“世界の歌姫”のやり直し   作:ぷに凝

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本日は2話投稿です。
そして『ONE PIECE FLIM RED』興行収入“100億円”突破〜!!めでたい!!


“白猟”スモーカー

「いくぞ、ウタ!」

「はい!お願いします!たぁーっ!」

「打ち込みが甘ァい!!」

 

あれから数日。

 

私は、ガープさんの元で海兵になるための基礎を叩き込まれていた。まず、海兵になるならば戦えなければ話にならないということで、竹刀での稽古をつけてもらっている。と言っても、ガープさんは素手なんだけど。

 

「はぁ...はぁ...!あ、ありがとうございました...!」

 

ガープさんは当然のように強くて、正直勝てる見込みは全く湧かない。多分手加減されてるのにこれだ。私は多分戦うことに向いていなかった。

 

「うむ。日々上達してきてはおる。この調子で続けていけば、正式に海兵となれる日もそう遠くない...だが、ウタ。お前さんはそれではいかん」

「...どういう、ことですか?」

「お前さんは既に、個人にして一国を滅ぼす力を持つと各地で話題になっておる。お前さんの身を狙う輩は、恐らく、これからどんどんと増えてくるじゃろう。海軍の中においてさえそうじゃ。お前さんが海兵となることに疑問を持つ者も少なくない」

「...そうですよね」

 

私も、数日間このマリンフォードで過ごす中で、自分があまり歓迎されてない雰囲気は感じ取っていた。陰口を言われたりしたのも一度や二度じゃないし、もっと直接的に嫌がらせに近い行為を受けたりした。

 

私は見た目9歳の子供だから、そういう時は近くの海兵さんが助けてくれたりするんだけど...そういう人でも、私と深く関わろうとはしない。それこそ私に普段から話しかけてくれるのは、ガープさんやクザンさんくらいのものだ。

 

「だから強くならなければいかん。どんな者に狙われても跳ね返せるくらいに強く...!!今はまだわしやクザンがおるからええが、それもずっとというワケには行くまい。海兵ならば、自分の身は自分で守らにゃならん!」

「...はい。わかります」

「ならばよし。ええか、“海兵”になるということは“正義”を背負うということじゃ...!!その心構えであれよ。あぁそれともう一つ。”正義“とはいかに」

「いかに己の心に命じるか。ですよね。わかりました」

「わかればよし!!そんじゃ、メシにしようかのう!どれ、わしと一緒に」

「あ、いえ。一人で食堂で食べてきます。その方が落ち着くので」

「...そお?」

 

ガープさんは嫌いじゃない。大恩人だし、ルフィのお祖父さんだし、むしろ好きなんだけど...。

 

”正義“について語る時のガープさんとは、距離を置いたほうがいい!

 

それが私がここ数日で学んだ事だった。

 

 

「おい、見ろよ。アイツだ...」

「なんで“海軍”に...?元帥も何を考えて...」

「見てよあの頭...何あれ...?」

「変な耳当て...」

 

くすくすくす...

 

「...」

 

私がガープさんの同席を断った理由はもう一つある。

 

こんな所を見られたくないからだ。

 

ガープさんやクザンさんがいる時は、皆は何も言わない。しかし一人になった途端いつもこうなる。この場に二人のどちらかが居れば、もしかしたら怒ってくれるのかもしれない。

 

だけど...私にとってはその方が辛かった。

 

私なんかのために、ガープさんやクザンさんに迷惑をかけてしまうことが何よりも辛かった。そんなことになるくらいなら、むしろ笑われている今の方が何倍も気が楽だった。

 

ガープさんは、海軍の中では“英雄”として尊敬されているらしい。人望も厚く、誰にでも気さくな性格。だからガープさんは皆に人気だ。

 

一方の私は、国を滅ぼした重罪人でありながらこうして自由の身であるどころか“英雄”であるガープさんの直属の部下として優遇を受けているように映る。それに加えて私がガープさんの故郷に長らく滞在していたという噂が広まれば、自然とストーリーはこういう風に出来上がる。

 

“海兵になる資格すらない罪人のくせに、コネと運だけで良いところに収まった生意気な小娘がいる”。

 

それは事実だった。私の命は風前の灯だったのに...皆に助けられて、今もこうして生きている。

 

“前世”での私は、歌姫として活動する中でゴードンさんや色んな人が支持してくれて、皆のお陰で“世界の歌姫”になることができた。

 

だけど、実際にそこに居たのはシャンクスに的外れな恨みを抱いて、何も知らないまま世界を知った気になって歌ってる無知な子供だった。

 

“今世”での私は、あの未来を回避しようと考えるだけで、実際には何もせず事の流れに身を任せただけの無力な子供だ。

 

私は、今まで...いや、今もずっと。“無力”で“無知”だ。誰かに助けてもらうことでしか生きていけない。そんな人間は...。

 

罵倒されて当然だ。

 

「おい」

「...」

「おい!」

 

気づくと、私の側に男の人が立っていた。ジャケットを羽織り、葉巻を吸っているその人は、私にまっすぐ目を向けていた。

 

「...?」

「隣座るぞ」

「え?は、はい...」

 

そう言うと、その人はドカッと私の隣に遠慮なく座った。

 

「...おい!何見てんだお前ら!そんなに俺の頭がおかしいか!こっち来いよ!よく見せてやる!」

 

その人は、私の噂話をしていた一団に向けて声を張り上げた。その声はどこか苛立たしげに聞こえた。

 

「...行こうぜ」

「なにあいつ...」

「...ハッ、偽善者が...!」

 

声をかけられた人たちは、互いを顔を見合わせながら立ち上がり、ぞろぞろと食堂を後にした。

 

「...チッ。正面切って喧嘩する度胸もねェ。ムカつく野郎共だ」

「...」

 

もしかして、助けてくれたのかな?

 

...また、助けられちゃったな。

 

「あ、あの...ありが」

「礼なんか言うんじゃねェよ。ガラじゃねェ」

「...そ、そうですか」

 

そう言うと、葉巻の人は無言で料理を食べ始めてしまった。

 

そういえば、私はまだ頼んだ料理に口をつけてすらいないことを思い出す。「いただきます」と小さな声で呟いて、料理を口に運ぶ。

 

...美味しい。でも、少し寂しい味がするかも。

 

「スモーカーだ」

「えっ」

「...」

「あっ、えっと...ウタです」

「知ってる」

「...そうなんですか」

「...」

 

それだけ言って、スモーカーさん...は、再び黙々と食べ始めた。

 

な、何なんだろうこの人...。優しいのか優しくないのかわからない...!

 

「おい」

「は、はいっ!」

「これやる」

「...え」

 

そう言ってスモーカーさんが差し出してきたのは...スモークチキン。

 

...何故?

 

「あ、ありがとうございます...」

「...」

「...」

 

き、気まずい...!

 

しかし、そのまま持っているのもおかしいので、私は一息にチキンを貪った。

 

...美味しい。

 

今度は、寂しい味はしなかった。

 

そのまま、私とスモーカーさんは言葉を交わすことはなかったけど...なんとなく、この人とは上手くやっていけそうな気がした。

 

 

 

「スモーカー?へェ、あいつがね...」

「知ってるんですか?」

 

午後。ガープさんが任務で留守ということなので、私はクザンさんに稽古をつけてもらっていた。

 

食事時に会ったスモーカーさんについての話をすると、クザンさんは彼と知り合いだったらしく、物珍しそうに顎下を掻いている。

 

「まぁな。馬が合うっていうかなんていうか...ああいう真っ直ぐな正義を持った奴を見るのは、気持ちがいいもんだ。皆組織のしがらみやら、理想と現実のギャップやらで“信念”貫くのが簡単じゃねェって気づくと、途端に大人しくなっちまうからなァ...。俺もそのクチだ」

「...羨ましい、ですか?」

「おっ、言うねェ。まぁそんなとこだ。懐かしいよ、“燃え上がる正義”なんて掲げてた頃が。昔は俺もあんな風にやる気に満ち溢れてたもんだが...今はこんなだ」

「私は、今のクザンさんもそういう風に見えます」

「...嬉しいこと言ってくれるじゃねェの。なんだよ、こりゃ成長したらとんでもない魔性の女に育っちまうな...!今のうちにツバつけとくか?」

 

私にも、クザンさんの気持ちはよくわかる。真っ直ぐで、眩しくて...いつまでも変わらずにそこにいてくれる。そんな太陽みたいな人がいたら。

 

憧れずにはいられないから。




若かりしヤンキー成分強めのスモやんです。

ちなみに軍法会議の内容は全海兵に通達されています。新聞の内容を鵜呑みにしてる海兵は、本部からの声明も碌に聞かないようなやる気のない人達ということです。
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