“世界の歌姫”のやり直し   作:ぷに凝

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(追記) 本日は17時と21時の2話投稿です!


アーマーナイト②

「わっ、わわ...!た、立てない...!」

 

私の足はいま、地面に着いていない。歩こうとしただけで転びそうになってしまう。慣れるのに時間がかかりそうだ。

 

でも...これなら!

 

「私も戦える...か、もぉっ!?」

「...」

 

ズッデーン!という音が響きそうな勢いで、私はひっくり返った。

 

頭と胴体が地面に突き刺さり、足だけが出ているような状態だ。...なのに痛くない。“鎧”は腕と脚だけしか付いていないはずなのに、どういう原理なんだろう?

 

...まぁ便利だからいっか。

 

「うっ...ぷはぁ!抜けた!」

「隙だらけだ」

「いっ!!?」

 

地面から体を抜いた瞬間、背中に大きな衝撃が走る。その衝撃でゴロゴロと前方に転がり続け...

 

「あだっ!!?」

 

正面から壁に激突し、ミシリと大きな亀裂が入った。

 

「いっ...たくない!不思議!」

「ふざけた奴だ。だが、全くダメージがないというのは興味深い...!」

「こんの〜!やったね!次はこっちから仕掛けてやるんだから!」

 

私は前屈みの姿勢になって、強く“イメージ”する。一つわかったことだけど、この“鎧”は想像力が大事だ。物凄く早く移動するイメージを持てばそうなるし、転ぶイメージが強ければひっくり返ってしまう。

 

「私は、“想像力”にかけては誰にも負けないんだよ...!」

 

だからイメージするのは...!

 

「“加速(アレグロ)”!!」

 

とびっきり強い“自分”!!

 

背面から“ジェットパック”が現れ、“ブースター”から炎が噴き出る。それは大きな推進力となり、私の体を吹き飛ばす勢いで押し出した。

 

ドドン♪

 

“太鼓の音”が鳴り響き、私は風と一体となって飛ぶ。

 

「どれだけ速く動いても...!」

「っ!」

「“どう来るか”がわかっていれば、対処は容易いものだ」

 

だけど私の“突進”は、カタクリの“伸びる足”によって止められてしまった。ルフィみたいな能力だ。しかも凄い勢いだったはずなのに、全く効いた様子がない...!

 

「目に見えるものだけが全てじゃないぞ、小娘...“強者”は凡人の想像もつかない領域で戦っているものだ...!」

 

動きの止まった私に、カタクリは右腕でパンチを構える。

 

「“焼餅”!」

 

カタクリの腕が瞬時に熱で膨らみ、破裂。

 

その勢いで分離した“拳”が真っ直ぐ私に飛んでくる。

 

「“武装強化(フォルティッシモ)”!!」

「!」

 

ポロロロロン♪

 

ピアノの音が鳴り響き、私はそれを“盾”で防いだ。

 

「...随分便利な物を着込んだな」

 

私の右手に“槍”が、左手に“円盾”が現れる。

 

“私は最強”だと想像した時、頭の中に浮かんだ勇ましき騎士の姿だ。

 

“アーマーナイト”は、私の思い描く通りの姿を再現してくれる。

 

「“敵”が一人だと思い込んじゃいないか...!?」

「あ、やば...!」

 

続けて私の背後から、強い“熱”を感じた。前後からの挟み撃ちだ。

 

「“燃風拳(ヒート・デナッシ)”!!」

 

私はそれに対して、“全方位攻撃”を選択した。

 

「“七色(プレリュード)”...!」

 

ドロロロロロ...♪

 

右手に持った槍を、大きく振り上げる。穂先には虹色の輝きを纏い、それは“波動”となって音で大気を伝わる力だ。

 

「“幻奏曲(カンタービレ)”!!」

「ッ!!」

 

シャーン♫

 

七色の閃光とシンバルの音色で、辺り一帯が音と光に包まれる。

 

この技は、その場を私の“歌”の力で支配するための前奏曲。

 

「...これは」

 

辺りの様子は一変していた。

 

そこは豪華な舞踏会。この場にいるすべての人は、スーツとドレスで着飾って、楽しそうに踊っている。

 

私は、腕を伸ばして“彼”を誘った。

 

「一緒に踊ろうよ♪」

 

私の衣装は、純白のパーティドレスだ。

 

「“幻覚”か」

「“夢”って言ってほしいかな」

 

ここは、私の“ 仮想世界(ウタワールド)”の疑似的な再現。特殊な音と光によって、一時的に素敵な白昼夢を見せることができる。

 

「ならば、その夢ごと貴様を粉砕してやろう。どうせ死なない程度には頑丈なんだろう...?“無双ドーナツ”!」

 

舞踏会はお気に召さなかったらしい彼が、地面の中から繰り出す四対の円。

 

「“餅吟着”!!」

 

円の中から、巨大な“拳”が私に向かって降り注いだ。

 

「...お前もまた“幻”か」

 

私は、拳に貫かれたまま、にひひと笑った。輪郭が崩れ、霧のように私の姿が消える。

 

世界が元の色を取り戻していく。

 

元々、倒すつもりなんかない。

 

私の目的は、スモーカーさんを回収して逃げることだ。今の私ならそれができる。

 

「...上手く撒かれたな」

 

“夢”が覚めた時、その場にはすでに、私もスモーカーさんも居なくなっていた。

 

「カタクリ、あいつどこに行きやがった!?クソッ、一度はこの手に収めたってのに...!“幻覚”にやられた。お前の“見聞色”はどうした!?」

「油断はしていない。だが欺かれた。厄介な技だ...。一度、ママと合流する。“目標”があれだけの力を身に付けた以上、戦力をこのまま分散させておくのは得策じゃない」

「...そうだな」

 

カタクリとオーブンは、誰の気配もなくなったその場を後にした。

 

 

「...行ったね」

 

チリンチリーン♪

 

鈴の音と共に、通路の隅に縮こまっていた私は姿を見せた。

 

静粛(ピアニッシモ)”。極限まで存在感を薄め、姿を消すことができる。

 

七色幻奏曲(プレリュード・カンタービレ)”の直後で、感覚が乱されてたことも幸いしたのかも。私は存在を悟られることなく潜伏できた。

 

「すごいなぁ...“加速”に“幻覚”に“隠密”...何でも出来る」

 

“アーマーナイト”の機能は、単に身体強化をするだけじゃないみたい。多分、私の“ウタウタの実”が作用して様々な能力が使えるようになっている。

 

なんにせよ、この力を使わない手はないよね。

 

「スモーカーさん、すぐに安全な所に運ぶからね...」

 

スモーカーさんはボロボロだ。私は強化された腕力でスモーカーさんをそっと抱えると、怪我人に負担にならない程度に、しかし全速力で走り出した。

 

 

「ひっ、ひっ...!」

 

フルボディは、息を切らしながら通路をひた走っていた。

 

側にいた彼の仲間たちは、もう建物の瓦礫の下だ。

 

「くそっ、あの“ビスケット”野郎...!なんて強さしてやがんだ!!」

 

彼をここまで追い込んだのは、“将星”シャーロット・クラッカー。

 

“千手”のクラッカーとも呼ばれる彼は、自身の腕を無数に増やすことができる能力を持っている。一度狙われれば即死はまのがれない。

 

そんな相手と遭遇しながら、フルボディは奇跡的に命を拾った。

 

「はぁっ...はぁっ...!俺は、こんなとこで死ぬ男じゃねぇ...!」

 

フルボディは、代々優秀な海兵を輩出している家系に生まれた。父は海軍本部“少将”。母は“中佐”だ。

 

自身もまた優秀な海兵になることを期待されて、勉学も訓練も人一倍努力してきた自負がある。その甲斐もあって、入隊時の成績は同期の中でも抜きん出ていた。

 

だが、海軍に入って見えた現実は“上には上がいる”という歴然とした事実だけだった。

 

確かにフルボディは同期の中で“比較的”優秀な成績ではあったが、それでも“一般的”の範疇を出ないものだった。

 

フルボディのさらに上には、同年代にしてすでに海軍“将校”クラスの力を持っているような才能のある“天才”が存在していた。それでもその年はまだ控えめだったそうで、入隊と同時に階級が付いたようなバケモノも過去にはザラに居たという。

 

そしてそういった者たちは入隊早々に結果を出し、今や海軍の中でも一目置かれる存在となっている。

 

一方でフルボディは、どんなに必死で勉強をしても、体を鍛えても、その“才能”の壁を乗り越えることが出来なかった。自分は“凡人”以外の何者でもなかったのだ。

 

やがて彼は何人かの仲間達と共につるんで、組織のはぐれ者を見えないところで虐げるようになった。それは、傷ついた自尊心を満たすため。

 

そんな彼に失望した両親の冷たい目線が、さらに彼を追い込んでいく。

 

今や“フルボディ”といえば、海軍の中でも名前を聞いたら眉を顰められる問題児の名前だ。

 

だからこそ彼は許せなかった。何の“才能”も“力”も持たない一人の少女が、自分以上に海軍や世界中の注目の的となることが。

 

自分がしていることが大人気ない八つ当たりだとわかっていても、止めることはできなかった。

 

だからこそ。

 

「...まだ、生き残りがいたか」

 

「な...!?」

「雑魚一人か。まぁ、戦力には違いない」

 

撒いたはずのシャーロット・クラッカーが、目の前に現れた時。

 

彼はそれを、心のどこかで“天罰”だと感じた。

 

自分は何も為せないまま、何者かになることもできないまま、ただの“一般人”として死ぬ。

 

「...あ、あ...!」

「死ね」

 

それが、自分の“末路”なのだと。

 

「“聖女の長槍(オルレアン・テヌート)”!!」

 

ピ〜!♪

 

「!?ぐ、ぬゥ!」

「...え?」

 

だが、眼前に迫ったはずの“死”は、どういうわけか笛の音と共に遠ざけられた。

 

「この人は私が止める!今のうちに離れて!“フルボディ”さん!」

 

「お前...!?」

 

そこにいたのは...自分が罵倒し、馬鹿にした“少女”だった。

 

その少女の姿は...まるで童話か神話に出てくる英雄のように、雄々しいものだった。

 

 

「...貴様、我々の“目標対象”だな...!」

 

私は、巨大な“騎士”を目の前にして密かに眉を顰めた。

 

反射的に攻撃しちゃったけど、失敗したかな。スモーカーさんを危険に晒すことになってしまった。

 

「あっ、そうだ。“フルボディ”さん!逃げる前にお願いがあるんだけど!」

「はぇ...?」

「“この人”、守っててくれない?結構重いよ!」

「うえぇ!?し、死にかけのスモーカー!?」

 

代替案として、とりあえず私はフルボディさんにスモーカーさんの体を預ける。信用できるかは微妙だけど、片手が塞がった状態じゃ出来ることも限られちゃうからね。

 

「だれか“医者”に見せてほしいの!出来なくてもどこか安全な所へ!フルボディさんもどこかへ避難してて!」

「...わ、わかった...!」

「よろしくね!じゃあ私、もう行くから!」

「あっ、ちょ、ちょっと待ってくれ!!」

「うん?」

 

振り向くと、フルボディさんはどこかバツが悪そうに頬を掻いている。

 

「その...た、助かった。ありがとう...!」

「あ、気にしないで!好きで助けたわけじゃないから!」

「そうか...えっ」

 

私はそれだけ言うと、立ち上がった騎士の方に向き直る。

 

「こんな小娘一人、まだ誰も捕らえていないのか...。手柄は俺が貰おう」

 

ビスケット姿の騎士さんは、自分の肩にポンと手を置いた。

 

すると、手を置いた場所から、何の脈絡もなく“腕が生える”。

 

「えっ!手が増えた!“能力者”!?」

「そうだが...それだけが全てじゃないぞ...!俺は“将星”クラッカー。“ビスビスの実”の能力者...!」

 

クラッカーは、パンパンと手を叩いた。

 

すると、何もない場所にビスケットが“出現”する。

 

「“叩けば増える”。それが俺のビスケットだ」

 

そのビスケットは、粉末状に分解されていき、やがて一つの塊に成形されていく。

 

出来上がったのは...。

 

「...分身?」

「に、近いものだ...。だが戦力は同じだぞ」

 

全く同じ姿をした、もう一人の“クラッカー”。どうやら彼の体はビスケットで出来ているらしい。

 

「無限の“兵力”...!それが俺の能力だ。“千手”は力の一部に過ぎない」

「へー...!じゃあ、お腹が空くこともないじゃん!その能力を使えば、世界中のお腹が空いてる人を助けられるよ!すごい能力♪」

「...馬鹿にしてるのか?それとも貴様が馬鹿なのか?」

「大真面目だよ!...あ、でも確かに毎日ビスケットは飽きちゃうかも」

 

私は知ってる。“飢餓”というものが、どれだけ世界中の人々を苦しめているのか。それが無くなればどれほどの人が“幸せ”になれるのか。

 

「せっかくすごい能力なのに勿体ないなぁ...。ねぇ、海賊やめなよ♪」

「戯言は聞き飽きた...。“ロールプレッツェル”!!」

 

迫り来る剣の切先を前に、私は挑戦的な笑みを浮かべた。なんだか気分が高揚してるみたいだ。

 

楽しくて楽しくて仕方ない。

 

「“幻奏曲(プレリュード)”♪」

 

「...ッ!?」

 

私が槍という名の“指揮棒”を掲げると、そこはもうすでに“場が整っている”。

 

「“観客(ギャラリー)”がたくさん増えるなら...!私と貴方だけでも、ライブは成立するでしょ?」

 

色とりどりのライトと、ワクワクな仕掛け満載のステージと、何より見てくれる皆の“熱狂”...!

 

ワァァァァァァァ....!!!

 

ここは“ライブステージ”だ。

 

「...これが“ウタウタの実”の力か...!」

「んー、惜しい!ちょっとハズレ。ここは私が主役のステージ!この世界では、私が“王様”なんだよ♪」

 

私は頭の上に、黄金の“王冠”を戴く。

 

「歌を歌えば、心も晴れる!新しい景色を見せてあげる!」

 

右手の槍は“マイクスタンド”に、左手の盾は“スピーカー”に変化する。

 

「“私は最強”!!」




技名考えんのムズすぎです。
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