「なに、簡単な話よ。お前さん、まだ言ってないことがあるじゃろう?サカズキ...!!」
「...」
会議室は、しんと静まり返っていた。
「言いたくないならワシから言ってやろう...今回のバスターコールは、“不当”であったとな!!」
「...そこまで言うからには、証拠があるのだろうな。ガープ」
カモメを乗せた海兵さん...センゴクさん?もどこか懐疑的だ。
「証人がおる。実はすでに会議室の外に呼んである。入れてもええか?」
「用意がいいな。許可する。入れてみろ」
会議室の扉の前にいた海兵さんが扉を開け、外にいた人物を招き入れる。
そこにいたのは...え。
嘘でしょ?
「...邪魔するぜェ」
そこにいたのは。
「紹介しよう。ワシの友人の...“ヒグマ”という」
山賊“ヒグマ”だった。
〜証言開始〜
「俺はゴア王国の外れで山賊をやってた。どうせバレてんだろ?隠してもしょうがねェ」
「聞きてェ話ってのは、最近入ってきた新人2人のことだろ?知ってるよ。妙に仕事できる連中だったからな...!」
「あいつら、海兵が来たと見るや逃げ出したらしいじゃねェか...!しかも女連れて!ふざけやがって、あんなネズミが潜り込んでたとはな」
「...ふむ。いくつか聞き捨てならない箇所があったが、要するに...」
「この“ヒグマ”の仲間だった2人の山賊...!そいつらが問題じゃ。ワシはほぼ間違いなく...」
「そいつらが
ざわざわざわ...!
「静粛に。...ガープ、話を続けろ」
「この2名の山賊は、ワシの顔を見たその瞬間に逃げ出しおったと考えられる。ワシはフーシャ村にはめったに寄らん。賊共に顔を覚えられているとは考え辛い。そもそも中途半端な実力ではワシから逃げ切ることなど出来ん。奴らがただの賊ではない証拠よ...!」
...あ。
それを聞いて、私も思い出した。
船の中で私とルフィを捕まえた山賊。彼らは妙に闇討ちに慣れていた。しかも、ルフィをガープさんの孫だと言い当てたり、ガープさんのことを知っている風でもあったし...もしかしたらあの二人が...?
「...ふむ、少し弱いな。決定的とは言えん」
「重要なのは奴らがCPであるということじゃない。山賊共の中に政府の役人が混じっておる可能性があるという状況よ...!タンボ長官!」
「えっ!あっ、は、はぁ...」
タンボさんは、いきなりガープさんに話を振られて椅子からずり落ちていた。
...なんだか可哀想に思えてきた。がんばれ。
「この前提を踏まえた上で、お前さんに聞きたい...!CPは、現地調査のため山賊の中に役人を紛れ込ませていたのかと...!」
「...」
タンボさんはその質問に対し、どこか俯いた様子で首を横に振った。
「...いえ。そんな事実は、ございません」
「...本当か?」
「...!」
ガープさんに睨まれ、だらだらと冷や汗をかくタンボさん。
場が膠着する。
「...ふむ、そうか。そりゃ悪かったのう、タンボ長官。いらぬ疑いだったようじゃ」
先に折れたのは、ガープさんだった。
「...話は終わりか?ガープ」
「うむ。ぶわっはっはっは!悪いのぅ、ワシのとんだ勘違いだったようじゃ!話の腰を折って悪かった。ほれ、続けてくれ」
「...では、この件については解決したものとする」
センゴクさんが、どこか訝しげにしながらも話を進める。
「次の議題に移る。“トット・ムジカ”と、その宿主である少女について」
...!
きた。
「まず、この件については国家転覆の疑惑がかけられている本人が証言しなければ始まらない...よって、彼女の“口”を只今より解放する」
...ざわざわ。
「静粛に。万が一の事態に備え、中将以下の将校は手元の耳当てを装着せよ。彼女が我々に危害を加えようとした場合、意識を保っている者が対処するのだ」
センゴクさんがそう宣言すると、会議室にいる海兵さん達がなにやらカッコイイデザインの耳当てを装着し始めた...それ、目のバイザー部分要るのかな。
そうこうしていると檻の近くに海兵さんが寄ってきて、私の後頭部にある機械の拘束を外す機構を動かしてくれた。
バカッ、という音と共に機械が外れる。
「喋れ」
「あ、あの...ウ、ウタだよ〜...」
「「「...」」」
「ごめんなさい」
何を言えばいいのか迷って、咄嗟に前世での“挨拶”が出てしまった。
重い空気を変えようと思ったのに、完全に空気読み間違えた。消え入りたい。この世から。
「さて...ウタ、といったな」
「は、はい」
「貴様は『クゾンサ島』にて“トット・ムジカ”を故意に解放した。この点について、間違いないな?」
「...多分、そうです」
「多分?」
「その、あんまり覚えてなくて...「ドンッ!!」うひぃっ!!?」
「覚えてないじゃと!!?そんな言い訳が通用するかァ !!」
突然議台を叩く大きな音が響き、私の体が跳ね上がる。今ので多分、寿命10年は縮んだ...!
「あらら、待てよサカズキ。まだウタちゃんが話してる途中でしょうが。遮るなよ」
「ん〜〜。ただ、好きに喋らせておくのも問題だねェ〜〜〜〜。なにせ“ウタウタの実”は“声”に乗る力...!海楼石じゃ声は防げない。我々の知らない能力が隠されてないとも限らないからねェ......!!」
...う、うぅ...。喋ることもできない...。
「対策は既に打ってある。控えろ、サカズキ」
「...!」
センゴクさんの鶴の一声で、なんとかサカズキさんは引き下がってくれた。
...く、空気が重い。
「さて、質問は二つ...!!なぜ貴様がトット・ムジカを呼び出すための”旋律“を知っていたのか...!そして、何の目的で魔王を蘇らせたのか...!!どうだね」
...二つ目の質問は、正直わからない。
けど一つ目の質問は...多分私の“前世”が影響している。あの時唄った楽譜の旋律を、私はまだ“覚えていた”。
トット・ムジカは、どうやら楽譜がなくとも呼び出すことができるらしい。仕掛けは簡単だ。だけど...信じてもらえるだろうか。
“2度目の人生”なんて、突拍子もない話。
「た、たまたま...楽譜が手に入って「ドンッ!!」うひぃっ!!?」
「...サカズキ」
「もうこれ以上...!この小娘に語らせることなどありゃあしません。センゴクさん」
サカズキさんはそう言うと、立ち上がって私を指差した。
「この娘は“抹殺”...!それ以外の結論は“論外”じゃ!!」
「随分結論を急ぐのう、サカズキ」
静まり返った会議室に、笑い混じりの声が響いた。
「...ガープ。お前また...!」
「のぅサカズキ。さっきは不問にしたがのう。お前さん、何やら...」
ガープさんも立ち上がり、サカズキさんと真正面から相対する。
...立ち上がってするものなのかな。こういうのって。
「ウタを殺したくて仕方がないらしいのう?」
「...」
「なにか...不都合な“事実”でも知られたか?」
「...ガープさん、勘弁しておくんない。そりゃあまるで...」
ズッ。という部屋全体が軋むような響きを上げて、質量を持つほどの“圧”が放たれる。
「わしが何か...重大な“背信行為”でもしとるような言い方じゃありゃあせんか?」
サカズキさんの眉は吊り上がり、今にも議席を飛び出してガープさんに殴りかかるんじゃないかと思わせるほどの迫力だ。
それに対し、ガープさんはニッと笑った。
「いやァ?お前さんは別に、海軍を裏切ってなんぞおらんじゃろう。むしろ、どこまでも徹底的に従うからこそ...!」
「“CP”の言いなりになんぞなっとるんじゃないか?」
「!」
サカズキさんの顔色が、目に見えて変わる。
「...何?」
「センゴク、よく聞け。先のバスターコールの話じゃが...新しい情報がある」
「...そういうことは早めに言わんか」
「“機”を待っていたもんでのう。今がその時のようじゃ」
会議室が静寂に満たされている。誰もが、ガープさんの次の言葉を待っている。
「今回の“バスターコールは、他でもない...“天竜人”の勅令によって下された命令じゃ!そして...」
その言葉はまさに、砲撃のような威力を持って会議を荒らすものだった。
「あの攻撃で...!命令を下した天竜人本人が砲撃され、“死亡”した...!」
「な...!何ィ〜〜〜!!?」
ヒグマ「帰るか...」
流石にこれで出番終わりです。ちなみにやけに堂々としてますが、この状況ではどう足掻いても逃げられないので開き直ってるだけです。