ようこそ超人が支配する教室へ   作:口の端にほっぺが!

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違和感

生まれながらにして、俺は勝ち組に属している。

 

裕福な生まれ。イオノヨーカドーの社長の一人息子として生まれた俺は、両親の愛情を一身に受け、父親の跡取りとしてふさわしくなるための英才教育を受けた。

 

世界最高峰の大学を出た二人の息子だ。才能も世界最高峰レベルと言って過言ではない。

 

勉強は常にトップ。将来必要でない分野においてでも、常に人の前に立ち続けた。

 

運動もそうだ。幼い頃からいつでも5つのスポーツを並行して学び、大した練習をせずとも国内でトップレベルに食い込めるほどのポテンシャルがあることを確認した。中学生で始めたサッカーでも、それまでブロックで2回戦敗退だったようなチームを全国大会出場まで引っ張ったのだ。自らも優秀選手に選ばれ、一躍時の人となった。

 

見目も言わずもがな。その美貌、スタイル。母親譲りの見た目は、誰もが羨むレベルで完成している。コミュニケーション能力もそれに引きずられるように高く、人間関係で困ったことなどない。

 

俺は、勝者であり続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね、ね。美颯くんてさ、どんな曲が好きなの?」

 

「あ、それ気になる!K-popとか?見た目的に洋楽とか好きだったり?」

 

4月1日。入学式が終わった日の夕方。

 

Bクラスはその流れのままクラス会をすることになり、全員でラ○ンド・ワンへと行くこととなった。

 

卓球、バブルサッカー、バスケ、テニスなどなど。

 

色んなスポーツをやってみたり観戦したりで、Bクラスは一気に距離を縮めた。満足に体を動かせた颯や紗代あたりは、楽しそうに大笑いしていた。

 

それと同様に、男子諸君も嬉しそうだった。

 

何がとは言わないが、よく揺れたからだ。

 

こればっかりは、言わねばならない。よくやった颯。今日のMVPは、クラス会にラウ○ド・ワンを提案したお前だ。

 

兎にも角にも、みんなでたくさん体を動かしたのだ。

 

それは俺も同じで、そうなるとどんなスポーツも俺の独壇場。持ち前の身体能力と才能で、見ている女子たちの目をメロメロにさせたわけだ。やったね。

 

そうして、程よく疲れたあと。

 

心地いい風に吹かれながら、いくつかのグループに別れてショッピングへと移行した。

 

帆波たちブティックチーム。颯たちカラオケチーム。そして、俺たちマーケットチームだ。

 

神崎、そして大勢のモブ女子ーズ。周りで俺たちに話しかける女子は津辺仁美や小林芽衣といったカースト上位勢が多い。対して、後方では南方こずえや二宮唯といった女子たちが楽しそうに話を咲かせている。

 

ちなみに紗代はカラオケに同行し、遠藤絵美や姫野ユキといった一匹狼はラ○ンド・ワン前に帰宅している。

 

「そうだな。最近はK-pop、B〇Sだったか。あのグループの曲をよく聞いてるぞ」

 

「え!おんなじ!あたしもB〇Sの曲めっちゃ大好きでさ。最近でた曲知ってる?dyn〇miteってやつ」

 

「それウチも知ってる!めっちゃSpo○ifyのおすすめに出てくる」

 

「つい口ずさみたくなっちゃうもんな。最近は風呂でずっと流しっぱだよ。隆二はどうだ?どんなジャンルを聴くんだ?」

 

「...俺か」

 

「あ、気になる!どんなの聞いてるの?」

 

「───あれか、もしかして坂道推しか。いいじゃんか。アイドルはいつの時代もカッコ可愛いもんな」

 

「いや、そういう訳じゃ」

 

「え、隆二くんアイドルオタクなんだ!結構以外~」

 

「ウチも推しだよ!どの坂推してるの?」

 

「───」

 

「拗ねんなて。ごめんよ、隆二。で、どういう曲聴いてんだ?」

 

「...デスメタルって、知ってるか?」

 

「もっと意外だ...」

 

生鮮食品売り場の前で、とてもくだらない話を続ける。

 

まあ、友達付き合いの序盤なんてこんなもんだ。当たり障りない会話が心地いい。

 

10人くらいでゆっくりマーケットを回りつつ、各々カゴの中に必要なものを詰め込む。俺は2、3日ほどの献立を思い浮かべつつ、必要になるものを色々と入れていく。

 

今夜と明日はパンがメインの洋食になるか。ラ○ンド・ワンに行く前に部屋で確認したが、炊飯器がないという事態が発覚した。全体グループで女子たちが騒いでいたためすぐにわかったが、なかなか致命的なことだと思う。いずれ家電量販店にも行く必要があるだろう。

 

「あ、ねね見てこれ。無料なんだってさ」

 

モブ女子の1人。仁美が珍しいものを見たと声をあげる。指差す先を見れば、出口の近くに『無料』という看板があった。

 

近づいてみれば様々な食品が置かれ、それとは別れていくつかの雑貨もあった。シャンプーなどの洗剤や文房具といった日用品が占めている。『1日1人5点まで』と但し書きも添えられていた。

 

「0円か。腐っている、訳では無いのか」

 

「みたいだな。確かに新鮮ではないようだけど───」

 

隆二がじっと観察するのを横目に、俺は商品をいくつか見ていく。

 

「え、無料の商品なんてあるんだ」

 

「ふーん。使う人なんているのかな。毎月10万あるのに」

 

後ろから二宮唯と南方こずえも興味深そうに覗いている。全員がこのコーナーの存在を不思議に感じているようだ。

 

「たしかにな。お金を使い切った人への救済措置だとしても、毎月10万もあれば必要なんてないだろう」

 

「んーでもさ。単純にいらなくなったからただにして売ってるだけじゃない?」

 

「...いや、その可能性は低い。そこまでこの学校に無駄な予算をかけられる余裕はないだろう」

 

仁美のあっけらかんとした物言いに隆二は真剣に答える。

 

数人がこの存在を疑問に持つ中で、とりあえず買い物を終わらせようと声をかけた。

 

隆二のいうように、無料コーナーがただ単純に生徒の助けになっているわけがないだろう。なにか意味があるだろうし、一月で10万を使い切ってしまうようなやつに、この措置は甘すぎる。むしろ、残高0円になり次第与えられるペナルティがある、そんなルールがしかれている方が妥当だ。そんな可能性も無くはないが、さすがに説明が入るはずか。

 

いや、そう考えると『Sポイント』についての説明が簡単にすぎる気がする。

 

「毎月10万支給」と明言していない以上、次の月には大幅に下がっている可能性もある。むしろ、初月に10万円も配布される方がおかしいのだ。

 

次の月に支給される金額が変わると仮定するのなら、それは一体何を基準にしているのだろうか。可能性が高いのは個人の成績か。次点でクラスごとの成績か。ランダムというのも無くはない。いや、それは相当不平等だろう。ありえないか。

 

判断するにはまだ材料が足りない。それに、ここまで疑問を追及できた生徒がどのくらいいるのか。しばらく考え込んでいる隆二は何となく気づいているようではある。

 

まあ、最悪教師側に悪印象を与えないようにしろ、と注意喚起をすればいいだろう。

 

「なあ、美颯」

 

「...ん?どうした、隆二」

 

女子ーズと寮の前で別れてすぐ。隆二は俺にその場に留まるように頼み、言葉を切り出した。

 

ずっと考えるように俯いていた隆二が、その鋭い目をまっすぐ向けてきた。

 

「疑問がある。俺たちは本当に、来月も10万ポイントを得ることができるんだろうか」

 

いい兆候だ。隆二からは確信めいたものが伺える。疑問から遡って、星之宮先生の発した言葉の違和感に気づいたらしい。やはり、自己紹介前に感じたことは正しかったようだ。

 

さて。なんにせよ情報が足りない。今打てる手だては限られている。

 

「そうだな。その疑問は真っ当なものだろう。多すぎる支給ポイント。対して『無料コーナー』の違和感」

 

「『この学校に入ることが出来た君たちには、それだけの価値がある』。星之宮先生はこう言っていた」

 

「ああ。隆二の推測は俺と同じだ。学校に入学したことの褒賞が今回の10万ポイントだとしたら、来月は何で金額が決まるんだろうな」

 

「そうか...!!すると5月からは別の基準で金額が決まる可能性が高い───」

 

「候補はいくつか浮かんでいる。それにそのどれもが解決の糸口が見えている。明日には行動に移すつもりだ」

 

「ちなみに糸口というのを聞いてもいいか?」

 

「簡単な事だ。上の学年の事情を調べる。他クラスのもつ情報を探る。そして最後の手段が教師に聞く、ってところだな」

 

それを聞いて隆二は納得したように頷く。

 

「各々の得意な実力を伸ばす学校だ。こういった推理も生徒たちでさせるわけか」

 

「ああ。実力は何も学力だけじゃない。身体能力だとかわかりやすいもの以外に、こういった───推理力だとか問題解決能力を試すんだろう」

 

「わざと真相をかくし、少ないヒントで推理させる、今回の筋はこんなところか」

 

少ない言葉で、隆二は俺と同じ解釈に至る。実に頭の回転が早く、実に理解力が早い。まさに、この学校はこういった人材が豊富にいるのだろう。

 

「ともかく、他学年や他クラスへのインタビューは任せてくれ」

 

「ああ。だがいいのか?負担が大きいはずだぞ」

 

「まあ、俺もその辺は分担するさ。帆波や紗代あたりに頼むつもりだ」

 

「納得だ。それと、情報が集まったら伝えてくれると嬉しい。俺も微力ながら手伝うつもりだ」

 

「ああ。そのしよう。頼りにしているぞ」

 

話は終わり、寮へとはいる。6階の隆二と別れ、俺は8階へ昇った。

 

全16階あるうちの下半分が男子寮となっているのだが、その一つ一つの階にも、多くの扉があった。そのうちのひとつに、鍵を開けて入る。

 

電気をつけた。

 

「さて...」

 

さすが国立の学校。寮ひとつとってもお金のかけ具合が半端ない。

 

部屋の、主にコンセントの位置を確認しつつ、荷解きを行っていく。

 

同時にいくつかの食材を取り出し、料理を始めた。

 

1時間半ほどして、食事と入浴を終えた俺はふかふかのベッドに腰を下ろしていた。

 

手元にはスマホ。

 

画面には通信・連絡アプリのホーム画面が表示され、いくつかの個人名とグループ名が並んでいる。

 

クラスグルで通知が現在進行形で溜まり、その下には何人かの女子が続く。颯からも連絡がきたようで、早速『サッカー部の坂東先輩にあった!明後日部活やるらしいから一緒に行こう!』と連絡が入っている。

 

そのうち部活動説明会があるだろう。そのためあまり急ぐつもりはなかったが、せっかくだから颯と行ってみようか。なんとも行動の早いことだ、と少々笑う。

 

ひとまず、来たメッセージに返事を返し、連絡先を交換した女子にも何人か選んで挨拶を送る。あまり時間はかけたくないが、マメな男というのは安定して評価が高い。

 

そうして、1人の女子生徒へと別のメッセージを送る。

 

「少し聞きたいことがあるんだけど、今電話って出られるか?」

 

ちょっとした挨拶を交わしあったあとの要求。向こうは問題ないようで、すぐに諾との返事が来た。

 

小気味よく携帯が震える。

 

「もしもしー」

 

『こんばんは、美颯くん。今日は楽しかったね!』

 

「ああ。このクラスで良かったと本当に思うよ。颯とかめっちゃはしゃいでたもんな」

 

『うんうん!ていうか、美颯君そんなに運動できるなんて思わなかったよ。全部上手かったじゃん』

 

「そういう帆波も相当だったと思うな。みんな驚いてたのは一緒だよ」

 

まあ、男子が驚いた理由はそのぼでぃーにあるんだけどな!そんなことは一切口にはしないが。

 

いくつか今日の出来事を笑い合う。お互いにある程度話題を出し合ったあとで、帆波が切り出した。

 

『そういえば、話があるんだったっけ』

 

「ああ。プライベートポイントのことだな。疑問に思う部分が多い」

 

『あ、それわたしも思った!毎月10万ポイントなんて多すぎるもんね』

 

その後、聞く姿勢に入った彼女に隆二との会話をいくつか伝える。他学年と他クラスの生徒から情報を収集したいと言ったところで、帆波から反応がきた。

 

『あ、じゃあ上の学年への聞き取りはわたしに任せて。ちょうど聞きたいことがあったんだ』

 

「そりゃありがたいな。俺は明日のうちにほかのクラスを見回ってみるよ」

 

『うん!毎月入るポイントが変動するなんて一大事だもんね。クラスのことじゃなくても、なにか心配事があったら頼ってよ。できるだけ手助けするから』

 

「助かる。遠慮なく頼らせて貰うよ」

 

『うん!これからよろしくね!』

 

「ああ、よろしくな。おやすみ」

 

『うん。おやすみー』

 

会話を終え、スマホに目を落とす。明日の行動をいくつか考えつつ、10時半までチャットで会話してから、スマホの画面を消した。

 

目下のところ、また別に気になる点を見つけてしまっている。

 

改めて、寮での生活のマニュアルを手に取った。

 

「水道代、電気代、ガス代が無料なのか」

 

これは、本腰を入れる必要がありそうだ。思えば、無料コーナーのラインナップにも違和感はあった。「所持金がなくなっても、最低限の生活はできる」。そんな商品ばかりだった。ここまで保険をかけているのは、所持金がなくなる可能性の高さを示しているような気がしてならない。

 

支給される金額の変動は間違いないだろう。そして、それが増える可能性より減る可能性の方が高い。その上変動する量は、想像よりも大きなものとなる可能性が高い。

 

裏付け、証拠。そして新たな情報が必要だ。

 

無料コーナーに張り込んで、利用する生徒の特徴を調べるもよし。無料コーナーのほかの救済措置を調べるのもありだ。

 

なんにせよ、行動を起こす手札が足りない。今回のうちは情報量が不足しがちになるだろうが、今は満足に動く手足を育てる時間だ。

 

今日相対した生徒の情報を思い出しながら、部屋の電灯を消して目を瞑った。

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