“世界の歌姫”のやり直し   作:ぷに凝

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アーマーナイト①

「“LIFE or SLAVE”!!?」

「え...」

 

私に生まれた、一瞬の思考の空白。

 

「“ホワイト・アウト”!!」

 

その意識の隙間を潜り抜けて、私の体を“煙”が包み込んだ。

 

「わわっ!ス、スモーカーさん!?」

「話は後だ!!今はここを離れる!!!」

「わ、わかりました!!」

 

私は、下半身が“煙”となったスモーカーさんに抱えられその場を離れた。

 

振り向くと...“怪物”のように見えていたのは“人間”で、でも人間としてはあまりにそれが大きな巨体を誇っていることに気付いた。

 

「...“巨人族”って、初めて見た」

「そんな生易しいモンじゃねェぞ!“アレ”は!!」

「マ〜マママ...!逃げられると思ってんのかい?そんな眠っちまいそうなトロい動きでよォ...!!」

 

巨人族さんは、立ち上がって私に向かって腕を伸ばす。体格が大きいので、それだけで距離を一瞬で詰められてしまう。

 

「喰らえ!“四皇”〜!!」

「ウタちゃんを守れ〜!!」」

 

「...皆っ!!」

 

その追撃に対して、周りにいた海兵さん...毎日私のライブを聴きに来てくれる常連の海兵さん達が、砲撃や銃撃で応戦してくれる。

 

「ハ〜ハハハハ!!ママママ...!粋がんじゃないよォ!!雑兵ども!!お前らに用はねェ!おれが“誰”だかわかってんのかい!!?」

「...まずいっ!!」

 

巨人族さんは、徐に頭に乗せた二角棒に手を伸ばす。

 

すると、帽子の中から巨大な“刃”が出現した。

 

「“ナポレオン”!!」

「ハイ、ママ!!」

 

巨大な刃を、巨人族さんは軽々と振り下ろす。

 

「“威国”!!!」

 

ッッ!!!!

 

そして、その刃が振り下ろされた“延長線上”に...。

 

“風穴”が空いた。

 

「ぎゃああああ〜〜〜!!!」

 

「“ビッグ・マム”だァ!!ハ〜ハハハハ!!!」

 

一瞬で、海兵さんたちは吹き飛ばされてしまった。

 

「な、何アレ...!?」

「あれが“四皇”だ...!!まともに相手なんかしてたら、命がいくつあっても足りねェぞ!!」

「四皇...!?」

 

“四皇”...それは、この“大海賊時代”においても最も強力とされる四人の大海賊のことだ。

 

本来は“偉大なる航路”後半の海、“新世界”の自身のナワバリの中に居座っているはず。

 

「なんでそんな人がここにいるの!?」

「俺が聞きてェよ!!とにかく、今はあのバケモノから離れるしかねェ!!」

 

追ってくる“ビッグマム”は、いつの間にか“雲”に乗り、空を飛んでこちらへ向かって来ている。

 

「狙いはお前みたいだな...!!国滅ぼしの力を狙って来たのか」

「...私の」

 

あの人の狙いは、確かに私の“トット・ムジカ”らしい。

 

自由に使えるわけじゃないって正直に言えば、見逃してくれるかな...?

 

「言っとくが、お前一人が出て行った所で奴が止まってくれるなんて保証はねェぞ。ここまでやったんだ、マリンフォードの“完全掌握”まで視野に入れてるかもな...!!」

「完全掌握って...それ、マズいんじゃ」

「マズいなんてモンじゃねェ...世界的な大事件だ」

 

“海軍本部”が海賊に陥落させられる...そんな事が起きれば、きっと世界中で海賊達が暴れ回る。私も海賊になるつもりではあるけど、そんなことは望まない。ルフィだってきっとそうだ。

 

「...止めないと!本当にここを落とすつもりなら!」

「だからこそ、奴等のもう一つの狙いが“お前”なら、尚更渡すわけにはいかねェって話だ」

「そっか...うん、わかった!」

 

私がわざと捕まったとしても、敵は止まってくれる保証がない。

 

なら、戦うしかないということだ。

 

「だからよォ、さっきからチョコチョコ動き回って...そんなもんでおれから逃げ切れると思ってんのかァ!?もうお前を守るヤツは居ねェぞ!!」

「チッ、来るぞ!掴まってろ!」

「うん!」

 

ビッグマムは、いつの間にかそばに浮かんでいた...大きな”火の玉“を素手で掴み、振りかぶる。

 

「最大火力だよ!ママ〜!!」

「“天上の(ヘブンリー)〜”!!」

「クソッ、避け切れねェ!!」

「危ない!スモーカーさん!!」

 

火の玉はまるで、“太陽”となって私達に襲いかかる。

 

「さっきから、聞いていれば....!!」

 

私を炎の渦が飲み込む...その直前に。

 

「“(フォイアー)”ァ!!...あ?」

 

「“守る者がいない”とは随分だな...“ビッグ・マム”!!ここは“そういう者”達の総本山だ!!」

「...センゴク...!!」

 

私達との間に、巨大な“黄金像”が立ち塞がった。

 

「セ、センゴクさん...!?何アレ!!」

「ヒトヒトの実の“幻獣種”だ。俺も実物を見るのは初めてだ...!」

「スモーカー、ウタを連れてここを離れろ!その娘を守り抜け!!」

「!...了解!」

 

センゴクさんがビッグマムを足止めしている間に、私達は急いで通路を走り抜ける。

 

「センゴク...久しぶりだねェ。ガープのクソジジイは元気かい?わずかしか残ってねェだろう“寿命”を奪い取ってやりたくて、おれァうずうずしてんだがねェ...!!」

「老い先短いのはお互い様だろう。古い我らが、新世代の芽を摘むものじゃないぞ...!!」

「目障りだってんだよォ!!ちっぽけなルーキー共が幅利かせてる...この“時代”がよォ!!」

 

建物全体を揺らすような衝撃波が、後方から走り抜ける。

 

「センゴクさん...大丈夫かな」

「戻っても何も出来ることはねェぞ。お前はただ安全な場所に避難することをだけを考えて...ッ!!」

「え?」

 

スモーカーさんが突然私を抱えて屈み込んだ...と思った次の瞬間。

 

「“モチ突”!」

「わぁっ!!?」

 

僅か数cm頭上を、側面の壁を破壊しながら鋭利な“三叉の穂先”が通り過ぎた。

 

私の髪型、ちょっとほつれた...!

 

「ほう。避けたか...“未来”は見ていなかったとはいえ、良い勘をしている」

「そりゃ、どう...もッ!!」

 

壁の向こうから現れたのは、物凄く背の高い男の人だ。多分、この人も“ビッグ・マム海賊団”の一人...!

 

「“ホワイト・ブロー”!!」

 

スモーカーさんは、屈み込んだ姿勢から前転して相手の懐に潜り込むと、腕の一部を“煙”にして、自身の武器である巨大な“十手”を突き出す。

 

「“角モチ”」

 

その一撃は、黒い光沢を纏い、さらに角張って硬度が上がったように見える相手の“腕”によっていなされる。

 

「“自然系(ロギア)”か」

「そういうお前は“超人系(パラミシア)”だ...!」

「少々“特殊”だがな」

 

スモーカーさんは大きく飛び退き、相手の人と距離を取る。

 

「おい、ウタ。俺はあいつにかかりきりで、ここから動けそうにねェ。お前一人で行け」

「!」

「安心しろ。すぐに片付けて追いつく」

 

私は、スモーカーさんの横顔を見やる。

 

厳しい目つきだ。口ではそう言ってるけど、なんとなく...スモーカーさんは、あの人との戦いが不利なことを感じ取っているように思う。

 

本当に勝てる相手なら、二人で行動した方がきっと安全だ。だけどそうじゃなく、私だけを逃すってことは...。

 

「...わかった」

 

そこまで考えた私は、スモーカーさんに頷いて地面に降りた。

 

「待ってるね!」

「あァ」

 

スモーカーさんの短い返事を聞いて、私は駆け出した。

 

「合理的な判断だが...“時間稼ぎ”役に実力が伴わなければただの下策だ。背を向けて逃げても、誰も笑わなかった...!」

「ガキの背中も守れねェようじゃ、男が廃るだろ」

 

シャーロット・カタクリは、あえて抑えていた“覇気”を解放する。

 

「“自然系(ロギア)”、“超人系(パラミシア)”...!残念ながら“新世界”に於いては、そんな“分類”に意味はない」

 

スモーカーの肌をビリビリと突く異様なプレッシャーは、決してただの“錯覚”ではない。

 

目の前に立ち塞がる男は、“覇王色”の使い手だった。

 

「“無双ドーナツ”」

 

ボボッ、と音を立てて床の一部が円形の“餅”に変質し、カタクリの背後に浮遊する。

 

「せいぜい足掻け。煙野郎」

 

「ナメんじゃねェよ、海賊。この先には一歩も通さねェ...!!」

 

スモーカーはその言葉を皮切りに、全速力で突進した。

 

「“ホワイトランチャー”!!」

 

「“力餅”」

 

...。

 

 

「...大丈夫かな」

 

私は全速力で走りながら、背後に置いて来ていたスモーカーさんの身を案じていた。

 

スモーカーさんは強い。それはわかってる。だけど...

 

「なんだ、目標の“小娘”が一人でいるじゃねェか」

「ッ!?うっ!!」

「あっけねェな」

 

余所見をしている間に、すぐ側に人の気配が現れる。

 

それに反応する前に、私の体は大きな掌に捕まってしまった。

 

「...誰!?」

「俺はビッグマム海賊団の“オーブン”だ。“ネツネツの実”の能力者...!だから下手に暴れないことを勧めるぜ。大火傷したくなかったらな」

「...!」

 

その人は、ビッグ・マム海賊団の一人だった。

 

...せっかくスモーカーさんが逃がしてくれたのに!

 

「離してよ〜!!」

「そいつは無理な相談だな。このままママの元へ連れて行く。そろそろセンゴクもバテてきた頃だろう...カタクリの奴はどこだ?」

 

「ここだ。オーブン」

「...え」

 

私が声の方向に振り向くと、そこにはさっきの男が立っていた。

 

「どうして...スモーカーさんは!?」

「...この男のことか?」

「!スモーカーさん!!」

 

その男は、右手にスモーカーさんの体を持って引き摺っていた。意識がないようで、額から血を流している。

 

「碌な抵抗もできず、逃した娘も捕まり...!無駄骨とはまさにこのことだ」

「スモーカーさんを離して!!」

「...いいだろう」

 

男は、スモーカーさんの髪を掴んで通路の隅に放り投げてしまった。

 

痛々しい姿に、私は思わず目を背けてしまう。

 

「カタクリ、戻るぞ。もう目的は達した」

「あぁ。そろそろ各地の“大将”共が戻って来てもおかしくはない...。ん?」

 

カタクリと呼ばれた男は、その目を一瞬別の方向へ向けた。

 

“スモーカー”さんに。

 

「え?」

「“白蔓(ホワイト・バイン)”...!!」

 

私がもがいていると、周りに煙が立ち込める。

 

「あァ!?なんだこりゃあ!!」

「無駄な抵抗を...」

 

私は煙に包まれて、オーブンの手の中から解放された。

 

「スモーカーさん!?」

「...ぐっ、走れ...!」

「“柳モチ”」

「ぐあああぁっ!!」

「うぅっ!!」

 

私を抱え込んだスモーカーさんが、攻撃を察知した瞬間に私を投げ、スモーカーさんがカタクリの無数の“足”に貫かれる。

 

私は地面を転がり、何か“硬い物”に頭をぶつけて悶絶する。

 

「...え、コレって...?」

 

そこにあったのは、両手と両足。計4つ分の“鉄の塊”。

 

“アーマーナイト”。

 

「しっかりと息の根を止めておくべきだったな...。この娘にとっても、良い教訓になるだろう。俺たちに逆らえば...どうなるのか...!!」

 

カタクリは、三叉の槍の穂先を、スモーカーさんの“頭部”に向けた、鋭利な切先は、今にもスモーカーさんの命を奪うだろう。

 

「イチか、バチか...!!」

 

私は、“アーマーナイト”を手に取った。

 

その瞬間、“鎧”はひとりでに動き出す。

 

「わ、わっ...!な、何これ...!?」

 

腕に、足に、勝手に装着されていく“鎧”。

 

私には大きすぎるはずのそれは、まるで最初からそうだったようにピッタリと手足にハマった。

 

「うっ...!!」

 

そしてその瞬間、体がズンと重くなる感触。思わず膝をつくと、今度はアーマーナイトがフィィィン...という独特の機械音と共に“稼働”し始める。

 

「”説明書“とかないの!?これ!!」

 

やがて、重かったアーマーは...いつの間にかただの服を着ているだけのような軽さになり、私は立ち上がる。

 

「うわっ、浮いた...!」

「?アイツ、何やって...」

 

ジャン♪

 

そしてその瞬間。

 

「えっ!?わぁ〜っ!!?」

「ッ!?」

 

私は、“音の速度”で移動した。

 

「ぐっ...!!」

 

そのままの勢いで加速し続け、私はカタクリに体ごとぶつかる。

 

勢いが止まらず、カタクリを巻き込んだまま建物の壁に激突。

 

「うっ...痛ったぁ〜...く、ない...?」

 

ズボっ、と壁にハマった足を抜き、私はフラフラとしながらなんとか“浮遊”したまま体勢を維持する。

 

「...これ、私がやったの?」

 

そして、目の前に空いた“大穴”を見て、呆然とする。

 

「...カタクリ!?」

「...なるほど。腐っても“国滅ぼし”の小娘か...!」

 

穴の中からもう一人、長身の男が這い出てくる。大した怪我はないようだが、その顔は険しく歪められていた。

 

「たかが子供と、甘く見た俺の怠慢だな...」

 

その男は立ち上がると、手に槍を構え、鋭い目つきで私を睨んだ。

 

「貴様を今から、“敵”と見做してやる」




アーマーナイト:アーマー着用者本人の“エネルギー”と“能力”によって大きく戦闘力を向上させるベガパンクの激ヤバ発明品。ただし燃費が悪すぎて“膨大なエネルギー”を保有していないとまともに扱えない。
デザインは騎士姿のウタに酷似。
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