「そもそも、今回の計画は“バスターコール”も含めて事前に計画されていたもんじゃが...“山賊を殲滅する”という原案を出したのは“モンロー聖”という天竜人じゃ」
「...何故天竜人がそんなマネを...?」
「娯楽ですよ」
「...タンボ長官?」
センゴクさんの疑問に応えたのは、タンボさんだった。彼は、顔を俯きがちにしたまま...くつくつと笑い始めた。
「下々民のため、という名目で...!大方バスターコールによって逃げ場のないまま、一方的に蹂躙される人間が見たかったんでしょうね。CPとしても、その対象に“山賊”を選んでくれたからこれ幸いと“バスターコール”も用いた『クゾンサ島』の殲滅を計画しました。天竜人に成果をアピールする機会でもありますから」
「...むぅ。では、そこから何があったら自身が砲撃の的にされるような事態になるのだ」
「元帥。今確認しましたが、確かにモンロー聖は現在行方不明です。最後の消息は、何人かの護衛を引き連れて“東の海”に渡ったのが最後だと....!」
「...間違いないのか。ブランニュー」
「“神の騎士団”に確認を取りました。確かな情報です」
ざわざわざわ...!
「“天竜人”まで絡んでくるか...!」「なるほど、だからCP-0が動いたわけだ」「まさか、本当に『クゾンサ島』にいたのか?」「なぁ、帰るからもう通してくれ」
「静粛に。むぅ、こうなるともはや“バスターコール”の真相解明が急務か...!モンロー聖がどこに消えたのか。この答えを出さずして会議は終われない」
「だから言ったじゃろう。“バスターコール”に巻き込まれて死んだと!確かに殺しても死なないようなしぶとい連中ではあるがな!」
「...ガープ。言っておくがそれは“問題発言”だからな」
「おっと、今のナシ!」
センゴクさんとしても、ガープさんはつまらない嘘をつく人じゃないことはわかっているのだと思う。だけど...
「...証拠がなさすぎる。ガープ、お前の話は信憑性に欠けるぞ」
「フン、お堅い奴じゃ。だが、そう言うと思ってのぉ。もう一人ワシの友人を証人として呼んでおいた。部屋の外におる」
「...またか。入れ」
そうして入ってきたのは、オレンジのパーマヘアが特徴の恰幅の良い女性。
「ダダンじゃ」
「山賊です」
「お前の知り合いは山賊しかおらんのかァッ!!」
センゴクさんが我慢し切れなくなったようで怒鳴り付ける。
...私も同じこと思ってた。
〜証言開始〜
「天竜人ねェ。確かに見たよ!あたしは『クゾンサ島』に向かう船に、ウタともう一人のガキとで乗り込んでた」
「船を降りると島は軍艦に囲まれてるわ、天竜人が黒スーツの男達に囲まれてるわですぐに来るべきじゃなかったと悟ったがね。そして、どういうわけか気づけば元いた村でグースカ寝てたってわけさ。それ以外は知らないよ」
「黒スーツの正体?さぁな、知らないけど...カタギじゃねェのは確かだね。あんたらの言う
...え。ダダンさんが...私たちと一緒にいた?
あの船の中にいたの?
「...今の証言は」
「ワシが保障しよう。全て事実じゃ」
「...だが、これが事実だとするならば...!」
私の疑問は他所に、センゴクさんの額を一筋の汗が伝う。
「“天竜人”を手にかけたのは、他でもない
ざわざわざわ...!
「...静粛に。こうなると...もはや事情を知っていそうなのは、あなたしかいない...“タンボ長官”」
「...」
名指しを受けたタンボさんは、深く俯いたまま動かない。
「...くくく」
...いや、微かに動いている。
「ははははは...」
彼の背中は、笑っていた。
「あっはっはっはっはっは!!」
「...」
「いや失礼...!!なんだかおかしくて。この会議中、私はずっとビクビクと震えておりましたよ。“真実”が露呈しないかと心配で心配で...!ですがね、センゴクさん」
「...なんだ」
「今は、むしろこの事実を高らかに宣言したくてたまらない...!」
タンボさんは、そう言うと今までの態度が嘘のように両手を広げて立ち上がった。
「全てを、お話ししましょう」
「私にはかつて、妻と二人の子供がいました。あぁ、今はもう全員死んでいるんですが...いや、殺されたと言うべきですね。そう、天竜人に殺されたのです!!ははは...。まずは息子が、天竜人が通るので跪いている最中に足が痛いと泣き出してしまい、拳銃で7発...!死にましたよ。即死です。それを見た妻がその場で泣き崩れて、そいつは妻に向かってなんと言ったと思います?「奴隷にしてやる」ですよ...!そこからはあっという間。政府の役人が妻を捕らえ、行かないでと泣き叫ぶ娘も一緒に連れて行かれました...。私はただ、何もできず突っ立っていただけ。食事もろくにせず、廃人のようになって過ごしていると...家にある荷物が届いた。何かの袋です。中にあるのは、赤黒く変色した“何か”。そして袋からは異様な悪臭...!はい。妻と娘ですね。帰ってきたんです。袋詰めになって。そこで私が自害しなかったのは...なにかの奇跡だったのでしょうね。それから数年後、私はCPに入りました。目指すは“CP-0”です。天竜人に最も近い立場になれば、いつか彼らを皆殺しにできるチャンスが訪れるかと思いましてね。ただ才能がなかった...!私は“CP6”の長官止まりで行き詰まってしまった。昇級するためには何でもしました。『クゾンサ島』の殲滅任務を受けたのも、その一環でしかなかった。なのに...くくくっ、私はなんと幸運なんでしょう!その任務を私に与えたのは、他でもないあの憎っくき“モンロー聖”だったんです!視察と言って奴が私の目の前に現れた時、私は反射的に奴を銃で撃ち殺しそうになった!!危ない危ない、確実に殺すチャンスを待たなければいけません!だから私は“バスターコール”当日。奴に「死ぬ間際の山賊共の無様な顔を一緒に見ましょう」という風に言って、彼を島に誘き寄せました。そして待っているのは私と同じように“天竜人”に恨みを抱いているCP!!ははははっ!!アレは愉快だった...!!人ってあそこまで死なないように痛めつけられるものなんですね!!そして、ただの醜い肉塊となった奴は、バスターコールで島ごと燃え尽きた...!!その最中、突如として島に魔王が現れた...!私は正直に言って、この計画ごと殉職するつもりでした。バスターコールによってね。だから私は幸運でしたよ。魔王が現れたお陰で、私は生き延びることが出来た...!その上、家族の仇をこの手で殺せたんですから!こんなに素晴らしいことはない...!!」
「ね、そうでしょう?」
「...」
会議室は、重い沈黙に支配されていた。
絶句。それがこの状況を表すのに適した一言だ。
...天竜人って、そんなに酷い人達だったんだ。
「...タンボ長官。それは、自白と捉えてよいのだろうか」
口火を切ったのはセンゴクさんだった。彼は、とても神妙な顔つきでタンボさんを見ている。
「えぇ。問題ありません。あぁ、ガープ中将、先程CPが山賊に扮しているという事実はないと言いましたが、すいません、あれは間違いでした。彼らも天竜人に恨みを持ち、計画に関わっているもので。身元を調べられると足がつくのです」
「そうか」
「あとは...ああ、そうだ。サカズキさん。せっかく“事実の隠蔽”に協力してくれたというのに...全て話してしまいました。申し訳ありません」
「...」
「何...!?サカズキ、お前まさか...!」
「...やはり、政府の犬なんかとは手を組むべきじゃなかったようじゃのう...!」
サカズキさんは、大きく嘆息すると、顰め面でタンボさんを睨んでいた。
ガープさんはさらにサカズキさんに詰め寄る。
「つまり、サカズキ...!!お前は元々、今回の計画には“バスターコール”の権限譲渡などで協力していた。“山賊”という不確定要素を島ごと消し去るなど、お前さんの考えそうな事じゃ。先に関係は否定しとったがのう...!そしてタンボの計画を知るや否や、今度はこの事件の“隠蔽”に動き始めた...!」
「...もう全部白日の元に晒された。今更否定しても意味はありゃあせん」
「サカズキ...お前、何故そんなことを...!」
サカズキさんは、私に対して目を向けながら拳を震わせていた。
「...この“現状”じゃ」
「何?」
「“CP”やら...“天竜人”やらで...!この会議の本題である“魔王”の件が...見逃される事態になっとりゃせんか...?」
サカズキさんが怒りを覚えてるのは、他でもない私に対してのようだ。
「今の経緯を聞けばわかるじゃろう。魔王が降臨した理由は、依然として謎のままじゃ...!!動機もわからず国を滅ぼすような力を使う“危険人物”を、その罪にも問わず放置して、何の為の“正義”じゃ!!」
「...“上”もその意見に賛同しとったのじゃろう。CPの手によって天竜人が殺害されるなど“醜聞”以外の何物でもないわ...秘密裏に事を収めたかったと見える」
...真実が語られ、会議室は静寂に包まれた。
「...タンボ長官。なんであれ、貴方の罪が消えることはない...追って連絡があるだろう。それまでは...檻の中で大人しくしてもらおう。サカズキ、お前にも話がある。会議終了後、私の元まで出頭するように」
「...了解」
「えぇ...御意に。私はもう目的を達したので」
「...ちなみに言っておくぞ」
恭しく一礼するタンボさんに厳しい目を向け、ガープさんは言う。
「今回の“バスターコール”の件で、『クゾンサ島』に住む山賊以外の民間人も攻撃に巻き込まれた...!避難勧告がなかったもんでのう。お前さんの“執念”が...!より多くの人間を死に追いやった。このことは忘れるな」
「...ふふ、ふふふ...」
「ふふふふふふふふふふふふ...!」
ただただ、楽しげに笑うタンボさんは海兵さんに連れられ...“バスターコール”事件は解決した。
「...さて、これで“バスターコール”の真実は全て明らかになったものと考える...!ガープよ。お前は結局、何が言いたいのだ」
「...」
タンボさんが連行されると、会議はつつがなく続行された。
「確かに、今サカズキが言ったように...!この事実を明らかにしたところで、その娘の...ウタの“危険性”は変わらない。依然として彼女には不可思議な部分が多い」
...確かに、それはそうだ。言うべきなのかな。“前世”のこと...。
そう思っていると、まるでそれを察したかのようにガープさんが話し出す。
「要するにおめェ、今回の件は海軍側にも不手際があったワケで...魔王の覚醒も、ひいてはワシらが原因だと考えられる...!そうじゃろう?」
「...」
「そんな中で“責任”背負ってる大の大人達が、てめェの“不始末”棚に上げて...!こんな小娘の命一つで事を収めようって雁首揃えて話し合って、それで“解決”とすることが...!果たして“正義”のやる事かっちゅう、それだけの話よ...!!」
ガープさんは、どうやら私のためにここまで手を尽くしてくれたらしい。
返し切れない恩ができてしまった。
「決めるのはお前さんじゃ、センゴク。決定には従う」
「...」
センゴクさんは、ガープさんを真正面から見つめながら、深く考え込んでいるようだった。
「センゴク元帥。“責任”と言うならば、それは実際に攻撃を行った我々“中将”にもあります」
「モモンガ...」
無言のセンゴクさんに、前列の議席に座っていた海兵さんの一人が進言する。“中将”というのは...確か“バスターコール”の際、実際に軍艦から砲撃を行う人のことだった。
「今回の作戦、我々が全ての概要を知っていたならば...ここまでの事態は防げたのかもしれません。私にも...何らかの“罰”は下るべきかと」
「私も」
「...俺からも」
モモンガさん。に引き続き、二人の海兵さんも申し出る。顔に三つの傷がある海兵さんと、タバコを蒸した海兵さんだ。恐らくどちらも中将の海兵さんだ。
だけど、センゴクさんは3人の申し出に対し首を横に振った。
「“バスターコール”は、攻撃に対して疑問を覚えてはならない...!!速やかな任務の遂行が求められる以上、それを確かに実行したお前達に責はない」
「...恐れ入ります」
センゴクさんは「だが、お前達の気持ちはわかった」と言って、私に目を向ける。
「本会議の“結論”を伝える。魔王を解放した少女、ウタは本日をもって...」
センゴクさんは、堂々とした様子で宣言した。
「“海軍”に身を預けてもらう!!拒否権はない」
その結論を。
「...海軍」
つまりそれは、私が海兵になるっていうことなのかな。
「そしてガープ...これだけ介入してくれたのだ。貴様にも責任を取って貰うぞ。ウタを指導し、制御してみせろ」
「...ハッ!“若さ”を制御なぞ出来るか!」
そしてガープさんは、私の上司になるみたいだ。
...嫌じゃない。嫌じゃ、ないんだけど...。
ルフィは、なんて言うのかな...。
「まァ、それが落とし所だろうな...!」
「“力”は使い方次第か...。どうなるんだろうねェ〜〜〜」
「...ふん」
私の胸に残る不安をよそに、会議は終わりへと向かう。
「これにて“軍法会議”を終了する。皆、ご苦労だった!!」
「「「はっ!」」」
こうして“バスターコール”と、私が解放した“トット・ムジカ”を起に始まった波乱の“軍法会議”は...。
私が“海軍”の所属となることで決着し、幕を下ろした。
“神の騎士団”ってまだあまり情報がありませんが、天竜人限定の治安維持組織みたいなものと解釈してます。