「マキノ〜〜!!」
「マキノさーん!!...だ、ダメだ」
見つからない。
あれから数十分間、当事者の私たちだけじゃなく、村の皆総出でマキノさんの捜索を行った。けど、捜索の甲斐もなくマキノさんの足取りは全く掴めずにいた。
「ぬゥ〜!山賊めェ〜!!おい、ガープ!!何故貴様がいてマキノが攫われるような事態になるのだ!!」
「すまんのう、村長。うっかりしておった」
「うっかりで彼女が死んだらどうするつもりだ!!」
ガープさんも一緒に探してくれているけど、さすがに遠い場所に逃げた人の居場所まではわからないようだった。村長さんにどやされている。
「くっそ〜!!山賊の奴〜!!じいちゃんに勝てねェからって!マキノは関係ねェだろ!!」
「逃げ足だけは早いのぅ、賊ってのは...。ワシの“見聞色”も衰えた」
「...どうしよう」
心臓がバクバクと鳴る音だけが、ひたすらに私の心を支配する。
「私の、私のせいだ...。私が、あんなことしたから...!」
「お前がやらなかったらおれがぶん殴ってたよ!!悪ィのはあいつらだ!!」
「よう言ったルフィ。悪党に同情の余地なし!だが早いとこ見つけんといかんのも事実じゃ...“アイツら”はまだ来んのか」
「ガープ!!...さ〜〜ん!!」
「...噂をすれば」
ガープさんはニヤリと笑い、声のした方に振り向く。
「あの人達って...」
「山賊じゃ」
「えー!?」
村の外れ...山の方角から大柄な男...じゃなくて女の人が走ってくる。オレンジ色のパーマヘアと大きな胴体が特徴的だった。
「ダダン、遅いぞ。マキノの命が懸かっとると言うたろう!!」
「こ、これでも急いで来ましたって〜!いきなりなもんだから...!」
「御託はいい!!奴らの根城はわかったのか」
「へ、ヘェ!ヒグマといやぁ、ここいらじゃそれなりに名の通った男です!争ったことも一度や二度じゃねェんで...!」
そう言って、ダダンさん?が広げたのは、フーシャ村近辺の地図のようだった。向かって左側の島の端に、赤いバツ印が記してある。
「奴らのアジトはここに!ヒグマ一味は獲物をすぐに船で運んで雲隠れしちまうって特徴があります!そのために海沿いにアジトが!岩礁の影に隠れて、普通じゃ見えねェような場所です!その分手勢はそれほど多くありません!」
「でかした。すぐに向かう!お前さんワシを案内せい!全速力で向かうぞ!」
「え〜!?こっからまたマラソンですか〜!!?」
「文句あるのか」
「喜んでお供させていただきます!!」
「じいちゃん!おれたちも連れてってくれよ!」
走り出そうとするガープさんに、ルフィが食ってかかる。ガープさんは顰めっ面を作って首を横に振った。
「ダメじゃ。悪党を引っ捕えようとする根性はいいが、お前はまだ弱い!ここで待っとれ!」
「え〜!!なんでだよ!!」
「ガ、ガープさん!私からもお願いします!」
「ウタ...」
「ルフィは多分、ダメって言っても着いていくと思うから...!私も一緒にいれば、いざという時ルフィを止めれます!」
頭の中で、なんとか付いて行くための理屈を捻り出す。そうでもしないと、私はここでお留守番になっちゃう。それだけはどうしても嫌だった。
ガープさんは数秒考え込んで、ハァ とため息を大きく吐いた。
「速度は緩めんぞ!バテても置いて行く!...付いてくるなら勝手にせい!」
「おう!ししし!」
「は、はい!」
「...あのー、ちなみにアタシがバテたら...」
「死ぬまで足を動かせ」
「へい」
「ぜぇ、ぜぇ...!」
「はっ、はっ...!」
「着いたぞ」
「や、やっとかァ〜!」
「はぁ、はぁ...苦しい...!」
それからしばらく、私たちは死に物狂いで走り続け、倒れる寸前というところでなんとか目的地に着いた。
そこは、ダダンさんに聞いた通りの海岸。突き出した岩礁が視界を遮り、その向こうに確かにちらちらと人影が見える。
私たちは、何とか一人も脱落せずにここまで来れた。
「あ、あァ...死ぬ...」
...一人、尊い犠牲も出ちゃったみたいだけど。
「むぅ、確かに一見、見つけ辛い。出入り口も限られとる。潜入は無理そうじゃな...」
岩礁の隙間を覗き込んでいるガープさんの脇から顔を出して、アジトの入り口らしき場所を観察する。確かに裏口はなさそうだし、周りは岩と海で囲まれてる。こっそり近づくのは難しそうだ。ガープさんはどういう作戦でいくつもりなんだろう。
「...ガープさん、どうやって...え?」
「コラ〜〜〜!!マキノはどこじゃ〜〜〜!!」
「「「ぎゃあああああ!!!」」」
「...」
あんまり作戦とか関係なかったみたい。
正面突破したガープさんに続き、私とルフィがアジトに入って行く。
「わ、わぁ...」
「...じいちゃん、相変わらず強ェな〜」
アジト内は、死屍累々という言葉が相応しい有様だった。何人かいたらしい山賊の人たちは皆倒れてたり気絶してたり壁に突き刺さったりしている。
「おい!さっさと吐かんか!マキノはどこじゃ!」
「だ、だから言ってんだろ!?女ならここにはいねェ!!もう海に...」
「嘘をつくな〜〜!!」
「ボゲばぁッ!!」
あ、また一人犠牲者...。
「ふん、こいつら揃いも揃って口を割らん!山賊のクセに一端の根性だけはあるようだ!」
「...まだ何か言いたそうにしてたと思うんですけど」
...貴重な証人が全滅してしまった。
見渡しても、アジトの中にはマキノさんは見当たらない。一体どこに...。
「あ〜!!ガープさん!居ました居ました!船の上ですよ!!もう出航してます!!」
「なにィ!?」
復活したらしいダダンさんの声に振り向くと、確かに海の上に帆船が浮かんでいる。...さっきの山賊さん、本当のことを言ってたみたい。
しかも、ついさっき出航したようでそれほど遠い距離じゃない。
「あーー!!本当だ!マキノ!!」
「し、縛られてる...!!」
甲板の上には、手と足を縛られ、口に猿轡を嵌められたマキノさんがぐったりとした様子で横たわっていた。周囲には数名の山賊っぽい人達。まだ生き残りがいるようだった。
「むぅ、仕方ない。泳いで行く!!ダダン、こいつらを任せ...」
「い、いや待ってください!もう一隻...別の船が...!!あ、ありゃあ...海賊船かァ!?」
「なにィ〜?」
海の上には、マキノさんが乗ってる比較的小型な帆船の他に...向かって左側の遠い海にもう一隻。大きな、大きな海賊船が浮かんでいた。
その海賊旗には...。
「...“八宝”?」
ボォン!
「おい!なんか飛んできてねェか!?」
「大砲!?バカな、届くわけが...!」
「ひやホホホホ!!!ガ〜〜〜〜プ!!!!」
「な!あ、ありゃあ...!」
海賊船がこちらに向けて一発、大砲を撃ち出した。
流石に距離がありすぎて、砲弾は海に落ちてしまう。だけど、何の冗談か...海に落ちた砲弾から、“人影”が飛び上がった。
「ここで会ったがァ〜〜!!100年目〜〜〜〜!!!」
「チ、チンジャオ〜〜〜!!」
「その首貰い受けるぞォ〜〜〜〜!!!」