「“
タタン♫とダンスを踊り、私は軽やかに“ビスケット兵”の合間を潜り抜けた。
「...何!?」
通り過ぎた兵士が、たちまちサラサラと溶けていく。
「何をした...!」
「言ったでしょ?ここでは私が“王様”なの♪...って、“本体”はそういう感じなんだ?」
サラサラとビスケットが舞い散った後には、大柄だった兵士よりも小柄で、鋭い目つきの男が立っていた。
「チッ...!痛いのがキライなもんでね。普段は“鎧”を着て戦っている...!」
「へぇ...私と同じだ!痛いのがキライなのも同じ!私たち気が合うね〜♪」
「ほざけ...!!」
クラッカーは、易々と“鎧”が剥がされてしまったのがお気に召さないようだった。
確かに、あの“鎧”はすごく堅そうで、普通に戦ったら骨が折れるだろう。
だけど...あの鎧を“解除”したのは、実の所、彼自身だ。私はそうなるように“誘導”しただけ。
「“鎧”も“武器”も捨てて、剥き出しの状態なら戦いをやめて会話する余裕もあるでしょ?」
「さっきから聞いてれば...“理想論”まみれの小綺麗ごとばかりだな!虫唾が走る!!“
「“
「“プレッツェル”!!...ほら見ろ、“防御”した!!」
私は“盾”を生成して、剣の刺突を受け止める。
「“鎧”と“武器”!!ここに揃ってるぞ!?綺麗ごとはどうした!!“海兵”!!」
「綺麗事を達成するために...現実も見なきゃね」
私はクラッカーから距離を取ると、タンと地面を蹴って“飛んだ”。
「“
「ハッハァ!なんだ逃げんのか!?だが空だろうと逃しはしないぞ!」
私が空に飛ぶと、クラッカーもまたそれを追って跳躍する。
「“
「“
クラッカーは真っ直ぐに突撃してくる。マイクを“槍”に変え、私は上空から迎え撃つ形だ。
「“プレッツェル”!!」
「“
剣と槍が激突し、火花が散る。本来なら全く足りない私の“戦闘力”は、この“ステージ”のお陰で相殺される。
だけど...打ち合った瞬間にわかった。私は“負けてる”。
「戦い慣れていないな!それくらいわかるぞ!!貴様は素人だ!!」
「...うん、そうだよ」
「ただの小娘が、“海賊”に敵うなんて思っちゃいけねェ!ましてや俺は“8億”の首!!そう簡単に...!」
「っ!!」
「“倒せる”と思うなァ!!」
剣が、私の体を地面に叩きつける。
「...思ってないよ」
ガララ、と瓦礫の音を立てて私はなんとか立ち上がる。
世の中、甘い事ばかりじゃない。いきなり“力”を手に入れたからって、なんでも上手く事が運ぶわけじゃない。
私は、未だ無力な子供のままだ。
「...でも、私は...“新時代”を作らなきゃいけないから...!」
ずっと思っていた事だ。私は“暴力”が嫌いだ。歌でみんなを幸せすることを夢見ていた。
だけど...“力”がなきゃ、誰も救えないという現実がここに横たわっている。
「あなたを倒さなきゃ、私の大切な人が傷つけられちゃうから...!」
私は、“槍”を構えた。
「だから、“倒す”よ!貴方のこと!!」
「それができねェって話を...!!」
クラッカーはニヤリと嗤い、剣を構える。
「したつもりだったがなァ!!」
力の差は歴然だ。まともにやっても勝負にならない。勝機は、ここが“私のフィールド”であるということと、相手が“油断している”ということ。
一撃を通すんだ。それで勝敗が決する一撃を。
「“
「“
私は、瞬間的な加速によって攻撃を避ける。
「随分大げさな動きだ!!そんなに戦いが怖いか!?」
「怖くない!!」
本当は凄く怖い。だけど...
「あなたこそ、戦うことを怖がってる動きに見えるよ♪」
“虚勢”を張って、恐怖心なんて見て見ぬ振りだ!!
「戯言もここまで来ると滑稽だな!!もうそろそろ終わりにしてやろう...!“鎧”がなくとも、たかが小娘に負けはしねェ!!」
すごい速度で移動しているはずの私の位置を、彼は正確に掴んでいるようだ。
「“
ここだ。
「?...ほう、向かってくるか...!」
私は、彼が技を放つ動作を見せたタイミングで、あえて“急接近”する。
「潔いな!!死なない程度に殺してやろう!!」
間違いなく、相手は攻撃が“当たる”と思ってる。私もそう思う。きっと私は避けられない。
だからこの手は、一度きりしか使えない。
「“プレッツェル”!!...な!?」
刺し貫かれた私の姿が、霧のように消え失せる。
そのすぐ真後ろから...“本物”の私!
「これなら、“気配”がわかっても意味ないでしょ...!?」
「ガキが...ッ!!」
私は、今までになくクラッカーに接近した。
今は使えなくても、私の中に...まだ眠ってるんでしょ...?
お願い。私の“能力”。
力を貸して。
「“
私の歌は、子守唄。
「〜♪」
耳のすぐそばで、囁くように歌声が響いた。
...。
「...ぐが〜」
「...」
ぺたん、と体の糸が切れたように座り込む。
「...勝っ...たぁ〜...!」
どさ、と地面に思い切り寝転がる。
私は、”8億“の賞金首に...勝った。
世界が色を戻していく...。
結局、一番の私の”力“はこの歌にあるみたいだ。私に戦いは向いてない。
でも、相手を傷つけずに無力化する方法があるのは素晴らしいことだ。
「んー...確か能力者は“海楼石の手錠”で拘束するんだっけ...海楼石ってどこだろう?」
私は、眠ってしまったクラッカーの処遇に悩んでいた。
流石にこのままにはしておけない。かといってただの鎖やロープで縛るだけじゃ容易く引きちぎられてしまいそうだ。
「ひとまずここに置いておいて、海楼石を探しに行かないと...でも、このままにしておくのも...」
「“雷”...!」
「...え?」
私はその時、油断してた。
“戦いは終わった”と、そう思い込んでしまっていた。
「“霆”!!」
「!?...あ、ぐ...!」
結果、私は...“四皇”の一撃をまともに喰らった。
「ママママ...!!情けないねェ、クラッカー...!」
「ママ、そいつは子供といえど侮れん。この俺から逃げ切ってみせたんだからな...!」
「ウィッウィッウィ...!!でももう無意味さ。最後に見つかっちまったんだからねェ!!マヌケな娘だ!!」
体が、動かない。痛い...!
...こんなに、痛いんだ。
私の体を完璧に守ってくれていた“鎧”が、ひしゃげて火花を散らしている。
眠っているクラッカーをひょいと持ち上げて、凶悪な人相で嗤う圧倒的な力を持った怪物...“ビッグ・マム”。
いつの間にか、そこには“ビッグマム海賊団”が勢揃いしていた。
...“センゴク”さんはどうしたんだろう。“スモーカー”さんは逃げ切れたかな?
「まったく、随分逃げ回ってくれたもんだ...!ましてやウチの“将星”に、形だけとはいえ勝つなんてねェ...!!ますます興味が湧いたよ」
ごめんなさい、ガープさん。色々とお世話をしてくれたのに。
「持ち帰って...本の中に“永久に”保存しなくちゃ♪」
「...ルフィ」
...違う、そうだ。私は...
「ん?」
「私は...ルフィの“音楽家”...!」
今にも倒れそうになりながら、なんとか立ち上がる。
「貴方の...“鑑賞用”にはならない!!」
まだ、何も終わってない。
「...ママママ...!!俺は“海賊”なんだ。人様の物を奪うのが生業さ...!!だけどその目!気に入ったよ...!しばらくはおれの手元に置いていてやろうかねェ...!!」
全身の痛みを押して、前を向く。
そして...
「“大噴火”ァ!!」
眼前に広っていたのは、見渡す限りの紅い“マグマ”。
「...あァ!?」
巨大な手がマグマに遮られ、ビッグマムは苛立ちの声を上げる。
「...サカズキ、さん?」
「おう小娘。なんば生きとったか...!!もうとっくに殺されとると思うちょったがのう...!!」
私と“ビッグマム”を遮るように、“マグマ”が流動する。
その場に現れたのは...海軍本部“大将”赤犬・サカズキ。
「...なんで」
「下らん質問をすな...!」
サカズキさんは、全身にマグマを纏いながら...私を背にして立った。
「目の前におるのは“海賊”じゃ!!反論の余地もない“悪党”...!それを前にして“立場”だの“面子”だの、ゴタゴタ抜かすアホがおるかァ...!」
ゴボゴボとマグマが蠢き、巨大な“拳”を形作る。
「貴様も一端の海兵なら...!」
背中越しに、サカズキさんの鋭い目が向けられ、私は体中の痛みを押して立ち上がった。
「さっさと手ェ貸さんかい、バカタレが...!!」
「は...はいっ!!」
「...ハ〜ハハハハ!ママママ...!なんだい、もう帰ってきたのか...!けど今更何が出来る!?テメェら如きによォ!!“ナポレオン”!!」
「ハイ、ママ!!」
「“
ビッグマムは、その手に“燃える巨剣”を構えた。
「“
それに対して、サカズキさんは両腕にマグマをしたらせて、ビッグ・マムに掴みかかる。
「“
“巨剣”と“マグマ”が衝突し、辺りは眩い光で包まれた。
「ぬゥ...!!」
だけど、若干サカズキさんが押されている。このままでは押し負ける。
だから...!
「“
私は槍を構え、全身に力を張らせる。体力的にも、これが最後の一撃。
体力を振り絞り、“
「“
私の“槍”が、巨剣を捉える。
「...!?」
ビッグマムが...押され始めた。
「ママ...!?分が悪いか...!“無双ドーナ...”」
「あらら...なんだよ、サカズキに先越されたか」
そしてその場に、身も凍えるほどの“冷気”が通り抜ける。
「“
冷気は地面を伝い、一瞬で世界は氷に包まれた。
「“青雉”...!?貴様もか...!!」
「NO〜〜〜!!バカ言っちゃいけねェよ。俺が最初に帰ってきたんだ...!!」
カタクリの足が凍りつき、その動きを捕らえた。
「アイツの邪魔はさせん!!“
クザンさんに向かって、シャーロット・オーブンが自身の“熱”を高め突進攻撃を行う。
「氷は熱が弱点だろう!?“
「オォ〜恐いねェ〜...!よくこれだけで被害が済んだものだ...!!」
さらに状況は目まぐるしく変化する。
「“八咫鏡”」
氷の世界を一閃する“光”。
その光は、一瞬で熱を纏うオーブンの真後ろに到達していた。
「“光の速度”で蹴られたことはあるかい〜...?」
「...なっ」
ッ!!
爆発音に似た衝撃と共に、オーブンは地面に叩き伏せられる。
“黄猿”ボルサリーノは、振り抜いた足で地面に降り立つと、周囲の状況を確認して呟いた。
「よくもまァ、これだけ持たせたものだねェ〜...」
「ぬうううっ!!」
「はああああっ!!」
「...チィッ!」
一方で、私とサカズキさんの攻撃の勢いにやや押されていたビッグマムは、巨剣を弾いて攻撃を逸らした。
「...いってェなァ〜!!」
その右手はマグマが掠ったのか、やや焼け爛れている。
「...ハッ!腐っても“大将”か...!久しぶりに“傷”を負ったよ...!!」
「そのまま、骨の髄まで溶かしてやるはずじゃったがのう...!」
「...うぅ」
「“こっちの方”はまだまだ甘っちょろいわ...!!」
私は、全身の力が抜けてその場に倒れ込んでしまった。
全力を使い果たした。もう指先も動かせない。
「ママ!他の海兵達は、私の“能力”で誤情報を伝えてあるわ!これ以上増援は増えない!!」
「そうか、よくやったねェ。プリン...!...プリンか」
ビッグマムは、“火傷”した右腕を冷ますようにブンブンと振りながら、報告をしてきた娘であるプリンの顔を見る。
“三ツ目”さえ隠せば端正で可愛らしい顔立ちと瞳。プリンはとてもいい子だ。
「プリン...プリン...」
「...ママ?」
とってもいい子で、お人形のようで...
“食べちゃいたい”ぐらいだ。
「“プリン”を持ってこォォォ〜〜い!!!」
ビッグマムは吠えた。口の中にない“甘味”を求めて。
「え〜〜〜!!?“食いわずらい”!!今!!?」
ブリュレは、突如発症した母の“発作”に絶叫した。
「何...!?くっ、マズイ...!この状況で...!」
「“プリン”はどこだァ〜〜!!」
「ママ!落ち着いて!?私ならここよ!!」
「バカ、およし!プリン!!アンタのことじゃないよォ!!」
「...なんか、すごいことになってる...」
ビッグマムは、突如として敵味方関係なく暴れ始めた。
その目は正気を失っているように見える。
“ビッグマム海賊団”が総じてビッグマムから距離を取り始め、戦場はもはや混戦状態だ。
「...どうする!?カタクリ!このままじゃマズイぞ...!!」
「...」
オーブンは、この状況下において最も強い指揮権を持つ男に問いかけた。
その男、カタクリは足元の氷を槍で粉砕し、目を閉じて思考する。
迷いは一瞬だった。次に目を開けた時、カタクリは“決断”を下した。
「撤退だ。デザートを探す暇もないこの状況で、“大将”共に加えてママまで相手にしてられん...!!」
「...了解だ」
オーブンは、カタクリからの提案に歯軋りしながらも同意した。
”ビッグマム海賊団“は未だ、目的を達成していないのだ。オーブンは地面に倒れ伏している少女を睨みつけると、振り返って指示を出した。
「この場の“ビッグマム海賊団”!!全員ブリュレの“鏡”の中に飛び込め!!力のある者はママに鏡を潜らせろ!!」
「“鏡”はここさ!全員飛び込むんだよ〜!!」
その号令によって、マリンフォード内に侵入していた全ての“ビッグマム海賊団”が鏡に向かって集結する。
「あらら...そう簡単に逃すかってんだよ...!好き勝手してくれやがって」
「わっし達に背を向けるとは、随分呑気だねェ〜...!“八尺瓊勾玉”」
「“流星火山”!!」
「海賊どもが逃げるぞ!追撃だァ〜〜〜!!」
逃げる海賊を追撃する“大将”以下、本部に残る戦力。
「“流れモチ”!!」
「まったく、目が覚めたらとんでもねェことになってやがる...!“前進”!!」
殿を務める二人の“将星”。
「ママを鏡にぶち込め〜〜〜!!!」
そして、ビッグマムを鏡に押し込む者たち。
そんな、混沌とした状況で。
「プリンはどこだァ〜〜〜!!!」
ただ自身の“欲望”を口にする“皇帝”の姿が...やけに印象に残った。
...
......。
結果から言えば、マリンフォードは建物こそ半壊したが、人員の被害については予想よりも遥かに少ないものだった。
それは、“ビッグマム海賊団”の目的がマリンフォードの陥落ではなく一人の少女を連れ去ることにあったことが理由の一つであり。
その少女が、敵の“将星”を始めとした戦力を大きく食い止めた功績が一つ。
連絡が飛び、すぐさま各地に散っていた“大将”達が脅威的な速度でマリンフォードへ帰還したことも大きい。“センゴク元帥”が単独で四皇を食い止め続けた事実も無視できない。
そして...
「...殺すなら殺せば?」
この“侵攻”によって、海軍はビッグマム海賊団の一人を拿捕することに成功した。
“シャーロット・プリン”。
その齢“4歳”の少女は...“三ツ目族”だった。
こうして、マリンフォード史上類を見ない大事件となった“ビッグマム海賊団”の侵攻は...。
“海軍”の勝利で幕を下ろした。
ウタの強さに疑問を覚えるでしょうが、これは決して装備だけが原因ではありません!個人的に、ONE PIECEの戦いは“意思のぶつかり合い”だと思っていて、強い意思を持てば不可能と思えるジャイアントキリングも果たせると考えてます!原作の“天上決戦”なんかまさにそうでしたしね。とはいえ、ここまで極端に強化される理由は本作のウタが持つ“ある秘密”が関係していたりするんですが...コメント欄読む感じ薄々気付かれてると思いますw