リコリスリコイル case WANTED 作:watomal
3
取引が行われる廃ビルから100m程離れた建物の屋上から千束、たきな、一成の姿があった
3人は双眼鏡を使い様子を伺う
「ここが取引が行われる場所ですね、建物の中に7.8人、ビルの外にも5.6人ですね情報通りの人数です」
たきなが情報の確認を行いながら後のふたりは突入の準備を済ませる
「んじゃ、ちゃっちゃか終わらせますか!」
「………」
「一成さん?どったの?」
「ん、あぁ、ごめんね、仕事が始まる直前には黙りこくっちゃう癖があるんだけど気にしないで、ただ単に集中してるだけだから精神統一みたいなもんだよ」
「ほぇ〜すっごい、プロって感じがする!」
「君も一応プロでしょ…」
こんな会話のやり取りだが一成はどこか安堵した表情を見せる
「逃走経路も確保出来ました、2人とも準備はいいですか」
「いつでもOK!」
「大丈夫!俺も行けるよ!」
2人は静かに頷き、たきなが号令をかける
「突入5秒前…4..3..2..1..行きます!」
たきなの掛け声ともに3人は突入する
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ここには警戒来てないのか…ラッキ〜」
ルートは取引の行われる丁度正面の位置
ビルがまだ使われていた頃であろうデスクや椅子が隅の方で雑に置かれている
千束達は出来るだけ取引が見える位置まで移動し身を隠す
「ちゃんと荷物を受け取るところを確認してから阻止しないとねぇ〜、渡した側と受け取った側の素性もハッキリさせたいし♪」
「千束…ちゃんと確認してくださいよ…」
たきなのボヤキが聞こえてくる
「わーかってるよ〜!お母さんかたきなは!
あ、来たよ!」
千束はたきなの言葉を跳ね除け姿を現した作業服やスーツを着た男たちの姿を目撃する
「あいつらが今回の標的か…一応だけでプランは?」
一成が千束に尋ねる
「荷物を受け取るところを確認次第、殴る蹴る打つの3択だよ」
「…物騒だなおい」
「こんな仕事してて物騒とか言わないで下さい」
「お、俺にも容赦なくツッコンでくれた」
一成はたきなに初めてツッコンでくれた事に喜んだその瞬間
「あ!荷物を受け取った!」
千束が叫び3人は飛び出した!
「「「動くな!(ください)」」」
声を揃え警告する
「噂の制服を着た娘か!男がいるなんて聞いた事ないが邪魔される訳にはいかん!お前ら!殺せ!撃て!撃て!」
荷物を受け取ったスーツの男が叫び武装した男たちが一斉に発砲を開始する!
パンッ!パンッ!
ズガガガガガ!
ハンドガンやアサルトライフルの発砲音が重なり
廃ビルの中に響く
たきなは遮蔽物に隠れながらタイミングよく撃ち返し足や手に弾丸を叩き込む
「千束!一成さん!早く荷物を回収して下さい!」
たきながそう叫ぶ数秒前に既に走っている2人の背中があった
「くっ…!怯むな!撃て!撃て!」
ヒュン!
「(え?この子いま弾丸避けた?なんつー動体視力してんだい…)」
撃ってくる弾丸を次々と紙一重で避けていく千束の姿を目の当たりにする一成にも弾丸の雨が降り注ぐ
「おっと」
パンッ!ガギンッ!
「(す、すご…一成さん撃たれた弾に弾丸を当てて相殺してる…)」
千束もまた一成の行動に驚きを隠せない
「早くズラかるぞ!」
複数人の男が壁隣アサルトライフルで応戦する
千束と一成は急いで左右の遮蔽物に身を隠しす
その間にも標的は走って逃げていく
「やばいやばい!逃げられちゃう!」
焦る千束に反するように嫌に冷静な一成が
身を空に投げ出す
「え?なにするの!?」
パンッ!シュルルルルルル
一成が撃ち込んだ数秒後、数人の男の壁の後ろを走り去っていくスーツの男だけが足を抑えながら倒れ込む
「弾丸が…曲がった…?」
後方の位置にいたたきながそう呟く
まるで野球の投手投げるサイドスローのように大きく腕を振りかぶり撃ち出した弾の起動は弧を描き走り去る男にだけ見事命中させたのだ
「な、何をした!」
「これはバレットカーブ…弾道が曲がらないって誰が決めた?」
千束とたきなは(この男…只者じゃない…)
生唾を飲み込み一成の姿を眺めているだけだった