【“新世界”・ホールケーキアイランド】
「なんだァ!?この“報道”はァ〜〜〜!!?」
“四皇”ビッグ・マムは、自身の居城で“世界経済新聞”の紙面を見て憤慨していた。
「なんでおれたちが“敗走”したことになってんだァ!!おれが死んだか!?あるいは誰かに負けたか!!?ナメんじゃねェよォ!!」
「「ひぃ〜っ!!」」
ビッグマムの発する“覇気”により、周囲の“ホーミーズ”達が消滅していく。中でも特別な“ゼウス”と“プロメテウス”も、ガタガタと震えることしか出来なかった。
「プリンだって取り返すさ...!!おい!もう一度マリンフォードへ攻め込むぞ!!」
「だ、だけどママ...!この前の襲撃で、流石に海軍も警備を厳重にしてる!!もう一度同じ手ってのは厳しいぜ!?ペロリン♪」
「“娘”奪われて黙ってる親があるかァ!!」
シャーロット家“長男”、シャーロット・ペロスペローの静止も怒れる母には届かない。
「ママ、プリンの存在は奴らにとっても貴重なはずだ...!すぐに殺されることはない。時間を置き、ほとぼりが冷めてから少人数で救出する。これが最も成功率が高い」
「...チッ、忌々しいね...!」
「ほっ...」
“次男”カタクリの進言によりビッグ・マムは矛を収め、ペロスペローは息を吐いた。
「ママ、昨日の新聞の内容だが、ひとつ気になることが書いてあった...!」
落ち着いたママに、19男“書司”モンドールが報告する。
「この壊滅した“エレジア”って街は、俺たちの狙っていた娘に宿ってる“魔王”が元々眠っていた土地だ...!!このタイミングで“壊滅”とくりゃあ、下手人は魔王...ひいては“ウタ”について、何らかの情報を持っている可能性が高いぜ...!!」
「...“海賊”か。知らねェ名だね」
ビッグ・マムは新聞記事を見て、その内容に舌鼓を打つ。
モンドールはマリンフォードからママの注意を逸らせたことに内心安堵しつつ、新聞の内容について続けて話す。
「そりゃあママほど通った名じゃねェがよ...!!一昔前、エレジアに近づく海賊共を片っ端から薙ぎ払ったって話題になってた...!!なんでも、“王族”の血筋でエラく腕が立つらしい...!」
「その上、過去には部下として後の“七武海”二人を従えている...ある時から姿を見せなくなったが、復活すると同時に“エレジア”を滅ぼした所から見ても、野心は全く衰えていないらしい」
カタクリが補足し、ビッグマムはその内容を鼻で笑った。
「ハッ!向かってくるなら殺すがよォ...!どこでどんな海賊が、何やろうとおれには関係ねェ!!だが名前だけは覚えておこう...」
そう言って、ビッグマムは新聞記事に挟まっていた“手配書”を手にした。
懸賞金“10億
その男は、まるで海賊王に作られたこの時代そのものが“偽物”だと嘲笑うかのように、“本物の海賊”として悪逆非道の限りを尽くした。
人は彼をこう呼ぶ。
「“本物”のゴードン...!!」
この世の誰よりも海賊らしい海賊。それがこの男だった。
「ママママ...!このおれを差し置いて“本物の海賊”と呼ばれるとは、生意気な男だよ...!!」
ビッグマムは、手配所に描かれた“精悍な顔つきの男”を見て嗤う。
ホールケーキアイランドの天気は、ママの機嫌を写すように荒れ模様だ。
【
「そうか、“エレジア”が...」
「あぁ、つい昨日の話だ。ひでェもんだよ」
「...そういやお頭、この“エレジア”って国には前に行く予定を立ててたよな?」
「ん?あぁ、よく覚えてたな」
「中止にしたのはこいつが原因か?」
「...そうだな」
「俺は以前、そいつに会ったことがある」
「へェ...?初耳だな。昔の話か?」
「いや、最近だ。酒場で飲んでたら話しかけられた。異様な“覇気”を持つ男だったよ。只者じゃないってのはすぐにわかった。ただ...」
「...?ただ、なんだよ?」
「...いや、なんでもない」
「おいおい!そりゃねェだろうが!!」
「俺の勘違いかもしれない...いや、“勘違い”じゃなきゃありえないんだ」
「??何が言いたい...?らしくねェじゃねェか」
「...」
「...アイツが、“ウタ”を知ってるハズがねェって話だ...!」
【
「“エレジア”が...壊滅...!?」
私は、ベッドの上で驚愕の内容が記された新聞に目を通していた。
“エレジア”の壊滅。この文字列を見た時、私の脳裏には否応なくシャンクスの顔が浮かんでしまった。でも、未来は変わった。そんなはずはないと思いながらも、息を呑んで中身を見ていく。
「...え」
しかし、エレジア壊滅の主犯として取り上げられていたのは...“海賊”であっても、シャンクスじゃなかった。
その名前は...“ゴードン”。
「...えぇ」
...意味がわからない。
正直...私は本気で、これが誤報なんじゃないかと一瞬疑ってしまった。そもそもゴードンは“海賊”じゃない。彼はエレジアの国王だ。それがどうしてエレジアを...自分の国を滅ぼした海賊なんてことになるんだろう。
「...“本物”のゴードン...海賊を殲滅...10億...!?」
しかし、読み進めていく内にこれが夢でも誤報でもないことを理解していく。そこには、確かに“海賊”ゴードンの軌跡が事実として記されていたのだ。元々は“王族”の血筋だったというのも、辻褄が合うといえば、合う。
...だけど原因がわからない。
私の知ってる歴史と違うなら、それは未来を知ってる私が介入した結果でしかあり得ないはずだ。なのにゴードンの活動記録は...私が生まれる“遥か前”から始まっている。
「何やってるの...?ゴードン...!」
ベッドの上から動けない私には、もう一人の“父親”ともいえる人の安否を願うことしかできなかった。
【エレジア】
かつ、かつ、というブーツの音が殺風景な景色に響き渡る。
「あらら...こりゃひでェもんだな...」
“青雉”クザンは、エレジアに上陸した途端見えた光景に眉を顰めた。
倒壊した建物。そこら中から漂ってくる血と爆薬の匂い。戦時下の国でも、ここまで酷い有様になることは珍しい。ましてや“エレジア”は島国だ。敵などいない...“本来”なら。
これは決して“戦い”の痕ではない。一方的な“蹂躙”の痕だ。それも“国”が蹂躙される側と来た。相手にしたのは、たった一人の“男”という話だ。
クザンは瓦礫を踏みつけ、死体を避けながら道なき道を行く。街道などあってないような状態だが、目に見えない距離にあって尚届く“覇気”が、何よりもの道標だ。
だが、その最終目的に辿り着く前に、別の“覇気”がクザンの前に現れる。
「...さて、どうしたもんかな。この“状況”...!」
その覇気は、“二人”存在した。
「どうしたもこうしたもねェだろう。目に見えてるものだけが“事実”だ...!!」
「フッフッフッフ!!こんな焼け野原に“大将”までお出ましとは...!!余程あの男を“脅威”と見ているらしい...!」
「別に任務で来たわけじゃねェよ。単に...“七武海”を二人も従えるような男に、興味があるだけだ」
“王下七武海” サー・クロコダイル。
同じく“七武海” ドンキホーテ・ドフラミンゴ。
本来“ありえないはず”の組み合わせが、クザンの前に立ちはだかった。
「お前ら...!“ここ”にいるってことは、当然自分の“立場”が危ねェってのもわかってんだろうな...?」
「フッフッフッフ....!ご親切に忠告か...?従えば手配を取り消してくれるってんなら、今すぐに消えるけどなァ...!フッフッフッフ!!」
「俺は誰とも“組まねェ”。ここには単に昔のよしみで顔を出しただけだ。“同窓会”を開くだけで海軍が顔出して来るもんだから、こっちはやりづらくてしょうがねェよ...!」
「アイツと組んだんじゃねェんなら、別に俺からは何も言わねェよ。そこ、通してくれるか?“面会希望”だ」
「“断る”と言ったら...?」
「そりゃお前...アレだよ...」
一瞬にして、“冷気”がその場を支配した。
「“殺し合い”しかねェわな...?」
場の緊張が張り詰め、一触即発の事態にもつれ込む。
プルルルル...
「...」
「...俺の電々虫だ」
「...出ていいぞ?」
ガチャ
「...なんだ?今“招かれざる客”を...なに?...だが...」
電々虫を取り出したクロコダイルが、顔つきを険しくしていく。
「...そうか...わかった。お前がそれでいいなら、かまわねェ」
「...“アイツ”からか?」
「あぁ。“通していい”だとよ」
クロコダイルは電々虫を懐に仕舞い、場の緊張は弛緩する。
「なんだよ...これからが楽しい所だったのに...!フッフッフッフ...!」
「行けよ、“青雉”。お目当ての人物がお呼びだ」
「...意外と話わかんじゃん。話の通じねェイカれた男だと聞いてたけどな」
クザンは、その場を退いたドフラミンゴ、クロコダイル両名の隣を潜り抜ける。
そのまま進んでいくと...やがて、簡易的な“テント”と、数十人の男たち、“海賊”がクザンを出迎えた。
「“ボス”がお呼びだ。入れ、“青雉”」
「わざわざ済まねェな。出迎えご苦労...!」
周りにいる男も...その辺にいるような雑多な海賊ではない。一団を率いるような器を持つ精強揃いだ。
そして...それら全員に“ボス”と従われる一人の男。
「ゴドドドド...!!!」
テントの中に...異様な“覇気”を発する男が座っていた。
「お初にお目にかかるぜ、“ゴードン”...!」
「...大将“青雉”。ここに何か用ですか?」
「しらばっくれんなよ。お前に会いに来たんだ」
「ゴドドドド...!それは、実に光栄なことだ...お茶でも飲みますか?」
その男...ゴードンはサングラスをかけ、張り付いたような笑みを浮かべている。
「気が利くじゃねェか。仲良くなれそうだな」
「私もそう思います。どうですか、軽い世間話でも...」
ゴードンが笑みをたたえて“雑談”を繰り広げようとした...その瞬間。
テント内は“極寒”の冷気に包まれた。
「舐めてくれちゃ困るぜ、ゴードン。俺は海軍“大将”だよ...!海賊におもてなしされる準備はしてきてねェんだ...!」
「...緑茶はお嫌いでしたか?」
氷が支配する空間で、“無傷”のゴードンは白々しく首を捻る。
「“国”を滅ぼしたって海賊が...!その跡地に居座って我が物顔で満喫されちゃあ...亡くなった罪なき一般市民様方に、申し訳が立たねェだろ...?」
「...やったの私じゃないですよ、それ」
そうした問答を繰り広げている内に、凍えたテントの外がざわざわと騒がしくなる。
「“ボス”!!こいつやっぱり...!」
「てめェ“青雉”!!よくも!!」
テントの外からゴードンの部下たちが雪崩れ込む。それらをゴードンは静止するように腕を伸ばした。
「止まれ。この人に手を出すな」
「ですが、ボス!舐められっぱなしで終われません!!」
「そうだ!!俺たちのボスなら、お前なんか相手にならねェ!!」
「...なんだよ、部下の教育がなってないな...!」
「あの、本当にやめて「ボスを守れェ〜〜!!!」
「“
「「ぐわあぁぁぁぁ〜!!!」」
クザンへと仕掛けた者たちは、次の瞬間には全員“氷の彫像”となっていた。
「...全く、部下の一人も守れねェとはな。お前、本当に一船の船長か...?」
「...」
「だが、この技の中で“無傷”でいるお前とは、事を構えない方が良さそうだ...!邪魔したな、俺は帰るぜ」
「...お気をつけて」
クザンがテントを抜け出し、元いた入り口に戻ると、そこには先ほどまでと同じように二人の“七武海”が待ち構えている。
「フッフッフッフ...!“偵察”は済んだか...?」
「あぁ。充分すぎるくらいだ」
「オイオイ、“任務じゃねェ”って話はどこに行った...?」
「嘘つきはお互い様だろ」
クザンは、まるで舎弟のように門番を務める“七武海”二人をその場に残し、“エレジア”を後にした。
その男は、“大将”である自分を前にして呑気に茶を沸かし始め、あまつさえ世間話を始めようとした神経の図太さを持っていた。
それに加えて、あの海賊らしからぬ“ふざけた口調”。完全にクザンをおちょくっているとしか思えないものだ。
「“ゴードン”か...!噂通りイカれた男だ。覚えとくぜ」
「...」
ボロボロになったテントと、氷漬けの部下たちの真ん中でゴードンは悠然と立っていた。
その恐ろしげな表情からは、彼が何を考えているのか...闇に包まれた内心を窺い知ることはできない。
「はぁ〜...」
一人になった空間で、ゴードンは深く、深く溜息を吐いて座り込んだ。
「“敬語”使ったから見逃してくれないかな...」
そしてサングラスの奥に潜む鋭い瞳が...気怠げに細められる。
「帰りたい...」
“本物”のゴードン...!なんて恐ろしい男だ...!!
というわけで次回から新章“偉大なる航路”編開始です。物語は10年後から始まります。
ちなみに本作は、一応“頂上戦争編”までの構想は考えてあるのでそこまでは行けたらいいかな〜とぼんやり思ってます。物語が進むほどウタとルフィの関係は面白いことになっていきます。それがピークに達するのが頂上戦争編って感じです。なにせ...“あの”ハンコックが出て来ますからね!ハンコックが!!作者はウタ以外だと一番好きな女性キャラはハンコックです。