさん。」
私はヨシさんの胸に額を当てる。
「君の為なんだ。…何故分からない。」
「違う!世界の為なんでしょ!?」
「同じ…事だ。」
「私には世界よりも大切なものがいっぱいあるんだ。」
いつも首から下げていたチャームを外す。
「ヨシさんがくれた時間でそれに気づけた。…これは返す。」
私はそう言ってヨシさんの手にチャームを置く。
「…ヨシさんにはホントに感謝してる。…だから、私の代わりに元気でいて。……あぁ、先生の弾は返して貰うね。」
私はマガジンを実弾のものから先生の弾のものに変え後ろの気配に向かって撃つ。
後ろを振り向けば床に女がうずくまっていた。
「たきなはどうした?」
女にそう聞くとガラスの割れる音がしてそちらに目を向けるとたきなが立っていた。
頭から血が流れているが無事なようだ。
「良かった。」
たきなが助けにこちらに向かって歩いてくる。
速度がどんどん速くなり、たきなの狙いが分かった瞬間、女にヨシさんを任せてここから離れるように指示する。
「行って!!!」
たきなはヨシさん達に向けて躊躇なく発砲するが私がそれを止める。
「たきな、もういい!」
「離して!心臓が逃げるぅ!!!うわぁ゛ぁぁぁぁぁ!!!」
「ヨシさんを殺して生きても!!!それはもう、私じゃない。」
私がたきなを静めるように抱き締めると、たきなの体から力が抜ける。
「嫌だ。」
「ヨシさんの代わりに生きるのは私には無理だよ。」
「……嫌だ、千束が死ぬのは嫌だ。」
「ありがとう。……でも、私はもう居ない筈の人。ヨシさんに生かされたからたきなにも出会えた。…私だけじゃない。お別れの時はみんなに来るよ。でも、それは今日じゃない。」
「そうでしょ。」
私がそうたきなに伝えると彼女は顔をあげる。
その時、窓の外にヘリが止まり中からクルミが出てきた。
____
私は姫蒲君の肩を借りながら通路を歩いている。
そんな時、前から足音が聞こえてくる。姫蒲君がナイフを構え警戒するが、紺色のコートに身を包みフードを深く被り顔の見えない
「やぁ、君か。こんなところでどうしたんだい?………史八。」
私の問いには答えずに史八は口を開く。
「傷…………痛そうだな。誰にやられたんだ?」
「ふふっ、千束だよ。……と言っても君は信じないだろうが。」
「いや、今のあんたは嘘をついていない。事実なんだろう。」
「第六感か……。素晴らしい。君は遂に
「……さっきあんたが言ってたじゃないか。」
「?」
「俺は
彼がそう言った瞬間、姫蒲君が史八に向かってナイフを突き刺そうとするが、彼は容易に彼女からナイフを奪い取り、彼女の顎を殴り付けて意識を狩り取る。
「貴様が千束を襲った看護師か?殺してやりたいところだけどあまり時間がないんだ。……少し寝てろ。」
そう言って史八は私に歩いて近づいてくる。
私は痛みで立っていられず座りながら史八を見上げると彼のフードの下から彼はフードの下から鋭い眼光を覗かせる。
「ハハハ…、いい眼だ。君は遂に完成された。完璧な
「……
「千束のために私を殺す…か。」
私は史八に自分の胸の傷を見せる。
「だが、君は私を殺せるか?千束の心臓は
「関係ない。」
「…関係ない?」
「心臓がケースの中にあろうと、あんたの中にあろうと……、俺はあんたを殺す。そのためにここに来た。あんたが生きてると………千束は幸せになれないんだ。」
そう言ってから史八は左手からリストブレードを出して私の肋骨の間を通すようにゆっくりと刃を進ませ、刃は私の柔らかい心臓を貫いた。
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俺と吉松は白い不思議な空間にいる。
俺は倒れた吉松を抱き上げるようにしてしゃがんでいる。
「…良いものだな。自分の創り上げた才能に自らの命を終わらせられるというのも。」
「俺はあんたの欲望から生まれた。しかし、欲望から価値あるものが生まれることはない。」
「君の存在に価値がないと?……違うな。君には価値がある。だから、君はその才能を世界に………、いや、ここでの問答はやめよう。どうせ私はここまでだ。
言葉を言い終わる前に彼は旅立った。
俺は彼の目を指で閉ざす。
「汝、誇りを抱きて逝け。そは意味なきものなれど…眠れ、安らかに。」
俺は旅立った彼に向けて最期の言葉を贈った。