“世界の歌姫”のやり直し   作:ぷに凝

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フーシャ村②

「ん?ウタ、何描いてるんだ」

「ロードマップ」

「??」

 

私は赤髪海賊団の旗艦...『レッド・フォース号』の一室で、紙の上に図面を書いている。

 

シャンクスは私が何をやってるのか、さっぱりわからないみたいだけど...それでいい。これは私だけが理解できればいいことだ。

 

未来を知ってる私だけが。

 

多分今は、私がエレジアでライブをした“あの日”から数えて、少なくとも12年以上前。シャンクス達の会話を盗み聞きして、まだエレジアに行く計画は立ててないことがわかった。

 

私が...“あの未来”に到達しないために必要な条件を書き出す。

 

一つ、エレジアに行かないこと。

一つ、“トット・ムジカ”を目覚めさせないこと。

一つ、ウタウタの力を使わないこと。

 

...一つ、私が“歌姫”にならないこと。

 

これらの条件は、私がエレジアにさえ行かなければ全て解決できる。だから、赤髪海賊団がもしエレジアに向かおうとしたその時、私はなんとしてもそれを阻止しなければならない。

 

「よぉ〜ウタ!なんか最近ずっと恐い顔してんなぁ!」

「...ヤソップさん」

 

私がロードマップを作成していると、多分呑んだくれてたのだろう。酒臭い息を吐きながらヤソップさんがふらふらと近寄ってきた。

 

「なんか悩みでもあんのか?遠慮なんかすんなよ!」

「...ううん、大丈夫。これは私が解決しなきゃいけない問題だから」

「ふ〜む、そうかそりゃ残念...じゃあよ!せめて歌えば気分も晴れるんじゃねぇか!?いつもの頼むぜ!我らが天才音楽家!」

「っ...。ごめん、歌はもうやめたの」

「えぇ〜!?う、嘘だろ!?お前、あんなに歌が好きだったのに!」

 

胸がチクチクと痛む。確かに私は、歌が好きだった。ううん、今でも好きだ。歌は私の全てだから。

 

でも...私の歌声は、皆を幸せにすることはできなかった。それどころか、破滅を呼び込むことになる悪魔の歌声だったんだ。

 

だから私はもう歌わない。

 

「ごめんなさい」

 

もう私は悪いことはしない。歌うのもやめる。

 

だから、独りぼっちにはしないでください。

 

 

「...なァ、ベック」

「あぁ。思い詰めてるな。一体何があったのか...」

「...ルフィの奴なら、何か知ってるかな」

 

 

「くっそ〜!おい、卑怯じゃねぇか、ウタ!」

「はいはい、負け惜しみ負け惜しみ。...っていうかルフィ、気づいてないの?前もこの手に引っ掛かってたわよ」

「えェ!?全然気づかなかった!」

 

ルフィとの勝負は継続中だ。元々私の連戦連勝だったけど、私はもう頭脳は大人だ。単細胞のルフィとの差は広がるばかり。正直どんな勝負をしても負ける気はしない。

 

...12年経っても、ルフィは全然変わってなかった。あの時、私とルフィはもう子供じゃなかったのに、ルフィは今みたいな子供の頃のまんま。バカで正直で、真っ直ぐな奴だった。

 

正直、羨ましい。

 

「もう一回!もう一回だ!今度はズルさせねぇぞ!」

「え〜、またぁ?負けを重ねるだけだと思うけどな〜?」

「おれは負けてね〜!よし、じゃあ今度は歌勝負だ!」

「えっ、う、歌勝負?」

「おう!おれも歌練習したんだ!今はお前より上手く歌えるぞ!」

 

...ど、どうしよう。バカなのは知ってたけど、これほどだったか。

 

負ける気はしない。だけど歌は...。

 

「...いいわ。受けてあげる」

「よっしゃ!ギチョンギチョンにしてやる!じゃあ最初はおれからだ」

 

...なんでOKしたんだろ、私。

 

まぁいっか。ルフィだし。

 

「びンクス〜のさけを〜とどケにいくヨォ〜」

「へた」

「なんだとォ!」

 

まぁわかってたけど、下手すぎてびっくりした。

 

「これはまた私の楽勝っぽいわね」

「まだわかんねェだろ!次はお前の番だ!」

「...う、うん」

 

...あれ?

 

歌って、どうやってやるんだっけ。

 

「...び、びンクス〜のさけを〜...とどケにいくヨォ〜...」

「え〜!?ウタの歌が下手だ〜!?」

「う、うるさい!わかってる!も、もう一回!」

 

私は焦って、こほんと咳払いをする。

 

今のは何かの間違いだ。

 

「...ビんくすの〜さケを〜...?」

「...変わってねェぞ」

「...うぅ」

 

どうしよう。

 

私、歌い方わからなくなっちゃった。

 

...私って、歌が歌えなくなったら.、何の価値があるんだろう。

 

「ん〜、なんか今の歌って、あんま楽しそうじゃねェな〜」

「え?楽しそうって?」

「だってお前よ!今までずっと楽しそうに歌ってたじゃねェか!」

 

...楽しそうに歌ってた?

 

「...そうだっけ」

「おう!シャンクス達も楽しそうに聞いてた!」

 

楽しそうに、か。

 

たしかに前の私は...私の歌を聴いて、楽しそうにしてくれるのが嬉しくて...歌うのが楽しかったっけ。

 

でも、もう私の歌を楽しそうに聴いてくれる人なんて...。

 

「な!ああいう風に歌ってみろよ!」

 

...。

 

「...ビンクスの酒を〜届けにゆくよ〜海風 気任せ 波まかせ〜」

 

「うわぁ!?急にうめェ!」

「...う、歌えた」

「なんだよ〜!わざとやってたのか〜!?」

 

...違う、わざとじゃない。これは多分...。

 

「...ふふ、出た、負け惜しみ」

 

まぁいっか...。ルフィだし。

 

 

「...なァ、ベック」

「あぁ。“そういうコト”らしいな。一体何があったのか」

「...ルフィの奴、何しやがったんだ」

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